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ハリマ化成、ニュージーランド事業から撤退 2027年に生産停止

ニュースの要点

ハリマ化成グループ株式会社は2026年10月7日、連結子会社LAWTER(N.Z.)の事業から撤退することを取締役会で決議したと発表しました。ニュージーランドのマウントマウンガヌイで、松由来の化学素材や香料原料などを製造・販売する拠点です。

輸出市場の価格競争、現地の製造コスト上昇、原料調達の不安定化を背景に、業績が低迷しています。同社は数年間の経営改善策でも十分な効果が得られず、今後の回復が難しいと判断したと説明しています。

2027年6月30日に生産を停止する予定です。その後はグループの物流拠点として一時利用し、2028年5月に工場を閉鎖する計画です。減損や撤退費用など、約28億円の特別損失を2027年3月期第3四半期に計上する見込みで、金額は概算として精査を進めます。

ニュース出典: ハリマ化成グループ/原題「ローター・ニュージーランド事業からの撤退に関するお知らせ」/公開日2026年10月7日/適時開示本文


イノベーション総研の考察

売上が残っている事業でも、続ければ回復するとは限りません。海外の製造拠点では、販売する市場の価格と、製造する国の費用・原料条件が別々に動きます。今回の撤退は、この組み合わせが厳しくなったとき、事業の継続と拠点の残し方をどう判断するかを考える事例です。

売上は増えていても、損失が解消しなかった

適時開示によると、ローターN.Z.の売上高は2023年12月期1,990万米ドル、2024年2,000万米ドル、2025年2,090万米ドルでした。一方、営業損失は630万米ドル、250万米ドル、390万米ドルです。売上は緩やかに増えましたが、三年間とも損失が続いています。

この数字だけから、どの改善策が失敗したかまでは分かりません。ただ、売上の増加だけでは営業損失を解消できなかったことは読み取れます。価格競争、製造費の上昇、原料の不安定化という会社の説明と合わせると、販売数量を増やす対策だけでは対応しにくい条件があったと考えられます。

撤退判断では、売上があるかだけでなく、売上を増やしても損失を解消できる構造かを確認する必要があります。

担当者の方が新規事業を見直す際も、顧客や売上の存在は継続の判断材料の一部です。販売を増やすほど利益が改善するのか、追加の費用も増えるのかを確認します。事業開始時の狙いや社内の判断基準は今回公表されていないため、「最初から採算のない投資だった」と断定することはできません。今回確認できるのは、複数年の改善を経ても回復が難しいと会社が判断したことです。

生産を止める日と、拠点を閉じる日を分ける

今回の計画では、2027年6月に生産を停止し、その後は一時的な物流拠点として利用したうえで、2028年5月に工場を閉鎖します。撤退を一つの日付で終わらせず、生産と物流を段階的に切り替える形です。製造拠点の機能をすべて同時に止めるわけではありません。

この順序は、既存の顧客や在庫への対応を考える際に参考になります。ただし、発表では具体的な配送先、供給の移管先、在庫量、従業員の対応は示されていません。物流拠点としての一時利用が、どの顧客への供給をどう支えるかは、今後の確認事項です。継続供給が保証されたと受け取ることはできません。

設備事業の撤退では、生産停止と顧客対応の終了を分け、残す機能と閉じる機能を順番に設計することが重要です。

自社の撤退を考える場合も、「続けるか、すべてやめるか」の二択だけではありません。生産は止めても販売・保守・物流を残す、拠点を閉じても顧客契約を別部門へ移すなど、機能ごとに選択肢を整理できます。一方、一時的に残す機能にも費用がかかります。移行が長引くと撤退効果が小さくなるため、役割、費用、終了時点を合わせて決める必要があります。

一時的な損失と、続けた場合の費用を別に考える

同社は、固定資産などの減損と撤退に伴う一時費用を含め、約28億円の特別損失を見込んでいます。これは現時点の概算であり、すべてが同時期の現金支出とは限りません。資産の帳簿価額を見直す損失と、実際の閉鎖作業で生じる支出を区別して読む必要があります。

開示には、別案件であるSunPineの株式売却益約37億円も同じ第3四半期へ計上する予定と記されています。二つの金額を単純に差し引いて、今回の撤退の費用が小さいと評価することはできません。別の資産売却の利益は、ローターN.Z.の継続可否を直接証明する材料ではないためです。

撤退費用の評価では、一時損失の大きさと、継続した場合に生じる将来費用を分けて比較する必要があります。

同種の判断をする担当者の方には、改善策の結果、継続時の損失見通し、顧客を移行する費用の三点が参考になります。今回、継続した場合の将来収支や改善策の内訳は未公表です。そのため、約28億円を払えば得になるとまで計算することはできません。今後は、損失額の精査、生産停止までの業績、物流拠点への移行、最終閉鎖の進捗を確認すると、撤退が計画通りに費用とリスクを減らしているかを追いやすくなります。

まとめ

ハリマ化成の撤退は、売上が残る事業でも回復可能性を見直し、生産と物流を段階的に切り替える事例です。売上の有無、一時的な損失、将来の継続費用を混同せず、どの機能をいつ閉じるかまで整理することが、設備型事業の撤退判断に役立ちます。

執筆:イノベーション総合研究所

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