投稿日:2026.10.08 最終更新日:2026.10.08
三菱地所とデロイト、丸の内に量子技術の共創拠点を開設へ
ニュースの要点
三菱地所とデロイト トーマツ グループは2026年10月5日、量子技術の研究者と企業をつなぐ共創拠点「Tokyo Quantum Gateway」(仮称)を、2027年1月に開設すると発表しました。場所は東京都千代田区丸の内の新東京ビル8階です。
研究者やスタートアップ、量子技術を使いたい企業が日常的に交流するコワーキングスペースを設けます。研究成果を企業の事業に役立てるため、専門家への相談や勉強会を通じ、共同研究や実証につながる機会を作る計画です。施設に量子コンピュータを設置して提供する、という発表ではありません。
ニュース出典:三菱地所/原題:量子技術の社会実装を促進する共創拠点「Tokyo Quantum Gateway」(仮称)を開設/公開日:2026年10月5日
拠点は既存施設「Deloitte Tohmatsu Innovation Park」の中に設けます。三菱地所と合同会社デロイト トーマツが運営し、大学・研究機関、量子技術の企業、利用を検討する企業、投資家、官公庁などの参加を想定しています。
月1回程度の勉強会や交流会、企業向け講座などを検討しています。常駐する量子専門家が相談を受け、研究者やスタートアップとの接点づくりを支援する方針です。入居者、利用料金、運営費、実証の具体的な案件は公表されていません。
イノベーション総研の考察
この発表は、新しい計算機の性能を競うニュースではありません。研究成果を持つ人と、解決したい業務を持つ企業が出会い、共同の仕事へ進むための拠点づくりです。新規事業の担当者の方にとっては、先端技術への接点を作る方法と、交流を事業に変える条件を考える材料になります。
研究者と利用企業の距離を縮める拠点
量子技術は、材料開発や創薬、物流、金融などでの利用が期待されています。ただし、研究が進んでいることと、企業が自社の業務で使えることは同じではありません。利用企業は、何を解決したいのか、どの技術が合うのか、今すぐ試せる範囲はどこかを整理する必要があります。
今回の発表でも、研究者、利用企業、投資家、官公庁が日常的に議論する機会の少なさが課題として挙げられています。年に一度の展示会だけでは、問題の説明から試す方法の調整までを継続することが難しい場合があります。常駐する専門家と、同じ場所で働く仕組みは、その間のやり取りを続けやすくする狙いだと読めます。
この拠点が埋めようとしているのは、量子技術の性能差ではなく、研究者と利用企業が一緒に課題を具体化する機会の不足です。
三菱地所は場所とコミュニティづくりの経験を、デロイト トーマツは量子分野の知見とネットワークを持ち寄ります。単独で専門人材と利用企業の両方を集めるより、両者の資産を組み合わせる提携です。もっとも、専門家に相談できることが、案件の成立を保証するわけではありません。
丸の内の相談を研究開発の現場へつなぐ
三菱地所の取り組みは、丸の内の拠点だけで始まったものではありません。今回の発表では、新川崎で量子・AI・半導体分野の研究開発拠点の整備・運営に参画していることも説明しています。丸の内を人が出会い、学ぶ場所、新川崎を研究開発や社会実装の場所として連動させる方針です。
この役割分担が重要です。相談と研究開発では、必要な設備も参加者も異なります。利用企業が最初から研究施設の条件を理解して訪問するより、企業が集まる場所で課題を相談し、適した研究者や検証の現場へつなぐほうが、参加の入口を作りやすいと考えられます。
すべてを一つの施設に集めるのではなく、相談する場所と実際に試す場所をつなぐことが、今回の構想の特徴です。
自社で先端技術の新規事業を考える場合も、技術を保有する相手を探す前に、現場の困りごとを説明できる人を決める必要があります。例えば物流の課題なら、現行の計画作成にかかる時間、守る必要がある条件、利用できるデータを整理します。これは今回の拠点で実施済みの事例ではなく、利用する企業側に必要な準備の例です。
相談を研究へ進めるときには、費用、データの扱い、成果の権利、社内の意思決定者を確認します。技術の話だけが進み、これらが後回しになれば、良い研究テーマでも企業の実証として始められない可能性があります。
交流の数ではなく実証へ進んだ案件を追う
開設後に参加者やイベントが増えても、それだけでは社会実装が進んだとは言えません。今回の発表は共同研究や実証につながる機会の創出を目標にしていますが、評価指標や実証から先の支援内容は明らかになっていません。
成果を見るときは、交流した人数だけでなく、相談から共同研究や実証へ進み、次の利用判断まで到達した案件を確認する必要があります。
量子技術の利用を検討した結果、現時点では別の方法が適切だと分かることも、企業にとっては判断材料です。無理に実証件数を増やすより、どの課題なら試す価値があるかを見極められることに意味があります。反対に、イベント参加が目的となり、利用企業の課題や担当者が定まらなければ、継続的な交流が事業へ進まないおそれがあります。
今後は、2027年1月の開設、参加企業、相談の受付方法、専門家の体制を確認します。その後は、実証の課題、費用負担、研究開発拠点への接続、実証後の利用判断が公表されるかが観測点です。拠点の開設と、量子技術の商用利用の成功は分けて評価すべきです。
まとめ
三菱地所とデロイト トーマツは、量子技術の研究者と利用企業を日常的につなぐ拠点を丸の内に設けます。新規事業の担当者にとっての示唆は、専門家との接点だけで終わらず、自社の課題を相談、検証、利用判断へ進める道筋を用意することです。
執筆:イノベーション総合研究所
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