投稿日:2026.10.08 最終更新日:2026.10.08
MCデジタル・リアルティ、大阪で24MWデータセンター着工
ニュースの要点
MCデジタル・リアルティ株式会社は2026年10月7日、大阪府茨木市のKIXキャンパスで「KIX15データセンター」の建設に着工したと発表しました。キャンパスの5棟目となる施設で、2028年第4四半期のサービス提供開始を予定しています。
サーバー用電源容量は24MWを計画し、空冷と液冷の両方に対応します。生成AIの普及などに伴う、高電力・高密度な設備とネットワーク接続への需要に対応するためです。クラウドサービス事業者やAI関連企業などの利用を想定しています。
同社は三菱商事と米国Digital Realtyによる対等出資の合弁会社です。KIX15の開設後は、国内のデータセンターが計10棟、サーバー用電源容量は合計約220MWになる予定です。大阪都市部などへの接続性も強化し、既存のIT環境から拡張できる基盤を目指します。
ニュース出典: MCデジタル・リアルティ/原題「MCデジタル・リアルティ24MWの大規模データセンター「KIX15」着工」/公開日2026年10月7日11時/公式配信
イノベーション総研の考察
AI向けの設備は、サーバーを置く床面積だけを増やしても利用できるとは限りません。一つの場所で使う電力が大きくなれば、冷却や通信も合わせて増強する必要があります。今回の着工は、既存キャンパスを使いながら、顧客の設備需要の変化に対応する拡大投資として捉えられます。
5棟目の増設でも、同じ建物の繰り返しではない
キャンパス型のデータセンターは、複数の施設を一つの拠点で展開する形です。既存の立地や運営基盤を利用し、顧客が利用する設備を段階的に増やすことができます。ただし、新しい棟にも以前と同じ設備を置けば十分というわけではありません。顧客が使うサーバーの電力や冷却条件が変わると、必要な仕様も変わるためです。
同社の公式沿革では、2017年の関西1棟目の運用開始から、2019年に2棟目、2021年に3棟目、2023年に4棟目を開設しています。今回の5棟目は、実際に運用してきた拠点へ追加する投資です。既存の運営経験は確認できますが、各棟の稼働率や採算までを示す情報ではありません。
KIX15は空冷・液冷の両方に対応する計画です。空気で熱を逃がす方法と、液体を使って熱を移す方法を組み合わせ、多様な機器へ対応する方向が示されています。具体的なラック当たりの電力や冷却効率は今回公表されていないため、すべてのAI用機器が利用できるとまでは言えません。
既存拠点の拡大では、運営基盤を再利用しながら、顧客の利用条件が変わった部分だけを更新する判断が重要です。
担当者の方が店舗、工場、サービス拠点を増やす際も、以前の成功例を複製するだけでは十分でない場合があります。立地や仕組みを標準化できる部分と、新しい顧客に合わせて設計し直す部分を切り分けます。既存の運営経験を利用できることは利点ですが、新しい仕様の品質や費用は別に確かめる必要があります。
接続先まで整えることで、顧客の移行負担を減らす
企業が新しいデータセンターを利用する場合、社内システムや既存のクラウドとの接続が必要になります。新施設の性能が高くても、接続に大きな時間や費用がかかれば、移行する判断は難しくなります。特に既存の業務を動かしながら、一部だけを新しい設備へ移すケースでは、両方をつなぐ条件が重要です。
MCDRは、KIXキャンパスと大阪都市部のデータセンターや主要ネットワーク拠点との接続性を強化する方針です。「Metro Connect」などの接続サービスや、Digital Realtyの相互接続基盤を活用するとしています。施設と接続を一緒に提供することで、顧客が既存環境を維持しながら設備を増やす余地を作るものと考えられます。
拡大先の性能だけでなく、顧客が今使う環境との接続を整えることが、新設備への移行を支えます。
これは他業界の新規事業にも共通する観点です。新しいシステムや設備を売るとき、顧客が既存の仕組みをすべて捨てることを前提にすると、導入の負担が大きくなります。どこから追加し、何を残し、どの順番で切り替えるかを提示できると、購入後の動きまで検討しやすくなります。ただし、接続の料金や実測の遅延は今回示されておらず、接続性の向上を数値で確認できた段階ではありません。
24MWの供給能力と、契約済みの需要を区別する
データセンターは、着工からサービス開始まで長い準備期間を必要とする設備です。KIX15は2028年第4四半期の提供開始予定であり、今回の24MWを稼働済みの能力として数えることはできません。開設後の国内合計約220MWも計画です。
発表では、建設投資額、契約済みの利用容量、稼働率、料金は示されていません。関西のAI需要に対応する方針は確認できますが、建物の増設が需要の証明になるわけではありません。設備を先に増やした後、想定した顧客が集まらなければ、固定費が収益を圧迫する可能性があります。
設備拡大の評価では、用意する供給能力と、顧客が契約して使う需要を分けて確認する必要があります。
同種の投資を考える担当者の方には、既存拠点の利用実績、新拠点で増える費用、契約需要を確保する時点の三つが重要です。今回の発表から既存施設の採算や、KIX15の事前契約状況までは分かりません。今後は、開業時期、顧客契約、冷却仕様と料金、追加容量の利用状況を追うことで、長期の拡大計画が実際の利用へ結び付いているかを確認できます。
まとめ
KIX15は、既存のキャンパスを活かしながら、電力・冷却・接続を合わせて増強する取り組みです。拡大する際には、再利用できる基盤と変更すべき仕様を分け、供給能力と契約需要も別に見ることが重要です。着工後は、顧客の移行と継続利用まで確認したい事例です。
執筆:イノベーション総合研究所
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