投稿日:2026.09.09 最終更新日:2026.09.10
新規事業の企画書はどう構成する?8項目と段階別の書き方・記入例
新規事業の企画書は、今回求める判断、背景、顧客課題、提供価値、市場・競合、収益・費用、実行体制、リスクと判断条件の8項目を出発点に構成できます。ただし、必要な詳しさは、検証を始める提案か、事業化への投資を求める提案かによって変わります。
「何から書けばよいか分からない」「必要項目を埋めたのに、提案の意図が伝わらない」。そんなときは、資料のページ数より先に、読み手に求める判断を定めましょう。誰に、何を、どこまで承認してほしいかを決めると、目次と根拠の順番が見えてきます。
本記事では、新規事業担当者に向けて、基本構成と段階別の書き分け、1枚目の記入例を解説します。イノベーション総研の888名調査も踏まえ、事実と仮定を分け、承認後の行動につながる企画書へ整える方法を紹介します。
この記事のポイント
- 企画書の8項目を、今回求める判断からつなげる
- 検証開始・PoC・事業化投資に合わせて、根拠の詳しさを変える
- 1枚目には、承認範囲・根拠・未確認事項・次の判断を要約する
- 本文と別紙を分け、目標をどの判断に使うかまでそろえる
目次
新規事業の企画書は、今回決めることから構成を組む
新規事業の企画書は、事業の魅力と実現に向けた計画を示し、次の予算・人員・活動について判断してもらう資料です。必要項目を埋める前に、「この企画書を読んだ人に、何を決めてほしいか」を定めると、情報の順番と詳しさが決まります。
企画書・事業計画書・提案書は、提出先の目的で使い分ける
企画書は新しい取り組みへの合意や承認、事業計画書は事業の実行・収支・資金の見通し、提案書は相手の課題に対する解決案を伝える場面で使われます。ただし、名称と用途は企業ごとに異なり、企画書の中に事業計画を含めることもあります。
「企画書だから収支は不要」「事業計画書は承認後に作る」と決めつける必要はありません。本開発への投資を求めるなら収支や提供体制の裏付けが必要です。一方、顧客課題を確かめる初期調査では、未確認の販売数を精密に計算するより、何を調べるかを具体的に書く方が判断に役立ちます。
社内様式がある場合は、その様式と審査基準を優先してください。本記事の構成は、指定された欄に足りない判断材料がないかを点検するためにも使えます。
最初に判断者・承認範囲・次回の判断日を確認する
同じ事業でも、部長に調査時間を確保してもらう提案と、経営会議で開発予算を確保する提案では必要な証拠が変わります。提出先には、少なくとも次の点を確認しましょう。
- 誰が決めるか:承認権限を持つ人・会議体と、事前確認が必要な部署
- 何を決めるか:調査の実施、PoCの開始、本開発、販売開始などの対象
- どこまで認めてもらうか:予算上限、期間、担当者の稼働、対象顧客や機能
- いつ見直すか:今回の結果を確認し、次の判断を行う時期
ここが曖昧なままでは、作成者が「まず試したい」と考えていても、読み手は「全社展開できる根拠」を求めるかもしれません。最初に承認の範囲をそろえることで、今回答える問いを絞れます。
新規事業企画書の基本構成は、判断につながる8項目
企画書の全体像は、判断依頼から始め、顧客・事業・実行の根拠を示し、次の判断条件で閉じると整理しやすくなります。イノベーション総研では、次の8項目を出発点に、案件の段階と社内審査の要件に合わせて組み替えることを勧めます。
下の表は目次を作るための対応表です。8ページに固定するという意味ではなく、それぞれの項目で読み手のどの疑問に答えるかを示しています。
| 構成項目 | 答える問い | 添える根拠・条件 |
|---|---|---|
| 今回求める判断 | 今回、何をどこまで承認するか | 予算・期間・人員・対象範囲・次の判断日 |
| 背景と自社の狙い | なぜ今、自社が取り組むか | 顧客や市場の変化、自社戦略、使える資産 |
| 対象顧客と課題 | 誰のどの問題を解くか | 直近の出来事、観察、現在の対応方法 |
| 提供価値と届け方 | 何が変わり、誰が購入・導入するか | 利用場面、提供範囲、購入・導入の条件 |
| 市場と競合 | どの顧客へ届き、なぜ選ばれるか | 市場の定義と出典、初期接点、代替手段との比較 |
| 収益と費用 | どの前提なら採算が成り立つか | 売上・費用の式、確認済みと仮置き、変動要因 |
| 実行計画と体制 | 誰が、いつまでに実行するか | 担当・稼働・成果物・調整先・会議日 |
| リスクと判断条件 | 何を根拠に継続・修正・中止するか | 重要な未確認事項、確認方法、判断者・期限 |
項目の順番を変える場合も、「誰の課題を解くか」が不明なまま機能や市場の数字が続かないようにします。以降は、各項目に何を書き、何を根拠として添えるかを説明します。
1. 今回求める判断:承認してほしい予算・期間・範囲を書く
冒頭には、提案の要点と今回の依頼を置きます。「新しい事業に取り組みたい」だけでは、承認してほしい範囲が不明です。たとえば「購入条件を確かめるため、8週間の限定検証と外部支出上限120万円を承認してほしい」のように、目的と範囲を一文で示します。これは説明用の例であり、期間や予算の標準値ではありません。
対象外も短く書きます。本開発、自動連携、全顧客への展開などを今回は含めないと分かれば、検証の承認がそのまま大きな投資の約束になる誤解を防げます。詳細を本文で説明した後、最後に冒頭の要約へ戻り、依頼内容との整合を確認してください。
2. 背景と自社の狙い:なぜ今、なぜ自社が取り組むかを書く
背景には、顧客や市場に起きた変化と、自社が取り組む理由を結び付けて書きます。「市場が伸びている」「既存事業の次が必要だ」だけで終わらず、その変化が対象顧客のどの困りごとを強め、自社の何を使えば対応できるかまで説明します。
自社の資産は、ブランド力や技術力という抽象語だけでなく、使える顧客接点、販売経路、担当者の経験、保有データなどに分けます。社内に存在することと、今回使う承認が得られていることは別です。営業の協力やデータ利用が未承認なら、調整先と確認期限を添えましょう。
3. 対象顧客と課題:誰が、どの場面で困っているかを書く
顧客は業種や企業規模だけでなく、実際に困っている担当者と場面まで絞ります。「製造業のDXを支援する」より、「複数拠点の点検記録を月次会議の前に集め直す保全責任者」の方が、解くべき課題を具体的に検討できます。
根拠として使うのは、直近の出来事、現在の対処方法、かかっている時間、手戻りや支出などです。「あれば便利」という反応だけを需要の証拠にせず、顧客が今その問題にどう対応しているかを記録します。インタビューの対象・実施時期・確認した範囲も、元の記録へ戻れる形で残してください。
BtoBでは、使う人と買う人が異なることがあります。現場担当者の負担を説明した後に、費用負担者と導入を承認する部署も示すと、利用ニーズと購入条件を混同せずに済みます。
4. 提供価値と届け方:何が変わり、誰が買うかを書く
サービスの説明は、顧客の業務や行動がどう変わるかから始めます。その後に、変化を生む機能や提供方法を示す順番が効果的です。「記録検索機能」なら、誰がどの記録を探し、見つけた後に何を判断できるのかまで書きましょう。
併せて、顧客へ届く経路、導入時の作業、料金を支払う主体、利用を続ける条件を整理します。無料の試行では好評でも、導入作業が大きい、現場の予算では買えない、といった課題が残る場合があります。価値の説明と、実際に使い始められる条件の両方を置くことが大切です。
5. 市場と競合:最初の顧客と、選ばれる理由を書く
市場規模には、対象地域、業種、企業か事業所かという単位、対象年、出典を付けます。大きな市場の数字だけで売上の見込みを説明せず、その中で最初に接点を作れる顧客と、接点を増やす方法までつなげてください。
競合には同種のサービスだけでなく、Excel、手作業、内製、何も変えないという選択肢も含めます。比較軸は機能数ではなく、対象顧客が重視する手間、導入条件、費用、対応範囲などです。自社に有利な軸を並べる前に、顧客が現在の方法を変える理由を確かめましょう。
公開された市場データが不足する場合は、フェルミ推定で市場規模を分解する方法も使えます。ただし推定は推定として示し、母数と単価の根拠、確かめるべき仮定を残します。
6. 収益と費用:計算式と、数字を動かす前提を書く
収支は完成したグラフだけでなく、売上と費用の計算式を示します。月額サービスなら「有料契約数×月額単価」、売り切りなら「販売数×販売単価」が出発点です。導入時期が月ごとに違う場合、年末の契約数をそのまま12倍して年間売上にしないように注意します。
説明用の仮定として、30拠点が月額5万円で利用すれば、ある月の売上は150万円です。これだけでは利益は分かりません。利益を求めるには、拠点ごとの運用支援、サーバー利用、開発・営業・管理の費用の把握が必要です。30拠点へ到達する見通しと、5万円で契約する根拠も別に確認します。
売上が少ない場合、導入に時間がかかる場合、対応工数が増える場合を比較し、必要な追加資金がどう変わるかを示しましょう。「顧客数を何割下げるか」を機械的に決めるより、どの前提が崩れると計画を変えるのかを説明する方が有用です。
日本政策金融公庫の創業計画書の記入例でも、売上・原価・経費の計算根拠を記載しています。これは融資を受ける創業者向けの資料ですが、収支の数字と根拠をセットにする書き方は、社内向けの企画書にも参考になります。
7. 実行計画と体制:誰が、いつまでに、何をするかを書く
実行計画は、作業名と日付だけでなく、その作業で何を確認し、何を残すかまで書きます。「顧客ヒアリングを実施」なら、対象、確認する問い、結果のまとめ方、担当者をそろえます。期間内に動けるかを判断するには、兼務も含めた担当者の稼働時間が必要です。
体制は、実行する人、判断する人、協力が必要な人を区別します。開発担当者だけを並べず、営業、法務、情報システム、運用のうち今回関係する部署を示してください。「関係部署と調整予定」のままなら、誰の何の合意がまだないかを明記します。
スケジュールには、社内承認や顧客側の調整にかかる時間も入れます。作業の終了日と、次の予算を決める会議の日をつなぐと、検証は終わったのに判断ができない状態を減らせます。
8. リスクと判断条件:継続・修正・中止を分ける条件を書く
リスクの欄で優先したいのは、一般的な注意事項ではなく、今回の計画を変える前提です。顧客が買わない、必要なデータを使えない、提供工数が価格に見合わないなど、影響の大きいものから取り上げます。その前提をどう確かめ、結果に応じて何を変えるかまで整理します。
「利用者の反応がよければ継続」といった曖昧な条件は、誰のどの行動を見るのかへ具体化しましょう。顧客課題を探している段階では、一律の成功点数より、何を明らかにするかの合意が大切です。得られた結果を使って、次の検証条件を設計する方法もあります。
判断日、投資上限、残る未確認事項も併記します。項目の洗い出しから整理したい場合は、新規事業の検証項目の洗い出し方を参照してください。
検証開始・PoC・事業化投資で、企画書の詳しさを変える
企画書の項目が同じでも、段階が進むほど、顧客の反応や提供コストなどの具体的な裏付けが必要です。ここでは社内で求める判断を、検証開始、PoC、事業化投資の3場面に分けて説明します。すべての事業が必ずこの順番を通るという意味ではありません。
次の表では、今回承認するものと、厚く書くべき根拠の違いを比べてください。
| 判断の場面 | 厚く書く内容 | 未確認として残すことの例 |
|---|---|---|
| 検証開始 | 対象顧客・課題の仮説、調査方法、予算と担当 | 購入条件や継続利用。次の確認方法を付ける |
| PoC | 既に得た根拠、限定した試験範囲、利用・購入・導入の確認方法 | 本番運用や大規模展開。今回の結果だけで断定しない |
| 事業化投資 | 販売・提供・採算の裏付け、投資案、実行体制、リスク | 未検証の顧客層・販路・規模。追加投資の条件と併記 |
初期段階から全項目を同じ厚さで書くと、未確認の数字が増えます。反対に、事業化投資の段階でアイデアと熱意だけを示しても、投資の判断材料としては不十分です。どの段階の何を決めるかに合わせて、説明の重心を変えましょう。
検証開始:顧客と課題の仮説、確認方法を示す
検証を始める提案では、「誰に何を聞けば、事業を考え続ける価値が分かるか」を具体化します。市場や売上の試算は、取り組む余地を考えるための仮置きでも構いません。未確認の顧客数を、受注見込みのように見せないことが重要です。
たとえば食品工場向けの点検記録サービスを考えるなら、まず記録の収集や確認でどんな負担が起きているかを調べます。この段階で求めるのは本開発の承認ではなく、現場へのアクセス、調査時間、検証担当者の確保などです。短い記入用の型は、初期検証を承認してもらう企画書の5項目テンプレートで詳しく紹介しています。
PoC:確認済みの事実と、試す範囲を示す
PoCは、新しい技術やサービスの実現性などを限定した範囲で確かめる取り組みです。企画書には、既に分かった顧客課題と、今回まだ確かめる必要がある条件を分けて書きます。
点検記録サービスなら、画面を操作できるかに加え、現場で使うか、費用負担者がどの条件なら購入を検討するか、導入を許可できるかが別の問いになります。全機能を作らずに確かめられる範囲を示し、本番システムへの接続や機密情報の利用は、必要な承認を得る前提で計画します。
技術の確認が終わったことを、そのまま販売可能と結論付けないようにしましょう。今回の結果で判断できることと、次の段階に残る確認事項を明示します。
事業化投資:販売・提供・採算の根拠を厚くする
本開発や販売体制への投資を求める段階では、誰がどの条件で買うか、継続して提供できるか、収支が成り立つかを詳しく示します。契約や購入検討の記録、実際の導入工数、運用時の課題など、今回の投資に関係する証拠を使います。
点検記録サービスで無料試行の利用者が増えていても、有料契約が成立していなければ、その違いを隠さず書きます。大規模な投資を一度に依頼する代わりに、有料導入を限定して確認することも一案です。ただし投資を分割できるかは、設備、契約、開発工程の制約によって異なります。
調査結果が示す、目標を作るだけでは足りない理由
目標を設定していても、それをどの判断に使うかがそろっていなければ、会議で別の基準を求められることがあります。イノベーション総研の調査では、従業員1,000名以上の企業で新規事業に関わった888名に、直近のプロジェクトの目標・指標の設定と運用を尋ねています。
下のグラフは、目標を作ったかどうかだけでなく、経営層との合意や判断への活用まで分けた回答です。
新規事業における目標・指標の設定と運用の状況
定期的に確認・見直しをしていても、経営層との認識のずれにより判断基準として機能していなかったという回答が、機能していたという回答を上回っています。企画書に指標を載せるだけで十分か、見直す必要を示す結果です。
イノベーション総研では、企画書の中で「目標」「その根拠」「結果に応じて決めること」をつなげるべきだと考えます。代表の知見でも、承認を取ること自体を目的にせず、計画を作る段階から判断者を交えて検討することを重視しています。
たとえば現場が「操作できたか」を目標にし、経営層が「有料契約を得られるか」を知りたいと考えていれば、同じPoCの報告を見ても評価は食い違います。操作の確認と購入条件の確認を別の問いとして書き、今回はどちらまで判断するかをそろえます。
この調査は、特定の企画書の構成が承認率や成功率を高めると証明するものではありません。自社で活かす際は、提案書の最後に判断条件を書き足すだけでなく、提出前に判断者とその条件を確認してください。
企画書づくりで、どこに困っていますか
近い状態を開くと、確認する問いと対応する解説が分かります。企画の成否を点数で決めるものではありません。
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次のステップ
企画書の根拠と、次の判断を整理したい方へ
イノベーション総研のCompassは、顧客・収益・実行体制などのリスクを整理し、次の判断材料を明らかにします。企画の前提を確かめる実行支援が必要な場合は、新規事業立ち上げ支援もご覧ください。
企画書の1枚目は、承認してほしい範囲と根拠を要約する
1枚目には、全資料の目次ではなく、読み手が提案の大筋を判断できる要約を置きます。事業の概要、今ある根拠、今回求める承認、残る未確認事項、次回の判断を短くまとめましょう。
限定検証を依頼する1枚目の記入例
以下は、食品工場向け点検記録サービスについて、PoCを始める社内提案の架空例です。企業、観察内容、人数、費用、期間は説明用の設定であり、実在の支援実績や標準的な条件ではありません。
| 1枚目に置く欄 | 記入例(すべて架空) |
|---|---|
| 提案の概要 | 食品工場の保全担当者が、複数の点検記録を探し直す負担を減らすサービス |
| 今回の判断依頼 | 新規事業担当部長に、8週間の限定検証を承認してほしい。本開発・販売開始は含めない |
| 対象と確認した根拠 | 既存接点のある食品工場を対象。見学した2工場では、記録を手作業で集め直していた |
| 今回使う予算と人員 | 外部支出上限120万円(画面試作70万円、業務検証支援30万円、予備費20万円)。別途、社内担当者2名がそれぞれ稼働の30%を8週間確保 |
| 検証の範囲 | 画面試作と手作業を組み合わせ、既存の接点がある工場で試す。本番接続と全拠点展開は対象外 |
| 残る未確認事項 | 実際の負担の大きさ、費用負担者の購入条件、情報管理上の導入条件、提供側の運用工数 |
| 進め方と成果物 | 前半に現行業務・導入条件を確認し、後半に試行と価格案への反応を記録。担当者が結果と残課題を要約 |
| 次回の判断 | 8週目のレビューで次の有料試験導入案・条件を変えた再検証案・現方式の停止案を比較。必要な事実と判断条件は開始前に部長と合意 |
この例で承認を求めているのは、販売開始ではなく、利用・購入・導入の条件を確認する限定検証です。社内の稼働時間と外部支出を分けているため、予算額だけを見て「少ない負担でできる」と誤解しにくくなります。
承認者が気になる論点には、本文や別紙の参照先を付けます。外部支出の内訳は見積もり、顧客課題は観察記録、情報管理は確認事項の一覧へ戻れるようにすると、1枚にすべてを書き込まずに済みます。
事実・解釈・未確認・次の検証を混ぜない
「点検記録を集め直していたので、月額5万円で売れる」という説明は、観察したことと販売の予測を飛躍させています。同じ例を次のように分けると、どこまで根拠があるかが分かります。
- 事実:見学した2工場では、担当者が複数の記録を手作業で集め直していた
- 解釈:記録の収集を減らす仕組みに価値がある可能性がある
- 未確認:その負担が導入費用を支払うほど大きいか、既存の運用を変えられるか
- 次の検証:現行業務と試作画面を使った業務を比較し、費用負担者に提供範囲と価格の案を示す
ここでの「事実」は架空のケース内で確認済みという意味です。実際の企画書では対象・日付・元の記録を付けてください。異なる工場や部署へ広げるときには、そのまま当てはまるとせず、業務や導入条件の違いを確かめます。
本文と別紙を分け、必要な根拠へすぐ戻れるようにする
分かりやすい企画書は、情報をただ削った資料ではありません。判断に必要な要点を本文に残し、細かい根拠や計算を別紙に分けることで、短く読めることと検証できることを両立させます。
本文は判断、別紙は検算・確認に使う
本文には結論と、その結論を支える重要な根拠を置きます。別紙には、調査の原票や試算の明細など、質疑で詳しく確認する情報をまとめます。次のように役割で分けてください。
| 論点 | 本文に残すこと | 別紙に置くこと |
|---|---|---|
| 顧客課題 | 対象、困る場面、重要な観察結果と対象範囲 | インタビュー記録、観察メモ、質問項目 |
| 市場・競合 | 狙う顧客範囲、選ばれる理由、主要な比較結果 | 統計の定義・出典、詳細な競合比較 |
| 収支・投資 | 主な前提、必要資金、採算を変える条件 | 月次の計算表、費用明細、見積もり |
| 実行・リスク | 責任者、日程、重要な未確認と対応案 | 作業計画の詳細、確認事項一覧、承認記録 |
別紙に置くのは詳細であって、判断を変える重要なリスクではありません。主要な前提が未確認、必要な承認が未取得、収支が成立しない条件があるといった事実は、本文にも示します。
根拠には資料名、対象と時点、ページやURLを付け、数字から出典へ戻れるようにします。社外共有する資料では、顧客名や個別の発言をそのまま添付せず、掲載許可と守秘の条件も確認してください。
1ページには一つの問いと答えを置く
スライドの見出しを「市場分析」だけにするより、「最初は既存の接点がある食品工場を対象にする」と書くと、そのページで伝えたい結論が見えます。結論の下に根拠を置き、判断を変える未確認事項があれば添えます。
顧客課題、競合比較、収支を一つのページへ詰め込むと、どの根拠がどの結論を支えるか分かりにくくなります。文字を小さくする前に、問いを分けてください。ただし指定の1枚様式などでは、欄ごとの役割と読む順番をそろえる方法を取ります。
新規事業の企画書を作る4ステップ
書き始める順番は、完成した資料の順番と同じでなくても構いません。先に判断と根拠を整理し、目次、本文、冒頭の要約の順に整えると、見た目だけを何度も修正する作業を減らせます。
1. 判断者に、今回の承認範囲と審査の観点を確認する
まず、依頼の一文を上司や判断者へ見せます。「8週間の限定検証を承認してほしい」という依頼なら、必要な判断材料と、現時点では確かめられない点を確認します。決裁者へ直接聞けない場合は、審査の事務局や直属の上司に、過去の審査で問われた論点と必要書類を確認してください。
目的は有利な評価基準へ誘導することではなく、今回の提案で何を判断できなければならないかをそろえることです。指定の様式、提出期限、関係部署への事前相談の要否も、この時点で確認します。
2. 手元の証拠を整理し、不足している情報を選ぶ
顧客の発言、観察記録、統計、見積もり、社内の販売実績などを集め、どの問いに答える資料かを付けます。使う前に、対象・時点・定義が今回の事業と合っているかを確かめます。
情報収集の優先順位は、今回の承認を左右するかどうかで決めることが基本です。足りない情報のうち、判断への影響が大きいものから調べ、残りは次の検証へ回します。公開情報の整理から始める場合は、デスクリサーチのやり方も参考になります。
3. 8項目の目次を作り、各ページの答えを一文で書く
基本構成の8項目を使い、各項目で何を伝えるかを一文ずつ書きます。スライドの装飾を完成させるのは、その後で十分です。顧客の課題、提供価値、収益、実行計画が論理的につながっているかを先に見ます。
数字がまだ分からない欄は、空欄のまま隠さず「未確認」とし、確認する方法と期限を添えます。本文と別紙を分け、最後に1枚目の要約を作り直すと、依頼と根拠のずれに気づきやすくなります。
4. 初めて読む人に確認してもらい、判断できない箇所を直す
新規事業の内容を詳しく知らない人に、説明なしで見てもらいます。「分かりましたか」だけでなく、「誰の問題を解く事業か」「今回は何の承認を求めているか」「何がまだ分からないか」を、相手の言葉で説明してもらいましょう。
回答が作成者の意図と違った箇所は、用語、順番、根拠のつながりを直します。その後、関係部署には実行条件を、判断者には承認範囲と次回の判断条件を確認します。文章の読みやすさと、実際に動けるかの確認を分けることがポイントです。
提出前に直したい、伝わりにくい企画書の5つの書き方
資料の見た目が整っていても、読み手が結論へたどり着けない場合があります。次の5つは、項目を増やすより、書き方を変えることで改善しやすい問題です。
1. 市場の大きさだけを書き、最初の顧客が見えない
「大きな市場の1%を取る」と書くだけでは、売上の実現方法が分かりません。最初に接点を作れる顧客、商談に進む方法、導入までの条件を足してください。市場全体の魅力と、自社が到達できる顧客の範囲は、別々の根拠で示します。
2. 機能を並べ、顧客の業務がどう変わるかを書いていない
AI分析、クラウド管理、自動化という機能名だけでは、購入する理由が伝わりません。現行業務のどの手間や損失が変わり、その変化を誰が評価するかへ書き換えます。削減時間などが未検証なら効果を断定せず、測定方法を添えてください。
3. 精密な予測を置き、前提が確認済みか分からない
小数点まである収益予測でも、販売数や提供工数が仮定なら確実性は高まりません。確認済み、参考値、仮置きを分け、計画に影響する前提を示すことが重要です。予測が外れた場合の追加支出と、計画を見直す時点まで説明すると、読み手はリスクを比較できます。
4. 不都合な反応や未確認事項を別紙に隠す
購入を断られた理由や導入できない条件が計画を変えるなら、本文に書く必要があります。肯定的な反応だけを残さず、対象や条件による違いを整理します。そのうえで、問題を解消できる代替案があるか、確かめる価値が残るかを提案してください。
5. 承認後の担当者と期限がなく、次の行動が決まらない
「承認後に検討する」という項目が多いと、誰が動くか分からないまま企画が止まります。少なくとも、承認直後に行う作業、担当者、成果物、期限の記載が必要です。人員確保が承認事項なら、確保できなかった場合の代替案も示します。
5つを確認した後は、表紙から最後まで通して読み、「依頼した範囲」「実行計画」「次回の判断」が同じ条件でつながっているかを確認してください。
新規事業の企画書に関するよくある質問
ページ数やテンプレートの使い方など、構成を決める際に迷いやすい点を整理します。
まとめ:目次を作る前に、今回求める判断を一文にする
新規事業の企画書は、今回求める判断、背景、顧客、価値、市場、収益、実行、判断条件の8項目を出発点に組み立てられます。すべてを同じ詳しさで書くのではなく、検証開始・PoC・事業化投資のどの判断を求めるかに合わせて、根拠の厚さを変えましょう。
まず手元の資料の冒頭へ、「誰に、何を、どこまで承認してほしいか」を一文で書いてください。その一文を支える根拠を本文に置き、足りない根拠には次の確認方法を付けます。承認後に誰が動き、いつ結果を見直すかまでつながれば、読み手が次の行動を判断しやすい企画書になります。
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