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田中貴金属工業とMEP、マレーシアで貴金属リサイクル合弁へ

ニュースの要点

田中貴金属工業は2026年10月21日、マレーシアの資源回収企業MEPと、貴金属リサイクルの合弁会社を設立すると発表しました。ペナン州バトゥカワン工業団地で、2029年4月の工場操業を予定しています。出資比率は田中貴金属工業66.7%、MEP33.3%です。

MEPが前処理した回収物を受け入れ、新会社が貴金属の分析、精製、製品の製造・販売などを担います。当初は純度99.99%の金と、半導体・電子産業向けの金化合物を生産する計画です。両社は2024年8月に技術援助契約を締結し、2026年10月8日に起工式を行いました。製造工程のスクラップなどを地域内で循環させる狙いですが、投資額や処理能力、採算は公表していません。

ニュース出典:田中貴金属グループ「田中貴金属工業とMEP、マレーシアに貴金属リサイクルの合弁会社「TANAKA MEP REFINERY SDN. BHD.」を設立」(2026年10月21日)

イノベーション総研の考察

貴金属の循環には、集める仕事と使える材料に戻す仕事がある

工場で貴金属を含む端材や廃棄物が発生しても、そのまま次の製造工程へ戻せるわけではありません。回収物を集め、含有量を測り、不純物を取り除き、顧客が使える品質へ整える工程が必要です。回収量だけを増やしても、精製と販売がつながらなければ滞留します。

今回の合弁は、MEPの回収・前処理と、田中貴金属工業の精製・品質管理を地域内でつなぐ計画です。

発表は、ASEAN地域の半導体・電子部品産業から生じる回収需要を背景に挙げています。現地企業の集荷力と技術企業の加工力を分担することで、両者が同じ設備や販路を一から揃える負担を減らせると考えられます。ただし需要の存在が、十分な量の原料を安定して集められることを保証するわけではありません。

2024年の技術援助を、工場と資本を共有する関係へ進める

両社は技術援助契約から連携を始め、今回、田中側が過半を出資する合弁へ進みます。起工式も実施されています。一方、操業予定は2029年4月であり、精製工場が既に稼働しているというニュースではありません。

技術を教える関係から共同で設備を持つ関係へ移ると、品質だけでなく稼働と資金の判断も共有することになります。

どこまでをMEPが前処理し、どの状態から新会社が受け入れるかは、品質と費用の境界です。受け入れ条件、成分の測り方、規格に合わない原料への対応が曖昧なら、現地化しても調整費が増えます。出資比率は分かりますが、個別の契約条件や利益配分の詳細は未公表です。

99.99%の純度だけでは、リサイクル事業の採算は決まらない

高い純度は材料としての品質を示しますが、原料からどれだけ回収できるか、処理に何日かかるか、在庫資金がどれだけ必要かは別の問題です。少量の高品質製品をつくれることと、工場を安定して稼働させることを分けて見る必要があります。

循環型の製造事業は、製品の純度に加え、原料量、回収率、処理費、販売先を一続きで評価します。

現地で処理すれば輸送を短くできる可能性がありますが、その分の効果が設備・保守費を上回るとは限りません。貴金属価格が変わる場合の原料買い取りや在庫の負担も確認したい点です。今回、能力や利益計画は公表されていないため、「合弁設立=高採算」とは判断できません。

自社の海外合弁でも、工程の受け渡しを小さく確かめる

担当者の方が海外で生産・資源循環事業を考えるなら、現地企業の役割を「販売支援」などの大きな言葉で済ませず、回収、前処理、検査、精製、出荷へ分けます。各工程の受け入れ基準と、問題が起きた時の判断者を決めれば、契約前に不足する能力が見えます。

合弁の検討では、相手の強みの紹介より、工程を渡す時の品質と費用を実際に確認します。

設備を大きくする前に、限定した原料で品質と処理日数を測り、原料の変動にも対応できるかを試します。今回も、建設進捗に加えて、原料の確保、製品の評価、操業後の処理量が次の観測点です。技術援助から工場へ進んだ経緯は参考になりますが、同じ期間や出資比率を他社へそのまま当てはめることはできません。

まとめ

田中貴金属工業とMEPは、回収と精製の役割を結び、マレーシアで地域内の貴金属循環を目指します。操業は2029年予定です。技術の品質だけでなく、原料の安定確保と工程の受け渡し、稼働後の採算を追うことが、海外合弁を考える材料になります。

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執筆:イノベーション総合研究所

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