投稿日:2026.09.25 最終更新日:2026.09.25
NTT西日本、彦根市で2年目の自動運転EVバス実証
ニュースの要点
滋賀県、NTT西日本、マクニカは2026年9月24日、彦根市で2年目となる自動運転EVバスの実証運行を行うと発表しました。10月12日から11月15日までの32日間、彦根駅と彦根城周辺を結ぶ約3キロメートルのルートで運行します。 車両は運転手が同乗する自動運転レベル2で、一般客は10月14日から無料で乗車できます。前年の約1.5キロメートルの往復ルートを彦根城のお堀内まで延ばし、路上駐車の回避、一部交差点での信号連携を新たに検証します。 車内ではAIアバターが多言語で観光・乗車案内を行い、周辺店舗を巡るデジタルスタンプラリーも実施します。目的は、運転士不足への対応だけでなく、公共交通の利用促進と観光客の回遊を両立できるかを確かめ、将来のレベル4実装につなげることです。
ニュース出典:滋賀県彦根市で2年目となる自動運転EVバスの実証運行を開始(滋賀県・NTT西日本・マクニカ、2026年9月24日)
イノベーション総研の考察
今回の実証は、自動運転バスが走れるかを初めて試すものではありません。前年の短い往復運行から、観光地を含む長いルート、信号連携、障害物回避、案内、周遊促進へ検証範囲を広げています。車両技術の確認から、地域交通サービスとして使えるかを確かめる段階へ進んだ点が重要です。
2年目は前年と違う不確実性を減らしている
2025年度は彦根駅といろは松駐車場を結ぶ約1.5キロメートルで、初めての実証運行を行いました。2026年度は約3キロメートルへ延ばし、彦根城前や大手前駐車場を含む一周ルートにします。距離を伸ばすだけでなく、観光客の多い場所や交差点を通ることで実運用に近づけています。
同じ走行試験を繰り返すのではなく、前回の結果を前提に検証項目を増やしている点に意味があります。新規事業の実証でも、前回分かったことと、今回初めて確かめることを分けなければ、事業化の不確実性は減りません。
複数年の実証は、同じ安全確認を繰り返すのではなく、毎年一段ずつ事業化の条件へ近づける必要があります。
レベル4を目指しても今回はレベル2である
発表では将来の自動運転レベル4を目標に掲げていますが、今回の運行は運転手が同乗するレベル2です。路上駐車を検知して避ける機能や、信号情報を受け取って停止・通過する制御を試します。これらは無人運行へ進むための要素ですが、今回だけでレベル4が実現するわけではありません。
社会実装には、安全に走れたかに加え、介入回数、停止からの復旧時間、遠隔監視の負担、天候や混雑による運行差を測る必要があります。技術の到達点と将来目標を分けて伝えることが、地域住民や利用者の信頼につながります。
将来目標を大きく掲げるほど、今回できることと人が補う範囲を明確にすることが重要です。
移動手段だけでなく観光消費まで検証する
運転士不足への対応だけを目的にすると、自動運転化で削減できる費用が主な評価軸になります。今回はAIアバターの観光案内とデジタルスタンプラリーを組み合わせ、バス利用者が彦根城周辺を巡り、店舗で買い物する流れも作ろうとしています。
これは交通サービスの費用負担を、運賃だけで考えない試みです。観光客の回遊や地域消費が増えれば、自治体、観光施設、商店など複数の受益者が費用を分担できる可能性があります。ただし、乗車数だけでなく立ち寄り先、消費額、再利用意向まで測る必要があります。
地域交通の事業性は運賃収入だけでなく、移動によって生まれる観光消費を含めて設計すると広がります。
実装判断には運行と地域効果の両方が要る
今回の一般運行は約1か月で、平日・休日とも1日8便、定員9人、運賃無料です。無料実証で得られる乗車数は、本格導入後の有料需要と同じではありません。予約率、実乗車率、時間帯別需要に加え、料金を払っても使うかを確かめる必要があります。
次に見るべきなのは、レベル4へ進むための技術課題だけではありません。恒久運行の主体、車両と遠隔監視の費用、運賃や自治体負担、既存のバス・タクシーとの役割分担が公表されるかです。技術と収支の両方がそろって初めて、実証から実装へ進めます。
PoCの出口は技術の合格ではなく、運営主体と費用負担を決められる証拠がそろうことです。
まとめ
彦根市の2年目の実証は、走行距離を延ばし、信号連携や障害物回避に加えて、観光案内と周遊促進まで対象を広げます。次に確認すべきなのは、安全性、介入回数、利用率、地域消費への効果と、本格運行を担う主体・費用です。実証を重ねるほど、前回と異なる不確実性を減らせるかが問われます。
執筆:イノベーション総合研究所
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