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三井不動産ら、神戸の既存トンネルをデータセンターに転用

ニュースの要点

三井不動産株式会社、株式会社熊谷組、株式会社ゲットワークスは2026年10月6日、神戸市の既存トンネルを活用する地中型データセンターの開発に着手すると発表しました。造成用の土砂運搬に使われていた空間を、外部顧客向けのデジタルインフラに転用します。

対象は、総延長14.5キロメートルのうち約3キロメートル、約1万7,000平方メートルです。生成AIなどに使うGPUサーバーや、重要データの安全な保管・運用への需要に対応するため、年間を通じて15〜20℃の冷涼な空間を活用します。

初期サービスは2027年末の運用開始を予定し、将来的に最大20MWの受電容量を目指します。三井不動産と熊谷組が事業地を開発し、ゲットワークスがコンテナ型データセンターを運営する計画です。全国のトンネルや鉱山跡地への展開も目指しています。

ニュース出典: 三井不動産・熊谷組・ゲットワークス/原題「日本初※1、既存トンネルを活用した地中型データセンターを開発」/公開日2026年10月6日/公式発表


イノベーション総研の考察

データセンターは、サーバーを置く建物だけでは成立しません。電力を安定して受け取り、発生する熱を逃がし、通信回線と保守体制を確保する必要があります。今回の特徴は、不動産として使いにくくなった空間を、冷却や安全性が求められる用途へ組み替えようとしている点です。

遊休資産の弱点が、別の顧客には価値になる

地中のトンネルは、人が日常的に利用する商業施設やオフィスには転用しにくい空間です。しかし、サーバーを安定して動かす用途では、温度が低く変動しにくいことや、外部から近づける場所が限られることが評価対象になります。同じ資産でも、顧客と用途を変えると価値の見え方が変わります。

発表によると、対象空間は年間15〜20℃に保たれています。三社はこの特性を活かし、地下水を活用した冷却水の循環による水冷設備などを整備する方針です。これは温度の低さを、そのままサービスに変えるわけではありません。サーバーへ熱が集中する場所から、どの経路で熱を外へ移すかまで設計する必要があります。

遊休資産の再利用では、元の用途の不便さを、新しい顧客の利点へ転換できるかが出発点になります。

担当者の方が自社の設備や土地を見直すときも、売却価格だけで判断するのではなく、温度、立地、遮蔽性、接続性などの特性を分解することが有効です。ただし、特性とニーズが一致しても、改修費や許認可によって事業化できない場合はあります。「使えそうな資産」と「収益を生む資産」は分けて評価する必要があります。

不動産と土木だけでは、運営できる施設にならない

三井不動産と熊谷組は、2026年9月4日に対象トンネルの条件付き入札で落札者となりました。熊谷組は、このトンネルの施工にも携わった企業です。一方、ゲットワークスは2013年からデータセンター事業を手がけてきました。土地・構造物の開発と、サーバー設備を日常的に動かす業務が別の能力として組み合わされています。

この役割分担は、新しい用途への転換に必要な専門性を示しています。トンネルの安全性を判断できることと、顧客の機器を止めずに運用できることは同じではありません。通信、電源、冷却、故障対応を含む運営能力が加わって、初めて顧客が利用できる施設になります。

資産を持つ会社と、顧客の業務を止めずに運営する会社を分けて考えることが、用途転換の事業化を支えます。

また、三井不動産は本件を社員の事業提案制度から生まれた事業と説明しています。社内の着想を外部の専門能力へつなぐ経路があることも注目点です。ただし、提案制度があれば同じ事業が再現できるとは限りません。今回確認できるのは、着想、資産の使用機会、開発・運営の担当が具体化したことです。契約上の責任や利益配分まで公開されたわけではありません。

冷涼な地下空間が、採算上の優位になるかを確かめる

三社は全国のトンネルや鉱山跡地への展開を目指していますが、神戸の立地条件をそのまま他地域へ移せるとは限りません。電力や通信の引き込み、地盤と地下水の条件、保守員の移動、機器搬入のしやすさなどは、場所によって異なるためです。既存構造物を使う場合でも、整備費が小さくなるとは限りません。

今回の最大20MWは将来の目標であり、稼働済みの能力ではありません。投資額、契約顧客、実測の冷却効率、サービス料金も発表では示されていません。低い温度から電力費の削減を期待することはできますが、現時点で従来型より安いと結論づけることはできません。

全国展開の判断には、地下空間の温度だけでなく、電力・通信・改修費を含む一拠点の採算が必要です。

設備型の新規事業を進める担当者の方には、三つの確認が参考になります。新用途で評価される資産の特性は何か。運営に不足する能力を誰が補うか。実際の顧客契約と運営費で優位を説明できるか。今後は、受電計画、初期サービスの範囲、契約顧客と料金、運用後の冷却効率が具体化するかを追うと、構想から横展開へ進める事業かを判断しやすくなります。

まとめ

三井不動産らの取り組みは、使われなくなった空間を、別の産業が必要とするインフラへ転換する事例です。冷涼性という資産の特徴と、開発・運営の役割分担は具体化しています。今後の焦点は、その特徴が顧客の利用価値と拠点の採算に結び付くかです。

執筆:イノベーション総合研究所

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