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新規事業の市場調査のやり方|調べて終わらない4ステップと具体例

新規事業の市場調査は、今回決めることを明確にし、公開情報で市場の範囲をつかみ、顧客の行動を確かめ、結果を次の判断につなぐ4ステップで進めます。手法を選ぶ前に、誰の何を確かめる調査かを定めることが出発点です。

「資料は集まったが、進めるか決められない」「顧客には好評なのに、購入の見通しが立たない」。こうした場面では、調査項目を増やす前に、その答えで何を決めるかをそろえてください。市場全体の傾向と、特定の顧客が選ぶ条件は、別に確かめる必要があります。

本記事では、888名の独自調査と、工場向けサービスの架空例を使い、公開情報の探し方、顧客への質問、結果のまとめ方を説明します。調査設計と報告の記入例も紹介。初めて調査する方でも、次に会う相手と確認事項を決められる内容です。

この記事のポイント

  • 4ステップで、調査の目的から結果を使う判断までつなげる
  • 公開情報・面談・観察・アンケートを、確かめたい問いで使い分ける
  • 顧客の好意的な感想と、購入・導入の条件を分けて記録する
  • 設計書と報告書の記入例から、次に確かめる相手と条件を決める

目次

市場調査で確かめるのは、市場の大きさと顧客が選ぶ条件

新規事業の市場調査では、「事業を広げられる余地があるか」と「最初の顧客が選ぶ理由は何か」を分けて確かめます。市場が伸びていても、目の前の顧客が今の方法を変えたいとは限りません。

市場規模の資料だけでは、購入する理由は分からない

公開情報は、業界の動き、顧客候補の数、競合サービス、制度の変化をつかむために役立ちます。一方、特定の顧客がどんな場面で困り、誰の予算で、何を条件に購入するかは、本人への確認が必要です。

米国中小企業庁(SBA)の市場調査の解説も、既存の情報源を使う調査と、顧客へ直接聞く調査を区別しています。前者で広い傾向をつかみ、後者で自社が対象とする顧客への理解を深めるという役割分担です。

たとえば「工場のデジタル化が進む」という情報からは、点検記録を整理するサービスの候補市場を考えられます。しかし、それだけで「月額料金を払う工場がある」とは言えません。記録探しに困っているのか、別の方法で十分なのか、導入後の作業が増えないかを確かめて初めて、提案する相手と内容を絞れます。

独自調査から考えるのは、回数よりも確認相手の抜け

イノベーション総研が、大企業の新規事業に関わる888名へ行った調査では、直近のプロジェクトでチームが顧客・顧客候補と直接対話した回数に、次の分布が見られました。まずは、自社の企画がどの程度、顧客への直接確認を経ているかを振り返る材料になります。

直近の新規事業で、顧客・顧客候補と直接対話した回数

0〜3回45.8%(407名)
4〜10回22.7%(202名)
11回以上26.5%(235名)
覚えていない・忘れた5.0%(44名)
出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)。チームによる直接対話の回数。比較軸は0〜50%。

イノベーション総研では、この結果を「面談を何回すればよいか」という基準にはしません。対話の内容までは回数から分からないため、次に会う相手と、その人に確かめる条件を一組で決めることを重視します。

特に、公開情報で企画を作った直後や、同じ現場担当者にだけ話を聞いている段階では、この見直しが有効です。利用する人の困りごとは聞けていても、予算を持つ人や運用を担う人の条件が残っていれば、次の面談はその相手に充てます。すでに購入・利用・運用の事実がある案件では、面談回数を増やすより、実際の利用や提供費用の記録を深める方が判断に役立つ場合もあります。

以下では、工場向けに「点検記録を整理し、必要な情報を探しやすくするサービス」を検討する架空例で説明します。実在の支援事例ではなく、調査前の仮説から結果の使い方までをつなぐための記入例です。

ステップ1|調査で決めることを、相手・選択肢・期限まで書く

最初に書くのは、調査項目の一覧ではなく「今回、何を決めるか」です。対象市場を選ぶ調査と、試作品を作るか判断する調査では、必要な相手・情報・費用が変わります。

「ニーズを知る」を、具体的な選択に言い換える

「工場のニーズを調べる」だけでは、担当者ごとに調べる範囲が広がります。たとえば「事業責任者が月末までに、紙の記録が中心の工場向けに、小規模な試行を始めるか決める」と書けば、今回の判断が明確になります。

ここで決めたいのは、全国へサービスを販売することではありません。記録探しの負担を確認できた顧客に対し、限定した範囲で試す価値があるかです。今回の判断を小さくすると、そのために必要な証拠も絞りやすくなります。

調査を始める前に、判断する人と次の内容をすり合わせてください。

  • 今回決める選択肢:試行へ進む、対象や提供内容を変える、今回は進めない
  • 対象の条件:業種、地域、工場の規模、現在の記録方法、確認する担当者
  • 判断する期限:結果を報告する日と、その場で決める人
  • 今回扱わないこと:全国展開の売上予測や、本格開発の仕様など

対象領域自体がまだ決まっていない場合は、顧客調査を細かく設計する前に、新規事業戦略で参入する領域を絞る考え方から整理します。何の判断を引き受ける調査なのかを、関係者でそろえておくためです。

仮説には「違っていたら何を変えるか」も添える

仮説とは、まだ確かめていない見立てです。「点検記録を探す手間が大きいはず」と置くなら、直近の作業、現在の対処法、その負担が起きる頻度を確認対象にします。賛同する意見だけでなく、見立てが違っていた場合の扱いも決めます。

次の表では、一つのサービス案を、別々に確認できる問いへ分けました。「便利そう」という反応だけで、すべての前提が確認できたことにしないための設計です。

試行の前に確認する前提と、想定が外れた場合の扱い(架空例)
まだ確かめていない前提 確認する相手・事実 想定が外れたら
記録探しに負担がある 利用者へ、最近探した記録と、そのときの手順・時間を聞く 負担がないなら別の業務を確認するか、対象から外す
今の方法を変える理由がある 利用者・運用者へ、現在の対処法と変更しない理由を聞く 今の方法で十分なら、機能追加より対象の見直しを考える
試行を検討できる条件がある 予算を持つ人と承認する人へ、検討時期と必要な条件を聞く 条件が整う時期まで保留するか、別の対象で確かめる

どの欄も肯定的な情報で埋める必要はありません。記録探しには困っていないと分かれば、別の課題を探すか、その顧客を対象から外す判断につながります。調査の成果は、当初案を支持する情報だけでなく、変えるべき前提が見つかることです。

件数だけでなく、調査を区切る条件を決める

日程を管理するための面談件数と、判断に使える情報がそろった状態は別です。予定した面談を終えても、予算を持つ人に会えていなければ、購入条件は未確認のまま残ります。

この架空例なら、「対象工場での直近の困りごとを説明できる」「今の対処法を変える理由を確認できる」「試行に必要な担当者・情報・承認条件を整理できる」を、最初の調査を区切る条件にします。満たさないときは自動で延長せず、足りない相手への面談を追加するか、対象を変えるかを判断します。

予算上限や期限も同時に置いてください。調査を続ける価値があるのは、その追加情報によって選択が変わる可能性がある場合です。判断に影響しない周辺情報は、必要になった時点で調べれば足ります。

ステップ2|公開情報で対象市場と競合を絞る

グラフや数値を一覧表示したノートパソコンの画面
数値を見るときは、対象・期間・単位も一緒に確認します。画面内の数値は本記事の調査結果ではありません。

次は、すでに公開されている統計や企業資料を調べます。これは「二次調査」、またはデスクリサーチと呼ばれます。市場全体の情報を集めたら、自社が対象とする顧客の範囲へ絞り、直接聞かなければ分からない問いを残します。

知りたいことに合わせて、統計・企業資料・業界情報を選ぶ

対象企業の数を知りたいなら統計、競合の提供範囲を知りたいなら公式サービス資料というように、問いから情報源を選びます。検索結果の上位ページを順番に読むだけでは、必要な情報より、見つけやすい情報に偏りがちです。

政府統計の総合窓口e-Statの統計検索では、キーワードに加え、分野や作成機関などから統計を探せます。工場向けの事業なら、対象業種や事業所の条件に合う統計を探し、会社数と工場数、国内と海外など、数えている対象を確認します。

情報を探す場所と、そこから分かる範囲を先に分けておくと、資料の使い過ぎを防げます。

公開情報の主な使い道と、そこからは判断できないこと
情報源 確認しやすいこと 別に確認すること
官公庁統計・e-Stat 業種別の企業・事業所の数、地域や規模の分布 特定の業務の困りごと、自社サービスの購入意向
業界団体・公的機関の資料 業界の動向、取引慣行、技術や制度の論点 調査対象外の企業にも同じ条件が当てはまるか
競合企業の公式資料・開示資料 対象顧客、機能、公表価格、提供範囲、事業方針 顧客が選んだ理由、運用負担、個別の契約条件
民間の市場レポート 市場の推計や予測、分類、成長要因 自社の対象範囲との一致、予測を支える前提
社内の営業・問い合わせ記録 自社と接点がある顧客の相談や見送り理由 接点のない顧客にも同じ傾向があるか

出典のURL、対象年、単位、集計範囲は、数値と同じ場所へ記録します。別資料と違う数字が出ても、好都合な方を選ばず、対象が一致しているかを確認してください。

広い市場の数字を、そのまま自社の売上にしない

「工場のデジタル化市場」には、設備、通信、制御、記録管理など、異なる用途が含まれる可能性があります。その総額に希望するシェアを掛けても、点検記録サービスの売上を裏づけたことにはなりません。

先に、対象地域、業種、業務、現在の対処法をそろえます。この例なら「国内の工場」から、「対象業種の工場」「紙の記録を使う工場」「記録検索に負担があり、自社が接点を持てる工場」へと範囲を具体化します。

公開情報だけでは、紙の記録を使う割合まで分からないこともあります。その場合は推測を確定値にせず、顧客調査で確かめる前提として残します。少数の面談先で見られた割合を、そのまま全国の工場へ掛けないことも大切です。

複数資料の市場規模が食い違うときは、商品範囲、地域、売上か出荷額か、実績か予測かを照合します。同じ範囲にそろえられなければ、前提ごとの数字として扱います。市場の細かな推計に進む前に、候補顧客と利用場面を明確にしておきましょう。

競合には「Excelで済ませる」「今のまま続ける」も含める

顧客が比較する相手は、同種のサービスだけではありません。自社で記録を整理する、既存ソフトを使う、担当者の経験で対応する、当面は何も変えないといった方法も比較対象になります。

点検記録サービスなら、似たクラウドサービスの機能だけでなく、現在のExcel管理にかかる作業、紙の記録を探す手間、今の方法を続ける理由を調べます。「競合より機能が多い」より、「顧客が今の方法から変える理由があるか」の方が、初期の判断に直結する場合があります。

競合の公式資料で確認できる価格や機能と、顧客が実際に評価する使い勝手は分けて記録してください。資料に書かれていないことを「機能がない」と断定せず、導入条件や運用面は問い合わせ・実利用などで追加確認します。ここで残った疑問が、次の顧客調査の質問になります。

いま、市場調査のどこで迷っていますか

近い項目を開くと、確認する問いと本文の説明へ進めます。

01 調査項目ばかり増える

答えが出た後に決める選択肢を先にそろえます。

  • 誰が判断するか
  • 何を選ぶか
  • 今回扱わないことは何か

調査目的の書き方を見る →

02 どの数字を使うか迷う

数字が対象とする範囲を比べます。

  • 企業数と事業所数を区別したか
  • 対象年と地域は同じか
  • 実績と予測を分けたか

市場の範囲の絞り方を見る →

03 誰に話を聞けばよいか分からない

利用と購入に関わる役割の抜けを探します。

  • 課題を経験した人か
  • 予算を持つ人に届いているか
  • 運用する人の条件は分かるか

確認相手の選び方を見る →

04 好評なのに、買うかどうか分からない

提案への感想と、具体的な行動を分けます。

  • 直近の出来事を聞いたか
  • 今の対処法は分かるか
  • 購入や導入の条件を確認したか

質問の直し方を見る →

05 賛成と反対の回答が割れる

立場や利用場面の違いを確認します。

  • 同じ提案への回答か
  • 何の負担を評価しているか
  • 反応が変わる条件は何か

矛盾する回答の整理方法を見る →

06 追加調査を終えられない

今回の判断を変える疑問を優先します。

  • 追加情報で何を決めるか
  • 時間と費用の上限はあるか
  • 保留・停止の条件は何か

次の検証へ渡す方法を見る →

NEXT STEP

次のステップ

調査から、顧客に試せる企画へ進めたい方へ

イノベーション総研の新規事業立ち上げ支援では、顧客の課題の確認から、検証の設計・実行までを支援します。次に確かめる相手や試行の範囲を、一緒に整理できます。

ステップ3|顧客の行動・負担・購入条件を確かめる

自分たちで対象者に聞き、現場を観察し、反応を測って情報を得るのが「一次調査」です。公開情報から置いた仮説を確かめますが、提案への賛否を集めるだけでは、困りごとの実態や購入条件は分かりません。

困り方は面談・観察で、広がりはアンケートで確かめる

課題がまだ曖昧な段階では、個別の面談や現場の観察が役立ちます。「いつ困るか」「そのとき何をするか」「今の方法を続ける理由は何か」を、具体的な出来事に沿って確認できるためです。

課題と対象者の条件が絞れた後は、アンケートでその経験や行動の分布を確かめます。質問の意味が相手によって違う状態で大人数へ配っても、何を測った数字なのかが曖昧になります。先に少数の対象者で、質問が意図どおりに伝わるかを確かめてください。

たとえば「記録管理に困っていますか」では、入力、保管、検索、更新のどれを指すか分かりません。「直近1か月に、必要な点検記録が見つからず、ほかの担当者へ確認したことがあるか」のように、対象期間と行動を具体化します。ただし、適切な期間は業務の頻度で変わります。年に一度の点検なら、直近1か月という聞き方は合いません。

提案した解決策が使われるかを知りたい段階では、試作品や人手による小規模な提供で確かめます。面談で分かる困り方、アンケートで見る広がり、試行で見る利用行動を、同じ「ニーズあり」という言葉へまとめないようにします。

話しやすい人だけでなく、使う人・払う人・運用する人に聞く

調査対象者は、肩書だけでなく、その課題を経験したか、利用や購入にどう関わるかで選びます。営業担当者が紹介してくれた人に話を聞けても、その人がサービスの利用者や予算の責任者とは限りません。

法人向けの点検記録サービスでは、次の役割を確認します。同じ人が複数の役割を持つ場合も、どの立場で答えたかを分けて記録します。

  • 利用する人:必要な記録を探す場面と、現在の困りごとを確認する
  • 運用する人:記録の登録・更新・管理に増える作業を確認する
  • 予算を持つ人:今の支出、優先する課題、予算を検討する時期を確認する
  • 導入を承認する人:必要な審査、合意、導入を見送る条件を確認する

既存顧客への面談は着手しやすい方法ですが、それだけでは未利用者が選ばない理由を捉えにくくなります。現在の方法で満足している相手、過去に導入を見送った相手も候補にし、肯定的な反応だけに偏っていないかを確かめます。

一方、初期からあらゆる属性を同数そろえる必要はありません。今回の判断を変え得る違いから優先します。「紙の記録と既存ソフトでは困り方が違うのか」「利用者と運用者で負担の見方が違うのか」と、比べたい条件を先に置いてください。

「欲しいですか」の前に、最近起きたことを聞く

最初からサービスを詳しく説明すると、相手の回答が提案への感想に寄りやすくなります。まずは最近の出来事を聞き、その後に提案を見せる順番に分けます。

点検記録の例なら、次のように聞き方を変えられます。

  • 「記録を探すのは大変ですか」ではなく、「最後に記録を探したのはいつで、どのように見つけましたか」
  • 「この機能があると便利ですか」ではなく、「今の方法では、どの作業が残っていますか」
  • 「月額料金を払えますか」だけでなく、「今はその仕事に、どの予算や人の時間を使っていますか」
  • 「導入できますか」だけでなく、「導入を検討する場合、誰が何を確認しますか」

回答に具体的な時間や金額が出たときは、概算の記憶なのか、記録で確認した数字なのかを分けます。資料や画面を見せてもらう場合は、目的と扱いを説明し、相手の了承を得ます。録音も事前に同意を確認し、報告に不要な氏名や機密情報は共有しません。

提案を見せた後の「使ってみたい」は、次の試行へ進む手掛かりになります。ただし、購入の事実ではありません。好意的な感想と、予算・承認・実利用の確認は分けて記録します。

発言・観察・解釈を分けて残す

面談後の要約を「ニーズが強い」の一言にすると、判断者は根拠を確かめられません。相手の発言、実際に観察したこと、チームの解釈を別々に残します。

たとえば、「記録を探すのに時間がかかると言った」は発言です。「複数の保管先を開き直していた」は観察した行動です。そこから「検索する手順に負担があるのではないか」と考えた部分は解釈になります。面談で聞いただけの作業時間を、自分たちが測定した実測値として書かないでください。

記録には、対象者の役割、対象業務、確認日、根拠資料、まだ分からないことも添えます。次の担当者が読んでも、「何を見て、そう考えたのか」をたどれる状態が目標です。

ステップ4|調査結果から「進める・変える・保留」を選ぶ

調査結果は、集めた資料の順に報告するのではなく、最初に決めた問いへの回答としてまとめます。結論を先に示し、それを支える事実と、判断を変え得る未確認事項を続けます。

報告書は、推奨する行動と残る条件を一緒に示す

点検記録サービスの調査で、記録探しの負担は見えたものの、更新作業と予算が確認できていないとします。この場合は、「需要があるので本開発する」ではなく、「対象を限定した試行で、更新負担と購入条件を確かめる」と提案できます。

次の記入例は、事実から次の行動までを一枚で読めるようにしたものです。表中の内容はすべて架空例であり、実際の調査結果や支援実績ではありません。

点検記録サービスの調査結果を、次の判断へつなぐ記入例(架空例)
報告する項目 記入例 判断への使い方
今回の結論 本開発ではなく、対象工場を限定した試行を提案する 何を承認してほしいかを先に示す
確認できた事実 面談した利用者は、最近の記録検索で複数の保管先を確認したと説明した 負担が起きた具体的な場面として残す
現時点の解釈 保管先をまとめれば、検索の手間を減らせる可能性がある 効果が実証された事実とは区別する
未確認事項 登録・更新にかかる作業、予算の検討条件、試行に必要な承認 全体の需要や購入を確認できたことにしない
次に確かめること 運用担当者と小さく登録・検索を試し、予算責任者へ検討条件を聞く 確かめる相手と行動を特定する
今回決めること 試行範囲、担当者、費用と時間の上限、結果を判断する日 調査から限定した実行へ移る条件をそろえる

判断者に渡すのは、結論の断定ではなく、根拠をたどれる提案です。「何が分かったか」と「何を承認してほしいか」を分けると、追加調査の承認なのか、本格開発の承認なのかが明確になります。

意見が割れたら、立場と条件の違いを確かめる

現場が導入を望み、運用担当者が反対している場合、賛成と反対の人数を平均しても解決しません。現場は検索の手間が減る点を評価し、運用担当者は入力作業が増える点を心配している可能性があります。

まず、何について評価したかをそろえます。対象業務、使用場面、現在の方法、相手の役割、提示した料金や機能が同じかを確認してください。違う前提への回答を一つにまとめず、どの条件で反応が変わるかを残します。

この例なら「検索を楽にする価値はあるが、記録を登録する負担が大きい」という仮説に更新できます。次に試すのは機能の追加ではなく、既存記録をそのまま使える提供方法かもしれません。矛盾する回答は、顧客や提供範囲を絞る手掛かりになります。

残った疑問は、担当者・上限・判断日を付けて次の検証へ渡す

追加調査をする場合は、誰の、何を、どの方法で確かめるかを決めます。「もう少し顧客に聞く」ではなく、「予算を持つ人へ、試行結果を示して検討条件を確認する」と具体化してください。

顧客の協力、データの提供、社内の承認に時間がかかるなら、その待ち時間も予定に入れます。担当者、費用・作業時間の上限、結果を判断する日を一緒に決め、上限に達したら自動延長しません。

重要な前提が否定され、対象や提供方法を変えても成立しそうにない場合は、今回の案を止める選択もあります。保留するなら、再検討する条件を残します。「必要な記録がそろったら再開する」「予算を検討する時期に合わせて確認する」と書けば、期限のない継続を避けられます。

顧客が求める価値と提供費用をつなぐ段階では、新規事業のビジネスモデルと採算の考え方へ進みます。調査を全体工程のどこに置くかは、新規事業の立ち上げプロセスで確認できます。

市場調査の費用と期間は、確かめる問いから組み立てる

市場調査の費用や期間は、一律の相場だけでは決められません。対象者に会いやすいか、現場を見る必要があるか、専門知識が必要か、どこまで判断するかで作業が変わります。

最初は、公開情報と会える相手で小さく着手する

最初から大規模なアンケートや高額な市場レポートを発注する前に、公開資料と社内の営業・問い合わせ記録を確認します。そのうえで、直近の経験を話せる顧客候補に会い、解きたい課題の捉え方を修正します。

これは調査費用を常に削るという意味ではありません。対象が明確で、地域別や属性別の割合が事業判断を左右する場合には、条件をそろえた定量調査に費用を掛ける価値があります。反対に、誰の何を解くかが曖昧な状態では、調査人数だけ増やしても質問のずれは残ります。

日程は「調べる日」だけでなく、対象者の手配、質問の事前確認、面談、記録の整理、結果を判断する会議まで含めて組みます。途中に一度見直す機会を置き、想定と違う課題が見えたら、残りの質問や対象者を調整します。

外注しても、調査目的と最後の判断は自社で持つ

専門的な対象者を集めにくい、質問設計や集計に知見がない、社内では話しづらい意見を聞きたいときは、外部の調査会社や支援者を使う選択があります。自社に足りない工程を特定して依頼すると、役割を分けやすくなります。

見積もりでは、対象者の条件、募集の方法、実施範囲、記録の受け取り方、分析の粒度、追加対応の扱いをそろえて比べます。単純に「面談1件あたりの料金」だけを比較すると、対象者を確保する難しさや、報告に含まれる作業を見落とします。

調査を任せても、自社の判断を代わりに確定してもらうわけではありません。依頼前に、何を決めるための調査かを共有し、途中で出た反証や未確認事項も報告してもらいます。きれいな報告書だけでなく、結論の根拠をたどれる記録が残るかを確認してください。

調査結果はあるのに意思決定が進まない場合は、情報不足以外に、判断者との基準のずれや実行体制の問題も考えられます。イノベーション総研の新規事業リスク診断(Compass)では、顧客・収益・体制などの観点から、次に見直す課題を整理します。

新規事業の市場調査でよくある質問

調査の開始時に迷いやすい点を補足します。費用や件数を先に固定するのではなく、今回確かめることと、結果を使う範囲に合わせて考えてください。

Q. 市場調査は何人に聞けば十分ですか

A. 共通の人数だけでは決まりません。課題を探る面談では、今回の判断を左右する顧客条件や役割に抜けがないかを確認します。割合を推定するアンケートでは、対象集団、抽出方法、必要な精度、比較したい属性ごとの回答数を設計します。少数の面談結果を市場全体の割合として扱わないでください。

Q. まだ商品がなくても、市場調査を始められますか

A. 始められます。商品案への評価より先に、顧客が最近困った場面、今の対処法、変更する必要性を聞きます。解きたい課題が見えてから、紙の見本や人手による提供などで解決策を確かめます。商品がない段階で、購入が確認できたと判断しないことが大切です。

Q. アンケートとインタビューは、どちらを先に行いますか

A. 課題や質問の意味が曖昧なら、面談や観察で具体化してからアンケートを設計します。すでに対象と質問が明確な場合は、アンケートから始めることもあります。決まった順番ではなく、困り方を知りたいのか、その広がりを確かめたいのかで選びます。

Q. 生成AIだけで市場調査を済ませてもよいですか

A. 生成AIは、論点の洗い出しや質問案づくりの補助に使えます。ただし、出典や数字は原資料で確認し、AIが作った顧客像を実在する顧客の回答として扱わないでください。本人の行動、予算、導入条件など重要な前提は、顧客への確認や試行で確かめます。

Q. 市場規模が分からない新しいサービスは、どう調べますか

A. サービス名と一致する市場統計がない場合は、対象顧客、業務、地域、現在の代替手段から範囲を定義します。公開統計で分かる部分と、顧客調査で確かめる前提を分けてください。根拠のない利用率を掛けて確定値にせず、前提ごとの幅と、次に確かめる条件を残します。

まとめ|新規事業の市場調査は、次の判断まで設計する

新規事業の市場調査は、目的を決め、公開情報で対象市場を絞り、顧客の行動と条件を確かめ、結果を次の判断へつなぐ4ステップで進めます。途中で想定と違う事実が出たら、前のステップに戻り、対象や問いを更新します。

資料の量、面談の回数、好意的な回答の多さだけで、事業を進められるとは限りません。確認できた事実とチームの解釈を分け、残った疑問がどの選択を変えるかまで示すことが、調査を判断に使うための要点です。

まずは、次の会議で「この調査の答えが出たら、何を決めますか」と問いかけてください。選択肢が決まったら、その判断を最も変え得る未確認事項を一つ選び、確認する相手と日程を置くところから始められます。

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市場調査を、判断できる計画にしたい方へ

調査項目が絞れない、必要な相手に会えていない、結果から次が決まらない。イノベーション総研では、調査の目的と未確認の条件を整理し、次に行う検証と判断の進め方を一緒に考えます。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

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