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新規事業のビジネスモデルの作り方|7つの収益モデルと採算の具体例

新規事業のビジネスモデルとは、顧客に価値を届け、対価を受け取り、提供に必要な費用をまかなって事業を続ける仕組みです。顧客・価値・提供方法・収益とコストをつなげることで、何を確かめれば事業化に近づけるかが見えてきます。

「サブスクにすれば安定するのか」「便利と言われるのに、売れる形が決まらない」。そんなときは、料金の型より先に、誰が何に払い、提供にいくらかかるかを確かめてください。

本記事では、7つの収益モデルを比較し、ビジネスモデルを作る5ステップを一つの架空例で解説します。売上と利益の違いが分かる計算例と、888名の独自調査から考える検証の進め方も紹介。初めて設計する方も、企画を見直す方も、次に確認する相手と条件を具体化できます。

この記事のポイント

  • 顧客・価値・提供方法・収益とコストを、一つの事業としてつなぐ
  • 7つの収益モデルを、支払い方と先に確かめる条件で比較する
  • 月額サービスの具体例から、売上が増えても利益が残らない理由を知る
  • 設計の5ステップを使い、次の検証と結果を判断する日を決める

目次

新規事業のビジネスモデルは、顧客から利益までを4要素でつなぐ

ビジネスモデルは、顧客に価値を届け、その対価で事業を続けるための仕組みです。「月額で売る」「アプリで提供する」といった一部分だけでなく、利用される理由と、自社に収益が残る理由を一緒に説明します。本記事では、最初に考えやすいように、顧客・価値・提供方法・収益とコストの4要素で整理します。

1.顧客:使う人と、購入を決める人を分ける

「製造業向け」だけでは、最初に話を聞く相手は決まりません。どの工場の、どの業務を担当し、どんな場面で困っている人なのかまで具体化してください。法人向けサービスでは、使う担当者と、予算を持つ人、導入を承認する人が異なることもあります。

たとえば、点検記録の整理を支援するサービスなら、利用者は保全担当者、予算を判断する人は工場長という仮説を置けます。ただし、会社ごとに役割は異なります。担当者の好意的な反応だけで購入可能とせず、誰の判断が必要かを本人に確かめてください。

2.価値:追加する機能ではなく、顧客の仕事がどう変わるかを書く

「検索機能がある」は商品の説明です。「前回の点検記録を探す時間が減り、引き継ぎを進めやすくなる」と書くと、顧客が選ぶ理由に近づきます。その変化が本当に必要かは、顧客の現在のやり方と比較して考えます。

比較相手は競合商品だけではありません。表計算ソフト、電話、担当者の記憶、何もしないことも選択肢です。既存の手段で十分なら、機能が優れていても切り替える理由は弱くなります。何に困り、どんな負担をかけて対処しているのかが出発点です。

3.提供方法:販売から導入後の支援まで、誰が担うかを決める

価値を届けるには、開発だけでなく、顧客との接点、提案、契約、初期設定、日々の運用、問い合わせ対応が必要です。自社で行う作業と、販売代理店や外部の専門家に任せる作業を分けます。

点検記録のサービスなら、顧客が持つ過去データを誰が整えるかも重要です。初期設定に人手がかかるのに、その担当者も費用も決まっていなければ、契約が取れても提供できません。「オンラインで売る」という説明の先にある実作業まで確認します。

4.収益とコスト:何に対価をもらい、何に費用が増えるかをそろえる

支払いの単位は、商品1個、1か月、利用1回などです。一方、費用は、顧客数、作業時間、データ量、取引件数などに応じて増えます。この二つを並べると、売上だけでは見えない負担に気づけます。

月額料金が同じでも、顧客ごとの対応時間が違えば、残る利益は変わります。料金を決めるときは、含める作業と追加料金が必要な作業までセットにしてください。顧客にとって分かりやすく、自社でも続けられる範囲を探します。

なお、Strategyzerの公式解説では、ビジネスモデルを顧客・価値・活動・資源・収益・費用などの9ブロックで表します。本記事の4要素は、そのつながりを初めて読む方にも捉えやすくするための、イノベーション総研の整理です。

新規事業の収益モデル7種類を、支払い方と注意点で比較する

収益モデルは、ビジネスモデルのうち「誰から、何の対価を、どう受け取るか」の部分です。下の表では、検討の入口になる7種類を比較します。分類はこの7種類に限らず、組み合わせて使うことも可能です。具体例は仕組みを説明するための一般例であり、特定企業の成功実績ではありません。

支払い方の違いと、導入前に確かめたい条件
収益の得方 支払いの単位・具体例 先に確かめること
売切り型 商品1個、案件1件など。例:機器の販売や、一回の報告書納品 納品の条件、原価、納品後の保証・支援にかかる負担
サブスクリプション 月・年などの期間。例:記録管理サービスの月額利用料 継続利用の理由、料金に含む範囲、更新・解約の条件
従量課金 回数・時間・容量など。例:処理したデータ件数に応じた料金 利用量の計測と請求方法、利用が増えた場合の費用
成果報酬 合意した成果。例:確認できた削減額の一部を対価とする 何を成果と認めるか、自社の寄与をどう確認するか、支払時期
マッチング・手数料型 成立した取引。例:売り手と買い手を結ぶ取引手数料 双方が参加する理由、取引の成立条件、審査や問い合わせの負担
ライセンス型 技術・ソフトウェアなどの利用権。例:拠点数に応じた使用料 利用できる範囲、期間、導入支援や更新の扱い
フリーミアム 基本機能は無料、高度な機能や追加利用は有料 有料に移る理由、無料部分の提供費用、有料顧客が支える範囲

まず見たいのは、顧客が価値を受け取るタイミングと、支払うタイミングが合っているかです。年に一度しか使わない仕事なら、月額よりも利用ごとの料金が検討しやすい場合があります。一方、いつでも使える状態を保つこと自体に価値があれば、利用回数が少なくても定額料金の理由になります。

フリーミアムは、無料部分から有料部分へ移ってもらう仕組みであり、他の課金方法と同じ切り口の分類ではありません。有料部分を月額にすることも、従量課金にすることも可能です。「無料なら使う人が多い」だけでは、売上と提供費用の釣り合いは分かりません。

複数の型を組み合わせるなら、それぞれの対価を説明できるようにします。たとえば、最初のデータ整備には初期費用、継続利用には月額料金を設定する形です。同じ作業への二重請求に見えないよう、含む内容と対象外を明確にしてください。

新規事業のビジネスモデルを作る5ステップ

次に、顧客の課題から、提供・料金・費用・検証へと具体化します。ここでは「工場の点検記録を整理し、必要な記録を探しやすくするサービス」を一つの例として使います。以下の企業像、金額、検証結果はすべて説明用の架空例です。実際の顧客や見積もりで確かめた数値に置き換えて使ってください。

1.最初の顧客と、解決したい仕事を一つに絞る

最初から、すべての工場の、すべての点検業務を対象にはしません。「紙と表計算に記録が分かれており、担当交代時に過去の履歴を探す工場」のように、困りごとが起こる条件を絞ってください。顧客の候補が具体的になるほど、誰に会い、何を聞くかも決めやすくなります。

面談では「このサービスが欲しいですか」より先に、最近いつ記録を探したか、見つからないと何が起きるか、今は誰がどう解決しているかを聞きます。可能なら実際の作業や記録も見せてもらいます。感想だけでなく、現在の行動から課題を確かめるためです。

この段階で残すのは、「誰が・どの場面で・何に困り・現在はどう対処しているか」の一文です。たとえば「担当交代のある工場の保全担当者が、引き継ぎ時に過去の記録を探し直している」とまとめます。まだ観察できていない部分は、確認済みの事実と分けておきます。

2.顧客に届けるまでの作業と、提供範囲を決める

サービスの画面を考える前に、提供開始までの作業を並べます。この例なら、対象記録の確認、データ整備、初期設定、利用説明、月次更新、問い合わせ対応です。それぞれの担当者と、顧客側で必要な作業を書き出します。

最初は、限られた記録を人手で整理し、検索しやすい一覧を渡すだけでも、使われ方を確かめられるかもしれません。ただし、人手で役立ったことと、同じ品質を低い費用で提供できることは別です。手作業の時間も記録し、後の費用計算に使います。

「標準のデータ形式を対象にする」「現地訪問や個別のシステム連携は含めない」など、今回の範囲も決めてください。情報を扱う条件や、点検業務での責任範囲は、顧客側の関係部門と確認します。便利さだけを理由に、本番の業務へ無条件に組み込まないことが大切です。

3.料金案を作り、予算を判断する人に確かめる

たとえば「1工場あたり月3万円。標準形式の記録整理と月次更新を含む」という案を置きます。月額、対象工場数、含む作業、契約期間、支払いの時期まで具体化すると、相手は自社の予算や運用と比較しやすくなります。

ここで確認するのは、単に高いか安いかではありません。聞きたいのは、現在の対処にかかる費用、解消したい負担の大きさ、使える予算、承認の手順です。「担当者は便利だと思うが、工場長には購入を提案していない」という状態なら、料金の妥当性はまだ確かめられていません。

残す成果物は、料金案と、その案を誰がどの条件で検討するかの記録です。見積もりの検討や有償での試行へ進む場合も、通常契約に必要な条件とは分けて整理します。一社の承諾を、すべての顧客が同じ価格で買う根拠にはしません。

4.1顧客あたりの費用と、事業全体の固定費を分ける

売上予測を作る前に、契約が一件増えると何が増えるかを計算します。この例なら、記録整理の外注時間、クラウドの利用料、問い合わせ対応の負担です。最初の営業や導入にかかる費用と、毎月の提供費用も分けておきます。

さらに、顧客数が少なくても必要な開発・管理などの固定費を別に置きます。毎月の売上から提供費用を引いてプラスでも、固定費までまかなえるとは限りません。設備投資や最初の開発費を、いつ回収するかも別の問いです。

この段階では、根拠の薄い数字を細かくするより、結果を大きく変える前提を見つけます。見積書、実際に測った作業時間、担当者の予想を区別し、特に確認したい費用を一つ選んでください。次の章で、対応時間による違いを計算します。

5.成立を左右する未確認の条件から、小さく試す

検証の順番は、作りやすい機能からではなく、その前提が外れると事業の組み立てを変えなければならないものから決めます。「月3万円を検討する支払者がいるか」「標準の対応範囲で継続提供できるか」などが候補です。

もし予算を持つ人に一度も会えていないなら、機能追加よりも購入条件の確認を優先します。購入の具体的な検討が進んでいても、作業時間が分からないなら、限定した顧客への試行で時間を測る方が次の判断に役立ちます。優先したいのは、いまの案を成立させるうえで、根拠が最も足りない条件です。

最後に、試す内容、担当者、費用上限、結果を見る日、結果によって変える判断を一組で残します。ビジネスモデルを図にして終わるのではなく、未確認の条件を減らす活動へつなげるのが、この5ステップの目的です。

事業の構想から立ち上げまでの全体像は、新規事業立ち上げのプロセスで確認できます。本記事の設計作業が、どの段階の判断に必要なのかを合わせて整理してください。

売上が増えても利益が残らない理由を、月額サービスの例で確かめる

グラフと数値のダッシュボードを表示したノートパソコン
売上だけでなく、提供費用を動かす作業時間にも目を向けます。画面内の数値は記事の計算例・調査結果とは関係ありません。

月額サービスは、契約数が増えれば売上も増えます。しかし、提供費用も同じように増えます。下の表は、点検記録サービスを月3万円で提供し、記録整理を時間単価5,000円で外注する架空の計算例です。対応時間だけを変えて比べます。

対応時間によって変わる、1工場あたりの月次採算(架空例)
計算する項目 月3時間の対応 月6時間の対応
月額売上 30,000円 30,000円
記録整理の外注費 3時間×5,000円=15,000円 6時間×5,000円=30,000円
工場ごとのクラウド利用料 3,000円 3,000円
提供に伴う費用の合計 18,000円 33,000円
売上から提供費用を引いた額 12,000円 −3,000円

対応が3時間なら、1工場あたり月1万2,000円を固定費などに充てられます。6時間になると、固定費を考える前から3,000円の赤字です。後者の条件では、同じ売り方のまま契約数を増やしても、提供に伴う赤字が広がります。

固定費をまかなう契約数と、増えたときの作業量を一緒に見る

仮に毎月の固定費が30万円で、すべての契約が表の「3時間」の条件なら、30万円÷1万2,000円=25工場で、月次の提供費用と固定費が釣り合います。ただし、これは初期開発費、顧客を獲得する費用、税金などを除いた単純化した計算です。25工場を獲得すれば投資全体を回収できる、という意味ではありません。

また、25工場に各3時間対応するには、月75時間の外注対応が必要です。その時間を確保できるか、顧客が増えても品質と時間単価を保てるかを確認します。件数が増えると管理者の増員やシステム費の追加が必要になり、固定費自体が上がる場合もあります。

作業時間が長いなら、値上げだけでなく提供範囲も見直す

採算を改善するときは、価格だけでなく、誰に何をどこまで提供するかを見直します。時間がかかる原因が顧客ごとに異なるデータ形式なら、標準形式に対象を絞る、初期整備を別料金にする、顧客側で行う作業を決める、といった選択肢があります。

ただし、対応を減らした結果、顧客が必要とする価値まで失われては意味がありません。修正案について、実際に使えるか、購入条件に合うかをもう一度確かめます。採算の表は社内で数字を合わせるためではなく、どの条件を変えて試すかを選ぶために使ってください。

いま、どの条件で迷っていますか

近い項目を開くと、確認する問いと本文の説明へ進めます。点数を付ける診断ではありません。

01 使う人はいるが、誰が払うか分からない

利用する人と、予算を判断する人を分けて確かめます。

  • 購入の承認者は誰か
  • どの部門の予算で検討するか
  • 導入に必要な合意は何か

顧客の分け方を見る →

02 どの料金の型を選ぶか迷う

価値を受け取るタイミングと支払いの単位を比べます。

  • いつ価値を受け取るか
  • 何に対して払うと分かりやすいか
  • その単位で何の費用が増えるか

7つの収益モデルを比較する →

03 価格は決めたが、利益が残るか不安

売上と、顧客ごとの提供費用を同じ期間で並べます。

  • 月次の対応時間はいくらか
  • 固定費を別に置いたか
  • 顧客数が増えても同じ条件で提供できるか

採算の計算例を見る →

04 提供する作業が増え続ける

今回の標準範囲と、個別対応を分けます。

  • 料金に含む作業は何か
  • 誰がデータや初期設定を整えるか
  • 追加料金が必要な範囲は何か

提供範囲の決め方を見る →

05 キャンバスを埋めたが、検証に進めない

各欄の事実と仮説を分け、要素のつながりを読み直します。

  • 顧客の価値と必要な作業は対応しているか
  • 活動に必要な費用を含めたか
  • 根拠を確認できるか

キャンバスの見直し方を見る →

06 検証結果を報告しても、次が決まらない

今回の結果で変える判断を、判断者とそろえます。

  • 何を確かめる検証か
  • 条件を満たさない場合はどうするか
  • 誰がいつ結果を判断するか

検証前の記入例を見る →

NEXT STEP

次のステップ

料金・提供範囲・検証の順番を整理したい方へ

イノベーション総研の新規事業立ち上げ支援では、顧客への確認から、試す内容と実行する体制を一緒に整理します。

ビジネスモデルの検証では、数字を見る人と次の判断を先に決める

イノベーション総研が大企業の新規事業に関わる888名に行った調査では、定量的な目標・指標を経営層と合意し、定期的に確認・見直しを行った結果、判断基準として機能していたという回答は28.6%でした。一方、同じく定量指標を設定し定期的に確認・見直しをしていても、経営層との認識にずれがあり、判断基準として機能していなかったという回答は45.5%でした。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

この結果を踏まえ、イノベーション総研は、指標を置くだけでなく、その結果で何を変えるかまで合意することが重要だと考えます。調査は事業の成功率を予測するものではありませんが、会議で数字を報告しても判断が進まない案件では、目標の追加より先に、数字の使い方をそろえる必要があります。

検証前に、進める・変えて試す・いったん止める条件を書く

点検記録サービスなら、購入条件と提供時間の両方を確かめたいところです。ただし、一度に全部を調べるのではなく、いま最も不確かな条件に絞ります。下の表は、購入の検討が進んだ後で、提供時間を確かめる場合の記入例です。

提供時間を確かめる試行で、事前に決めておくこと(架空例)
決める項目 記入例 結果の使い方
今回の問い 標準形式の記録なら、月次対応を1工場あたり3時間以内で行えるか 表の採算を支える時間の前提を確かめる
対象と測り方 対象工場を限定し、整備・更新・問い合わせに使った時間と作業内容を記録する 平均時間だけでなく、長くなる作業と条件も確認する
条件を満たした場合 必要な品質を保ち、想定した作業範囲と時間で提供できた 違う条件の工場でも同じように提供できるか、次の試行を検討する
条件を満たさなかった場合 個別のデータ整備や問い合わせで時間が増えた 提供範囲・料金・対象顧客を変えて試すか、いったん止めるかを比べる
担当者と判断日 測定担当者、費用上限、試行の終了日、結果を判断する会議を決める 上限や期限に達したら、自動延長せず結果を確認する

「続ける」も、全面展開を意味するとは限りません。対象を限定して次の顧客に試す、追加の条件を確かめる、という判断も選択肢です。今回どこまで認めるかを具体的にしておくと、良い反応を過大に評価せず、悪い結果からも次の行動を選べます。

結果は、確認できた範囲と、まだ分からない範囲を分けて伝える

一工場で使われた事実があっても、別の工場で同じように使われるかは未確認です。有償の試行が成立しても、通常価格で更新するか、全拠点に導入するかは別に確かめる必要があります。得た事実が、どの範囲の判断を支えるのかを短く説明します。

報告には「何社に会ったか」だけでなく、「誰が何を検討し、どの条件が残ったか」を残してください。想定と違った結果を隠さず共有し、価格、対象顧客、提供方法のどれを見直すかを話し合います。成果物の数ではなく、事業の前提がどこまで確かになったかを見るためです。

社内で判断の前提がそろわない場合は、イノベーション総研の新規事業リスク診断も選択肢です。顧客や採算の検証そのものに代わるものではなく、プロジェクトのどこに未整理の条件があるかを見直す際に活用してください。

ビジネスモデルキャンバスは、埋めるより要素のつながりを確かめる

ビジネスモデルキャンバスは、事業の仮説を9つの観点で一枚に整理する道具です。顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客との関係、収益の流れ、主要な資源、主要な活動、主要なパートナー、コスト構造を扱います。部署ごとに分かれた前提を共有する際に役立ちます。

Strategyzerの作成ガイドでも、要素同士のつながり、具体的な言葉、既知の事実と仮説の区別が重視されています。空欄をなくすことよりも、顧客に届ける価値と、そのために必要な活動・費用が対応しているかを確認します。

たとえば、価値の欄に「手間なく記録を探せる」と書いたのに、主要活動に「過去の記録を整える作業」がなければ、提供方法の検討が抜けています。月額の収益だけがあり、更新や問い合わせの費用がなければ、採算の前提も不十分です。一つの欄から隣の欄へ、説明がつながるかを読んでみてください。

最初から完全な図を作る必要はありません。確認できていない欄には仮説と分かる印を付け、根拠が得られたときに更新してください。共有用の一枚とは別に、面談記録や見積書など、根拠を確認できる資料への参照を残すと、意見の違いを調べ直せます。

なお、事業戦略は取り組む領域や資源の配分、事業計画は予算・日程・担当者などの実行計画を扱います。キャンバス一枚でこれらすべてを代用しないでください。領域選びは新規事業戦略の考え方、道具の選択は新規事業で使うフレームワークの選び方が参考になります。

顧客・料金・提供先を変えたら、他の条件も確かめ直す

検証によってビジネスモデルを変えるのは、計画が失敗したということだけではありません。分かったことに合わせて、成立しやすい条件を探る作業です。ただし、一部分だけを変更し、残りの条件を以前のまま使うと、説明のつじつまが合わなくなります。

対象顧客を変えると、予算と導入手順も変わる

大規模工場から小規模工場へ対象を変える場合、困りごとが似ていても、作業量や予算、担当者の兼務状況は同じとは限りません。従来の料金と支援範囲で検討されるかを、新しい顧客に確かめてください。前の顧客から得た反応を、そのまま新しい市場の根拠にしないようにします。

定額から従量課金へ変えると、計測と請求の作業が増える

利用回数に応じた料金なら、顧客の支払いを使った分に近づけられます。一方で、何を一回と数えるか、双方が利用量を確認できるか、請求金額が予算内に収まるかを決めることが必要です。利用量が少ない月でも必要な保守費を、どうまかなうかも確認します。

代理店や外部パートナーを使うと、取り分と責任が変わる

自社だけでは会えない顧客に届く可能性があっても、手数料や教育の費用、問い合わせの分担が追加されます。契約する相手、サービスを提供する相手、顧客の声を受け取る相手が誰になるかを整理してください。売上の見込みだけを上積みし、費用と作業を据え置かないことが重要です。

変更した内容、変更を選んだ理由、確かめ直す条件、担当者、次に判断する日を残すと、次の会議で何が変わったかを比較できます。検証を繰り返す進め方は、新規事業の進め方でも整理しています。

新規事業のビジネスモデルでよくある質問

最初の案を作るときや、顧客に確かめるときに迷いやすい点をまとめました。共通の正解を当てはめるより、自社で何が分かり、何が残っているかを見ながら使ってください。

Q. ビジネスモデルと収益モデルは同じですか

A. 同じではありません。収益モデルは、誰から何の対価をどう受け取るかを扱います。ビジネスモデルは、顧客が選ぶ理由、価値を届ける活動、必要な資源や費用まで含めた全体の仕組みです。月額課金を選んでも、顧客の購入条件や継続提供の費用が未確認なら、事業の設計はまだ途中です。

Q. 新規事業では、最初からサブスクリプションにすべきですか

A. 一律に選ぶ必要はありません。継続して使う理由や、使える状態を保つ価値があり、料金に含める範囲を提供し続けられるかで考えます。利用頻度や顧客の予算に合わない場合は、売切りや従量課金なども比較してください。定額にすれば自動的に収益が安定するわけではありません。

Q. 最初の価格が分からないときは、無料で試してもよいですか

A. 無料の試行は、使われ方を確かめる方法の一つです。ただし、無料で使う反応から、いくらなら買うかは判断できません。試行で確認することを限定し、別に料金案と提供範囲を示して、予算を判断する人の検討条件を確かめます。無料期間中も提供費用と作業時間を記録してください。

Q. 何社に聞けば、ビジネスモデルが成立したと判断できますか

A. 共通の社数だけでは判断できません。確認したいのは、対象顧客の条件に違いがあるか、購入する人に確認できたか、通常の提供範囲で利益が残るかです。少数の顧客から得た事実は次の限定した検証には使えても、市場全体へ広げる根拠とは限りません。投資を増やす前に、未確認の顧客条件や提供負担を確かめます。

Q. 既存事業の顧客や営業網を使う場合、何を確認すればよいですか

A. 既存の接点があることと、新サービスを購入してもらえることは別です。同じ会社でも、利用部門、予算、承認者が変わる場合があります。また、営業担当者が提案できる時間、説明に必要な知識、販売後の支援分担も確認します。既存の資源を使う場合も、追加で必要な作業と費用を見積もってください。

まとめ:顧客に選ばれ、提供を続けられる条件を一つずつ確かめる

新規事業のビジネスモデルは、料金の型を選ぶだけでは完成しません。顧客が選ぶ理由、価値を届ける作業、支払いの条件、提供にかかる費用をつなげて考えます。7つの収益モデルは、その組み合わせを具体化するための比較材料です。

まず顧客と課題を絞り、提供方法、料金、費用を仮置きして、成立を左右する条件から確かめてください。キャンバスや収支表を作ったら、何が事実で、何がまだ仮説なのかを見直します。数字を報告するだけでなく、その結果で何を変えるかを判断者と合意しておくことも欠かせません。

今日の打ち合わせでは、「この条件が違うと、いまの案を続けられない」という未確認の前提を一つ選んでみてください。次に会う相手、確かめる内容、担当者、結果を見る日まで決まれば、ビジネスモデルの検討は、資料づくりから実際の検証へ進みます。

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事業の案を、顧客に確かめられる形にしたい方へ

料金や提供範囲が決まらない、試した結果から次の判断を選べない。イノベーション総研では、顧客・提供・採算の未確認条件を整理し、次に行う検証と、その結果を判断する進め方を一緒に設計します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

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