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デスクリサーチのやり方|6ステップと新規事業に使える記入例

デスクリサーチは、統計や企業の公開資料、社内の記録など、既存の情報を集めて分析する調査です。やり方は、目的を決める、問いを絞る、情報を探す、根拠を確かめる、整理する、次の行動を決める、の6ステップです。

新規事業の担当者が迷いやすいのは、「どのサイトを見るか」だけではありません。調べ続けても企画の判断が進まない、何を顧客に聞けばよいか分からない、という場面もあります。大切なのは、調べた事実を、次の事業判断に使える形へ変えることです。

本記事では、信頼できる情報の探し方と選び方を解説し、飲食店向けサービスを題材にした記入例を紹介します。イノベーション総研の888名調査と長尾の考えも踏まえ、机上で分かることと、顧客に確かめることの境界まで整理します。初めて調査を任された方は、手元のメモと照らし合わせながら進めてください。

この記事のポイント

  • 検索する前に、調査後に何を決めるかを一文で書く
  • 数字は元の資料に戻り、対象・時点・定義を確かめる
  • 事実、解釈、未確認の点を分けて報告する
  • 公開情報で分からない購入条件は、顧客との対話で確かめる

目次

デスクリサーチとは?既存の情報から事業の見通しを立てる調査

デスクリサーチは、統計、企業の公開資料、業界レポート、論文、社内の記録など、すでに存在する情報を集めて分析する調査です。「机上調査」「デスクトップリサーチ」とも呼ばれます。インターネット検索だけでなく、図書館の資料や社内に蓄積した商談記録を読み解くことも含みます。

新しく情報を集める調査とは、材料の集め方が違う

デスクリサーチは既存の材料を使うのに対し、顧客インタビュー、アンケート、現場観察などでは、自分たちの問いに合わせて新しい情報を集めます。オンラインでインタビューを行っても、机に座っているからデスクリサーチになるわけではありません。

ここで混同しやすいのが「一次情報」です。自社で新たに調査することと、情報の発表元へ直接当たることは別の話です。デスクリサーチでも、ニュース記事が紹介する数値を政府の統計や企業の決算資料に戻って確認できます。本記事では、こうした発表元の資料を「元の資料」と呼びます。

市場の全体像は調べられるが、個社の購入意思までは決められない

新規事業では、顧客候補が属する産業の規模、既存サービスの価格、技術や制度の変化を把握する際に役立ちます。既存資料から調べ始めれば、基本的なことを何度も顧客に聞かずに済み、対話の時間を個別の事情に使えます。

一方、公開資料は自社の事業案のために作られたものではありません。市場の区分が広すぎる、対象地域が違う、欲しい数字がない、といった限界があります。「業界全体で人手不足」という情報が見つかっても、目の前の企業が自社サービスにいくら払うかは分かりません。

イノベーション総研では、デスクリサーチの成果を、集めた資料の多さだけでは評価しません。何が分かり、どの判断に使えて、何を顧客に確かめる必要が残ったかを説明できることが大切だと考えます。手法全体の使い分けは、新規事業の市場調査の進め方も併せて確認してください。

デスクリサーチのやり方は6ステップ

まず目的と範囲を決め、情報を探し、根拠を確かめてから判断へつなぎます。以下の6ステップを、飲食店向けの発注支援サービスを考える架空の例で説明します。実際の案件や顧客の発言を紹介するものではありません。

1. 調査の目的を「何を決めるか」で書く

検索を始める前に、調査後に決めたいことを一文で書きます。「飲食業界について調べる」では範囲が広く、情報が増えるほど終わりが見えなくなります。「個人経営の飲食店を対象に、発注支援サービスの顧客ヒアリングへ進むか判断する」なら、今回の目的が明確です。

目的を共有するときは、誰が、いつ、何を決めるのかも合わせます。例えば「金曜日のチーム会議で、最初に話を聞く店舗の条件を決める」という形です。初期調査で投資の最終判断まで済ませようとせず、今回の調査で支える判断を一つに絞ります。

調査対象の地域、業種、企業規模、対象期間も先に決めておきます。全国の飲食チェーンと、特定地域の個人店では、公開情報の量も発注業務の進め方も異なります。

2. 調べる問いと仮説を絞る

目的を、調査で答えられる問いへ分けます。「ニーズはあるか」という大きな問いをそのまま検索するのではなく、確認する内容を具体化します。

  • どの業態・規模の店舗で、発注や在庫管理に関する問題が公表されているか
  • すでにどのような代替手段やサービスがあり、誰に何を提供しているか
  • 自社の支援が役立つと考える理由は何で、まだ何が分かっていないか

この時点では「小規模店では担当者の経験に依存しているのではないか」などの仮説を置いて構いません。ただし、仮説を事実のように書かないことが重要です。「既存の仕組みで十分ではないか」「食材ロスの主因は発注以外ではないか」と、仮説を否定する側の問いも用意します。

全項目を同じ深さで調べる必要はありません。結論が変わる問いを優先し、今回の判断に関係しない話題は、興味深くても別のメモへ移します。

3. 問いに合う情報源を選んで検索する

問いごとに、誰がその情報を持っていそうかを考えます。店舗数なら統計、サービスの料金なら提供企業の公式ページ、現場で困っている作業なら社内の商談記録や公開インタビューが候補です。検索結果の上から順に読むだけでは、同じ種類の情報に偏りやすくなります。

最初は業界用語や主要な発表機関を知るために広く検索し、その後は元の資料へ絞っていきます。解説記事は全体像をつかむ入口として使い、企画書に載せる数字は発表元で確認します。社内に過去の調査がある場合は、対象や時期を確認したうえで活用すると、同じ作業を繰り返さずに済みます。

4. 元の資料で定義・時点・対象を確かめる

使えそうな情報が見つかったら、数値だけをコピーする前に、それが何を表しているかを確認します。最低限、次の点を記録しておきます。

  • 発表元と資料名、参照したURL・ページ
  • 公開日と、データが対象にしている年・期間
  • 調査対象の地域、業種、企業規模などの範囲
  • 指標の定義、単位、比較するときの条件

2026年に公開された資料でも、集計対象は2024年ということがあります。最新版かどうかと、今の顧客行動を説明できるかどうかは別々に点検します。資料名やURLを後から探し直すのではなく、情報を採用するときに一緒に保存するのがコツです。

5. 事実と自分の解釈を分けて整理する

資料に書かれている事実と、それを見て自分たちが考えたことを分けます。「ある業界で食品ロスが発生している」は資料で確認できても、「発注支援サービスが売れる」は、そこから考えた仮説です。この間を飛ばすと、見栄えのよい企画書でも根拠を説明できません。

メモには「資料から分かったこと」「自社の解釈」「まだ分からないこと」を別の欄に置きます。解釈には、どの対象なら当てはまりそうかも添えます。例えば、発注担当者が在庫まで把握している店と、複数店舗を本部で管理する企業では、同じ支援策が適するとは限りません。

6. 結論と未確認事項をまとめ、次の行動を決める

最後に、調査目的に対する現時点の答えを最初に書きます。「まだ分からない」場合も、どの情報が不足して判断できないのかが分かれば、意味のある成果です。資料の要約を並べるだけで終えず、追加の資料確認、顧客ヒアリング、対象の見直しなど、次の行動につなぎます。

共有資料は、次の順番にすると読み手が判断しやすくなります。根拠の詳しい一覧は別紙やリンクに分け、本文を資料の山にしないようにします。

  • 今回決めたいことと、現時点の結論
  • 結論を支える事実と出典
  • 事実からそう考えた理由と、当てはまる条件
  • 未確認の点と、結論が変わる可能性
  • 次に確認する内容、担当者、期限

例えば「個人店全般を対象に開発へ進む根拠はまだ不足している。次は日々の発注と廃棄を記録している店舗に話を聞き、負担が大きい作業を絞る」とまとめます。これは事業化の確定ではなく、次の調査の方針です。

情報源は、調べたい内容に合わせて選ぶ

「信頼できるサイトを知りたい」という悩みはよくあります。ただし、有名な機関の資料でも、調べたい対象と合っていなければ判断には使えません。次の表は、探し始める場所と、採用前に見る点をまとめたものです。

調査の問いに応じた情報源と採用前の確認点
調べたいこと 探し始める情報源 採用前に確認すること
市場の母数・構造 e-Stat、担当省庁の統計 企業数と事業所数、産業区分、対象年が合っているか
業界の商習慣・用語 国立国会図書館リサーチ・ナビ、業界団体の公開資料 どの地域・業種の話か。統計や発言の出典があるか
競合の機能・料金 提供企業の公式ページ、料金表、公開資料 公開日と対象プラン。価格に含まれる提供範囲
顧客が行う業務 既存の商談記録、問い合わせ、公開インタビュー 誰の、いつの、どの場面か。一部の声を全体に広げていないか
過去に自社が確かめたこと 社内の調査報告、検証記録、営業資料 前提が今も有効か。利用権限と守秘の条件を満たすか

業界が初めてなら、国立国会図書館のリサーチ・ナビで資料の探し方を確認すると、検索エンジンだけでは気づきにくい統計や業界資料を探す手掛かりになります。政府統計はe-Statで検索し、表の注記や定義まで確認してください。

検索語を「対象・知りたいこと・資料の種類」に分ける

「飲食店 新規事業」だけでは、広告、事例、支援サービスなどが混ざります。「飲食店 発注 業務実態 調査」のように、対象と知りたい内容を具体化します。数字を探すなら「統計」「実態調査」、企業の発表を探すなら「決算説明資料」など、資料の種類を追加します。

Google公式の検索ヘルプでは、引用符による完全一致、site:によるサイト指定、filetype:によるファイル形式の指定が案内されています。例えば次のように使えます。これらは絞り込む方法であり、信頼性や網羅性を保証する機能ではありません。

  • site:maff.go.jp 外食 食品ロス 推計:農林水産省のサイト内を探す
  • "発注" "飲食店" filetype:pdf:指定した語を含むPDFを探す
  • "サービス名" 料金:名称を指定して価格情報を探す

情報が見つからないときは、名称と対象範囲を変える

新しいサービス名には統計がなくても、そのサービスが置き換える業務には資料があるかもしれません。「AI発注」から「受発注」「在庫管理」「需要予測」へ言い換え、実際の業務で使われている名称を探します。広い統計しかない場合は、広い対象であることを明記して参考にとどめます。

「情報がない」と「需要がない」も同じではありません。一通り探して該当資料がないなら、推測で穴を埋めず、顧客への確認事項として残します。新規事業の競合分析では、同種のサービスだけでなく、Excelや手作業、何もしない選択も代替手段として調べると、比較の範囲が広がります。

飲食店向けサービスを題材にしたデスクリサーチの記入例

ここからは「飲食店向け発注支援サービスの顧客ヒアリングへ進むか」を検討する例です。サービスや検討内容は説明用の架空例ですが、以下の食品ロスの数字は公表資料に基づきます。事実と仮説を分けて読む練習として使ってください。

公的統計で確認できる事実を押さえる

農林水産省が2026年6月に公表した2024年度の食品ロス量の推計では、外食産業の食品ロス量は70万トンです。食品ロスは、本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品を指します。

この資料から確認できるのは、対象年度における外食産業全体の食品ロス量です。自分たちが想定する地域の個人店に限った量でも、発注ミスだけを集計した量でもありません。まずは、その範囲を崩さず記録します。

大きな社会課題を、そのまま自社の市場規模にしない

「70万トンもあるから需要は大きい」と結論づけると、肝心の確認が抜けます。食品ロスには発注以外の要因もあり、発注を支援すればすべて減るとは言えません。削減量と、顧客が支払うサービス料金は異なります。

イノベーション総研の解釈は、「外食産業の食品ロスは調べる価値のある課題だが、自社が解決する業務と購入する顧客は、まだ絞れていない」というものです。数字を強い売り文句にする前に、どこまでなら説明できるかを限定します。

食品ロスの統計を、発注支援サービスの検討に使う整理例
整理する欄 記入例 この段階で言えること・残る問い
確認できた事実 2024年度の外食産業の食品ロス量は70万トン(農林水産省) 外食産業全体の量。特定店舗や発注ミスだけの量ではない
自社の解釈 食品ロスの発生場面を調べれば、支援できる業務が見つかる可能性がある あくまで仮説。発注が原因かどうかは未確認
当てはまる条件 発注と廃棄の関係を確認でき、発注業務を変えられる店舗を想定する この条件に合う店舗があるか、負担の大きさを確かめる
未確認の点 廃棄の理由、現在の対策、発注担当者、導入判断者、費用負担 公開情報だけで埋めず、顧客への確認項目として残す
次の行動 条件に合う候補店舗に、直近の発注と廃棄の出来事を聞く 担当者と期限を決め、結果に応じて対象・提供内容を見直す

このように整理すると、統計が見つかった時点でサービス開発を始めるのではなく、発注と廃棄の関係を確かめる必要があると分かります。市場の金額を概算する場合も、対象店舗数、導入条件、料金などの別の前提が必要です。フェルミ推定による市場規模の計算方法では、その分け方を解説しています。

調査結果を次の顧客ヒアリングへつなぐ

次の対話では「このサービスがあったら使いますか」だけを聞くのではなく、実際に起きた出来事をたどります。「直近で食材を余らせたのはいつか」「その発注を誰が何を見て決めたか」「いまはどんな対策をしているか」を確認すると、公開情報では見えなかった業務の条件が分かります。

担当者が困っていても、費用を負担する人が同じとは限りません。店舗責任者、本部、経営者など、購入を決める人と利用する人を分けて把握します。発注の改善より別の課題の優先度が高いと分かったら、それも重要な調査結果です。企画を守るために聞くのではなく、対象や提供内容を変える材料にします。

調査を進めるうえで、いま困っていることはどれですか

近い状態を開くと、確認項目と参照先が分かります。

01 何から調べればよいか分からない

調査後に決めることから、問いを絞ります。

  • 誰が判断するか
  • 何を決めたいか
  • いつまでに必要か

6ステップを確認する →

02 情報源の選び方に迷う

問いに合う情報を持つ発表元を探します。

  • 統計で分かることか
  • 企業の発表で分かることか
  • 社内に記録があるか

情報源の選び方を見る →

03 調査メモが資料の要約だけになっている

事実と自社の解釈を分けて整理します。

  • 根拠はどの資料か
  • どこからが仮説か
  • 何がまだ不明か

記入例を見る →

04 いつ顧客に聞けばよいか迷う

公開情報では答えられない問いを取り出します。

  • 個別の予算を知りたいか
  • 実際の業務を見たいか
  • 導入条件を確かめたいか

調査を区切る条件を見る →

05 情報の信頼性に自信がない

出典と定義、反対の情報を点検します。

  • 元の資料に戻ったか
  • 転載を重複して数えていないか
  • 対象と時点は合うか

4つのミスを点検する →

06 調査後の検証を進める体制がない

仮説の整理から顧客検証へ進む支援を確認します。

  • 何を検証するか
  • 誰が顧客と話すか
  • 結果を何の判断に使うか

新規事業立ち上げ支援を見る →

調査資料はあるものの、顧客・収益・体制のどこから確かめるか迷う場合は、新規事業リスク診断「Compass」で現在地を整理できます。

NEXT STEP

次のステップ

集めた情報を、顧客検証の計画へ

現在地を整理したい方は無料診断へ。仮説を絞り、顧客との対話や小さな検証まで進めたい方は、新規事業立ち上げ支援をご覧ください。

デスクリサーチだけで分からないことは、顧客に聞く

既存の情報を十分に調べても、自社の事業案に対する顧客の具体的な反応は残ります。机上の調査を続けるべきか、対話に移るべきかを考えるために、イノベーション総研の独自調査も見てみましょう。

独自調査では、顧客との直接対話が0〜3回のチームが45.8%

大企業で新規事業に関わった888名を対象とする調査では、直近のプロジェクトでチームがターゲット顧客と直接対話した回数について、0〜3回と答えた人が407名、45.8%でした。対象は従業員1,000名以上の企業に勤務し、過去5年以内に新規事業のオーナー・リーダー・意思決定者として関わった方です。

チームがターゲット顧客と直接対話した回数

0〜3回45.8%(407名)
4〜10回22.7%(202名)
11回以上26.5%(235名)
覚えていない・忘れた5.0%(44名)
出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)。直近の新規事業プロジェクトで、チームがターゲット顧客(候補含む)と直接対話した回数。

この結果だけで、対話が少ないことが失敗の原因だとは言えません。一方、調査資料が揃っているかを点検する際に、顧客と実際に確かめたことも分けて数える必要がある、とイノベーション総研は考えます。読む資料を増やしても、未確認の購入条件が自然に分かるわけではないからです。

長尾が重視するのは、ヒアリングを検証につなげること

長尾は、新規事業で重視する指標として「どれだけ多くの人にヒアリング・検証ができたか」を挙げています。この考えをデスクリサーチへ当てはめるなら、調査を顧客に会わない理由にせず、何を確かめるかを具体化する準備として使うことが重要です。

ただし、回数だけのノルマにはしません。同じ説明を繰り返して「参考になりました」と言われても、仮説を確かめたことにはならないためです。イノベーション総研では、対話の前後で、課題の理解、想定顧客、提供価値のどれが変わったかを記録する進め方を勧めます。

飲食店の例なら、「小規模店は発注に困る」という仮説が、「発注そのものより、複数担当者の引き継ぎに負担がある」へ変わるかもしれません。これは架空の展開ですが、調査で得たい学びの形を示しています。具体的な聞き方はBtoBの顧客インタビューの進め方、仮説の確かめ方は課題仮説の検証方法で整理しています。

公開資料とノートを並べて調査内容を整理する白い作業机

調査を終える条件を決める

「すべて分かったら終わり」ではなく、今回の判断に必要な材料が揃ったかで区切ります。初期の顧客探索なら、次の状態を一度目の区切りにできます。

  • 対象と調査目的を説明できる
  • 結論を支える出典と、まだ根拠のない仮説を分けてある
  • 反対の情報も確認し、結論が変わる条件が見えている
  • 次に聞く相手と、確かめる内容が決まっている

残った問いが、公開されている店舗数や料金なら追加のデスクリサーチを行います。個別の予算、実際の手間、導入時の障害なら、顧客への対話や現場観察へ移ります。契約や安全性に関わる重大な条件を、期限が来たことだけを理由に未確認のまま進めてはいけません。調査を区切ることと、リスクを無視することは別です。

チームでは「次の会議までに何を決めるか」に合わせて時間を配分します。例えば、情報収集だけで時間を使い切らないよう、整理と報告に使う時間を先に確保します。調査日数に一律の正解を置くより、判断の重さと不足する根拠に合わせて深さを変える方が実務的です。

調査で避けたい4つのミスと修正方法

作業を丁寧に行っても、情報の選び方やまとめ方によって結論は偏ります。ここでは、企画書を共有する前に点検したい4つのミスと、修正方法を紹介します。

1. 都合のよい情報だけを残す

参入したい市場が決まっていると、成長予測や成功事例ばかりが目に入りがちです。反対の情報を探す工程を、最初から調査計画に含めます。既存サービスを導入しない理由、取り組みを終了した企業の公式発表、別の方法で課題を解決している例も確認します。

見つかった反証は、脚注へ隠さず、結論にどう影響するかを書きます。「市場の一部には需要がありそうだが、既存の業務システムを変更できない企業は初期対象から外す」など、適用範囲を変える材料にしてください。望んだ結論と違っても、調査の失敗ではありません。

2. 転載記事を別々の根拠として数える

3つのサイトが同じ数字を紹介していても、元が一つの調査なら、独立した3件の裏づけにはなりません。各記事の出典をたどり、発表元が同じなら、根拠の一覧では同じ資料として扱います。

複数の資料を照合するときは、資料の数だけでなく、集め方と対象が異なるかを見ます。統計、企業の公開資料、顧客への対話が同じ方向を示す場合も、対象範囲の違いは残ります。「複数で見たから正しい」と一括りにせず、どの主張がどの資料で確かめられたかを対応させます。

3. 対象や単位が違う数字を並べる

市場規模を比較する際に、売上と流通総額、企業数と店舗数、暦年と年度などが混ざると、もっともらしい表でも意味が変わります。サービス利用者の割合も、全企業の割合なのか、調査に答えた導入企業の割合なのかを確認します。

数字が食い違ったら、平均を取って丸める前に定義を確認してください。範囲を揃えられないときは別の指標として並べ、比較できない理由を短く添えます。古い数字を使う場合は、古いことを隠さず、構造の理解に使うのか、現在の試算に使うのかを分けます。

4. AIの要約を出典確認なしで使う

生成AIは、検索語の候補、調査項目の漏れ、長い資料の確認ポイントを出す補助に使えます。ただし、回答にURLが付いていても、そのページが本当に存在し、書かれた主張を支えているかは別に確認します。原資料を開き、数値、時点、対象、前後の文脈を照合してから採用します。

AIに依頼するときも、「事実と解釈を分ける」「不明点は不明とする」「確認先を示す」と条件を付け、出力を検査しやすくします。これだけで誤りをなくせるわけではありません。社内の機密や顧客情報は、承認された利用環境と社内ルールに従って扱ってください。

AIが書いた顧客像や発言例を、実際の顧客の声として企画書に入れないことも大切です。活用範囲と検証の仕方は、生成AIを新規事業に活用する方法で詳しく解説しています。

デスクリサーチのよくある質問

初めて取り組む方が迷いやすい用語の違い、費用、進め方をまとめます。

Q. デスクトップリサーチとデスクリサーチは違いますか?

A. どちらも、既存の資料やデータを使って調べる机上調査を指す言葉として使われます。呼び方よりも、調べる目的、対象範囲、成果物を依頼者と揃えることが重要です。

Q. デスクリサーチは無料でできますか?

A. 公的統計、企業の公開資料、社内の既存記録などを使えば、有料資料を購入せずに進められる部分があります。ただし、担当者の作業時間は必要です。有料資料を買う場合は、自社の問いに答える対象・時期・定義のデータが含まれるかを、目次やサンプルで確認してください。

Q. デスクリサーチと市場調査は同じですか?

A. 市場調査の中で使う手法の一つがデスクリサーチです。市場調査には、顧客インタビューやアンケート、現場観察なども含まれます。知りたいことに応じて手法を組み合わせます。

Q. 初心者は、先にフレームワークを選ぶべきですか?

A. 最初に調査後の判断を決め、そのための問いを整理してから選ぶと使いやすくなります。外部環境ならPEST、競合や代替手段なら比較表など、目的に合うものを使います。すべての欄を埋めることを調査の目的にしないようにしてください。

Q. デスクリサーチを外部へ依頼するとき、何を伝えればよいですか?

A. 判断したいこと、対象地域・業種・規模、既に分かっていること、必要な期限を伝えます。納品物には結論だけでなく、出典、対象と時点、自社に当てはまる条件、未確認事項を含めるよう依頼すると、調査後の判断に使いやすくなります。

まとめ:調査結果を、次の事業判断につなげよう

デスクリサーチは、目的を決める、問いを絞る、情報源を選ぶ、元の資料で確認する、事実と解釈を分ける、次の行動を決める、という6ステップで進めます。検索の技術だけでなく、調べる前の問いと、調べた後の判断を揃えることが重要です。

新規事業では、大きな市場や社会課題が見つかっても、それだけでは自社の顧客や購入条件は決まりません。まず、自分たちの調査メモから一つの主張を選び、「出典で分かる事実」「自社の解釈」「未確認の点」「次に確かめる相手」を書き分けてみてください。会議で何を決められ、何を保留すべきかが見えやすくなります。

イノベーション総研は、調べた量だけでなく、次の行動を具体化できたかを大切にします。情報を集めて終わる調査から、顧客理解と事業の選択につながる調査へ変えていきましょう。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

農林水産省:事業系食品ロス量(2024年度推計値)
Google:ウェブ検索の精度を高める
e-Stat:政府統計の検索
国立国会図書館:リサーチ・ナビ
独自調査:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)。飲食店向けサービスの検討は説明用の架空例です。実務手順と記入例はイノベーション総研が作成しました。

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