投稿日:2026.09.04 最終更新日:2026.09.10
「CDRクレジット創出促進事業」東京都とともに実証にチャレンジする事業者が決定しました!
ニュースの要点
東京都は2026年9月3日、CDRクレジット創出促進事業の採択事業者として、サグリ、TBM、Planet Saversの3社を発表しました。
実証期間は2026年度から2028年度までで、1件当たり上限5,000万円の経費負担と事業プロモーターによる伴走支援を行います。サグリは北海道の農地で土壌炭素を増やす農法転換、TBMは木質バイオマス発電所の排ガスと未利用焼却灰を使う炭酸塩化、Planet Saversはゼオライトを用いた大気直接回収と海外地下貯留、認証、都の市場への流通可能性を検証します。実証開始は2026年8月、終了は2028年12月末の予定です。
クレジット創出量、原価、販売価格は現時点で公表されていません。この取り組みは、CDRクレジット創出の公的実証を通じて、除去技術の事業者と高品質クレジットを必要とする購入者に応えることが狙いです。
ニュース出典:東京都「「CDRクレジット創出促進事業」東京都とともに実証にチャレンジする事業者が決定しました!」(公開日:2026年9月4日)
イノベーション総研の考察
環境技術の事業化は、除去性能だけでなく認証と買い手の用途を同時に検証して初めて進む。
前回までの確認事項、今回の未検証点、次段階へ進む判断基準を分けて見ます。
CDRは除去性能だけでは取引できない
CDRは二酸化炭素を除去すれば売上になるわけではありません。どれだけ除去し、どの程度長く固定し、他の活動と重複して数えていないかを測定・報告・検証し、方法論に沿って認証する必要があります。そのうえで、買い手が価格と品質を比較できる状態になって初めて商品になります。
東京都は技術・認証・買い手を同時に検証する
東京都が今回の判断をした背景には、除去技術の事業者と高品質クレジットを必要とする購入者があります。発表内容からは、除去量の測定、検証、認証、販売、リスク負担をつなぐ市場設計によってこの課題に対応しようとしていると考えられます。
今回の3件は、自然由来、鉱物固定、工学的回収と方法が異なります。だからこそ共通KPIを除去量だけに置くと、永続性、追加性、エネルギー使用、地域への便益が見えなくなります。技術別の性能指標と、買い手が判断する商品指標を分けることが、ポートフォリオ型の支援には欠かせません。
測定・報告・検証がクレジット価値を支える
イノベーション総研は、本件の事業性を除去実績、認証、取引価格、購入者、補助終了後の採算によって判断すべきだと考えます。
東京都は経費負担だけでなく伴走支援と中間報告会を設けています。この仕組みは、技術開発、方法論、認証、販売の順で関係者が増えるCDRに適しています。早い段階で買い手候補と認証要件を入れなければ、技術成果が出た後に測定方法を作り直すことになり、時間と費用が増えるためです。
反対仮説は、公的支援中にクレジットを創出できても、支援終了後の原価で買い手がつかないことです。したがって「何トン除去できたか」だけでなく、認証後の一単位当たり原価、販売に必要な説明、供給を増やした際の制約を段階ごとに確かめる必要があります。実証の成功条件は、技術成立と事業継続を分けて持つべきです。
三つの実証を同じ制度内で進める利点は、技術を一律評価することではなく、買い手が選ぶための比較軸を整えられる点にあります。共通項目と技術固有項目を分ければ、市場形成の学習が個社内に閉じません。
買い手の用途から必要な証明水準を決める
第一に、「顧客は環境効果そのものではなく、どの意思決定を確実にするために買うのか。」です。規制対応、目標達成、調達先との関係、商品価値など用途を特定し、必要な証明水準を決めます。用途が違えば、同じ除去量でも求められる品質と価格は変わります。
第二に、「次の投資判断までに、技術性能、認証可能性、顧客需要のどれをどこまで証明するか。」です。三つを一度に完成させようとせず、期限と責任者を置きます。技術が動いても認証要件を満たさない場合や、認証できても価格が合わない場合を早く見つける設計が重要です。
第三に、「支援や特例がなくなった後、誰がいくら払い、どの規模なら自走するか。」です。補助後の原価、継続購入率、供給上限を試算し、継続・修正・停止の基準を決めます。公的実証を市場参入の準備期間として使えるかが分岐点になります。
補助終了後の原価と取引価格が市場化を決める
今後は、除去実績、認証、取引価格、購入者、補助終了後の採算が確認できるかを追う必要があります。実証計画と実測値を分け、次段階へ進む基準が満たされたかを評価します。
まとめ
東京都のCDR実証が示すのは、環境技術の事業化には、技術・認証・取引を最初から一つの設計にする必要があるということです。除去量の達成だけでなく、買い手の用途と支援終了後の採算までを検証してこそ市場になります。
執筆:イノベーション総合研究所
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