投稿日:2026.09.13 最終更新日:2026.09.20
ペット市場は約2兆円へ。8社に見る事業機会と成長の条件
ペット市場の成長を、自社の事業機会に変えられるか。
8社の取り組みから、選ばれる理由と参入条件を整理します。
ペット市場は、フードや日用品だけの市場ではありません。見守り機器、預かり、動物病院、保険まで、暮らしを支える仕事が広がっています。一方で、「ペットを家族として大切にする人が多い」だけでは、新規事業の根拠として不十分です。事業機会を探すなら、飼い主が繰り返し困る場面を、一つ減らせるかを考えます。この記事では、国内市場の規模を確認したうえで、ユニ・チャームやイオンペットなど国内外8社を紹介します。何を提供し、誰に選ばれ、どんな負担を引き受けているのか。その違いから、自社に合う参入方法を整理します。
この記事の結論
飼い主が繰り返し困る場面を、一つ減らせるかを考えます。
- 約2兆円の市場を、対象顧客と使う場面に分ける
- 国内外8社の、提供物と引き受ける仕事を比較
- 販売後の運営も含め、自社に合う参入方法を選ぶ
目次
国内のペット市場はどこまで拡大している?
国内のペット関連市場は、約2兆円に近づいています。ただし、確定した実績と将来の予測は区別が必要です。
矢野経済研究所が2026年9月に発表した調査では、2025年度は1兆9,504億円の見込みです。2026年度は1兆9,835億円と予測しています。対象は日本国内で、消費者への販売金額をもとにした市場規模です。矢野経済研究所の調査
次の図は、この二つの数字を同じ尺度で比べたものです。過去の確定実績が連続して並ぶグラフではありません。

この数字は、一社が販売できる商品の市場ではありません。フードから診療、保険、葬祭までを合わせた金額です。たとえば見守り機器を開発する企業が、約2兆円をそのまま販売対象と考えるのは無理があります。
市場金額が増えても、購入者が増えたとは限らない
市場金額は、買う人の数だけでなく、価格や購入内容でも変わります。高いフードへの買い替えが進む場合と、購入する家庭が増える場合では、事業の売り方も変わります。
同調査は、高付加価値商品の需要を指摘しています。一方、猫用フードでは中低価格帯の需要も堅調としています。「すべての飼い主が高価格品を求めている」とは読めません。矢野経済研究所の市場動向
飼育頭数にも別の動きがあります。ペットフード協会によると、2025年の犬の飼育頭数は682.0万頭です。前年より2万4千頭増えましたが、犬を飼う世帯の比率は低下しています。頭数と飼育世帯数は、同じ方向に動くとは限りません。ペットフード協会の公表内容
そこで市場調査では、「市場は伸びるか」の次に、対象を絞ります。犬か猫か、毎日の消耗品か、ときどき使うサービスか。どの家庭が、何のために、今の支出を変えるのかを考えることが大切です。
ペット市場の業界構造を、暮らしの場面で整理する
ペット産業を「メーカー」「小売」「病院」とだけ分けると、企業がどうつながるか見えにくくなります。まずは、飼い主が必要とする場面から整理してみましょう。
| 暮らしの場面 | 主な商品・サービス | 代金を払う理由 | 事業者が引き受ける仕事 |
|---|---|---|---|
| 食事と清潔を保つ | フード、トイレ用品、手入れ用品 | 毎日の世話を無理なく続けたい | 品質、補充、使いやすさを保つ |
| 日々の様子を知る | カメラ、首輪型機器、記録アプリ | 留守中や気づきにくい変化を把握したい | 計測、通知、設定・故障への対応 |
| 外出中の世話を頼む | ホテル、シッター、散歩代行 | 自分が不在でも世話を続けたい | 受け入れ条件、担当者、緊急連絡を整える |
| 専門家の支援を受ける | 動物病院、検査、専門的なケア | 自分だけでは判断・対応できない | 専門人材と設備、説明、引き継ぎを確保する |
| 費用や将来に備える | 保険、介護・葬祭関連の支援 | 大きな負担に備えておきたい | 契約範囲や利用条件を明確にする |
同じ会社が複数の場面を支えることもあります。反対に、計測機器だけ、配送だけを専門にする会社もあります。広い領域を持つことと、一つの仕事に強いことは、異なる戦い方です。
次の図では、飼い主が日常で使う商品と、必要なときに利用する専門サービスを分けました。データを測るだけで、その後の相談まで自動的につながるわけではありません。

たとえばアプリに記録が増えても、飼い主が何を確認すればよいか分からなければ、負担は残ります。必要な情報を見返せるか、家族で共有できるか。こうした小さな使い勝手も、サービスの価値に含まれます。
保険の引受や補償の違いは、別の専門領域です。本稿では市場全体の位置づけにとどめます。具体的な会社比較は、ペット保険の主要企業と新規事業を整理した記事をご覧ください。
日本の4社は、毎日のどんな困りごとを減らしている?
ここからは、実際の事業を見ていきます。比較するのは会社の優劣ではなく、提供する仕事の違いです。まず8社の位置づけをまとめ、その後で具体的に解説します。
| 企業 | 主な提供物 | 利用する人・顧客 | 事業の段階と見る点 |
|---|---|---|---|
| ユニ・チャーム | フード、トイレ用品など | 日常の世話をする飼い主 | 商品販売。清掃や交換の負担まで改善 |
| イオンペット | PETEMOの用品販売・各種サービス | 店舗周辺の飼い主 | 店舗・サービス運営。場所と専門人材を組み合わせる |
| トレッタキャッツ | 猫用トイレ型の計測サービス | 猫の様子を記録したい飼い主 | 商品・サービス提供。普段の行動から測る |
| RABO | CatlogとCatlog Board | 猫の行動や排泄を把握したい飼い主 | 機器と会員サービス。記録を続けて使う |
| Mars Petcare | フード、動物病院、検査関連事業 | 飼い主、動物医療の利用者など | 複数分野で商用展開。グループとして整理 |
| The Farmer’s Dog | 犬に合わせた食事の定期配送 | 食事の選択や準備を簡単にしたい飼い主 | 米国でサービス提供。分量・配送まで含める |
| Rover | シッターや散歩などの予約仲介 | 世話を依頼する飼い主と受託者 | 仲介サービス提供。予約後の支援も重要 |
| Loyal | 犬の健康寿命に関する医薬品開発 | 将来の獣医療市場を想定 | 開発段階。販売中の商品と分けて見る |
表の内容は、以下に示す各社の公式情報をもとに整理しています。海外での提供を、日本でも同じ条件で利用できるという意味では使っていません。
ユニ・チャーム:トイレ用品を、掃除のしやすさから改良する
ユニ・チャームは、ペットフードに加え、猫のトイレや犬の排泄用品などを展開しています。分かりやすいのが、2026年3月に発売した「デオトイレ 快適ワイドリラックス+」です。
猫が使う空間を確保するだけでなく、砂を捨てやすい構造を採用しています。使うペットと、掃除する飼い主の両方を考えた商品です。ユニ・チャームの製品発表
この事例から学べるのは、革新が必ずしも電子機器の追加ではないことです。砂を交換するとき、容器を持ち上げるとき、汚れを落とすとき。その一手間を減らすことにも価値があります。
参入する企業は、「ペット向けの素材がある」から一歩進めて考えます。自社の素材や成形技術で、世話のどの動作が楽になるのか。既存用品と一緒に使えるか、交換品が買いやすいかまで見ると、開発の狙いが具体的になります。
イオンペット:買い物と、専門的なサービスの接点を持つ
イオンペットのPETEMO(ペテモ)は、用品販売だけのブランドではありません。グルーミング、ペットホテル、動物病院なども展開しています。グルーミングとは、毛のカットだけでなく、体のお手入れを含むサービスです。PETEMOの紹介
たとえば浦和美園店の公式案内には、用品、グルーミング・ホテル、動物病院が掲載されています。ただし、営業時間や受付はそれぞれ異なります。すべての店舗に、同じサービスがあるわけでもありません。浦和美園店のサービス案内
ここでの強みは、商品を並べる場所だけではありません。飼い主が相談し、実際の世話を任せられる接点があることです。一方、予約枠や人員が足りなければ、売り場に来た人を受け入れられません。
店舗を持つ企業の新規事業なら、すべてを自社で運営する必要はありません。用品の販売に、地域の専門店への予約や案内を組み合わせる方法も考えられます。その場合も、受け付ける側と実際に対応する側で、説明が食い違わない仕組みが必要です。
トレッタキャッツ:猫がトイレを使う間に、日々の記録を取る
トレッタは、猫用トイレに計測機能を組み合わせたサービスです。体重、尿量、トイレの利用回数などを記録し、アプリで確認できます。カメラによる個体識別で、複数の猫の記録にも対応しています。トレッタの公式紹介
飼い主が毎回数値を入力するのではなく、猫の普段の行動から記録する点が特徴です。ただし、自動で掃除をするトイレではありません。記録を取ることと、清掃を代行することは別の機能です。
さらに興味深いのが、2025年4月のアプリ更新です。体重や尿量などの計測値を、利用者が修正できるようにしました。それまでは除外しかできなかったデータを、見直して残せるようにしています。計測値の手動修正機能
これは、見守り事業の現実を考える材料になります。自動計測を入れれば、すべての手間が消えるわけではありません。おかしな記録が出たときに、飼い主が困らず直せるか。記録の質を保つ仕組みまでが、商品の使いやすさを左右します。
RABO:首輪型機器と、既存トイレの下に置く機器を使い分ける
RABOのCatlog(キャトログ)は、猫の首元につける機器で、食事や睡眠などの行動を記録するサービスです。Catlog Boardは、普段のトイレの下に置いて、体重や排泄の様子を記録する別の機器です。Catlogの製品情報
同じ「猫の見守り」でも、装着するものと、生活空間に置くものでは利用条件が変わります。首元の機器を受け入れるか、家のトイレに設置できるか。技術の性能だけでは決まらない部分です。
同社は機器の購入に加え、月額の会員サービスを設けています。こうした事業では、買った日の満足だけでなく、数か月後も記録を見る理由が必要です。通知が多すぎないか、機器の管理が負担にならないかも重要になります。
なお、同社は医療機器ではなく、診断や治療を目的にしないと明記しています。日々の様子を把握する機能を、「病気を判断してくれる機能」と言い換えてはいけません。
海外の4社から見る、ペット市場の広がり
海外事例には、国内とは異なる販売方法や事業の組み合わせがあります。ただし、規模の大きさや目新しさだけをまねても、日本の顧客が使う理由にはなりません。
ここでは、提供内容が確認できる3社と、開発段階の1社を分けて紹介します。
Mars Petcare:食事だけでなく、動物病院や検査まで展開する
Mars Petcareは、ROYAL CANINなどのフードに加え、BanfieldやVCAなどの動物病院、Antechの検査関連事業を持ちます。本稿では、これらを別々の企業事例として水増しせず、グループ一つの事例として扱います。Mars Petcareの事業・ブランド
注目すべきなのは、同じペットの暮らしでも、食事を買う場面と、専門家を頼る場面の両方に接点があることです。ただし、グループに属するだけで、顧客の情報が自動的に共有されるとはいえません。
この広がりは、新規参入企業が全部をそろえるべきだという意味ではありません。むしろ、自社がどこを担い、どこで専門企業に引き継ぐかを考える材料です。
たとえば日常記録をまとめる事業であれば、診療そのものまで抱えるのか、それとも飼い主が記録を持参しやすくするのか。提供する範囲を分けることで、必要な人材や投資も変わります。
The Farmer’s Dog:フードを、分量と配送まで含むサービスにする
米国のThe Farmer’s Dogは、犬の情報に合わせて食事のプランを作り、定期的に届けています。飼い主は犬の特徴を入力し、量を調整した食事を受け取ります。The Farmer’s Dogのサービス
冷凍のFresh商品は、加熱調理済みです。生肉をそのまま届けるサービスではありません。公式FAQでは、冷凍商品と常温保存できるInstant Freshを区別しています。配送の時期や量も変更できます。商品の形態と配送に関する公式FAQ
この事例の面白さは、原材料の説明だけで売っていない点です。何を、どれくらい用意し、いつ補充するか。その選択や準備の手間を、商品と一緒に引き受けています。
食品や物流に強みを持つ企業なら、この視点は参考になります。一方、冷凍配送、保管場所、食べ残し、配送変更の対応も必要です。定期購入の申し込みを増やすだけで、運営が楽になるわけではありません。
Rover:預かり先を探す人と、世話をする人をつなぐ
Roverは、ペットの預かり、訪問での世話、散歩などを予約できる仲介サービスです。サービスごとに、誰の家で世話をするか、どの時間を頼めるかが異なります。Roverが扱うサービス
預かり施設を一律に自社保有するホテル事業とは異なり、担い手と飼い主をつなぎます。利用料・手数料は、予約や決済の機能に加え、支援や安全面の運営にも使うと説明しています。Roverの手数料の説明
ここで重要なのは、「登録者がいる」ことと、「必要な日時に頼める」ことが違う点です。近所に担い手がいても、休日に空きがなければ予約は成立しません。ペットの種類や性格によって、受け入れられる条件も変わります。
日本で似た事業を考えるなら、全国の登録者数を最初の目標に置くより、一つの地域で予約が成立するかを見ます。直前のキャンセルや、予定より帰宅が遅れる場合に、誰が対応するかまでが商品です。
Loyal:販売中のサービスと、研究開発の機会を分けて見る
Loyalは、犬の健康寿命に関する医薬品を開発する米国企業です。2026年2月には、開発を進めるための資金調達を発表しています。Loyalの開発資金に関する発表
ここは、フードや見守り機器と同じ段階ではありません。獣医師向けの公式案内では、条件付き承認や市場提供は進行中とされています。研究開発の進捗を、すでに販売できることや、効果の確定と混同しないことが重要です。Loyalの獣医師向け案内
事業として見るなら、研究費、試験、製造、承認までの道のりを含む領域です。消費者向けアプリを短期間で売る事業とは、必要な資金も専門性も違います。
新規参入の考え方も変わります。自社で薬を開発する以外に、研究用の計測や試験の運営を支える可能性もあります。ただし、これはイノベーション総研の事業仮説であり、Loyalがそうした提携先を募集しているという意味ではありません。
自社の状況から、次に確認することを選ぶ
該当する項目を開くと、記事の読む場所がわかります。点数を付ける診断ではありません。
NEXT STEP
次のステップ
自社の強みで、どの世話を楽にできるか
用品、食事、見守り、預かり。自社の技術や顧客接点を起点に、使う人、支払う人、販売後に支える仕事を整理します。
高価格化と便利さは、同じ成長の理由ではない
8社を並べると、ペット市場の変化は「高級品が売れる」の一言では整理できません。少なくとも、三つの異なる価値が見えてきます。
一つ目は、毎日の手間を減らすことです。トイレの清掃や、食事の準備と補充が分かりやすい例です。大切なのは高機能の数ではなく、実際に減る作業です。
二つ目は、見えなかった様子を把握できることです。見守り機器がこの役割を担います。ただし、情報が増えるだけでは、かえって確認の手間も増えます。見やすさや通知の頻度を含めた使い勝手が必要です。
三つ目は、自分だけではできない世話を任せられることです。預かりや専門サービスが該当します。この場合、アプリの画面より、実際に引き受ける人の体制が重要になります。
この三つを混ぜると、事業案がぼやけます。「健康によく、便利で、安心」という説明では、何のための料金か分かりません。最初の商品では、飼い主が今もっとも困っている場面を一つ選びます。
その際は、ペット側の負担も同時に確認します。飼い主の入力は楽になっても、装着や利用をペットが嫌がるなら、使い続けられません。飼い主の便利さと、ペットの過ごしやすさの両方を考える必要があります。
売上だけでなく、使い続けてもらう原価を見る
ペット関連の事業は、購入後にも仕事が残ります。機器の設定、配送の変更、予約の調整などです。ここを見ずに価格を決めると、売れるほど対応が増えることがあります。
定期配送では、商品以外の費用を数える
フードを定期配送するなら、原材料や製造費だけでは足りません。梱包、保管、送料、決済、問い合わせの費用がかかります。量の変更や配送の停止にも対応します。
たとえば販売価格から商品原価だけを引いた金額は、そのまま利益ではありません。一回の配送で残る金額を出すなら、届ける費用と、その注文を支える対応費用まで差し引きます。
ここでは各社の利益率を推定していません。公開されていない解約率や配送原価を置いて、「必ずもうかる」と計算するのは避けるべきです。
見守り機器では、買った後の支援を見積もる
機器では、初期設定、通信不良、故障交換などが発生します。記録の誤りを確認する仕事もあります。月額料金を取るなら、継続して提供する機能や支援の範囲が必要です。
すべてを電話で説明するのか、アプリの画面で解決できるのかでも原価は変わります。問い合わせを減らすとは、窓口を隠すことではありません。迷いにくい設定や、分かりやすい記録を作ることです。
預かりサービスでは、空き枠と対応時間を見る
預かりでは、予約の件数だけでなく、希望日に受け入れられた割合を見ます。仕事が特定の休日に集中すると、他の日の空き時間が増える可能性もあります。
また、引き渡しの説明や緊急連絡も仕事です。予約画面を作る費用と、安心して引き受ける体制の費用を分けて考えましょう。
利用者の評価と、実際に支払われる金額を分けて確かめたい場合は、支払意思額を調べる考え方も参考になります。
ペット市場へ参入するなら、自社の強みをどの仕事に使う?
ここからは、事例をもとにしたイノベーション総研の分析です。8社の成功を再現できると保証するものではなく、自社の事業案を具体化するための考え方です。
最初に問うのは、「ペット分野で何を作るか」ではありません。「すでに持つ技術や接点で、誰のどんな負担を減らせるか」です。
| 自社にある強み | 考えられる提供物 | 最初の顧客 | 補う相手・機能 | 参入前に確かめること |
|---|---|---|---|---|
| 素材・加工・品質管理 | 掃除や交換を楽にする用品・部材 | 用品メーカー、専門店 | 利用場面の知識、販路 | 今の用品より楽になる動作は何か |
| 食品製造・保管・配送 | 用途を絞った食事や補充サービス | 対象を限定した飼い主、販売店 | 栄養設計、品質説明、受注管理 | 食べ方、保管、配送変更まで扱えるか |
| センサー・アプリ開発 | 特定の行動を記録する機器・機能 | 飼い主、既存用品メーカー | 設置支援、故障対応、専門的な確認 | 測れることと伝えてよいことを区別できるか |
| 地域の店舗・顧客接点 | 預かり・手入れの予約や運営支援 | 地域の飼い主、サービス店 | 実際の担い手、緊急時の連絡体制 | 希望日時に引き受けられるか |
いきなり飼い主へ直接売る方法だけが、参入ではありません。既存メーカーに部材を供給する、店舗の予約業務を支える、機器の設定を代行する方法もあります。
たとえばセンサー企業が、家庭向けの見守りブランドを立ち上げるとします。その場合は、広告、販売、問い合わせ、返品まで必要です。既存メーカー向けに計測部品を供給するなら、顧客は少なくても、別の品質要件や供給責任が生まれます。
どちらが簡単かではなく、自社が引き受けられる仕事と合っているかを見ます。技術の用途を増やすだけでなく、売った後に続く仕事を選ぶことが、参入方法の選択です。
事業案を社内で説明する段階では、新規事業の企画書に入れる内容に沿って、顧客、提供価値、費用、未確認事項を整理できます。
ペット市場の新規事業で、見落としやすい懸念
商品を使うのはペットでも、選んで料金を払うのは主に飼い主です。さらに、世話をする家族や専門スタッフも関わります。この違いが、開発中には見えにくい問題を生みます。
買う人と、実際に世話をする人が違う
機器を買った家族は便利だと感じても、掃除や充電をする人には負担かもしれません。アプリを使わない家族にも、必要な情報が伝わるかを確認します。
同じ家庭を一人の利用者として扱うと、こうした違いを見落とします。購入者だけでなく、設置、補充、清掃、連絡を担う人の動きも見る必要があります。
「測れる」と「判断できる」の境界が曖昧になる
体重や行動を記録できても、それだけで病気を判断できるとは限りません。通知に何と書くかによって、利用者の受け止め方も変わります。
事業企画では、データの取得範囲、表示内容、専門家に委ねる範囲を分けます。体調不良の判断をアプリだけで済ませるような説明は避けます。医療的な機能をうたう場合は、専門家の確認を別途受ける必要があります。
不安を増やすことが、販売の仕組みになってしまう
「見逃したら大変」「買わないと不十分」といった表現は、飼い主の不安を強めます。通知や追加購入が増えても、暮らしがよくなるとは限りません。
知らせる情報は、利用者が次に取れる行動とセットで考えます。過度な通知を止められるか、料金や解約方法が分かるか。使い続けてもらう理由は、不安ではなく、実際の便利さや役立ち方に置くべきです。
大手の事業範囲を、そのまま自社の計画にする
フード、病院、保険、見守りを一度にそろえる計画は魅力的に見えます。しかし、それぞれで必要な専門性が違います。
最初から全部を持つより、つなぎ目で一つの不便を減らす方法もあります。たとえば、予約後の注意事項が店と飼い主で食い違う問題です。こうした具体的な困りごとなら、必要な機能と責任を絞りやすくなります。
参入・提携・待機・見送りを分ける条件
イノベーション総研では、市場の大きさだけで事業案を選びません。誰のどの作業を減らし、誰が料金を払い、自社がどこまで支えられるかを重視します。
次の図は、その三つを並べたものです。どれか一つが立派でも、残りが曖昧なら事業案を絞り直します。

参入に進めるのは、具体的な困りごとと、支払う理由が分かり、販売後も支えられる場合です。市場全体の予測より、対象とする顧客の暮らしに即した根拠が必要です。
提携を考えるのは、顧客や技術はあるものの、専門性や運営が足りない場合です。たとえば店舗はあるが、預かりの担い手がいない場合です。提携先を探す前に、不足している仕事を言葉にします。
待機するのは、利用条件や提供できる時期が定まらない場合です。研究段階の技術を前提にしているなら、何の進展を待つのかを明確にします。期待が大きいからといって、販売計画だけを先に作りません。
見送りも必要です。ペットの負担が大きい、飼い主の手間が増える、既存の安価な方法で十分、運営費を払ってもらえない。こうした条件が解消できなければ、別の用途を探します。
自社の案件について整理したい場合は、新規事業の無料診断Compassや、事業開発支援サービスを検討できます。市場調査の結果を並べるだけでなく、対象顧客と引き受ける仕事を具体化することが、相談の出発点になります。
ペット市場についてよくある質問
市場の見方や参入方法について、特に迷いやすい点をまとめました。本文の企業事例と合わせて確認してください。
ペット市場の事業機会は、毎日の負担を減らすことから
ペット市場には、日用品の改良から、食事の配送、見守り、世話の仲介まで、さまざまな事業があります。約2兆円という規模は、その広がりを知る出発点です。
しかし、自社が狙う市場は、そこから絞る必要があります。誰が困り、何を楽にしたいのか。8社の事例でも、提供する仕事は大きく異なっていました。
新規事業を考えるなら、商品を売る前と後の両方を見ます。買いやすく、使いやすく、困ったときにも支えられること。その範囲を自社の強みから決めると、ペットとの暮らしに本当に役立つ事業へ近づけます。
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市場規模だけでは参入先を選べません。対象顧客、減らす負担、必要な専門性、販売後の運営まで整理し、自社に合う事業案と提携先の役割を具体化します。