投稿日:2026.10.07 最終更新日:2026.10.07
シュナイダーとSQC、量子技術による電力需要予測の実証を拡大
ニュースの要点
電力管理技術を手がけるシュナイダーエレクトリックと豪Silicon Quantum Computing(SQC)は2026年10月2日、量子技術を取り入れた電力需要予測の実証を、豪州の数百世帯へ広げると発表しました。UNSW Sydneyと連携し、豪政府のCritical Technologies Challenge Programから360万豪ドルの支援を受けて第2段階へ進みます。
太陽光発電、家庭用蓄電池、電気自動車の普及で複雑になる電力の需要と供給を、より正確に予測することが目的です。SQCの「Watermelon」が作る量子由来の情報を、従来の計算による予測モデルに加えます。
両社は前段階で、12か月分の翌日需要予測データを使い、従来モデルに比べて予測精度が平均20%、最大41%改善したと報告しました。第2段階では対象世帯を増やし、シュナイダーのAI業務へ直接組み込む計画です。電気料金が同じ割合で下がったという発表ではありません。
ニュース出典: Silicon Quantum Computing/原題「SQC and Schneider Electric Use Hybrid Quantum-Classical Models to Improve Energy Forecasting」/2026-10-02/発表本文
イノベーション総研の考察
今回のニュースは、新しい計算方式の性能を調べる段階から、実際の運用に近い条件で使えるかを確かめる段階への移行です。イノベーション総研は、予測の数字と、予測を使って得る成果を分けて考えます。
家庭が電気を作り、ため、使うと予測が難しくなる
太陽光発電と蓄電池を持つ家庭では、電力会社から買うだけでなく、発電した電気を使ったり、ためたりできます。さらに電気自動車の充電が加わると、時間帯ごとに必要な電力が変わります。
両社は、この変化に対応するため、電力需要の予測を改善しようとしています。ここで量子技術を加える目的は、従来の計算機を丸ごと置き換えることではなく、従来モデルに新しい情報を足すことです。
予測技術の価値は、正確さだけでなく、その結果を使って何を変えられるかで決まります。
予測が改善すれば、蓄電池の充放電や電力の購入を決める際の材料が増えます。ただし、予測が正確でも、設備を動かせない、料金条件が合わないといった制約があれば、そのまま利益にはなりません。
平均20%の改善を、電気料金の削減へ読み替えない
前段階の成果は、12か月分のデータを使った翌日需要予測について、当事者が報告した精度改善です。平均20%と最大41%は異なる集計であり、すべての家庭で20%改善したとも限りません。
具体的な誤差指標、比較モデル、試験データの分け方は、発表本文では確認できません。独立した検証結果も示されていないため、別の技術より常に優れていると結論づけるのは早い段階です。
予測精度の改善と、利用者が支払う電力費の改善は別々に測ります。
担当者の方が実証を評価する際も、精度改善という数字が出たら、何を、どの条件で、何と比べたのかを先に確認します。そのうえで、現場の作業時間、電力費、設備の消耗など、事業として減らしたい負担へ結び付けて評価します。
第2段階では、研究モデルを日々の業務へ接続する
次の実証は、豪州の数百世帯へ対象を広げ、シュナイダーのAI業務へ直接組み込む計画です。検証する家庭が増えれば、天候、生活時間、設備などの違いを含む条件で使えるかを確かめられます。
重要なのは、単にデータを増やすことだけではありません。必要な時刻までに予測を返せるか、データが欠けたときに従来の方法へ戻せるか、更新や障害対応を誰が担うかも、運用へ移す際の論点になります。
実証を業務へ進めるには、性能に加え、時間内の処理と例外時の対応を確かめます。
シュナイダーは、日本での公式発表でもNECとの電力設備管理の連携や、病院のデータセンター設備の導入を公表している企業です。ただし、今回の量子予測は豪州の実証であり、日本での販売開始や採用実績を示すものではありません。
採用の判断は、精度向上から得る利益と追加費用の差
この技術を事業として採用するには、従来の予測を使った運用と比べて、どれだけ負担を減らせるかが必要です。量子計算の利用、通信、データ処理、監視に追加費用がかかれば、その分も含めて比較します。
家庭の太陽光と蓄電池を扱う研究でも、予測の不確実性に加え、電力取引の費用や電池の劣化を含めた運用を検討しています。これは今回の効果を裏づける研究ではなく、性能以外にも評価すべき条件があることを理解するための背景資料です。
新技術の採用は、改善で得られる利益が、追加の計算・運用費を上回るかで判断します。
次に確認したいのは、実証の評価指標、対象世帯の条件、運用にかかった費用、利用者側の成果です。第2段階への進出や資金支援を、商用利用の採算が確認された証拠に置き換えないことが大切です。
まとめ
両社は、量子技術を使った予測の評価から、数百世帯と実際の業務への接続へ進みます。読者が新技術の実証を計画する際も、性能、現場での利用、追加費用を順に確かめると、研究成果を導入判断へつなげやすくなります。
執筆:イノベーション総合研究所
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