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市場規模の調べ方|公開統計とフェルミ推定の6ステップ

市場規模は、使う判断と対象範囲を決めてから調べます。

定義の合う公開統計を探し、不足する部分は顧客数・導入率・単価などへ分解して推定します。大切なのは、数字だけでなく、どの前提で算出したかを説明できることです。本記事では、公開情報の探し先、フェルミ推定の計算例、検算、企画書への記載までを6ステップで解説します。

この記事の結論

市場規模の調査は、他の担当者が同じ条件で再計算できる形にして完了します。

  • 市場規模によって変える意思決定を先に決める
  • 公開統計、自社データ、仮置きを区別して計算する
  • 出典、算出式、対象範囲、時点をセットで記録する

市場規模の調べ方|6ステップの全体像

市場規模を調べる6ステップ

01

使う判断を決める

テーマ比較・稟議・投資判断など、数字の用途と必要な精度を決める。

02

市場を定義する

誰の、何に対する支出か。顧客・商品・地域・期間・単位をそろえる。

03

公開情報を探す

官公庁統計、業界団体、企業IRなどから、定義に合う情報を探す。

04

分解して組み立てる

対象者数、導入率、単価、頻度に分け、根拠と仮定を区別する。

05

両面から検算する

トップダウンとボトムアップを照合し、数字が違う理由を確かめる。

06

前提と一緒に記録する

出典または前提、算出式、対象範囲、基準時点を数字と一緒に残す。

出典:本記事の市場規模算出手順をイノベーション総合研究所が整理。

市場規模は、一定の地域と期間における商品・サービスの取引量を、売上高、出荷額、支出額、数量などで表したものです。どの指標を使うかは、今回の意思決定に合わせて選びます。対象を定義し、情報を探して組み立て、別の方法で検算するまでが一つの工程です。

以降では、各ステップで何を決め、何を確認するかを順に見ていきます。市場調査全体の設計は、新規事業の市場調査|調べて決める4ステップもあわせて確認してください。

ステップ1|市場規模を使う判断を決める

同じ市場規模でも、用途によって必要な精度と範囲は変わります。複数テーマの優先順位を比べるなら、全テーマで定義をそろえた概算が役立ちます。投資判断や売上計画へ使うなら、顧客層、導入率、価格、販売能力まで分解した数字が必要です。

  • テーマ比較:同じ単位と時点で相対的な大きさを比べる
  • 追加調査の判断:どの前提が結論を大きく動かすかを探す
  • 企画書・稟議:第三者が再計算できる前提と式を残す
  • 事業計画:実際に接触・獲得できる顧客数へ絞り込む

最初に「この数字が変わったら、何を変えるのか」を一文で書きます。判断が変わらない範囲まで小数点を詰めても、調査の価値は増えません。

ステップ2|誰の何に対する支出かを定義する

市場規模の数字が食い違う主な理由の一つは、計算精度ではなく対象範囲の違いです。検索を始める前に、次の条件を一行で定義します。

顧客・商品・地域・期間・単位をそろえる

  • 顧客:誰が利用し、誰が支払うのか
  • 商品・サービス:何を含み、代替手段をどこまで含めるのか
  • 地域:国内、特定地域、世界のどこか
  • 期間:暦年、年度、単年度、累計のどれか
  • 単位:売上高、支出額、数量、契約数のどれか

同じ名称の市場でも、売上高と出荷額、国内需要と国内生産では意味が異なります。 数字を転記する前に、資料の用語定義と注記を読みます。

含める範囲と含めない範囲を明記する

たとえば、ソフトウェアだけを対象にするのか、導入支援や運用費も含めるのかで数字は変わります。除外条件を先に書けば、会議で数字が違う理由を説明しやすくなります。

公開情報は、官公庁統計から順に一方向へ探すのではなく、複数の情報源で対象範囲と更新時点を照合します。政府統計は母数や産業構造、業界団体は対象分野の数量、企業IRは顧客や価格の仮説を置く手がかりになります。

市場規模を探す5つの情報源

欲しい数字と資料の対象範囲が合うかを、次の表で見比べます。掲載された金額だけで選ばず、各情報源がどこまでを集計しているか確認してください。

市場規模を調べる情報源と採用前の確認点
情報源 主に確認すること 採用前の確認点
官公庁統計 企業・事業所数、人口、支出、出荷、売上 統計単位、対象産業、調査年
公的機関 業界構造、政策対象、事業者動向 推計か実測か、引用元
業界団体 会員企業の出荷量、販売量、利用状況 非会員を含むか、カバー率
民間レポート 市場定義、予測、セグメント別動向 調査方法、対象範囲、発行時点
上場企業IR 顧客層、価格帯、販売数量、成長要因 自社定義と市場全体の区別

政府統計は、e-Statの統計データ検索から分野や作成機関を指定して探せます。BtoBの企業数や売上構造を確認する場合は、総務省・経済産業省の経済センサス‐活動調査が一つの入口です。

数字を採用する前に定義・単位・時点を確認する

検索結果の見出しや要約だけで数字を採用しません。元資料の用語、対象者、集計範囲、単位、基準時点、改定の有無まで確認が必要です。産業別に集計する場合は、e-Statの統計分類・用語で分類の意味を確認できます。

ステップ4|フェルミ推定で市場規模を組み立てる

自社が狙う市場と完全に一致する統計がない場合は、市場を要素へ分解して計算します。フェルミ推定では、既知の数字を起点に、不明な導入率や単価などを仮定として置きます。前提を分けることは、判断の精度を上げるために次に何を確かめるか、その優先順位を選ぶ手がかりです。

BtoB・BtoCの基本式へ分解する

BtoBの基本式:対象企業数 × 導入率 × 1社当たり年間単価

BtoCの基本式:対象人口 × 利用率 × 年間利用頻度 × 1回当たり単価

式は市場の取引構造に合わせて変えます。利用者と支払者が異なる場合や、初期費用と継続費用がある場合は、別々の計算が必要です。価格仮説を売上と収益の仕組みへつなげる考え方は、新規事業のビジネスモデルで解説しています。

公開統計・自社データ・仮置きを区別する

計算に使う数字は、根拠の種類ごとに扱いを変えます。特に自社の商談結果を市場全体へ広げる場合と、未検証の数値を置く場合を区別してください。

計算に使う数字の根拠区分と扱い方
根拠区分 扱い方
公開統計 企業数、人口、世帯数、産業別売上 出典、対象範囲、時点を記録する
自社データ 商談数、成約率、試験導入率、提示価格 対象条件と件数を残し、母集団へ無条件に広げない
仮置き 未検証の導入率、利用頻度、単価 仮定と明記し、検証後に更新する

検証すべき仮定がどのセルにあるか、資料上で見分けられるようにします。 根拠区分を文字で記載し、必要に応じてセルの色も補助に使います。

悲観・中位・楽観の3ケースで感度を見る

不確かな要素は一点で決めず、幅を持たせます。すべての要素を同時に細かく変えるのではなく、結果への影響が大きい導入率や単価などを選び、悲観・中位・楽観の3ケースで比較します。

いま、どこで詰まっていますか

近い状態を1つ開くと、次に確認する項目が分かります。

01 何の判断に使う数字か決まっていない

まず確認:数字が変わったときに、比較・追加調査・投資判断のどれを変えるか

使う判断の決め方を見る →

02 資料ごとに市場規模が違う

まず確認:顧客、商品、地域、期間、単位、除外条件

市場の定義方法を見る →

03 ぴったり合う統計が見つからない

まず確認:公的統計の母数、業界団体の数量、企業IRの顧客・価格情報

公開情報の探し先を見る →

04 計算式はあるが、仮定が混ざっている

まず確認:公開統計、自社データ、仮置きの区分と更新対象

フェルミ推定の組み立て方を見る →

05 トップダウンと積み上げの数字が合わない

まず確認:市場範囲、統計単位、時点、導入率、単価の差

2つの検算方法を見る →

06 企画書で数字の根拠を説明できない

まず確認:出典または前提、算出式、対象範囲、基準時点

企画書へ残す4項目を見る →

NEXT STEP

次のステップ

市場規模の前提を、次の検証計画へつなげる。

導入率や単価など、結論を大きく動かす仮定から検証の優先順位を定めます。

市場規模の計算例|架空のBtoB市場

対象企業数 × 導入率 × 年間単価で計算する

01

対象企業数

1,000社

02

導入率

10%

03

1社当たり年間単価

120万円

計算結果:年間1億2,000万円

計算方法を示す架空例。企業数・導入率・単価はすべて説明用の仮定で、実在する市場のデータではありません。

この計算では、対象企業のうち導入が見込まれる企業数を求め、1社当たりの年間支払額を掛けています。対象企業すべてが導入するとは置かず、利用する割合を別の前提として扱うのがポイントです。

この例で優先して検証するのは、結果を大きく動かす導入率と年間単価です。対象企業へのインタビューや試験提案を通じて、現在の代替、予算の出所、導入条件、支払意思を確認します。BtoBで役割別に確認する方法は、BtoB顧客インタビューのやり方を参照してください。

ステップ5|トップダウンとボトムアップで検算する

一つの式だけで市場規模を確定すると、その式に含まれる前提の誤りを見つけにくくなります。全体市場から対象範囲へ絞るトップダウンと、顧客数や取引単価から積み上げるボトムアップを併用します。

トップダウンとボトムアップの使い分け
方法 出発点 向いている用途 注意点
トップダウン 産業全体の売上、支出、出荷など 市場の上限、周辺市場との比較 自社が届かない範囲を含みやすい
ボトムアップ 顧客数、導入率、単価、頻度 売上計画、販売能力との接続 導入率や単価の仮定に左右される

二つの推定値が違うときは、単純な平均より、前提差の確認が先です。 顧客範囲、地域、期間、売上と出荷、導入率、価格のどこが違うかを確認します。差は誤差ではなく、まだ確かめるべき前提を示していることがあります。

ステップ6|企画書に4項目をセットで記載する

市場規模の数字と一緒に残す4項目

01

出典または前提

資料名・表番号・URL、または仮定を置いた理由。

02

算出式

何と何を掛け、どの条件で対象を絞ったか。

03

対象範囲

顧客、商品、地域、期間、単位、除外条件。

04

基準時点

統計年、計算日、次に更新する条件。

出典:本記事の企画書への記載項目をイノベーション総合研究所が整理。

企画書や稟議書では、市場規模の数字だけを大きく示さず、第三者が対象範囲と計算を追える情報を同じ場所に置きます。出典・式・対象範囲・時点が追えると、前提が変わった際にも更新しやすくなります。

市場の上限、自社が提供できる範囲、短期に獲得できる範囲を分ける必要がある場合は、TAM・SAM・SOMの考え方へ接続します。本記事では、その前段となる市場規模の算出実務に焦点を当てています。

市場規模の調べ方で起きやすい4つの失敗

計算が合っていても、その数字を事業判断に使えないことがあります。対象範囲、根拠の記録、検算、調査の目的という4つの観点から、提出前に確認してください。

大きな市場を、そのまま自社の機会と扱う

産業全体の市場規模には、自社が提供しない商品、届かない地域、異なる価格帯が含まれることがあります。上限を示す数字と、実際に狙う顧客範囲を分けてください。

出典や前提を書かず、数字だけを残す

計算結果だけでは、更新も検証もできません。元資料、対象範囲、仮定、計算日を数字と一緒に残します。

一つの算出式だけで確定する

一つの式は、一つの前提構造しか映しません。別の出発点から計算し、差が生まれた条件を確認します。

精度を上げること自体が目的になる

市場規模は将来を言い当てる数字ではありません。判断を変える可能性が高い前提から検証し、得られた事実で更新できる状態をつくることが重要です。

市場規模の調べ方に関するよくある質問

市場規模を調べる際によく迷う5つの点を整理します。指標や資料の選び方から、データがない場合の算出、TAM・SAM・SOMとの関係まで短く答えます。

Q. 市場規模は売上高・出荷額・支出額のどれで表しますか

A. 何の意思決定に使うかで選びます。顧客の支払総額を見たいなら支出額、供給側の取引を見たいなら売上高や出荷額を使い、異なる指標を同じ市場規模として混ぜません。

Q. 市場規模のデータが見つからない新市場でも算出できますか

A. 前提を置いた推定は可能です。対象者数、導入率、単価、頻度などへ分解し、公開統計、自社データ、仮置きを区別して計算します。検証後は仮定を更新してください。

Q. 市場規模を調べるために有料レポートは必要ですか

A. 必須ではありません。公的統計や業界団体資料で不足する情報が意思決定を大きく変える場合に、対象範囲、調査方法、発行時点を確認したうえで購入を検討します。

Q. 複数の資料で市場規模が違う場合はどうしますか

A. 数字を平均せず、顧客、商品、地域、期間、単位、除外条件を比べます。用途に合う定義を採用し、別の算出方法で検算します。

Q. 市場規模の算出とTAM・SAM・SOMは何が違いますか

A. 市場規模の算出は、特定の範囲を数字にする手続きです。TAM・SAM・SOMは、全体市場、提供可能な市場、現実に獲得を目指す市場へ範囲を分ける考え方で、それぞれの算出に本記事の手順を使います。

本記事のまとめ|市場規模は前提とセットで示す

市場規模は、今回の意思決定に合う範囲へそろえ、公開情報と仮定を区別して算出します。別の方法でも検算し、差が出た前提から確かめてください。

最後に、別の担当者が同じ条件で再計算できるかを確認します。難しければ、数字を細かくする前に、出典・算出式・対象範囲・基準時点を補うことが次の一手です。

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市場規模の仮定を、事業判断へつなげる。

対象市場、算出式、検証すべき導入率や価格を、次の意思決定から逆算して整理します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

出典・参考

e-Stat「統計データ検索」「統計分類・用語」、総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」。

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