新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

TAM・SAM・SOMとは?市場規模の違い・計算方法を具体例で解説

市場は大きい。でも、自社はいくら売れるのか。

TAM・SAM・SOMは、市場規模を「対象になる市場全体」「自社が提供できる市場」「一定期間で獲得を見込む市場」の3つに分ける考え方です。大切なのは、市場全体の大きさと、自社が獲得できる根拠を分けることです。「大きな市場の1%を取る」と置くだけでは、誰が購入し、何社に届けられるのかを説明できません。本記事では、3つの違い、範囲を絞る4ステップ、同じ法人向けサービスを使った計算例を紹介します。数字の出典と仮定を整理し、企画書で何を示し、次にどの条件を確かめるかまで分かるように解説します。

この記事のポイント

  • TAMは市場全体、SAMは提供対象、SOMは一定期間で獲得を見込む範囲を表す
  • 対象顧客と年間単価を決め、顧客条件・営業・導入能力から範囲を絞る
  • 年額換算の市場規模と、課金開始月を反映した初年度売上を分ける
  • 出典のある数字と仮定を区別し、次に確かめる顧客・価格・体制を決める

目次

TAM・SAM・SOMとは、市場を3つの範囲に分ける考え方

含まれる関係:TAM ⊇ SAM ⊇ SOM

01

TAM|市場全体

商品・サービスの対象になり得る顧客全体。自社が獲得できる割合は、まだ反映しない。

02

SAM|TAMの内側

TAMのうち、自社の商品・対象顧客・地域・提供方法に合う市場。

03

SOM|SAMの内側

SAMのうち、競争、営業・提供体制を踏まえ、一定期間で獲得を目指せる範囲。

対象範囲の関係を示した概念図。面積は市場規模の比率を表していません。

TAM・SAM・SOMは、同じ商品・サービスの市場を、条件を加えながら絞り込むために使います。市場全体の可能性と、自社の事業条件、実行できる範囲を分けて読むと、3つの違いがつかめます。

英国政府の投資準備ガイドでも、TAMを需要全体、SAMを地域や顧客などの条件で提供できる部分、SOMを戦略・資源などに裏づけられた獲得可能な部分として説明しています。3つの数字を、根拠をたどれる形でつなぐことを重視しています。

この考え方を新規事業に当てはめると、市場規模の計算は、最初に狙う顧客と、まだ確かめていない条件を見つける作業です。イノベーション総研では、大きな金額を示せたかよりも「どの条件が変われば、次の行動を変えるか」まで説明できることが重要だと考えます。

TAMは、商品・サービスの対象になり得る市場全体

TAMはTotal Addressable Marketの略です。すべての対象顧客に商品・サービスが行き渡った場合の、理論上の市場規模を表します。この段階では、自社の営業人数や現在の供給能力は反映しません。

ただし、TAMは「できるだけ大きな業界売上」ではありません。たとえば工場の点検業務を支援するソフトウェアを売るなら、工場が生産する製品の売上全体ではなく、その点検支援サービスの対象になり得る需要を数えます。何の対価を市場として測るのかを先に決める必要があります。

SAMは、商品や提供条件に合う市場

SAMはServiceable Available Market、またはServiceable Addressable Marketの略です。TAMのうち、自社の商品・対象顧客・地域・提供方法などの条件に合う部分を表します。

同じ点検支援ソフトウェアでも、日本語の画面しかなく、特定の設備データにしか対応していないなら、その条件を満たす工場へ対象を絞ります。「製造業ならどこでも使える」とは扱いません。条件を満たしていても、全社が実際に購入するとは限らない点が重要です。

SOMは、一定期間で獲得を見込む市場

SOMはServiceable Obtainable Marketの略です。SAMのうち、競合、営業経路、成約見込み、導入能力を踏まえて、自社が獲得を見込む部分を表します。

商品が対応できる会社が2,000社あっても、そのすべてと今期中に商談できるわけではありません。営業担当が接触できる件数、顧客の購入判断にかかる時間、導入担当が受け入れられる件数を確認し、何年後の獲得見込みなのかも添えます。

まずは自社の商品について、TAMを絞る前に「誰の、どの業務や支出を対象とするか」を一文にしてください。その一文が変わると、探す統計も、数える顧客も変わります。

TAM・SAM・SOMは、対象と実行条件を4ステップで絞る

計算を始める前に、何を数えるかをそろえます。次の4ステップでは、市場の境界を決めてから、提供条件、獲得条件、数字の整合性を順に確認します。

1. 誰の何に対する支出を数えるか決める

最初に、支払う顧客、購入する商品、対象地域、課金単位、測定期間を決めます。法人向けなら会社単位か工場・店舗単位か、個人向けなら人数単位か世帯単位かを明確にします。

  • 顧客:誰が使い、誰が費用を払うか
  • 対象:商品代だけか、導入支援や保守も含むか
  • 地域:国内、特定地域、世界のどこを対象とするか
  • 単位と期間:1社あたり年間いくら、1回あたりいくらなど、何で測るか

年額契約なら「対象顧客数×年間単価」が基本です。都度購入なら「購入者数×1回の単価×年間購入回数」のように、事業に合う式へ分けます。月額を年間へ直した後で、さらに購入回数12回を掛けないよう注意してください。

2. 商品・地域・顧客の条件からSAMを決める

TAMから、自社が提供対象にできない範囲を除きます。業種や規模だけでなく、必要なデータがあるか、既存システムと連携できるか、想定価格帯で検討できるかなど、採用に関わる条件を使います。

たとえば「国内の工場のうち、対象設備を持ち、必要データを取り出せる拠点」と定義します。データ条件が未確認の拠点は、確認済みとして数えず、候補と確定分を分けます。

「大企業である割合」と「必要データがある割合」を別々の資料から拾い、そのまま掛けるのも慎重に行います。企業規模とデータ整備状況が関係している場合、単純な掛け算では対象数がずれます。可能なら、両方の条件を同時に満たす数を調べます。

3. 営業と導入の見込みからSOMを積み上げる

次に、SAMのうち何社へ接触でき、何社が商談・契約に進み、何社へ提供を始められるかを見積もります。営業経路ごとの見込み客リストや商談記録、導入担当者の予定を使います。

「提供できる顧客」と「自社を選び、期間内に導入できる顧客」は別です。顧客が競合を使い続ける可能性や、契約更新まで切り替えられない条件も織り込みます。

同じ会社が展示会と紹介の両方に含まれている場合は、二重に数えません。名刺を持っていることと、具体的な商談に進めることも区別します。過去の成約率を使うなら、対象顧客、営業経路、商品の成熟度が今回と近いかを確認してください。

4. 期間・金額・価格のそろえ方を確認する

TAMが年間売上、SAMが5年分の累計、SOMが単月売上では比較できません。基準となる年、円・件数などの単位、年額換算か累計かをそろえます。自社の売上として計算するのか、顧客側の支出として計算するのかも明記します。

一方で、対象地域や顧客層まで同じにする必要はありません。TAMから対象を絞った部分がSAM、SAMから獲得を見込む部分がSOMという関係を保つことが目的です。

価格が異なる顧客層は、層ごとに「顧客数×年間単価」を計算して合計します。将来の値上げや海外進出を見込むなら、現在の計算に混ぜず、その時点の提供条件と市場全体の前提をそろえた別の見積もりを作ります。

市場データは、公表値と顧客数からの積み上げで確かめる

複数の指標やグラフを表示したノートパソコン

自社の商品と完全に一致する市場統計が見つかるとは限りません。公表された市場規模から範囲を絞る方法と、顧客数・単価から組み立てる方法を使い分けます。数字が食い違ったときは、平均を取る前に定義を見直します。

公表された市場規模から絞る「トップダウン」

トップダウンは、業界全体などの公表値から、地域や商品分野を限定する方法です。公的統計、業界団体の資料、企業の公表資料などを探し、売上に何が含まれているかを確認します。

たとえば「業務ソフトウェア市場」には、自社が扱わない種類のソフトウェアや付帯サービスが含まれることがあります。公表値をそのままTAMにせず、自社のサービスと重なる範囲を説明してください。統計が集計した過去の年と、資料の発表年も区別します。

顧客数と単価から組み立てる「ボトムアップ」

ボトムアップは、対象顧客数、拠点数、年間単価などから市場規模を積み上げる方法です。公表値が広すぎる場合でも、誰を何件数えたのかを追いやすくなります。

国内の企業や事業所の数を調べる候補には、総務省統計局の経済センサスがあります。統計局の用語解説では、事業所を場所ごとの単位、企業等を本所・支所を含む全体として区別しています。

この違いを計算に反映します。1社が5工場を持つ場合、全社で1契約のサービスなら顧客数は1社、工場ごとに課金するサービスなら対象は5拠点です。事業所数に1社あたりの全社契約価格を掛けると、過大な見積もりになり得ます。

顧客の困りごとや購入意向は、統計上の業種だけでは確定しません。統計は対象を探す入口とし、購入条件は顧客への確認で補います。情報源の探し方は、市場規模の調べ方で詳しく整理しています。

2つの計算が違うときは、含めた対象を比べる

トップダウンとボトムアップの値が近ければ、必ず正しいというわけではありません。同じ誤った前提を使えば、両方が同じ方向にずれることもあります。大きく違う場合は、違いの原因を探す手がかりにします。

  • 会社数と店舗・工場数が混ざっていないか
  • 商品代、保守、導入費の含め方が同じか
  • 対象年、対象地域、想定価格が一致しているか
  • 顧客の支出全体を、自社が受け取る売上として扱っていないか

どちらの方法も仮定に依存する場合は、無理に一つの数字へ確定させません。重要な仮定を明記した暫定値とし、次の調査で何を確かめれば見積もりを更新できるかを示します。

TAM・SAM・SOMの計算例を、同じ法人向けサービスで見る

ここからは、国内企業に提供する点検記録管理サービスを例に計算します。以下の顧客数・価格・割合は、計算を説明するための架空の仮定です。実在する市場の規模や、一般的な成約率を示すものではありません。

会社単位の年額契約として、3つの市場を計算する

この例では、工場ごとではなく、1社あたり月10万円、年120万円で契約するとします。対象業務がある国内企業を10,000社、そのうち商品・データ・運用条件に合う企業を2,000社と仮定します。対象期間は4月から翌年3月までの1年間です。

表は、年度末時点の対象顧客数を同じ年間単価で換算した比較です。価格は共通とし、既存契約はなく、獲得後に年度末までの解約がない仮定で示します。

架空サービスの対象範囲と年額換算の市場規模
区分 数える顧客 計算式 年額換算
TAM 対象業務がある国内企業全体 10,000社 × 120万円/社・年 120億円/年
SAM 商品・データ・運用条件に合う企業 2,000社 × 120万円/社・年 24億円/年
SOM 年度内に契約し、提供開始を見込む企業 10社 × 120万円/社・年 1,200万円/年

この表で説明すべきなのは、2,000社と10社をどう絞ったかです。2,000社は商品と顧客の適合条件、10社は営業と提供の見込みから決めます。10社という結論を先に置き、SAMに都合のよい割合を掛けるのではありません。

10社の獲得見込みを、接触・商談・成約に分ける

この架空例では、営業担当が年度内に接触できる企業を50社と見積もります。そのうち課題と検討条件が確認でき、具体的な商談へ進む割合を40%、商談した企業の成約率を50%と仮定します。

50社 × 商談化率40% × 成約率50% = 10社

商談化率の分母は接触した50社、成約率の分母は商談へ進んだ20社です。同じ50社に対する割合ではありません。実際に使う際は、営業記録などで、この区分に合う割合を確かめます。まだ実績がなければ、仮定であることを明示します。

さらに、導入担当が年度内に12社まで受け入れられると仮定すると、10社は提供能力の範囲内です。ただし、年度末直前の受注では導入が間に合わないこともあるため、商談ごとの契約予定月と導入開始月も確認します。

仮に、既存業務との兼務によって導入できるのが6社までなら、同じ年度のSOMは年額換算720万円になります。この場合の次の判断は、営業件数を増やすことだけではありません。導入手順を減らす、支援要員を確保する、提供開始時期を見直すといった対応を検討します。

逆に導入体制に余裕があっても、顧客が価格や導入条件に合意しなければ契約は増えません。顧客への確認は、BtoB顧客インタビューの進め方も参考にしてください。

年額換算1,200万円でも、初年度売上は同じとは限らない

10社がすべて10月から利用・課金を開始するなら、初年度の対象月数は10月から翌年3月までの6か月です。月額10万円の継続課金だけを考えると、初年度の売上見込みは次のようになります。

10社 × 月10万円 × 6か月 = 600万円

年額換算1,200万円は、年度末の10社が12か月利用した場合の規模です。初年度600万円との違いは計算ミスではなく、課金対象月数の違いです。導入一時金、値引き、従量料金などがある事業では、それぞれを分けて計画します。

このように、市場規模の比較表と年度別の販売計画は役割が異なります。「SOMを達成すれば初年度の売上も同額になる」とは説明せず、対象時点と金額の意味を添えてください。

市場規模の説明で、どこに根拠が足りないかを確かめる

近い状態を開くと、確認項目と記事内の説明・関連支援が分かります。

01 対象となる顧客が広すぎる

「全企業」から始めず、どんな業務や困りごとを持つ顧客を数えるのかを決めます。

  • 支払う人・会社を決めたか
  • 課金単位と集計単位が一致しているか
  • 含めない顧客を説明できるか

市場の範囲を決める手順へ →

02 元になる統計を見つけられない

ぴったりの市場規模がなくても、企業数や拠点数から組み立てる方法があります。

  • 対象業務を含む産業分類を確認したか
  • 調査年と地域を確認したか
  • 会社数と事業所数を混ぜていないか

数字の探し方と検算方法へ →

03 顧客がその価格で買うか分からない

想定価格と、実際に支払ってもらえる価格を区別します。

  • 今の代替手段にかける費用を聞いたか
  • 予算を持つ人に確認したか
  • 価格提示後の行動を確かめたか

顧客インタビューの進め方を見る →

04 獲得できる社数を説明できない

接触・商談・成約・導入開始を分けると、数字を左右する条件が見えてきます。

  • 見込み客を重複なく数えたか
  • 確率の分母をそろえたか
  • 導入担当の受け入れ上限を確認したか

SOMの計算例へ →

05 企画書で根拠と仮定が混ざる

出典がある数字と、今後確かめる数字を分けて示します。

  • 計算式を再現できるか
  • 不確かな前提に幅を持たせたか
  • 更新する担当者と日を決めたか

企画書に示す内容へ →

06 市場以外の事業リスクも整理したい

市場規模だけで事業化を決めず、顧客・収益・体制などの弱い前提を整理します。

  • 市場が大きいことだけで進めていないか
  • 獲得費用や提供費用を見込んだか
  • 社内で次の判断がそろっているか

新規事業リスク診断の支援内容を見る →

NEXT STEP

次のステップ

市場の数字を、次に確かめる条件へつなげる

市場規模は計算できても、顧客・価格・実行体制のどこが弱いか迷う場合は、事業全体のリスクを整理します。

企画書は、数字の根拠と次に確かめる条件をセットで示す

企画書では、3つの金額を並べるだけでなく、読み手が計算を再現できる材料を添えます。資料の量を増やすより、確認済みの数字と仮定を区別し、今回決めたいことにつなげるのが先です。

定義・式・出典・未確認の条件を一緒に残す

各市場には、対象顧客と除外条件、計算式、基準年、出典を添えます。社内で置いた価格や割合は、調査で確認した事実のように見せず、どこを確かめる必要があるかを記載します。

次の表は、先ほどの架空例を企画書へ書く場合の整理例です。実際の統計や社内記録の代わりに使うのではなく、説明に不足している材料を確認するために使います。

架空の見積もりを企画書へ載せる前にそろえる材料
見積もりの前提 確認する根拠 次に確かめること
対象企業10,000社 同じ地域・基準年・集計単位の統計 対象業務のない企業が含まれていないか
提供条件に合う2,000社 必要データ・設備・運用条件の確認 未確認企業を確定分として数えていないか
年間単価120万円 価格を提示した際の反応、予算・決裁条件 想定価格で継続購入を検討できるか
年度内に10社へ提供 接触計画、商談見込み、契約・導入予定 成約の障害と導入担当の受け入れ上限

公表値、社内実績、仮定が混在していても、それ自体が問題ではありません。混在したまま全部を同じ確かさで扱うことが問題です。未確認の条件には、確認方法、担当者、期限を一緒に置きます。

不確かな前提を変えて、見積もりの幅を確かめる

新規事業では、成約率や単価がまだ固まっていないことがあります。一つの数値へ細かく決める前に、判断を左右する前提を変えた場合を計算します。

先ほどの20社の商談について、成約率を20〜60%、導入上限を12社と置くと、獲得見込みは4〜12社、年額換算は480万〜1,440万円です。これは架空のシナリオ比較であり、統計的な確率範囲ではありません。

この幅のどこでも次の判断が変わらないなら、成約率を細かく調べる優先度は下げられます。一方、低い場合には体制や予算を維持できないなら、価格提示後の反応や成約しない理由を先に確かめる必要があります。

市場の大きさだけでなく、参入・検証・見直しを判断する

市場が大きくても、獲得費用や提供費用が高ければ事業として成立するとは限りません。SOMは売上機会の見積もりであり、利益や成功を保証する数字ではありません。

イノベーション総研では、市場を広く見積もる作業と、最初の顧客で事業が成り立つ条件を確かめる作業を分けることを勧めます。たとえば「国内全体へ投資するか」ではなく、「接点のある顧客に価格を提示し、購入条件を確かめるか」という次の判断へ落とし込みます。

最初に小さな対象へ絞っても、将来の市場を否定したことにはなりません。隣接する業種や地域へ広げる場合は、対応機能、販売経路、提供体制のどれが必要かを示し、未実現の拡大分を現在のSAMやSOMへ混ぜないようにします。

市場調査の設計から進めたい場合は新規事業の市場調査の進め方、顧客検証や実行体制まで支援が必要な場合は新規事業立ち上げ支援をご確認ください。

TAM・SAM・SOMで避けたい4つの間違い

計算式が正しくても、対象の選び方や数字の使い方が違えば、判断を誤ります。ここでは、見積もりを提出する前に確認したい4つの間違いを整理します。

1. 業界全体の売上を、そのままTAMにする

「製造業向けのサービスだから、製造業の売上全体が市場」とすると、測りたい需要と異なる金額になります。顧客が生み出す製品の価値と、自社サービスに支払う対価を分けてください。

仲介サービスでも、扱う取引の総額と、自社が受け取る手数料は別です。取引総額で市場を示すならその旨を明記し、自社の収入を比べるときは手数料率などで換算します。

2. 提供対象にできることと、購入してもらえることを同一視する

SAMに含まれる顧客でも、既存の取引先を変えたくない、予算がない、優先順位が低いといった理由で購入しない場合があります。製品仕様に合うことだけで、SOMへ含めないようにします。

「誰が購入を決めるか」「何と比較しているか」「いつなら切り替えられるか」を確認します。好意的な感想や無料利用の希望だけで、有料契約の見込みと判断しないことも重要です。

3. 欲しい売上に合わせてSOMの割合を決める

「売上1億円が必要だから、SAMの1%を取る」という説明では、獲得できる理由がありません。必要な売上は目標として残し、その達成に必要な顧客数と実行条件を別に確かめます。

たとえば年120万円の契約だけで年間1億円相当を目指すなら、通年換算で少なくとも84社が必要です。現在の見込み10社との差を埋めるには、どの営業経路や導入体制を増やす必要があるかを検討します。84社を目標にしただけでは、SOMの根拠が増えたことにはなりません。

4. 古い前提のまま、3つの数字を使い続ける

顧客との対話で用途が変わった、価格が変わった、必要なデータを持つ企業が少なかったなど、前提が動けば市場の見積もりも変わります。最初に作った3つの数字を、企画書の固定情報として扱わないようにします。

変更前後の条件と理由を残すと、見積もりが小さくなったときも説明できます。市場そのものが縮小したのか、自社が提供できる条件を理解した結果なのかを分け、対象を変える、提供方法を変える、検証を続けるといった選択へつなげます。

TAM・SAM・SOMに関するよくある質問

実際に計算を始めると、割合や期間の置き方に迷うことがあります。3つの使い分けと、見積もりを扱う際の疑問をまとめました。

Q. TAM・SAM・SOMは日本語で何と言いますか?

A. TAMは対象になり得る市場全体、SAMはそのうち自社の商品や提供条件に合う市場、SOMはSAMのうち一定期間で獲得を見込む市場です。日本語訳は資料によって異なるため、企画書では対象顧客・地域・期間も添えて説明します。

Q. SAMとSOMの違いは何ですか?

A. SAMは商品・地域・顧客層などから提供対象にできる範囲です。SOMはそこから、競合、営業経路、成約見込み、導入能力を踏まえて獲得を見込む範囲へ絞ります。提供できることと、実際に選んでもらえることを分けて考えます。

Q. SOMはSAMの何%にすればよいですか?

A. 一律に使える割合はありません。接触できる顧客数、商談化率、成約率、導入能力から積み上げ、結果がSAMの何%かを確認します。根拠がない段階では仮定と明示し、少数の面談結果を市場全体へそのまま当てはめないようにします。

Q. SOMは何年先まで計算しますか?

A. 事業の販売・導入サイクルと、判断する期間に合わせて設定します。初年度の販売計画と中期の獲得見込みを併記しても構いませんが、それぞれの時点、体制、年額換算か累計かを分けてください。本記事の1年間は計算を説明するための設定です。

Q. 市場データが見つからない場合はどうしますか?

A. 対象顧客数と年間単価などに分解して見積もります。企業数や拠点数は公的統計などを確認し、自社の対象に合う条件で絞ります。価格や購入割合を仮置きした場合は、出典のある数字と分け、顧客への確認で更新します。

Q. SOMと売上目標は同じですか?

A. 同じではありません。SOMは根拠を置いて見積もった獲得可能な範囲で、売上目標は自社が達成したい数値です。また、年末時点の顧客数を年額換算したSOMは、その年の売上と一致するとは限りません。初年度の見込みは課金開始月を反映して別に計算します。

まとめ|市場の数字から、次に確かめる顧客と条件を決める

TAMは市場全体、SAMは提供条件に合う市場、SOMは一定期間で獲得を見込む市場です。対象と実行条件を分ければ、市場の可能性を見ながら、最初に取り組む範囲を具体化できます。

まずは3つの数字に、対象顧客・計算式・出典・未確認の条件を書き添えてください。そのうえで、見積もりを大きく動かす前提を一つ選びます。顧客への価格提示、見込み客の確認、導入担当との調整など、誰がいつ何を確かめるかまで決めると、計算を次の事業判断へつなげられます。

CONTACT

お問い合わせ

市場の見積もりと、最初の顧客への進め方を整理する

対象顧客の絞り込み、価格や獲得見込みの確認、社内で判断する材料について、現在の状況からご相談いただけます。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

英国政府「Track 1: Investor Readiness Essentials」、総務省統計局「経済センサス‐基礎調査 用語の解説」「令和6年経済センサス‐基礎調査」。2026年9月10日確認。計算例・企画書の記入例は説明用の架空例です。

この記事をシェアする