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BtoB顧客インタビューのやり方|質問例と5ステップを解説

BtoB顧客インタビューは、相手が経験した業務と導入条件を確かめ、次の事業判断へつなげるための調査です。準備・質問・記録を、インタビュー後に決めたいことから設計します。

BtoBでは、サービスを使う人、運用を支える人、予算や契約を決める人が異なることがあります。一人の感想で企業全体の導入意思を判断せず、それぞれの経験や関与を確認することが重要です。

本記事では、目的の設定、対象者選定、質問設計、当日の進行、記録と判断の5ステップを解説します。誘導しない質問例、60分の進行例、面談を追加するかどうかの考え方まで整理しました。

この記事のポイント

  • 今回の結果によって変える意思決定を先に決める
  • 利用者・運用者・決裁者を分けて対象者を選ぶ
  • 発言・行動事実・解釈・未確認事項を分けて記録する

BtoB顧客インタビューとは|意見ではなく行動と組織条件を確かめる

BtoB顧客インタビューを判断につなぐ5ステップ

01

目的と仮説を決める

何を確かめ、何を判断する対話か。判断基準を先に置く。

02

対象者を確保する

顧客・役割・業務経験が仮説に合う人へ依頼する。利用者と決裁者を分ける。

03

設問を設計する

現在の業務→課題の場面→対処→過去の検討→意思決定の順で聞く。

04

実施する

冒頭で目的と記録の許可を確認し、事実を深掘りする。60分の進行例は本文に記載。

05

判断へ接続する

事実と解釈を分けて記録し、仮説と次の行動を更新する。

構成:イノベーション総合研究所。60分は本文で扱う進行例です。

顧客インタビューでは、直近の業務で何が起き、現在はどう対処し、方法を変えるときに誰が判断するかを確かめます。図の5ステップは、必要な経験を持つ人から話を聞き、その結果で仮説を更新するための流れです。

質問の中心は「これまで実際に何をしてきたか」です。 自社案への好意的な反応も参考になりますが、過去の行動や導入条件と合わせて判断する必要があります。

営業ヒアリングや導入事例取材との違い

営業ヒアリングは、商談の見込みや提案条件を確かめる目的を持ちます。導入事例取材は、購入前後の変化や成果を紹介するために行います。本記事で扱う顧客インタビューは、まだ確かめられていない顧客課題や導入条件を学び、事業仮説を更新するためのものです。

市場調査の中で一次情報を担う

公開情報や統計は、市場の規模や構造を広く捉えるのに向いています。顧客インタビューは、特定の担当者が経験した業務や意思決定を深く確認する手段です。両者を組み合わせる方法は、新規事業の市場調査のやり方で解説しています。

ステップ1|目的と今回決めることを1つに絞る

まず、インタビュー後に何を維持し、何を変更するかを決めます。「顧客を理解する」だけでは質問の範囲が広がるため、今回判断したいことを一つに絞るのが出発点です。

目的の例:経理責任者が月次締めの遅れを優先課題として扱い、改善策の比較を始める条件を確認する。

結果で決めること:対象顧客を維持するか、課題が起きる条件を絞り直すか、次の検証へ進むか。

仮説と反証条件を一文ずつ置く

仮説には「誰が、どの状況で、何に困り、現在どう対処しているか」を含めます。あわせて考えたいのが、課題が起きない条件や、今の方法で十分に処理できている状態です。仮説に当てはまらない理由も聞くと、対象顧客の条件を絞りやすくなります。

たとえば月次締めの遅れがテーマなら、「作業量が多いから遅れる」という想定と、「作業量は多いが遅れない部署」の両方を確認します。遅れの原因が承認待ちにあると分かれば、質問相手や検証する解決策も変わるはずです。仮説を整理する枠組みは、仮説検証を判断につなげる4ステップで確認できます。

関係者から集めた質問を優先順位づけする

営業、開発、企画、経営がそれぞれ質問を追加すると、一度の面談で話題が広がりがちです。質問候補を集めた後、「この答えによって今回の判断が変わるか」で選別してください。背景を知るための質問と、判断に欠かせない質問を区別しておくと、時間が短くなっても優先順位を保てます。

ステップ2|利用者・運用者・決裁者から対象者を選ぶ

役割に応じて確認することを分ける

01

利用者

日常の業務手順、問題が起きる場面、現在の代替、負担を確認する。

02

運用者・推進者

導入準備、連携、教育、保守、社内部門との調整条件を確認する。

03

決裁者

予算の優先順位、比較材料、懸念、契約や承認の条件を確認する。

構成:イノベーション総合研究所。

利用者の困りごと、運用者の受入条件、決裁者の投資判断は、それぞれ確認する相手が異なります。図の役割を手がかりに、今回の判断に必要な経験を持つ人を選んでください。一人が複数の役割を兼ねる場合は、どの立場での回答かを記録します。

たとえば利用者が手戻りの多さを語った場合、運用者には手順を変えられる範囲を、決裁者には投資の優先順位を確認します。話を集めた後に平均するのではなく、導入に必要な条件を役割別につなぐためです。

役職名より、直近の経験と関与で選ぶ

対象者は肩書ではなく、直近の業務経験と今回の論点への関与で選びます。 部長でも対象業務の予算を持たないことがあり、担当者が導入比較や運用設計を担うこともあります。

  • 対象業務を最後に行った時期
  • 現在の対応方法と利用頻度
  • 過去の導入・変更・見送りへの関与
  • 利用、運用、予算、契約のどこを担うか

条件に合わなかった候補も削除せず、「対象業務の経験なし」「決裁関与なし」「対象時期外」などの非該当理由を残します。次回の募集条件を修正する材料になります。

対象者を探す経路を一つに偏らせない

候補者は、既存顧客、営業・カスタマーサクセスからの紹介、展示会やセミナーの接点、知人紹介、エキスパートマッチングなどから探せます。いずれの経路でも、紹介元の評価をそのまま対象条件にせず、ご本人の業務経験と役割を確認します。

既存顧客には製品や取引関係への配慮が働く場合があり、接点のない候補には想定した利用条件とずれがあるかもしれません。募集経路を増やすこと自体を目的にせず、必要な経験や役割が抜けていないかを確認することが大切です。

依頼時には、調査目的、テーマ、予定時間、記録方法、利用範囲を伝えます。BtoBでは役割や発言から企業が推測されやすいため、録音や社内共有の範囲も事前に説明してください。

ステップ3|行動事実を聞く質問例を順番に並べる

質問は、現在の業務から直近の出来事へ進み、その後に代替手段、影響、過去の判断を確認します。自社案への反応を聞く場合は最後に分けます。

BtoB顧客インタビューの質問例
確認すること 質問例 深掘りする点
役割と業務 対象業務では、どの部分を担当していますか 利用・運用・予算・契約への関与
直近の出来事 最後にその作業を行った日の流れを、最初から教えてください 誰が、いつ、何を行い、どこで止まったか
課題が起きる状況 問題になったのは、どのような条件が重なったときですか 繁忙期、案件種別、部門、例外条件
現在の代替 現在は誰が、何を使って対処していますか 人手、表計算、既存製品、外注、未対応
頻度と影響 直近では何が遅れ、誰にどのような影響がありましたか 覚えている事実と推定を分ける
過去の検討 似た方法を比較・導入したとき、誰が何を見て決めましたか きっかけ、候補、見送り理由、承認条件
反証・非該当 同じ業務でも、問題にならなかった場面はありますか 課題が起きない条件、対象外となる企業

この順番を質問票の骨格にし、相手が挙げた一つの出来事を詳しく聞きます。すべての質問を均等に消化するより、「どこで止まったか」「その後どうしたか」を確認してから次へ進むと、判断に必要な経緯が残ります。

誘導・仮定・賛同収集を行動へ戻す

  • 避けたい:「この作業は非効率ですよね」
    聞き換え:「直近の作業を順番に教えてください」
  • 避けたい:「この機能があれば使いますか」
    聞き換え:「過去に方法を変えたとき、何がきっかけでしたか」
  • 避けたい:「この案は便利だと思いますか」
    聞き換え:「現在の方法を選び続けている理由は何ですか」
  • 避けたい:「いくらなら払えますか」
    聞き換え:「現在の対処には、どのような支出や工数がありますか」

「大変です」「非効率です」という評価が出たら、最後に起きた出来事へ戻って聞きます。たとえば「確認に時間がかかった」という回答には、「誰への確認が必要で、その間どの作業が止まっていたか」という聞き返しが考えられます。数量を覚えていない場合は補わず、未確認として残してください。

自社案を見せる場合は、質問の最後に分ける

自社案を見せる前に、現在の業務と過去の行動を確認します。 提示した案が回答の前提になりやすいため、反応を聞く時間は最後に分けて設けると、業務の事実と案への評価を区別しやすくなります。

その際も「良いと思うか」だけを聞かず、現在の方法と比べて何が変わるか、社内で次に誰へ相談するか、試すために何が必要かを確認します。発言を導入確約として扱わないことが重要です。

ステップ4|60分のインタビューを中立に進める

60分を確保できる場合は、直近の出来事を聞く時間を中心に、次のように配分できます。これは進行例ですので、相手の役割や今回の目的に合わせて調整してください。

  1. 0〜5分:目的、商談との違い、予定時間、記録方法を説明する
  2. 5〜15分:担当業務、役割、普段の流れを確認する
  3. 15〜35分:直近の出来事、課題、現在の代替を掘り下げる
  4. 35〜50分:影響、過去の比較、導入・承認の経緯を確認する
  5. 50〜55分:必要な場合だけ自社案への反応を分けて聞く
  6. 55〜60分:事実、未確認事項、次の連絡方法を確認する

時間が短くなった場合は、自社案への反応など優先度の低い話題を省き、目的に直結する出来事を深掘りします。最後に「ここまでの理解で違う点はありますか」と確かめ、聞けなかった内容と次の連絡方法を残して終えましょう。

冒頭で同意と役割を確認する

冒頭では、答えにくい質問には回答しなくてよいことを伝え、企業秘密を求めない姿勢を明確にします。録音する場合は、目的・保管・共有範囲を説明したうえで許可を得てください。相手が録音を望まなければ、メモで残してよい範囲を確認します。

営業担当者が同席する場合は、回答を補う、反論する、提案へ誘導するといった行動を避けます。商談へ移る場合は、インタビューが終了したことを明示してから切り替えます。

質問者と記録者の役割を分ける

可能であれば質問者と記録者を分け、質問者が相手の話に集中できるようにします。記録者が残すのは、発言に加えて質問文、出来事の時期、回答者の役割です。一人で実施する場合は、終了直後に記録を見直し、聞けたことと自分の推測を分けてください。

沈黙を急いで埋める必要はありません。相手が出来事を思い出している間に、別の質問や自社の仮説を重ねると、回答の方向を狭めることがあります。

NEXT STEP

次のステップ

インタビュー結果を、次の検証計画へつなげる。

対象者、質問、役割別の証拠を整理し、追加確認と実装の優先順位を定めます。

ステップ5|発言を役割別に記録し、次の判断へつなぐ

面談後は、発言・行動事実・解釈を分け、毎回同じ項目で記録します。詳しい議事録を作ること以上に、どの仮説が支持され、何が未確認かを見分けられる形にすることが重要です。

BtoB顧客インタビューの記録項目
記録項目 残す内容 混ぜないもの
出所 面談日、質問者、記録方法 別の商談や過去資料の情報
対象条件 業務経験、役割、課題が起きる状況 役職名だけの分類
逐語発言 相手が述べた言葉と前後の質問 質問者による要約
過去の行動 直近に行ったこと、比較、見送り 将来の意向
現在の代替 人、手順、製品、外注、未対応 自社案で解決できるという推測
影響 頻度、遅れ、支出、関係者への影響 確認できていない概算
導入条件 関係者、比較材料、予算、契約、運用 利用者による決裁者の推測
反証・未確認 問題が起きない条件、確認できなかった点 仮説に合わない回答の削除
解釈と次の判断 支持・修正の理由、追加確認、判断者、期限 観察した事実そのもの

記録の空欄は、次に聞く相手や質問を絞るための手がかりです。判断に必要な欄から確認し、誰に何を追加で聞けば埋まるかを次の行動に変えます。発言を比較するときも、同じ項目と同じ役割で並べると違いの理由を追いやすくなります。

事実と解釈を別の列にする

「先月、別の方法を比較した」は行動事実です。「導入意欲が高い」は解釈です。比較を始めた人が利用者か決裁者か、比較後に何が起きたかによって意味は変わります。

重要な発言は、前後の質問と一緒に残してください。相手の言葉を短くまとめた場合は「要約」、担当者の判断は「解釈」と表示すれば、原発言との混同を防げます。解釈が分かれたときは、結論を急ぐ前に、どの追加事実があれば違いを解消できるかを確認します。

会社単位で一つの結論にまとめない

同じ会社でも、役割によって見えている事実は異なります。 回答が食い違ったときは、どちらかを正しいと決める前に、参照している業務や記録の範囲を確かめてください。

複数社の結果も、同じ役割と質問項目で横に並べます。対象企業の規模や業務条件が異なる場合は、その違いを残したまま比較し、回答数だけで優先課題を決めないようにしてください。

たとえば月次締めの遅れを調べ、利用者からは承認待ち、運用者からは確認手順の制約が挙がったとします。この場合の確認事項は、入力を速くできるかよりも、承認の流れを変えられるかです。誰が確認し、いつ判断するかまで記録すれば、面談結果が次の検証計画になります。

BtoB顧客インタビューは何社・何回で終えるか

対話回数別:黒字化・投資回収の目処が立った回答割合

10回以下(n=609)8.5%
11回以上(n=235)18.3%
31回以上(11回以上に含む)(n=99)27.3%
出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月)。顧客対話回数別に集計。31回以上は11回以上の内数。

調査では顧客対話回数の区分によって回答割合に差が見られますが、これはBtoBインタビューの推奨回数や、回数を増やす効果を示すものではありません。実務では、企業数や回数だけで区切らず、次の判断に必要な役割と情報がそろったかで追加面談を決めます。

次の判断に必要な証拠がそろった時点で区切る

  • 必要な利用者・運用者・決裁者を確認した、または未確認の役割を明示した
  • 過去の行動、現在の代替、影響、導入条件を確認した
  • 仮説に合わない回答と、課題が起きない条件を残した
  • 維持・修正・中止・追加確認のどれを、誰がいつ決めるか定めた

同じ質問でも、利用者の作業負担を知りたいのか、社内導入の可否を決めたいのかで必要な相手は変わります。今回の判断に必要な事実がそろい、残る課題と扱いが決まれば、その問いのインタビューは一区切りです。

追加面談は、空欄から相手と質問を指定する

追加面談を決めるときは、「利用者の代替手段は確認済みだが、運用部門の受入条件が未確認」のように不足を具体的に書きます。この場合、次の相手は同じ利用者ではなく、運用を担当する人です。確認したい条件と、回答によって変える判断をセットで依頼してください。

BtoB顧客インタビューに関するよくある質問

実施前には、営業との違いや対象者の選び方に加え、同席・謝礼の扱いも決めておきたいところです。よくある疑問を、面談の準備に使える形でまとめます。

Q. 顧客インタビューと営業ヒアリングは何が違いますか

A. 顧客インタビューは仮説を更新するための学習、営業ヒアリングは商談判断や提案に必要な確認です。同じ面談で行う場合も、インタビューの終了を明示してから営業や提案へ切り替えます。

Q. 既存顧客と見込み客のどちらに聞くべきですか

A. 仮説によって使い分けます。既存顧客は実際の利用や運用、見込み客は現在の代替や見送り理由を確認しやすいため、今回必要な経験と役割で選びます。

Q. 営業担当者が顧客インタビューへ同席してもよいですか

A. 同席できますが、回答の補完、反論、商談への誘導をしない役割を事前に決めます。営業担当者が知っている情報も、本人の回答と混ぜず別の出所として扱います。

Q. BtoB顧客インタビューに謝礼は必要ですか

A. 謝礼を用意するかは、依頼内容や相手との関係、双方の社内規程を確認して決めます。有無と扱いは依頼時に伝え、相手が受け取れることも確認してください。

Q. 否定的な回答が多いインタビューは失敗ですか

A. 失敗とは限りません。対象者と質問方法が適切なら、否定的な回答は顧客層や課題仮説を変更・停止するための証拠です。対象条件や誘導質問に問題がなかったかも同時に確認します。

本記事のまとめ|BtoB顧客インタビュー、回数より役割と証拠で終える

BtoB顧客インタビューは、今回決めたいことから準備を始め、業務経験と役割に合う人へ聞くことで判断につながります。目的・対象者・質問・実施・記録の5ステップを、一つの検証計画としてつなぐことが大切です。

まずは次の面談に向けて、確認したい仮説、必要な相手、結果によって変える判断を一枚にまとめてください。質問票と記録欄をその内容に合わせれば、面談後に何を確かめ直すべきかまで追いやすくなります。

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BtoB顧客インタビューの設計を、事業判断へつながる役割と証拠から見直します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

出典・参考

イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月)。

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