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推し活市場はグッズだけではない|企業9事例と新規事業の勝ち筋

推し活市場は、グッズを増やせば取れるのか。
ファンとの関係を、どう事業に変えるのか。

結論は、商品より先に、ファンとの関係を長く育てる設計が重要です。企業9事例から、収益構造と参入機会を読み解きます。

この記事の結論

推し活は、公式商品だけでなく、自主制作、旅行、飲食まで広がる市場です。

  • 約3.8兆円の市場を、4種類の消費に分けます。
  • 企業9事例を、5つの価値連鎖で解説します。
  • 4つの参入ルートと、権利・データ・炎上の懸念を示します。

推し活とは?「好き」を関係と自己表現へ変える行動

推し活とは、好きな人物、キャラクター、作品などを応援する活動です。商品を買うだけではありません。配信を見る、現地へ出かける、ファン同士で交流する、自分で応援方法を工夫する行動まで含みます。

「推し」は、アイドルや俳優に限りません。アニメ、ゲーム、スポーツ選手、動物、鉄道、企業のマスコットも対象になります。大切なのは、対象そのものより、生活者が特別な意味を感じていることです。

企業から見ると、推し活は一時的なブームではありません。コンテンツ、会員、物販、イベント、旅行、飲食をまたぐ消費行動です。一方で、ファンの気持ちは売上の道具ではありません。信頼を損なうと、数字以上の速さで関係が崩れます。

この記事の結論は、推し活の事業価値は、商品を増やすことより、ファンとの関係を長く育てる設計にあるということです。9社の事例から、利益が生まれる場所と、新規事業で参入するときの条件を読み解きます。

推し活市場は約3.8兆円。4種類の消費を分けて見る

推し活の市場規模は、どこまでを含めるかで数字が変わります。グッズとチケットだけを見るのか、遠征、宿泊、制作道具まで含めるのかで差が出るためです。まず、推計の範囲を確認します。

野村総合研究所(NRI)の2025年推計では、国内の推し活関連市場を約3.8兆円としています。推し活をしている人は約2,600万人で、生活者の3割を超えると推計しました。40歳以上も約1,200万人おり、若者だけの市場ではありません。

NRIは消費を4つに分けています。

消費の種類 主な内容 推計額の目安 企業が見るべき点
公式消費 公式グッズ、チケット、会費、配信 約1.5兆円 IP保有者へ直接入る
自主消費 自作グッズ、応援広告、装飾、撮影 約1.0兆円 ファンが応援方法を作る
付随消費 交通、宿泊、飲食、通信、機器 約1.1兆円 異業種にも機会が広がる
コラボ消費 企業コラボ、限定商品、共同企画 上記を横断 新しい接点を作りやすい

公式以外の消費が約6割を占めるため、交通、小売、地域事業者にも機会があります。自社がどの消費を増やせるかを決めてから、提携先を選びます。

推し活市場3.8兆円を公式、自主、付随、コラボの4つの消費に分けた図
図1|推し活市場は公式消費だけではない。NRIの2025年推計をもとにイノベーション総研作成。

公式消費だけで市場を捉えると、約6割を見落とします。たとえばライブ遠征では、チケット以外に新幹線、ホテル、飲食、現地での撮影が発生します。交通会社や商業施設が参入できるのは、この付随消費があるからです。

別の角度では、クリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査が、2024年の国内クリエイターエコノミーを2兆894億円と推計しています。2021年の1兆3,574億円から年平均約15.5%で成長しました。こちらは推し活市場と範囲が異なりますが、個人や小規模チームがコンテンツを作り、直接収益化する基盤が広がっていることを示します。

利益が残るのは、ファンとの接点を自社で持つ企業

市場が大きくても、参加すれば利益が出るわけではありません。制作費、出演料、在庫、物流、会場、決済手数料が重なるためです。売上より先に、顧客接点と費用構造を見ます。

ファンとの接点には、SNS、配信、会員、EC、イベント、店舗があります。SNSは人を集めやすい一方、表示ルールやアカウント停止の影響を受けます。会員や自社ECは立ち上げに手間がかかりますが、継続率や購入履歴を自社で把握できます。

強い事業は、無料の接点から有料の接点まで段階を持っています。

関係の段階 代表的な接点 収益 見る指標
知る SNS、短い動画、検索 広告、送客 新規接触、視聴完了
好きになる 配信、作品、無料コミュニティ 広告、投げ銭 再訪、視聴時間
応援する 会員、限定コンテンツ、グッズ 月額、販売 継続率、購入率
会いに行く ライブ、店舗、旅行、地域企画 チケット、物販、周辺消費 来場、客単価、回遊
一緒に作る 投稿企画、二次創作、投票 継続、商品開発 参加率、再購入

重要なのは、すべてを自社で持つことではありません。どの接点で本人同意を得てデータを持ち、どこを提携先に任せるかを決めることです。データがSNSやチケット会社に分散すると、同じ人が配信、商品、イベントをどう移動したか分かりません。

推し活の業界構造は5層で捉える

推し活ビジネスは、IP保有会社とグッズ会社だけではありません。作品や演者を育てる層から、ファンの体験を生活圏へ広げる層まで、5つに分けると参入位置が見えます。

主な役割 代表的な売上 主な課題
1. IP創出・育成 作品、キャラクター、演者を作る 権利収入、広告、出演 ヒットの不確実性、育成負荷
2. 制作・運営基盤 配信、3D、編集、権利管理を支える SaaS、制作費、手数料 技術更新、属人化
3. 配信・発見 ファンが知り、見る場を作る 広告、課金、送客 外部基盤への依存
4. 会員・直接課金 コミュニティ、EC、チケットを運営 月額、販売、手数料 継続率、個人情報管理
5. 物販・体験・ライセンス 商品、ライブ、店舗、旅行へ広げる 物販、入場、ライセンス 在庫、安全、体験品質

後発企業は、自社の資産が効く一層から入るのが基本です。顧客接点まで持てない場合は、会員やECの事業者と役割を分けます。

推し活ビジネスをIP創出から物販・体験まで5層で示した図
図2|推し活ビジネスの5層。Deep Researchと各社の公式情報をもとにイノベーション総研作成。

大手IP企業は、複数の層をつなぎます。新規参入企業は、最初からIPを作る必要はありません。物流、会員管理、旅行、店舗運営、権利確認など、自社が持つ機能を一つの層へ差し込めます。

ただし、便利な裏方だけでは価格競争になりやすい点に注意が必要です。特定ジャンルのファン行動を理解し、権利者とファンの双方に価値を返せる設計が差になります。

企業9事例で分かる、推し活ビジネスの作り方

ここからは、実際の企業が何をしているかを具体的に見ます。IPを作る会社、関係を支える会社、周辺消費を取り込む会社では、勝ち方が異なります。計画と実施済みの取り組みも分けて読みます。

企業・サービス 主な位置 取り組み 実装段階
ANYCOLOR/にじさんじ IP、配信、物販、イベント VTuberを起点に商品とリアル体験を展開 商用運用
COVER/hololive production IP、配信、物販、ライブ 配信で得た支持をメディアミックスへ拡張 商用運用
バンダイナムコ IP、商品、ゲーム、施設 IP軸で360度のファン接点を作る 全社戦略
サンリオ IP、ライセンス、デジタル、施設 長寿IPを日常、ゲーム、映像、店舗へ展開 商用運用・計画
HYBE/Weverse 会員、配信、EC、ライブ コミュニティ・コンテンツ・商取引を統合 商用運用
note 制作、販売、会員 個人が記事や会員制で直接収益化 商用運用
THECOO/Fanicon 会員、配信、EC、チケット 有料コミュニティの運営を一体化 商用運用
JR東海/推し旅 交通、地域体験 移動中・現地限定の音声やARを提供 商用運用
Oshicoco 自主消費、商品、メディア 推し活グッズとライセンス企画を展開 商用運用

IPを持たない企業にも、関係を支え、生活圏へ広げる役割があると分かります。次の図では、各社が主に担う接点を並べます。

推し活の企業9事例を価値連鎖上の役割で整理した図
図3|企業9事例の主な役割。各社の公式情報をもとにイノベーション総研作成。

ANYCOLORは、配信から物販と現地体験へ広げる

ANYCOLORは「にじさんじ」を運営します。VTuberの配信を入口に、ボイス、ぬいぐるみ、衣装商品、ライブ、展示などへ広げています。2026年に公表したプロジェクトには、各地を巡るぬいストア、ソロライブ、体験型企画が並びました。

特徴は、デジタルの配信だけで関係を終わらせないことです。日々の配信で人物や物語への理解が深まり、商品やイベントが「応援した証し」になります。小売企業が学ぶなら、商品だけを作るのではなく、発売前後の物語と交流まで設計する必要があります。

COVERは、VTuberを長く使えるIPへ育てる

COVERは「hololive production」を運営します。同社の事業説明では、配信やライブに加え、商品、ライセンス、コミック、アニメへ活動機会を広げる方針を示しています。2026年には台湾のイベントで限定商品とファンミーティングを組み合わせました。

配信者の人気だけに依存せず、キャラクター、音楽、物語、海外イベントへ接点を増やす考え方です。一方、出演者の稼働には限界があります。運営会社には、休養、権利、品質、危機対応を支える仕組みが必要です。

バンダイナムコは、IPをゲームから商品・施設へ回す

バンダイナムコは、ゲーム、玩具、映像、音楽、アミューズメント施設を持ちます。統合レポート2025では「Connect with Fans」を中長期ビジョンに置き、IPファンとの360度の接点を作る方針を示しました。

同じIPを違う商品へ貼るだけではありません。ゲームで知り、模型を作り、カードで交流し、施設へ出かける流れをグループ内外で設計します。新規事業では、自社の一商品ではなく、ファンの一年の行動を描くことが重要です。

サンリオは、長寿キャラクターを生活の場へ戻し続ける

サンリオは、キャラクターのライセンス、商品、テーマパーク、デジタル施策を展開します。中期ロードマップの更新資料には、ゲーム、アニメ、YouTube、Sanrio+、スポーツ会場やカフェのイベントが並びます。

強みは、子どもの頃に好きだった人が、大人になって再び接点を持てることです。周年、投票、限定企画は、既存IPを古く見せず、新しい参加理由を作ります。長寿IPでは、認知より「戻ってくるきっかけ」が成長を支えます。

HYBEとWeverseは、交流・視聴・購入を一つにまとめる

HYBEは、音楽レーベルに加え、ライブ運営、商品、ライセンス、ファンプラットフォームを持ちます。公式の事業紹介によると、Weverseはコミュニティ、ライブ配信、コンテンツ、買い物を一つの場にまとめています。

ファンが別々のサービスを行き来しなくてよいため、運営側も行動をつなげて理解できます。ここで価値を持つのは、機能数より共通IDです。ただし、国をまたぐ決済、配送、個人情報、出演者との距離感を同時に管理する必要があります。

noteは、小さな発信を直接課金へ変える

noteでは、個人が記事や音声を販売し、月額のメンバーシップを運営できます。noteの2026年分析では、有料記事が約30万件あり、売上上位1,000人の年間平均売上は約1,515万円でした。これは上位層の平均であり、一般的な収入を示す数字ではありません。

それでも、広告だけに頼らず、少人数の読者から直接支援を受ける仕組みの存在は重要です。新規参入では、人気者を集める競争より、専門家や地域の作り手が続けやすい販売、会員、業務支援に余地があります。

Faniconは、会員・交流・販売を裏方から支える

THECOOが提供するFaniconは、有料会員制のファンコミュニティです。サービスサイトでは、3,800組、48.5万人が利用するとしています。投稿、配信、チャットに加え、EC、チケット、抽選企画などを運営できます。

ファンが複数の外部サービスへ分かれにくく、運営者は継続率や購入を見ながら企画を改善できます。数字は同社公表値ですが、ファン運営の機能が単体ツールから統合基盤へ移っていることは分かります。

JR東海の「推し旅」は、移動時間まで体験に変える

JR東海の「推し旅」は、作品や人物との企画を移動へ組み込みます。列車の速度や位置情報を使い、車内や現地で限定音声、AR、特典を楽しめる企画があります。

これは、推し活の付随消費を分かりやすく捉えた例です。交通を割引するだけでなく、移動そのものをコンテンツに変えています。地域企業は、会場周辺の飲食、宿泊、回遊を束ねることで参加できます。

Oshicocoは、ファンが自分で作る応援方法を商品化する

Oshicocoは、推し活グッズの販売とメディア運営を行います。ペンライトケース、トレーディングカードの収納、撮影用の小物など、特定IPに限らない道具を扱い、ライセンス商品も展開しています。

自主消費の特徴は、ファン自身が色、見せ方、持ち運び方を選ぶことです。権利者の公式商品と競うのではなく、公式商品を大切に使い、共有するための周辺用品を作れます。ここには、収納、保護、撮影、交換、遠征といった細かな困り事があります。

9事例から見えた推し活ビジネスの勝ち筋

各社の規模や業種は違いますが、共通する設計があります。華やかな企画の裏側で、関係、権利、運用を地道につないでいます。成功条件を5つに絞ります。

成功条件 具体的な設計 失敗しやすい状態
無料から有料への段階 SNS、配信、会員、商品、現地体験をつなぐ 最初から高額商品だけを売る
共通IDと同意 接点をまたいで本人の許可を得て理解する 外部SNSのフォロワー数だけを見る
参加できる余白 投票、投稿、色選び、現地回遊を用意する 企業が一方的に正解を決める
権利と安全の運用 ガイドライン、審査、通報、返金を整える 問題が起きてから担当を探す
続けられる供給 出演者、制作、在庫、物流を平準化する 一人の人気と稼働へ集中する

とくに重要なのは、ファンを「高く買う人」だけで見ないことです。投稿する人、友人を誘う人、現地へ行く人、長く見守る人は、別の価値を作ります。客単価だけを上げる施策は、参加しにくさや疲れにつながります。

また、継続率はサービス品質だけで決まりません。推し本人の活動、作品の更新、ファン同士の雰囲気にも左右されます。事業者は、自社で変えられる原因と変えられない原因を分けて見る必要があります。

NEXT STEP

次のステップ

ファンの熱量を、長く続く関係へ。

自社の顧客接点、場所、運営力を棚卸しし、推し活市場で担える一つの役割を具体化します。

推し活で狙える4つの新規事業

新規参入で大切なのは、人気IPを持っているかではありません。既存の顧客、場所、技術、物流、専門知識を、ファンの困り事へ変換できるかです。4つの参入方法を示します。

参入方法 顧客 提供価値 収益モデル 提携先 最初に確かめること
業界特化のFanTech IP保有者、芸能、スポーツ 会員、EC、チケット、分析を統合 月額+取引手数料 決済、物流、本人確認 一つの接点統合で継続率が上がるか
権利処理付きUGC基盤 IP保有者、ファン、広告主 二次創作や応援広告の許諾を簡単にする 審査料+ライセンス料 権利者、法律家、媒体 許諾時間と違反件数を減らせるか
推し旅・地域回遊 交通、自治体、施設、IP保有者 移動と現地体験を一つにする 企画料+送客+販売 交通、宿泊、店舗 来訪増と権利費を両立できるか
推し活運営のAI支援 事務所、クリエイター 問い合わせ、翻訳、在庫予測を支援 SaaS+運用支援 AI、CS、物流 人の確認を残して負担が減るか

4案に共通するのは、ファンの気持ちそのものを売らないことです。権利確認、移動、運営、問い合わせなど、応援を続けるための具体的な負担を減らします。

推し活で狙える4つの新規事業と参入条件を示した図
図4|推し活領域の4つの参入方法。市場構造と9事例をもとにイノベーション総研作成。

一つ目は、特定業界に絞ったファン基盤です。汎用コミュニティ機能だけでは、大手と競合します。スポーツなら座席、試合日程、選手別商品をつなぐなど、業務固有の機能が必要です。

二つ目は、権利処理付きのUGC基盤です。文化庁は、ファンアートなどの二次的著作物を公開する場合、原則として権利者の許諾が必要と説明しています。禁止するだけでなく、権利者のガイドラインを機械で確認し、申請、課金、削除まで扱う仕組みに機会があります。

三つ目は、交通や地域への展開です。IP保有者には新しい体験と収益を、地域には来訪と回遊を返します。会場だけでなく、駅、商店街、飲食店まで体験をつなげる運営力が差になります。

四つ目は、クリエイター運営のAI支援です。翻訳、問い合わせ分類、商品需要の予測、配信の切り抜き候補などを補助できます。ただし、本人になりすました返信や、権利未確認の学習・生成は避けます。AIエージェントの記事で解説したように、AIへ任せる作業と、人が持つ判断・責任を分ける必要があります。

参入前に解くべき権利・データ・炎上の懸念

推し活は感情と権利を扱うため、一般のECより運用上の論点が多くなります。売れる企画を考える前に、誰が止め、説明し、補償するかを決めます。

懸念 起きること 予防策 最終責任
著作権・商標・肖像 無許諾販売、削除、損害 許諾台帳、用途別審査、期限管理 商品・企画の運営者
ステルスマーケティング 広告であることが伝わらない PR表示、依頼記録、投稿確認 表示を依頼した事業者
個人情報 行動履歴や会員情報が漏れる 最小取得、同意、権限制御 データ管理者
炎上・誹謗中傷 本人とファンが傷つく 行動規範、通報、迅速な仲裁 コミュニティ運営者
過度な課金 未成年や生活者の負担が増える 上限、年齢確認、返金説明 販売・決済事業者
在庫・転売 廃棄、不足、不公平感が出る 受注生産、抽選、購入制限 商品事業者
出演者の負担 稼働過多、休止、品質低下 休養、代替企画、公開ルール 所属・制作事業者

消費者庁のステルスマーケティングQ&Aでは、事業者の表示であることが分からない広告を規制対象としています。ファンの自然な投稿へ見せた依頼は、信頼と法令の両方を損ないます。

子どもや若者が参加する企画では、焦りをあおる販売にも注意が必要です。ランダム商品、期間限定、順位競争を重ねるほど売上は伸びても、長期の関係が傷むことがあります。年齢、累計金額、返品、問い合わせを設計に入れます。

推し活への参入を4つに分けて考える

参入:固有の顧客・場所・運営力がある

一ジャンルと一接点に絞り、権利者と始めます。

提携:顧客接点はあるが、IPや権利運用がない

権利者、FanTech、物流と組み、自社の現場を活かします。

待機:人気は見えるが、継続率や採算が分からない

小さな共同企画で、粗利と再訪を確認します。

見送り:流行語だけが参入理由になっている

ファン不在の企画は、短期の物販で終わりやすいと考えられます。

自社は参入・提携・待機・見送りのどれか

市場の成長だけで参入を決めると、自社の役割が曖昧になります。自社が持つ資産と、引き受けられる責任を照らして判断します。次の4分類が実務的です。

判断 当てはまる条件 次の行動
参入 ファンの未解決課題と、自社固有の接点がある 一ジャンル・一接点へ絞る
提携 顧客や場所はあるが、IP・運営・権利がない 権利者、FanTech、物流と組む
待機 人気は見えるが、継続率や採算が分からない 小さな共同企画でデータを得る
見送り ファン不在で、流行語だけを根拠にしている 既存顧客の別課題を優先する

見送りは失敗ではありません。とくに、一度のイベント売上だけが根拠の場合、毎年新しいIPを探し続ける事業になります。権利費、在庫、集客費を引いた後に利益が残るかを確認します。

逆に、既存事業にファンの集まる場所、移動、保管、決済、専門知識があるなら、IPを保有していなくても機会があります。提携で始め、運営データを蓄積し、自社の強みを深める方が安全です。

イノベーション総研は、推し活を事業構造から評価する

イノベーション総研では、テーマの話題性だけで新規事業を選びません。顧客の行動、価値連鎖、競合、権利、必要な提携、撤退条件まで一つの判断表にします。

推し活では、次の問いを重視します。

  • 誰の、どの応援行動に未解決の不便があるか
  • 公式消費、自主消費、付随消費のどこを扱うか
  • ファン、推し、権利者、地域の誰へ価値を返すか
  • 顧客接点とデータを、同意の上で誰が持つか
  • 在庫、返金、通報、出演者保護を誰が担うか
  • 権利費と運営費を引いても継続できるか

人気IPを使えることは、参入条件の一つにすぎません。自社が持つ顧客基盤や現場を棚卸しし、提携によって不足機能を補います。新規事業の無料診断では、参入、提携、待機、見送りのどこにいるかを整理できます。

推し活ビジネスでよくある質問

推し活市場に参入するときによく出る疑問をまとめます。言葉の定義より、事業判断に必要な点へ絞ります。

Q. 推し活とは、どこまでの行動を指しますか?

A. 好きな人物や作品を応援する行動全般です。公式商品やチケットの購入だけでなく、自作グッズ、投稿、ファン交流、遠征、飲食、撮影なども含みます。

Q. 推し活の市場規模はどれくらいですか?

A. NRIは2025年、国内の関連市場を約3.8兆円と推計しました。公式、自主、付随、コラボの消費を含む数字であり、グッズ市場だけを示すものではありません。

Q. IPを持たない企業でも参入できますか?

A. 可能です。交通、宿泊、店舗、物流、収納、決済、権利管理など、既存の強みをファンの行動へつなげます。権利者との提携と役割分担が前提です。

Q. 推し活グッズは、自由に作って販売できますか?

A. 他者の著作物、商標、肖像などを使う場合、原則として権利確認が必要です。権利者が公開するガイドラインの範囲と、個人利用・商用利用の違いを確認します。

Q. 推し活ビジネスで最初に見るKPIは何ですか?

A. 売上だけでなく、再訪率、会員継続率、購入者の重複、企画参加率、問い合わせ、返品、権利費を含む粗利を見ます。関係が長く続くかを確認するためです。

まとめ|推し活は、ファンとの関係を育てる事業である

推し活は、グッズだけで約3.8兆円になる市場ではありません。公式、自主、付随、コラボの消費を合わせた広い行動です。そのため、IP企業だけでなく、交通、地域、小売、SaaS、物流にも参入余地があります。

一方、ファンの熱量を短期売上へ変えるだけでは続きません。成功条件は、無料から有料までの段階、共通ID、参加できる余白、権利と安全、続けられる供給です。

新規事業では、人気IP探しから始めず、自社が持つ接点と未解決の困り事を確認します。その上で、参入、提携、待機、見送りを決めることが重要です。具体的な機会領域や提携先を整理したい場合は、イノベーション総研へご相談ください

参照した主な資料

市場の定義と企業の実装を確認するため、次の公的資料・企業公式情報を参照しました。推計値は各資料が定める対象範囲に沿って記載しています。

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ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

野村総合研究所、クリエイターエコノミー協会、経済産業省、文化庁、消費者庁、ANYCOLOR、COVER、バンダイナムコ、サンリオ、HYBE、note、THECOO、JR東海、Oshicocoの公式資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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