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ペット市場は約2兆円へ。8社に見る事業機会と成長の条件

ペット市場の成長を、自社の事業機会に変えられるか。
8社の取り組みから、選ばれる理由と参入条件を整理します。

ペット市場は、フードや日用品だけの市場ではありません。見守り機器、預かり、動物病院、保険まで、暮らしを支える仕事が広がっています。一方で、「ペットを家族として大切にする人が多い」だけでは、新規事業の根拠として不十分です。事業機会を探すなら、飼い主が繰り返し困る場面を、一つ減らせるかを考えます。この記事では、国内市場の規模を確認したうえで、ユニ・チャームやイオンペットなど国内外8社を紹介します。何を提供し、誰に選ばれ、どんな負担を引き受けているのか。その違いから、自社に合う参入方法を整理します。

この記事の結論

飼い主が繰り返し困る場面を、一つ減らせるかを考えます。

  • 約2兆円の市場を、対象顧客と使う場面に分ける
  • 国内外8社の、提供物と引き受ける仕事を比較
  • 販売後の運営も含め、自社に合う参入方法を選ぶ

目次

国内のペット市場はどこまで拡大している?

国内のペット関連市場は、約2兆円に近づいています。ただし、確定した実績と将来の予測は区別が必要です。

矢野経済研究所が2026年9月に発表した調査では、2025年度は1兆9,504億円の見込みです。2026年度は1兆9,835億円と予測しています。対象は日本国内で、消費者への販売金額をもとにした市場規模です。矢野経済研究所の調査

次の図は、この二つの数字を同じ尺度で比べたものです。過去の確定実績が連続して並ぶグラフではありません。

国内ペット関連市場は2025年度1兆9,504億円の見込み、2026年度1兆9,835億円の予測。いずれも最終消費者への販売金額
図1|国内ペット関連市場の見込・予測比較。単位は億円。フード、用品、生体、関連サービスを含む。矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査を実施(2026年)」の公表資料をベースに、イノベーション総研作成。

この数字は、一社が販売できる商品の市場ではありません。フードから診療、保険、葬祭までを合わせた金額です。たとえば見守り機器を開発する企業が、約2兆円をそのまま販売対象と考えるのは無理があります。

市場金額が増えても、購入者が増えたとは限らない

市場金額は、買う人の数だけでなく、価格や購入内容でも変わります。高いフードへの買い替えが進む場合と、購入する家庭が増える場合では、事業の売り方も変わります。

同調査は、高付加価値商品の需要を指摘しています。一方、猫用フードでは中低価格帯の需要も堅調としています。「すべての飼い主が高価格品を求めている」とは読めません。矢野経済研究所の市場動向

飼育頭数にも別の動きがあります。ペットフード協会によると、2025年の犬の飼育頭数は682.0万頭です。前年より2万4千頭増えましたが、犬を飼う世帯の比率は低下しています。頭数と飼育世帯数は、同じ方向に動くとは限りません。ペットフード協会の公表内容

そこで市場調査では、「市場は伸びるか」の次に、対象を絞ります。犬か猫か、毎日の消耗品か、ときどき使うサービスか。どの家庭が、何のために、今の支出を変えるのかを考えることが大切です。

ペット市場の業界構造を、暮らしの場面で整理する

ペット産業を「メーカー」「小売」「病院」とだけ分けると、企業がどうつながるか見えにくくなります。まずは、飼い主が必要とする場面から整理してみましょう。

暮らしの場面から見たペット市場の業界構造
暮らしの場面 主な商品・サービス 代金を払う理由 事業者が引き受ける仕事
食事と清潔を保つ フード、トイレ用品、手入れ用品 毎日の世話を無理なく続けたい 品質、補充、使いやすさを保つ
日々の様子を知る カメラ、首輪型機器、記録アプリ 留守中や気づきにくい変化を把握したい 計測、通知、設定・故障への対応
外出中の世話を頼む ホテル、シッター、散歩代行 自分が不在でも世話を続けたい 受け入れ条件、担当者、緊急連絡を整える
専門家の支援を受ける 動物病院、検査、専門的なケア 自分だけでは判断・対応できない 専門人材と設備、説明、引き継ぎを確保する
費用や将来に備える 保険、介護・葬祭関連の支援 大きな負担に備えておきたい 契約範囲や利用条件を明確にする

同じ会社が複数の場面を支えることもあります。反対に、計測機器だけ、配送だけを専門にする会社もあります。広い領域を持つことと、一つの仕事に強いことは、異なる戦い方です。

次の図では、飼い主が日常で使う商品と、必要なときに利用する専門サービスを分けました。データを測るだけで、その後の相談まで自動的につながるわけではありません。

ペットの暮らしを、日々の世話、様子の記録、必要時の専門支援に分けた関係図。記録を次の行動につなぐ役割が必要
図2|日用品・見守り・専門支援の役割。各社の公式サービス情報をベースに、イノベーション総研作成。医療行為の手順や、各社間のデータ共有を示す図ではない。

たとえばアプリに記録が増えても、飼い主が何を確認すればよいか分からなければ、負担は残ります。必要な情報を見返せるか、家族で共有できるか。こうした小さな使い勝手も、サービスの価値に含まれます。

保険の引受や補償の違いは、別の専門領域です。本稿では市場全体の位置づけにとどめます。具体的な会社比較は、ペット保険の主要企業と新規事業を整理した記事をご覧ください。

日本の4社は、毎日のどんな困りごとを減らしている?

ここからは、実際の事業を見ていきます。比較するのは会社の優劣ではなく、提供する仕事の違いです。まず8社の位置づけをまとめ、その後で具体的に解説します。

国内外8社の提供物と事業段階
企業 主な提供物 利用する人・顧客 事業の段階と見る点
ユニ・チャーム フード、トイレ用品など 日常の世話をする飼い主 商品販売。清掃や交換の負担まで改善
イオンペット PETEMOの用品販売・各種サービス 店舗周辺の飼い主 店舗・サービス運営。場所と専門人材を組み合わせる
トレッタキャッツ 猫用トイレ型の計測サービス 猫の様子を記録したい飼い主 商品・サービス提供。普段の行動から測る
RABO CatlogとCatlog Board 猫の行動や排泄を把握したい飼い主 機器と会員サービス。記録を続けて使う
Mars Petcare フード、動物病院、検査関連事業 飼い主、動物医療の利用者など 複数分野で商用展開。グループとして整理
The Farmer’s Dog 犬に合わせた食事の定期配送 食事の選択や準備を簡単にしたい飼い主 米国でサービス提供。分量・配送まで含める
Rover シッターや散歩などの予約仲介 世話を依頼する飼い主と受託者 仲介サービス提供。予約後の支援も重要
Loyal 犬の健康寿命に関する医薬品開発 将来の獣医療市場を想定 開発段階。販売中の商品と分けて見る

表の内容は、以下に示す各社の公式情報をもとに整理しています。海外での提供を、日本でも同じ条件で利用できるという意味では使っていません。

ユニ・チャーム:トイレ用品を、掃除のしやすさから改良する

ユニ・チャームは、ペットフードに加え、猫のトイレや犬の排泄用品などを展開しています。分かりやすいのが、2026年3月に発売した「デオトイレ 快適ワイドリラックス+」です。

猫が使う空間を確保するだけでなく、砂を捨てやすい構造を採用しています。使うペットと、掃除する飼い主の両方を考えた商品です。ユニ・チャームの製品発表

この事例から学べるのは、革新が必ずしも電子機器の追加ではないことです。砂を交換するとき、容器を持ち上げるとき、汚れを落とすとき。その一手間を減らすことにも価値があります。

参入する企業は、「ペット向けの素材がある」から一歩進めて考えます。自社の素材や成形技術で、世話のどの動作が楽になるのか。既存用品と一緒に使えるか、交換品が買いやすいかまで見ると、開発の狙いが具体的になります。

イオンペット:買い物と、専門的なサービスの接点を持つ

イオンペットのPETEMO(ペテモ)は、用品販売だけのブランドではありません。グルーミング、ペットホテル、動物病院なども展開しています。グルーミングとは、毛のカットだけでなく、体のお手入れを含むサービスです。PETEMOの紹介

たとえば浦和美園店の公式案内には、用品、グルーミング・ホテル、動物病院が掲載されています。ただし、営業時間や受付はそれぞれ異なります。すべての店舗に、同じサービスがあるわけでもありません。浦和美園店のサービス案内

ここでの強みは、商品を並べる場所だけではありません。飼い主が相談し、実際の世話を任せられる接点があることです。一方、予約枠や人員が足りなければ、売り場に来た人を受け入れられません。

店舗を持つ企業の新規事業なら、すべてを自社で運営する必要はありません。用品の販売に、地域の専門店への予約や案内を組み合わせる方法も考えられます。その場合も、受け付ける側と実際に対応する側で、説明が食い違わない仕組みが必要です。

トレッタキャッツ:猫がトイレを使う間に、日々の記録を取る

トレッタは、猫用トイレに計測機能を組み合わせたサービスです。体重、尿量、トイレの利用回数などを記録し、アプリで確認できます。カメラによる個体識別で、複数の猫の記録にも対応しています。トレッタの公式紹介

飼い主が毎回数値を入力するのではなく、猫の普段の行動から記録する点が特徴です。ただし、自動で掃除をするトイレではありません。記録を取ることと、清掃を代行することは別の機能です。

さらに興味深いのが、2025年4月のアプリ更新です。体重や尿量などの計測値を、利用者が修正できるようにしました。それまでは除外しかできなかったデータを、見直して残せるようにしています。計測値の手動修正機能

これは、見守り事業の現実を考える材料になります。自動計測を入れれば、すべての手間が消えるわけではありません。おかしな記録が出たときに、飼い主が困らず直せるか。記録の質を保つ仕組みまでが、商品の使いやすさを左右します。

RABO:首輪型機器と、既存トイレの下に置く機器を使い分ける

RABOのCatlog(キャトログ)は、猫の首元につける機器で、食事や睡眠などの行動を記録するサービスです。Catlog Boardは、普段のトイレの下に置いて、体重や排泄の様子を記録する別の機器です。Catlogの製品情報

同じ「猫の見守り」でも、装着するものと、生活空間に置くものでは利用条件が変わります。首元の機器を受け入れるか、家のトイレに設置できるか。技術の性能だけでは決まらない部分です。

同社は機器の購入に加え、月額の会員サービスを設けています。こうした事業では、買った日の満足だけでなく、数か月後も記録を見る理由が必要です。通知が多すぎないか、機器の管理が負担にならないかも重要になります。

なお、同社は医療機器ではなく、診断や治療を目的にしないと明記しています。日々の様子を把握する機能を、「病気を判断してくれる機能」と言い換えてはいけません。

海外事例には、国内とは異なる販売方法や事業の組み合わせがあります。ただし、規模の大きさや目新しさだけをまねても、日本の顧客が使う理由にはなりません。

ここでは、提供内容が確認できる3社と、開発段階の1社を分けて紹介します。

Mars Petcare:食事だけでなく、動物病院や検査まで展開する

Mars Petcareは、ROYAL CANINなどのフードに加え、BanfieldやVCAなどの動物病院、Antechの検査関連事業を持ちます。本稿では、これらを別々の企業事例として水増しせず、グループ一つの事例として扱います。Mars Petcareの事業・ブランド

注目すべきなのは、同じペットの暮らしでも、食事を買う場面と、専門家を頼る場面の両方に接点があることです。ただし、グループに属するだけで、顧客の情報が自動的に共有されるとはいえません。

この広がりは、新規参入企業が全部をそろえるべきだという意味ではありません。むしろ、自社がどこを担い、どこで専門企業に引き継ぐかを考える材料です。

たとえば日常記録をまとめる事業であれば、診療そのものまで抱えるのか、それとも飼い主が記録を持参しやすくするのか。提供する範囲を分けることで、必要な人材や投資も変わります。

The Farmer’s Dog:フードを、分量と配送まで含むサービスにする

米国のThe Farmer’s Dogは、犬の情報に合わせて食事のプランを作り、定期的に届けています。飼い主は犬の特徴を入力し、量を調整した食事を受け取ります。The Farmer’s Dogのサービス

冷凍のFresh商品は、加熱調理済みです。生肉をそのまま届けるサービスではありません。公式FAQでは、冷凍商品と常温保存できるInstant Freshを区別しています。配送の時期や量も変更できます。商品の形態と配送に関する公式FAQ

この事例の面白さは、原材料の説明だけで売っていない点です。何を、どれくらい用意し、いつ補充するか。その選択や準備の手間を、商品と一緒に引き受けています。

食品や物流に強みを持つ企業なら、この視点は参考になります。一方、冷凍配送、保管場所、食べ残し、配送変更の対応も必要です。定期購入の申し込みを増やすだけで、運営が楽になるわけではありません。

Rover:預かり先を探す人と、世話をする人をつなぐ

Roverは、ペットの預かり、訪問での世話、散歩などを予約できる仲介サービスです。サービスごとに、誰の家で世話をするか、どの時間を頼めるかが異なります。Roverが扱うサービス

預かり施設を一律に自社保有するホテル事業とは異なり、担い手と飼い主をつなぎます。利用料・手数料は、予約や決済の機能に加え、支援や安全面の運営にも使うと説明しています。Roverの手数料の説明

ここで重要なのは、「登録者がいる」ことと、「必要な日時に頼める」ことが違う点です。近所に担い手がいても、休日に空きがなければ予約は成立しません。ペットの種類や性格によって、受け入れられる条件も変わります。

日本で似た事業を考えるなら、全国の登録者数を最初の目標に置くより、一つの地域で予約が成立するかを見ます。直前のキャンセルや、予定より帰宅が遅れる場合に、誰が対応するかまでが商品です。

Loyal:販売中のサービスと、研究開発の機会を分けて見る

Loyalは、犬の健康寿命に関する医薬品を開発する米国企業です。2026年2月には、開発を進めるための資金調達を発表しています。Loyalの開発資金に関する発表

ここは、フードや見守り機器と同じ段階ではありません。獣医師向けの公式案内では、条件付き承認や市場提供は進行中とされています。研究開発の進捗を、すでに販売できることや、効果の確定と混同しないことが重要です。Loyalの獣医師向け案内

事業として見るなら、研究費、試験、製造、承認までの道のりを含む領域です。消費者向けアプリを短期間で売る事業とは、必要な資金も専門性も違います。

新規参入の考え方も変わります。自社で薬を開発する以外に、研究用の計測や試験の運営を支える可能性もあります。ただし、これはイノベーション総研の事業仮説であり、Loyalがそうした提携先を募集しているという意味ではありません。

自社の状況から、次に確認することを選ぶ

該当する項目を開くと、記事の読む場所がわかります。点数を付ける診断ではありません。

01 市場の全体像を知りたい

対象に含まれる商品やサービスを分けます。

  • 調査の範囲
  • 見込と予測
  • 顧客の違い

市場規模を見る →

02 国内企業を知りたい

4社が減らす日々の負担を読みます。

  • 用品
  • 店舗
  • 見守り

国内4社を見る →

03 海外の動きを知りたい

提供中の事業と開発段階を分けます。

  • 食事の配送
  • 世話の仲介
  • 研究開発

海外4社を見る →

04 採算を考えたい

購入後に発生する仕事を数えます。

  • 配送
  • 問い合わせ
  • 予約調整

原価を確認する →

05 参入方法を選びたい

自社の強みと対象顧客を結びつけます。

  • 減らす負担
  • 支払う人
  • 補う相手

参入案を見る →

06 事業案を相談したい

引き受ける仕事と条件を絞ります。

  • 提供範囲
  • 運営体制
  • 提携する役割

判断の条件を見る →

NEXT STEP

次のステップ

自社の強みで、どの世話を楽にできるか

用品、食事、見守り、預かり。自社の技術や顧客接点を起点に、使う人、支払う人、販売後に支える仕事を整理します。

高価格化と便利さは、同じ成長の理由ではない

8社を並べると、ペット市場の変化は「高級品が売れる」の一言では整理できません。少なくとも、三つの異なる価値が見えてきます。

一つ目は、毎日の手間を減らすことです。トイレの清掃や、食事の準備と補充が分かりやすい例です。大切なのは高機能の数ではなく、実際に減る作業です。

二つ目は、見えなかった様子を把握できることです。見守り機器がこの役割を担います。ただし、情報が増えるだけでは、かえって確認の手間も増えます。見やすさや通知の頻度を含めた使い勝手が必要です。

三つ目は、自分だけではできない世話を任せられることです。預かりや専門サービスが該当します。この場合、アプリの画面より、実際に引き受ける人の体制が重要になります。

この三つを混ぜると、事業案がぼやけます。「健康によく、便利で、安心」という説明では、何のための料金か分かりません。最初の商品では、飼い主が今もっとも困っている場面を一つ選びます。

その際は、ペット側の負担も同時に確認します。飼い主の入力は楽になっても、装着や利用をペットが嫌がるなら、使い続けられません。飼い主の便利さと、ペットの過ごしやすさの両方を考える必要があります。

売上だけでなく、使い続けてもらう原価を見る

ペット関連の事業は、購入後にも仕事が残ります。機器の設定、配送の変更、予約の調整などです。ここを見ずに価格を決めると、売れるほど対応が増えることがあります。

定期配送では、商品以外の費用を数える

フードを定期配送するなら、原材料や製造費だけでは足りません。梱包、保管、送料、決済、問い合わせの費用がかかります。量の変更や配送の停止にも対応します。

たとえば販売価格から商品原価だけを引いた金額は、そのまま利益ではありません。一回の配送で残る金額を出すなら、届ける費用と、その注文を支える対応費用まで差し引きます。

ここでは各社の利益率を推定していません。公開されていない解約率や配送原価を置いて、「必ずもうかる」と計算するのは避けるべきです。

見守り機器では、買った後の支援を見積もる

機器では、初期設定、通信不良、故障交換などが発生します。記録の誤りを確認する仕事もあります。月額料金を取るなら、継続して提供する機能や支援の範囲が必要です。

すべてを電話で説明するのか、アプリの画面で解決できるのかでも原価は変わります。問い合わせを減らすとは、窓口を隠すことではありません。迷いにくい設定や、分かりやすい記録を作ることです。

預かりサービスでは、空き枠と対応時間を見る

預かりでは、予約の件数だけでなく、希望日に受け入れられた割合を見ます。仕事が特定の休日に集中すると、他の日の空き時間が増える可能性もあります。

また、引き渡しの説明や緊急連絡も仕事です。予約画面を作る費用と、安心して引き受ける体制の費用を分けて考えましょう。

利用者の評価と、実際に支払われる金額を分けて確かめたい場合は、支払意思額を調べる考え方も参考になります。

ペット市場へ参入するなら、自社の強みをどの仕事に使う?

ここからは、事例をもとにしたイノベーション総研の分析です。8社の成功を再現できると保証するものではなく、自社の事業案を具体化するための考え方です。

最初に問うのは、「ペット分野で何を作るか」ではありません。「すでに持つ技術や接点で、誰のどんな負担を減らせるか」です。

自社の強みから考えるペット市場への参入方法
自社にある強み 考えられる提供物 最初の顧客 補う相手・機能 参入前に確かめること
素材・加工・品質管理 掃除や交換を楽にする用品・部材 用品メーカー、専門店 利用場面の知識、販路 今の用品より楽になる動作は何か
食品製造・保管・配送 用途を絞った食事や補充サービス 対象を限定した飼い主、販売店 栄養設計、品質説明、受注管理 食べ方、保管、配送変更まで扱えるか
センサー・アプリ開発 特定の行動を記録する機器・機能 飼い主、既存用品メーカー 設置支援、故障対応、専門的な確認 測れることと伝えてよいことを区別できるか
地域の店舗・顧客接点 預かり・手入れの予約や運営支援 地域の飼い主、サービス店 実際の担い手、緊急時の連絡体制 希望日時に引き受けられるか

いきなり飼い主へ直接売る方法だけが、参入ではありません。既存メーカーに部材を供給する、店舗の予約業務を支える、機器の設定を代行する方法もあります。

たとえばセンサー企業が、家庭向けの見守りブランドを立ち上げるとします。その場合は、広告、販売、問い合わせ、返品まで必要です。既存メーカー向けに計測部品を供給するなら、顧客は少なくても、別の品質要件や供給責任が生まれます。

どちらが簡単かではなく、自社が引き受けられる仕事と合っているかを見ます。技術の用途を増やすだけでなく、売った後に続く仕事を選ぶことが、参入方法の選択です。

事業案を社内で説明する段階では、新規事業の企画書に入れる内容に沿って、顧客、提供価値、費用、未確認事項を整理できます。

ペット市場の新規事業で、見落としやすい懸念

商品を使うのはペットでも、選んで料金を払うのは主に飼い主です。さらに、世話をする家族や専門スタッフも関わります。この違いが、開発中には見えにくい問題を生みます。

買う人と、実際に世話をする人が違う

機器を買った家族は便利だと感じても、掃除や充電をする人には負担かもしれません。アプリを使わない家族にも、必要な情報が伝わるかを確認します。

同じ家庭を一人の利用者として扱うと、こうした違いを見落とします。購入者だけでなく、設置、補充、清掃、連絡を担う人の動きも見る必要があります。

「測れる」と「判断できる」の境界が曖昧になる

体重や行動を記録できても、それだけで病気を判断できるとは限りません。通知に何と書くかによって、利用者の受け止め方も変わります。

事業企画では、データの取得範囲、表示内容、専門家に委ねる範囲を分けます。体調不良の判断をアプリだけで済ませるような説明は避けます。医療的な機能をうたう場合は、専門家の確認を別途受ける必要があります。

不安を増やすことが、販売の仕組みになってしまう

「見逃したら大変」「買わないと不十分」といった表現は、飼い主の不安を強めます。通知や追加購入が増えても、暮らしがよくなるとは限りません。

知らせる情報は、利用者が次に取れる行動とセットで考えます。過度な通知を止められるか、料金や解約方法が分かるか。使い続けてもらう理由は、不安ではなく、実際の便利さや役立ち方に置くべきです。

大手の事業範囲を、そのまま自社の計画にする

フード、病院、保険、見守りを一度にそろえる計画は魅力的に見えます。しかし、それぞれで必要な専門性が違います。

最初から全部を持つより、つなぎ目で一つの不便を減らす方法もあります。たとえば、予約後の注意事項が店と飼い主で食い違う問題です。こうした具体的な困りごとなら、必要な機能と責任を絞りやすくなります。

参入・提携・待機・見送りを分ける条件

イノベーション総研では、市場の大きさだけで事業案を選びません。誰のどの作業を減らし、誰が料金を払い、自社がどこまで支えられるかを重視します。

次の図は、その三つを並べたものです。どれか一つが立派でも、残りが曖昧なら事業案を絞り直します。

ペット市場の参入判断では、減らす負担、払う人、支える体制の三つをそろえ、提供範囲を決める
図3|ペット関連事業の提供範囲を決める三つの問い。本文の企業事例と事業分析をベースに、イノベーション総研作成。採点や認証の基準ではない。

参入に進めるのは、具体的な困りごとと、支払う理由が分かり、販売後も支えられる場合です。市場全体の予測より、対象とする顧客の暮らしに即した根拠が必要です。

提携を考えるのは、顧客や技術はあるものの、専門性や運営が足りない場合です。たとえば店舗はあるが、預かりの担い手がいない場合です。提携先を探す前に、不足している仕事を言葉にします。

待機するのは、利用条件や提供できる時期が定まらない場合です。研究段階の技術を前提にしているなら、何の進展を待つのかを明確にします。期待が大きいからといって、販売計画だけを先に作りません。

見送りも必要です。ペットの負担が大きい、飼い主の手間が増える、既存の安価な方法で十分、運営費を払ってもらえない。こうした条件が解消できなければ、別の用途を探します。

自社の案件について整理したい場合は、新規事業の無料診断Compassや、事業開発支援サービスを検討できます。市場調査の結果を並べるだけでなく、対象顧客と引き受ける仕事を具体化することが、相談の出発点になります。

ペット市場についてよくある質問

市場の見方や参入方法について、特に迷いやすい点をまとめました。本文の企業事例と合わせて確認してください。

Q. ペット市場には、何が含まれますか?

A. フードや用品に加え、見守り、預かり、動物病院、保険などがあります。調査によって対象範囲が異なるため、市場規模を見るときは地域、年度、含まれる商品・サービスを確認します。

Q. ペット市場が伸びるなら、高価格商品が有利ですか?

A. 一概にはいえません。価格が高くても、具体的な使い道や役立つ点が伝わらなければ選ばれません。高価格帯だけでなく、手頃な価格を求める層も含め、対象顧客の支払う理由を確認します。

Q. ペット事業は、未経験の企業でも参入できますか?

A. 自社の強みを使える仕事から検討できます。素材、物流、店舗、アプリなどが候補です。ただし、動物の扱いや専門的な機能に必要な知識を、経験のある企業や専門家と補うことが前提になります。

Q. ペット向けのAIを使えば、事業の違いを出せますか?

A. AIの有無だけでは不十分です。記録の誤りを直せる、必要な情報が見やすい、設定に迷わないなど、利用者の負担が実際に減ることが重要です。計測や通知と、診断・治療も区別します。

ペット市場の事業機会は、毎日の負担を減らすことから

ペット市場には、日用品の改良から、食事の配送、見守り、世話の仲介まで、さまざまな事業があります。約2兆円という規模は、その広がりを知る出発点です。

しかし、自社が狙う市場は、そこから絞る必要があります。誰が困り、何を楽にしたいのか。8社の事例でも、提供する仕事は大きく異なっていました。

新規事業を考えるなら、商品を売る前と後の両方を見ます。買いやすく、使いやすく、困ったときにも支えられること。その範囲を自社の強みから決めると、ペットとの暮らしに本当に役立つ事業へ近づけます。

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市場規模だけでは参入先を選べません。対象顧客、減らす負担、必要な専門性、販売後の運営まで整理し、自社に合う事業案と提携先の役割を具体化します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

矢野経済研究所、ペットフード協会、国内外8社の公式公表資料。出典は本文に記載。事業機会、費用構造、参入判断はイノベーション総研の分析。

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