公開: 最終更新:
日本トムソン、ベトナム工場に20年契約の太陽光レンタルを導入
ニュースの要点
軸受などを製造する日本トムソンは2026年10月29日、ベトナムの生産拠点IKO THOMPSON VIETNAMに、工場の屋根を使う太陽光レンタルサービスを導入したと発表しました。設備は同年9月に運転を始めています。
提供するのは関西電力のベトナム現地法人Kansai Energy Solutions(Vietnam)です。発電容量は約2,730kWで、発電した電力はすべて工場で使います。契約期間は20年間で、二国間クレジット制度(JCM)の設備補助事業を活用しました。
日本トムソンは年間約239万kWhの発電量と約1,502トンのCO2削減を見込んでいます。海外拠点の中で排出量が最も多い同工場の再エネ調達を進め、長期の安定調達とエネルギーコスト抑制につなげる狙いです。これらの年間効果は見込みで、実績ではありません。
ニュース出典: 日本トムソン「ベトナム工場での二国間クレジット制度を活用した オンサイト型太陽光レンタルサービス導入に関するお知らせ」(2026年10月29日)
イノベーション総研の考察
国内の再エネ調達が進むほど、残る排出量の中で海外工場が課題になり得ます。イノベーション総研は、国内の取り組みを海外へ広げる際、設備の大きさより長期の電力需要と契約を合わせる点に着目します。
国内で進んだ排出削減が、次の対象をベトナムへ移した
日本トムソンは、残る排出量の大きい海外工場へ再エネ調達を広げました。
日本トムソンによると、2025年度の自社グループの直接排出と購入電力などによる排出、すなわちScope1・2は、基準となる2022年度から約32.3%減りました。国内の再エネ調達などが寄与した一方、海外の排出割合が高まったと説明しています。
これは海外の排出量そのものが増えたという意味とは限りません。国内が先に減れば、全体に占める海外の比率は上がります。次の施策を選ぶ際は、拠点の比率だけでなく、残る排出量と実行可能な調達方法を確認する必要があります。
今回、海外で排出量が最も多いITVの屋根を利用しました。国内の仕組みをそのまま複製したのではなく、現地の電力需要や制度、提供者に合わせて組み直した展開と考えられます。
20年契約の評価には工場の需要も20年で置く
屋根の発電量だけでなく、20年間その電力を使う工場の需要が契約の前提です。
発表は、発電電力を全量自家消費し、契約を20年間としています。工場の生産や稼働時間と発電の時間帯が合えば、電力の使い道を確保しやすい構造です。しかし、生産移管や稼働率の低下が起きれば、その前提は変わり得ます。
イノベーション総研は、契約時点の電力単価だけでなく、工場を使い続ける期間と需要変動を並べる必要があると考えます。長期契約が調達の安定につながる場合も、需要が変わったときの調整方法によって経済性は異なります。
今回の賃料、単価、途中解約、余剰電力、屋根修繕時の扱いは公表されていません。自社で同様の方式を選ぶ際は、生産計画が変わった場合に誰がどの費用を負担するかまで確認することが、設備容量の比較より先の判断材料になります。
補助の利用と、工場の電力費削減は別に検証する
JCMの活用が確認できても、契約単価や工場の採算改善が確定したわけではありません。
JCMは、相手国での温室効果ガス削減を測定・報告・検証し、クレジットの発行などにつなげる仕組みです。日本トムソンは設備補助事業の活用を明示しています。ただし、今回の補助率やクレジット配分の詳細は公表されていません。
同社が示す年間発電量とCO2削減量は見込みです。排出量削減は環境面の指標ですが、電力費削減は賃料や保守、実際の電力購入条件などで決まります。どちらか一方の数字で投資効果全体を判断することはできません。
制度による支援が導入を後押しした可能性はありますが、支援がなければ成立しなかったとまでは確認できません。別の工場へ広げる担当者の方は、現地の支援条件と、支援を除いても継続できる料金・需要条件を分けて比較するとよいでしょう。
次の拠点は発電実績と需要の重なりから選ぶ
海外横展開は、初年度の実発電量と工場の消費電力を重ねて判断します。
9月に運転を始めた設備について、発表時点では通年の実績はありません。天候や設備停止による発電量の変化、生産計画の変化を含めて追う必要があります。年間の見込みをそのまま複数工場に掛けて、削減や費用効果を拡大推計するのは早計です。
担当者の方が次の工場を選ぶ際は、月別・時間帯別の発電と消費を対応させ、稼働が落ちる月や屋根の維持管理も確認します。財務側は契約期間を通じた総費用、工場側は運転・保守の制約を持ち寄り、現地責任者と継続条件を決める方法が考えられます。
今後、年間の実発電量や自家消費、電力費、保守費が示されれば、長期契約を使った海外再エネ調達の再現性を評価できます。排出量の多い拠点から着手した今回の順番を、実績確認後の横展開へ結び付けられるかが観測点です。
まとめ
日本トムソンは、海外で排出量が最も多いベトナム工場に20年契約の太陽光レンタルを導入しました。次に確かめるべきは、予想された発電・削減効果と、工場需要や契約費用が長期に合うかです。国内実績を海外へ広げる際は、設備と制度だけでなく、現地の需要変動を含む継続条件が判断の軸になります。
関連記事: 仮説検証の進め方 / 新規事業の仮説の立て方
CONTACT
お問い合わせ
海外再エネ調達の横展開条件を定める
工場の稼働計画、長期契約の費用と役割、次拠点へ広げる検証項目を整理します。