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イトーキと松尾研究所、854人の行動データで生産性推定モデルを構築

ニュースの要点

イトーキと松尾研究所は2026年10月2日、働く人の行動と心身の状態などの関係を分析する「データ駆動型生産性推定モデル」を構築したと発表しました。働き方を改善することを目的とした共同研究の成果です。

イトーキ本社で働く854人を対象に、2025年12月の会議、オフィス内の移動、メール・チャットなど70種類の行動データとサーベイを分析しました。当日の行動と翌日の状態の関係を推定し、3つの職種で比較しています。

取得データは匿名化し、メールやチャットの内容は分析していません。今後は他の拠点や企業へ適用範囲を広げ、空間づくりや運用施策の提案につなげる方針です。

ニュース出典: イトーキ/原題「イトーキと松尾研究所、854名の行動データをAIで分析し、「データ駆動型生産性推定モデル」を構築」/2026-10-02/発表本文


イノベーション総研の考察

家具を納める仕事から、働き方を改善する仕事へ

オフィスへの投資は、机や椅子を入れ替えれば成果が出るとは限りません。同じ空間でも、会議の組み方や情報の受け渡しによって集中しやすさが変わります。顧客が知りたいのは、設備の状態だけでなく、仕事の進め方のどこに問題があるかです。

イトーキは2025年7月に共同研究を開始し、2026年2月にはオフィス向けAIエージェント群を発表しました。今回のモデルは、状態を把握した後に改善案を考えるための材料になります。

継続的な改善サービスに必要なのは、空間のデータを顧客の具体的な行動へつなぐことです。

イノベーション総研は、家具や空間の提供で終わらず、利用後の改善を継続して支える事業への接続に注目します。ただし、今回の発表だけで新たな有料契約や継続収益を獲得したとは確認できません。

推定した因果関係と、施策で生まれる効果は別に確かめる

今回の研究は、行動と状態を時系列で分析し、原因と結果の向きを探索するものです。発表では、会議の長さより数が翌日の心の状態に強く関わることや、中断されない集中時間との関係を説明しています。

しかし、会議を減らした職場と減らさなかった職場を比較して、売上や仕事の品質が改善したと示す発表ではありません。データから推定した関係と、実際に施策を変えて得た効果は分けて評価する必要があります。

モデルが示した改善候補は、実際の施策を変えたときの効果まで検証して初めて提案の根拠になります。

例えば、会議を減らして集中時間が増えても、必要な合意が遅れれば仕事全体は改善しません。試す前に、集中しやすさだけでなく、納期や手戻りも確認対象にすると、顧客への提案が一面的になるのを防げます。

854人の結果を、他社にもそのまま当てはめない

自社の本社を研究の場に使えることは、データ取得や職場環境の把握に有利です。一方、854人という人数だけで、工場や店舗、在宅勤務を含むすべての職場に結果が通用するとは言えません。

イトーキも、今回の分析結果は自社の結果であり、今後は職種、拠点、企業を広げるとしています。新規事業として顧客に提供するには、初期の研究にない働き方でも同じように改善候補を見つけられるかが次の課題です。

自社での実証は出発点であり、顧客の異なる条件でも価値が再現することが事業化の条件です。

担当者の方が自社データでサービスを開発する場合も、最初の実績と販売先の条件を並べてみてください。データを取れる人だけが対象になっていないか、繁忙期でも使えるか、導入に必要な機器や説明の負担はどの程度かを確かめることが大切です。

顧客が払う価値と、従業員が安心して使える仕組みをそろえる

行動データは、改善のために役立つ一方、従業員には監視や人事評価への利用を懸念させる可能性があります。今回、匿名化と通信内容を分析しない方針が明示されていることは、利用範囲を考える手掛かりです。

顧客側にも、分析レポートを受け取るだけでは費用を払い続けにくいという課題があります。改善案の実行支援まで含めるのか、誰が施策を決めるのか、効果が出ない場合にどう見直すのかを明確にする必要があります。

働き方の分析サービスは、改善効果とデータ利用への信頼の両方を確立する必要があります。

次に確認したいのは、他社での検証と、導入前後を比較した改善実績です。利用目的の説明、取得範囲、顧客側の運用負担も含めて示されれば、研究成果が継続サービスへ進めるかを判断しやすくなります。

まとめ

今回の成果は、働く人の状態を把握するだけでなく、改善候補を探るモデルを構築したことです。新規事業として注目すべき次の段階は、他社での再現性と施策の効果を確かめ、顧客が継続して利用する価値へ変えられるかです。

執筆:イノベーション総合研究所

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