投稿日:2026.09.09 最終更新日:2026.09.10
フェルミ推定で市場規模を計算する方法|具体例と仮定の確かめ方
フェルミ推定で市場規模を出すには、対象を「購入する人数や拠点数」と「年間に支払う金額」へ分解し、確認できる数字と仮定を組み合わせて計算します。正確な市場データが見つからない新規事業でも、検討の出発点となる概算を作れます。
ただし、大きな金額が出ても、自社が売れる証明にはなりません。試算の価値は、規模感と、次に確かめる仮定が分かることです。
本記事では、BtoB・BtoCの基本式、工場向けサービスの計算例、数字を変えて影響を見る方法を解説します。イノベーション総研の888名調査と長尾の検証に関する考え方を踏まえ、計算結果を顧客への質問や売上計画へつなぐ手順も紹介します。初めて計算する方も、企画書の根拠を見直したい方も、自社の式を点検しながら読み進めてください。
この記事のポイント
- 市場規模は、支払う単位と年間支出に分けて概算する
- 確認済みの数字と仮定を区別し、単位と桁を検算する
- 仮定を動かし、判断への影響が大きい数字から確かめる
- 市場全体の金額と、自社が獲得できる売上を分ける
目次
フェルミ推定とは、分からない市場規模を要素に分けて概算する方法
フェルミ推定は、直接は分からない数字を、人数や利用回数などの考えやすい要素に分けて概算する方法です。市場規模なら「誰が、何を、何回、いくらで買うか」を式にします。すべての数字がそろうまで待たず、既知の情報と仮定を使って、事業の規模感をつかめます。
たとえば、ある地域の弁当市場を考えるなら、地域の人口だけでは金額になりません。購入する人数、1人が年間に買う回数、弁当の平均価格へ分けると、何を調べれば計算できるかが見えてきます。単なる思いつきとの違いは、他の人が式と前提をたどれることです。
計算結果は「仮定が成り立つ場合の規模」として扱う
仮定から算出した金額は、実際に観測された市場規模ではありません。「有料で利用する人がこの割合なら、年間でこの程度になる」という条件付きの試算です。新しい商品では、現在の支出を測っているのか、将来の利用が広がった状態を見積もっているのかも区別します。
新規事業の初期には、複数の案を同じ条件で比べる用途に向いています。逆に、具体的な設備投資や採用人数を決める段階で、未確認の割合だけに頼るのは危険です。概算で候補を絞り、判断を左右する仮定から確かめる。この順番で使うと、調査にかける時間も決めやすくなります。
市場全体と、自社が獲得できる売上は分けて計算する
市場が100億円あっても、自社がその1%の1億円を売れる根拠にはなりません。市場全体の支出と、自社が接触し、契約し、提供できる顧客数は別の数字だからです。
市場の範囲を整理するTAM・SAM・SOMと、数字を概算するフェルミ推定も役割が異なります。前者は「どこまでを市場と呼ぶか」、後者は「その範囲をどう計算するか」を考えるものです。3階層の定義はTAM・SAM・SOMの違いと計算方法で確認できます。
本記事では式の作り方と検証を詳しく扱います。統計や業界資料の探し先から整理したい場合は、市場規模の調べ方を併せて参照してください。
市場規模の計算式は、課金の仕組みに合わせて作る
基本は「年間に購入する単位の数×1単位当たりの年間支出額」です。ただし、人数、世帯、企業、拠点のどれが支払う単位かによって式は変わります。BtoCは消費者向け、BtoBは法人向けの事業を指します。
BtoCは「購入者数×年間購入回数×単価」で考える
繰り返し購入する商品は、購入者数、購入頻度、1回の金額に分けます。購入者数が不明なら「対象人口×年間に購入する人の割合」へ分解します。頻度は、その商品を買う人に限った平均です。
BtoCの計算例:地域の持ち帰り弁当(すべて説明用の仮定)
対象人口10万人×年間購入者の割合40%×1人当たり年間50食×1食600円=12億円/年
この例は、対象地域の住民による弁当への支出です。観光客や通勤者の購入は含んでいません。「その地域にある店の売上」と比較するときは、地域外からの購入や住民の地域外での購入が差になります。同じ地域名でも、集計対象が同じとは限りません。
毎月支払うサービスなら「平均有料会員数×月額料金×12か月」が基本です。年末の会員数を使うと、年度途中に加入した人まで12か月分として数えるため、実際の年間売上とはずれることがあります。
BtoBは「契約単位の数×導入率×年間単価」で考える
法人向けでは、契約書の単位と課金の単位を先に確認します。1社で契約しても、料金は従業員数や工場数に応じて決まる場合があります。「企業数×拠点当たり料金」のように、違う単位をそのまま掛けないことが重要です。
工場ごとの定額サービスなら「対象工場数×有料導入率×1工場当たり年間料金」、利用者ごとのソフトウェアなら「対象企業数×導入企業の割合×1導入企業当たり有料利用者数×1人当たり年間料金」と分けられます。
導入率は、自社の成約率と区別します。市場規模に使うのは、対象全体のうち、その種類の商品を有料で導入する割合です。特定の営業担当者が提案した相手の成約率を、そのまま市場全体へ広げることはできません。
店舗・設備の数から計算するときは稼働率を入れる
購入者から考えにくい場合は、供給する側の数から組み立てます。店舗なら「店舗数×1日当たり客数×客単価×年間営業日数」、時間貸し設備なら「設備数×営業可能時間×稼働率×時間当たり料金」といった式です。
説明用に、地域内の貸会議室100室が、1日10時間、年300日営業し、稼働率30%、料金が1時間3,000円だと仮定します。年間売上は100室×10時間×300日×30%×3,000円=2.7億円です。稼働率を抜いた9億円は、全時間が売れた場合の供給能力に当たります。
需要側の推定と供給側の推定を比べると、買いたい量と提供できる量の関係を点検できます。ただし、供給能力の上限と実際の支出を同じものとして平均してはいけません。
フェルミ推定の計算例:工場向けサービスを5ステップで試算する
ここからは、工場の点検記録を管理するクラウドサービスを例に、計算を具体化します。以下の拠点数、割合、価格はすべて説明用の仮定です。実在する業界の統計や、イノベーション総研の支援実績を表すものではありません。
1.対象とする市場・期間・売上の範囲を決める
最初に、何の金額を出したいかを一文で固定します。この例では「国内の対象工場が、点検記録管理サービスに支払う年間利用料の合計」とします。ハードウェア、導入支援の初期費用、他の工場業務のソフトウェアは含めません。金額は税抜きです。
新しいサービスなので、現時点の実売上ではなく、想定した有料導入が進んだ状態の年間規模を求めます。普及に何年かかるかは、別途確かめる課題として残します。この区別がないと、将来の機会を初年度の売上目標と取り違えやすくなります。
2.拠点数・購入条件・年間料金へ分解する
式は「候補拠点数×対象条件を満たす割合×条件を満たす拠点の有料導入率×1拠点当たり年間料金」です。対象条件は、たとえば「一定量の点検記録を扱い、クラウドで管理できること」とします。
40%と30%を掛ける場合、40%は候補拠点全体に対する割合、30%はその40%に含まれる拠点の中での割合です。分母を言葉で書けば、「導入対象である割合」を重複して掛けるミスを見つけやすくなります。
3.確認済みの数字と仮定を分けて入力する
実務では、各数値の横に「統計」「自社で確認」「仮定」の区分を付けます。公開統計から取った数字でも、対象産業や拠点の定義が違えば、そのまま使えません。以下は記入方法を示すため、全行を仮定として置いています。
| 計算する要素 | 説明用の値 | 実務で確かめること |
|---|---|---|
| 候補となる国内拠点数 | 100,000拠点 | 対象産業・規模の統計。企業数か事業所数か |
| 対象条件を満たす割合 | 候補拠点の40% | 点検記録の量、クラウドを利用できる条件 |
| 対象条件を満たす拠点の有料導入率 | そのうち30% | 必要性、予算、購入・導入の手続き |
| 1拠点当たり年間利用料 | 月2万円×12か月=24万円 | 価格提示への反応、契約期間、値引き条件 |
公的データの検索にはe-Statの統計データ検索を利用できます。実際の表に置き換える際は、統計表の名称、集計対象、基準年、URLも残します。数字の大きさが近いという理由だけで、別の業種の母数を採用しないようにします。
4.単位と桁をそろえて計算する
まず人数や拠点数を求め、その後で金額に直すと、検算がしやすくなります。途中計算を省かず、次のように3行で確認します。
- 対象条件を満たす拠点:100,000拠点×0.4=40,000拠点
- 有料導入する拠点:40,000拠点×0.3=12,000拠点
- 年間利用料の合計:12,000拠点×240,000円/拠点・年=2,880,000,000円/年=28.8億円/年
万円単位でも、12,000×24万円=288,000万円=28.8億円と確認できます。小数点の精密さより先に、円・万円・億円の換算と、年・月の期間を点検します。
この28.8億円は、仮定した12,000拠点が12か月分支払う状態の年間利用料です。初年度の売上や、すべての対象工場が導入した最大規模を示す数字ではありません。
5.別の計算方法で不自然な数字を見つける
検算では、同じ仮定を並べ替えるだけでなく、別に確かめた情報から計算します。たとえば、提供会社ごとの国内の有料拠点数と、そのサービスの年間売上を確認し、重複する拠点や対象外の売上を調整して比較します。
顧客側の予算から見る方法もあります。説明用に、対象条件を満たす40,000拠点が関連業務へ年100万円ずつ支払っているなら、その支出の合計は400億円です。28.8億円はその7.2%に当たります。比率が大きすぎないかを問う材料にはなりますが、関連予算をこのサービスに振り替えられる証明にはなりません。
数字が合わないときは、推定値を無理に寄せず、対象範囲、価格、利用拠点数、集計時点を順に見直します。新市場で比較データがない場合は、未検証であることを残し、実際の価格提示や業務観察へ進みます。
仮定を変えて、先に確かめる数字を選ぶ
一つの試算を出した後は、どの仮定によって判断が変わるかを調べます。仮定を動かしたときの結果の変化を見ることを、感度分析と呼びます。目的は複雑な計算表を作ることではなく、次に調べる項目を選ぶことです。
導入率と単価を一つずつ変え、結果の動きを比べる
先ほどの基本値28.8億円に対し、導入率だけ、年間単価だけを変えます。ほかの条件を固定することで、どの仮定による変化かを説明できます。
| 変更する要素 | 低い値での計算結果 | 基本値での計算結果 | 高い値での計算結果 |
|---|---|---|---|
| 有料導入率だけを変更 | 15%:14.4億円 | 30%:28.8億円 | 45%:43.2億円 |
| 年間単価だけを変更 | 18万円:21.6億円 | 24万円:28.8億円 | 30万円:36.0億円 |
この例では、置いた変動幅の中では導入率の方が結果を大きく動かします。ただし、単純な掛け算では、導入率も単価も同じ割合だけ変われば結果への影響は同じです。導入率が常に重要なのではなく、不確かさの大きさと、判断を変えるほどの影響があるかを組み合わせて考えます。
変動幅は、ひとまず不明点を探すための仮置きです。実務では、価格提示への反応、類似サービスの利用状況、対象企業の業務条件から更新します。すべての数字を一律にプラス・マイナス10%とするだけでは、どこが不確かなのかを見失います。
悲観・基本・楽観の3ケースでは、条件の組み合わせを説明する
複数の仮定を同時に変える場合は、整合する事業状況を想定します。この例の悲観ケースは、費用に見合う効果が伝わらず、導入率15%・年18万円にとどまる状態です。楽観ケースは、効果を確認できる拠点が増え、導入率45%・年30万円で受け入れられる状態とします。母数と対象条件の割合は固定です。
導入条件と価格を置き分けた年間市場規模
この幅は、10.8億〜54億円に収まる確率を示すものではありません。条件を置き分けた計算例です。値上げによって導入率が下がる可能性もあるため、「価格も導入率も最大」にするなら、両立する理由と確かめ方が必要です。
もし悲観ケースでも調査を続ける価値があるなら、細かい単価の推定より、到達できる顧客の確認が先になるかもしれません。反対に、導入率が少し下がるだけで自社の採算条件を満たせないなら、その条件を先に検証します。市場金額だけで結論を出さず、自社売上と費用を計算する段階へつなぎます。
市場の試算で、いま困っていることはどれですか
近い状態を開くと、確認項目と記事内の参照先が分かります。
試算だけでなく、顧客・収益・体制のどこが未確認かを点検する場合は、新規事業リスク診断「Compass」も活用できます。
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推定した市場規模を、顧客への質問と売上計画につなげる
イノベーション総研では、試算に使った未確認の数字を、顧客に確かめる項目へ変えることを重視します。「計算ができた」で終わらず、どの条件を満たす顧客が実際に存在するかを確かめるためです。
888名調査では、顧客との直接対話が3回以下の回答が45.8%
イノベーション総研が、大企業で新規事業に関わった888名に直近のプロジェクトについて尋ねたところ、チームがターゲット顧客と直接対話した回数は「0〜3回」が45.8%でした。下図は、回数の回答を4区分にまとめたものです。
チームがターゲット顧客と直接対話した回数
この結果から、フェルミ推定の利用率や精度は分かりません。一方で、仮定を顧客との接点で確かめる機会が限られているプロジェクトは少なくない、とイノベーション総研は捉えています。まずは計算表の未確認欄を見て、既存の対話記録で答えられるものと、追加で聞くものを分けることを提案します。
重要なのは回数を増やすことだけではありません。同じ相手に同じ確認を繰り返しても、対象市場の理解が広がるとは限らないためです。利用者だけでなく、予算を持つ人、導入を承認する人、運用する人で条件が異なる場合があります。
「導入率30%」を、顧客に確かめられる条件に書き直す
導入率を直接質問するより、購入を妨げる条件を分けて聞く方が、次の行動を決めやすくなります。工場向けサービスなら、次のように数字と質問を対応させます。
| 確かめたい仮定 | 顧客への質問・観察 | 確認後に見直す数字 |
|---|---|---|
| 対象条件を満たす割合40% | 点検記録を誰が、どのくらい扱っているか。クラウド利用に制約があるか | 対象に含める拠点の条件と割合 |
| 有料導入率30% | 現在は何で代替し、何に困っているか。誰が予算を持ち、何が購入の条件か | 有料導入の条件と見込み |
| 年間単価24万円 | 月2万円を提示すると、どの予算と比較されるか。費用に見合う効果は何か | 料金と提供範囲 |
| 12か月分の支払い | 年度のいつから使えるか。審査、契約、導入に何が必要か | 課金開始時期と年度内の売上 |
「便利そう」「安ければ使う」といった感想だけで、有料導入の割合を上げないことも大切です。実際の業務、支払える予算、利用開始に必要な審査を確認し、満たせない条件も記録します。
たとえば、協力的な既存顧客5社への面談で3社が関心を示しても、全市場の導入率が60%とは言えません。対象をどう選んだか、何を提示したか、関心なのか契約なのかによって意味が変わります。まずは購入条件の仮説を修正し、対象を広げた調査や有料テストにつなげます。
長尾は、良いPoCについて、目標を明確にしつつ、進め方は状況に合わせて変えることを重視しています。この考え方を市場推定に当てはめると、「導入率を高く見せる」ことではなく、「年24万円で有料導入できる条件を確かめる」ことが検証の目標になります。結果が合わなければ、対象顧客や価格、提供範囲を修正します。

自社売上は、商談数と導入できる件数から積み上げる
自社の売上計画を作るときは、市場全体に固定のシェアを掛ける方法から離れます。営業で接触できる拠点、提案できる拠点、契約になる拠点、導入作業を終えられる拠点を数えます。
同じ工場向けサービスで、説明用に「初年度に提案できる100拠点×契約率20%=20拠点」と見積もったとします。ただし、導入チームが初年度に対応できるのが12拠点なら、少なくとも提供能力が計画の制約です。12拠点が通年で支払う年換算の利用料は、12×24万円=288万円です。
12拠点が全て年度の半分の期間だけ課金されるなら、その年度の利用料は144万円になります。28.8億円という市場の試算、288万円という年換算の契約規模、144万円という初年度売上を並べると、何が足りないかを議論できます。
その先は、導入支援の工数、販売費、運用費などを差し引いて、自社として続けられるかを確認します。市場に需要があることと、自社が利益を出せることは、別々に確かめる必要があります。顧客1件当たりの採算については、ユニットエコノミクスの考え方が参考になります。
フェルミ推定で避けたい5つの計算ミス
概算だからといって、単位や対象範囲のずれまで許容してよいわけではありません。数字を会議に出す前に、次の5点を確認します。
1.企業数と事業所数を混ぜる
1社が複数の工場や店舗を持つ場合、企業数と拠点数は一致しません。総務省統計局の経済センサスの用語解説でも、事業所は経済活動を行う場所ごとの単位として扱われています。
1社単位で料金を取るなら企業数、1拠点単位なら拠点数を起点にします。本社契約で複数拠点をまとめて割り引く場合は、拠点数に定価を掛けただけでは過大になるため、実際の契約条件に合わせます。
2.保有台数を年間販売台数として使う
設備の保有台数は、ある時点に存在する数です。一方、年間販売台数は、その年に売れた数です。保有10万台に1台100万円を掛けても、毎年1,000億円売れるとは限りません。
仮に台数が安定し、平均10年で均等に入れ替わるなら、更新需要の目安は10万台÷10年=年1万台、金額は年100億円です。新設、廃止、更新時期の偏りがあれば別に補正します。保守料金のように毎年発生する支出とは式を分けます。
3.利用率を二重に掛ける
調査で把握した「購入者数」に、もう一度購入率を掛ける必要はありません。同様に、購入しない人も含めた全体平均の年間支出額を使うなら、同じ理由で利用率を掛けると二重に減らしてしまいます。
各要素の横へ「誰を分母にした数字か」を書きます。全体平均なら全体数、購入者だけの平均なら購入者数と組み合わせます。割合を増やして式を細かくする前に、条件が重複していないかを確認します。
4.取引総額を、自社の手数料売上と混同する
仲介や予約のサービスでは、顧客が支払う取引総額と、自社に入る手数料を分けます。説明用に、年間取引総額10億円、手数料率10%なら、手数料売上は1億円です。10億円がそのまま自社売上になるわけではありません。
市場比較でも、メーカーの出荷額、小売店の売上、仲介手数料を混ぜないようにします。同じ商品が流通の各段階で売買される金額を単純に足すと、同じ取引を重ねて数えることがあります。
5.仮定の数字を、確認済みの事実として書く
もっともらしい小数点やグラフを付けても、仮定の確かさは変わりません。「導入率30%と仮定」と「調査対象の30%が契約」は別です。数字を更新するときには、根拠の区分も更新します。
生成AIが提示した市場規模も、元資料、集計範囲、基準年、計算式を確認してから使います。リンクが実在していても、引用先が同じ数字や定義を示しているとは限りません。出典が確認できない場合は、事実として引用せず、検証前の仮定に戻します。
計算結果は、根拠と次の確認事項を添えて共有する
企画書では、金額だけを大きく載せるより、第三者が再計算できる情報を一緒に示します。次の5項目をそろえると、会議で「数字が違う」という話から、どの条件を調べ直すかという話へ進めやすくなります。
- 対象:国内の対象工場向け点検記録管理サービス。年間利用料のみ、税抜き。想定普及時点の概算。
- 式:10万拠点×40%×30%×24万円=年28.8億円。
- 根拠:この記入例は全数値が仮定。実務では、各数値に出典・基準年・対象範囲を付ける。
- 変わり得る幅:条件を置き分けた3ケースは年10.8億〜54億円。統計的な信頼区間ではない。
- 次の確認:担当者と期限を決め、年24万円で購入する条件、初年度に導入できる拠点数を確かめる。
「市場は28.8億円あるため、参入すべきだ」だけでは、参入の根拠が足りません。「仮定した条件では年28.8億円。導入率の不確かさが大きいため、次回は有料導入の条件を検証して対象範囲を見直す」と書けば、次の判断に必要な作業が伝わります。
計算表には版と更新日も残します。前回から金額が変わったら、母数の更新、顧客条件の変更、価格の変更のどれが理由かを説明します。結論に都合のよい数字へ置き換えるのではなく、確認した事実によって仮定を直す運用にします。
検証の順番や顧客への確かめ方まで整理したい場合、イノベーション総研の新規事業立ち上げ支援では、事業仮説や検証計画、実行体制の具体化を支援しています。試算の前提を持ち込むことで、優先して確かめる論点から相談できます。
フェルミ推定による市場規模の計算でよくある質問
最後に、数字の調べ方、精度の考え方、ツールの利用で迷いやすい点を整理します。いずれも、計算すること自体より、どの判断に使うかを基準に考えます。
まとめ:市場の大きさと、次に確かめる仮定を一緒に示す
フェルミ推定で市場規模を計算するときは、課金の単位から式を作り、数字の根拠と仮定を分けます。BtoCなら購入者・頻度・単価、BtoBなら企業や拠点・有料導入率・年間料金を起点に考えられます。
計算ができたら、単位と桁を検算し、仮定を動かして結果への影響を見ます。イノベーション総研が重視するのは、その未確認の数字を顧客への質問へ変え、自社の商談数や提供能力、採算につなぐことです。
まずは自社の試算を1行で書き、根拠が説明できない要素に印を付けてください。その中から、確認結果によって事業の判断が変わる項目を一つ選ぶことが、次の作業になります。
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市場規模の前提、顧客への確かめ方、販売と提供の条件を整理したい方へ。新規事業の状況を伺い、次に確認すべき論点と進め方を一緒に考えます。