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生成AIを新規事業に活かす方法|利用率90.7%、成果へ変える2つの設計

生成AIは、新規事業の現場ですでに広く使われています。イノベーション総研が大企業勤務者888人の回答を再集計したところ、805人(90.7%)が、市場調査、競合分析、資料作成など13業務のいずれかで生成AIを使っていました。

一方、「生成AIなど新技術の活用可能性」を新規事業アイデアの第一の出発点に挙げた人は13人(1.5%)です。生成AIの利用率が高いことと、顧客が対価を払う事業を生み出せることは別です。 作業を速める使い方と、顧客価値へ組み込む使い方を分けて設計しなければ、資料や試作だけが増えます。

本記事では、888人調査とイノベーション総研の新規事業支援の考え方を基に、生成AIを新規事業へ活かす2つの方向、6つの実行ステップ、データ・出力・意思決定の責任分担、評価指標まで具体化します。

この記事のポイント

  • 888人中805人が生成AIを使う一方、事業の出発点としては少数にとどまる
  • 生成AIを「事業開発の加速」と「顧客価値への組み込み」に分ける
  • AI出力を事実・仮説・未確認・不採用に分け、人が根拠を確認する
  • 生成量ではなく、顧客事実と次の事業判断へ到達したかで測る

目次

新規事業の90.7%が生成AIを使う一方、用途は調査・整理が中心

新規事業で生成AIが使われている業務(上位6項目)
市場調査・情報収集42.7%
競合分析・ベンチマーク35.0%
社内ナレッジ・過去事例の検索34.8%
議事録・会議要約32.9%
社内プレゼン資料31.2%
アイデア発想30.5%

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)。複数回答、上位6項目。

13業務のいずれかで生成AIを利用していたのは888人中805人でした。上位は市場調査・情報収集42.7%、競合分析35.0%、社内ナレッジ・過去事例の検索34.8%で、まず「探す・整理する・下書きを作る」工程に浸透しています。

一方、生成AIなど新技術の活用可能性を新規事業アイデアの第一の出発点に挙げた人は13人(1.5%)、3位以内では108人(12.2%)でした。イノベーション総研は、これは生成AIが不要だという結果ではなく、技術を起点に事業を考えるより、顧客課題を起点に生成AIの役割を決める方が実務に合うことを示すと考えています。

したがって、導入率やプロンプト数を成果指標にしてはいけません。生成AIで短縮した時間を顧客対話、反証、意思決定へ戻し、次の判断までの時間が縮んだかを測ります。

結論|生成AIは「作る速さ」と「顧客価値」を分けて設計する

生成AIは文章、画像、画面案、分析の切り口などを短い周期で作れます。しかし、生成物が増えたことは、顧客課題が確認されたことや、事業性が高まったことを意味しません。生成AIの役割は仮説と検証物を速く作ること、人の役割は顧客事実を確かめて資源配分を決めることです。

生成AIを新規事業へ使う2つの方向と判断対象
方向 生成AIの位置づけ 主な利用場面 人が決めること
A. 事業開発の加速 チームが使う作業支援 調査論点、アイデア発散、資料、試作、記録整理 事実確認、仮説の採否、顧客へ出す範囲
B. 顧客価値への組み込み 商品・サービスの機能 顧客の判断支援、下書き作成、分類、対話支援など 対象業務、提供価値、例外対応、最終責任

方向AとBは同時に使えます。たとえば、生成AIを組み込んだ新サービスを検討しながら、顧客インタビューの準備や画面モックの作成にも生成AIを利用できます。ただし、誰が使うのか、何を評価するのか、失敗した場合に誰へ影響するのかが異なるため、台帳と判断会議は分けます。

最初に利用者と成果を一文で定義する

方向Aなら「新規事業チームが、調査論点の候補を作り、一次情報を確認する順番を決める」のように、社内の利用者と成果を定義します。方向Bなら「顧客企業の担当者が、候補案を比較し、最終判断に必要な根拠を確認できる」のように、顧客の行動変化まで書きます。

「生成AIを活用する」「AI機能を搭載する」だけでは、成果も責任も判断できません。利用者、利用場面、入力、出力、出力後の行動を一文にすると、必要な技術と確認方法が見えてきます。

速度と価値は別の指標で測る

方向Aは、作業時間、やり直し、確認待ち、次の判断までの時間で評価します。方向Bは、顧客の業務結果、利用継続、支払行動、例外発生時の復旧などで評価します。両方を利用回数だけで測ると、使われているが判断は進まない状態を見落とします。

まずは、速くなった工程の次に何が詰まるかを確認してください。調査が速くなっても、出典確認に時間がかかるなら確認工程を設計します。試作が速くなっても、顧客へ見せる判断が遅いなら、承認者と開示範囲を決めます。

生成AIを新規事業で使う2つの方向

2つの方向を分ける目的は、用途を狭めることではありません。生成AIの出力が誰へ影響し、どの事実を確かめ、何を事業成果と呼ぶかを明確にするためです。同じ生成AIでも、社内の下書き支援と顧客へ提供する機能では、必要な確認と責任が異なります。

生成AIの利用目的を分ける確認項目
確認項目 方向A:事業開発の加速 方向B:顧客価値への組み込み
主な利用者 新規事業、企画、研究開発などの社内担当者 顧客企業の利用者、管理者、意思決定者
出力の扱い 調査候補、下書き、比較案、検証物 商品・サービスの回答、提案、分類、生成物
成功の判断 次の調査・顧客対話・判断へ早く進めたか 顧客の業務結果や行動が改善したか
主なリスク 未確認情報の転記、機密入力、レビュー負荷 誤出力、説明不足、権利・プライバシー、依存
最終判断者 事業責任者、資料の承認者 サービス責任者と、利用場面に応じた人の確認者
停止時の代替 人が元資料へ戻って作業する 顧客が人の窓口や従来手順へ切り替えられる

方向を決めたら、まず利用者、出力の扱い、成功の判断、最終判断者を一枚に記録します。残る項目は検証の進行に合わせて更新し、方向AからBへ移る時点で確認方法を切り替えます。

方向を混ぜると起きること

社内向けの試作では、多少の誤りがあっても担当者が修正できる場合があります。その試作を顧客向けへ転用すると、誤りの影響、説明義務、問い合わせ、データ管理が変わります。試作時の利用条件をそのまま本番条件にしないことが重要です。

反対に、顧客向け機能の厳しい確認を、社内の発散作業へ一律に適用すると、探索が重くなります。リスクの大きさに応じて確認の深さを変え、軽い用途から始める設計が必要です。

方向ごとに責任者を置く

方向Aでは、利用可能な情報、出典確認、社外共有を決める責任者を置きます。方向Bでは、顧客価値、技術、データ、法務・情報管理、運用の責任を分け、最終的に誰が提供可否を決めるかを明確にします。

全員で確認する設計は、責任が広いように見えて判断者が不明になります。一人が複数の役割を兼ねても構いませんが、役割名と判断記録は分けて残します。

方向A|生成AIで新規事業の調査・発散・試作を速める

方向Aでは、生成AIを担当者の代わりではなく、反復作業と下ごしらえの支援に置きます。目的は生成物を増やすことではなく、顧客へ確認する問いや、社内で決める選択肢を早く具体化することです。速く作れた時間は、資料を増やすためではなく、顧客対話と判断へ戻します。

事業開発で生成AIを使う場面と確認方法
利用場面 生成AIへ任せる範囲 人が確認すること 次へ渡す成果物
調査の下ごしらえ 論点、検索語、比較軸、反証候補を出す 一次情報、発行主体、対象、時点 調査計画と確認済み事実
アイデア発散 顧客・場面・代替手段・自社資産を組み替える 課題の存在、自社が行う理由、検証可能性 優先仮説と不選択理由
資料作成 企画書や説明文の構成・下書きを作る 根拠、表現、社外共有の可否 判断者が比較できる資料
試作 画面案、会話例、簡易モックを作る 何を確かめる試作か、顧客へ見せる範囲 顧客反応を得る最小検証物
記録整理 発言や結果を論点別に整理する 元記録との対応、抜け、誤った要約 事実・解釈・次の問いの記録

最初から全場面へ導入せず、確認しやすく影響を限定できる一工程を選びます。生成AIを使う前後で、次の判断へ渡す成果物が良くなったか、確認負荷を含めて比較してください。

イノベーション総研の同調査では、外部コンサルティング利用者431人のうち114人(26.5%)が「一般論的なアドバイス」を課題に挙げました。生成AIも、固有の顧客事実や社内制約を渡さなければ、整っているだけの一般論を返しやすくなります。そこで、プロンプトの巧拙だけでなく、確認済み事実、未確認の前提、反証条件を入力と出力の両方に持たせます。

調査では答えより「確かめる地図」を作る

生成AIへ業界の結論を求めるのではなく、調べる論点、候補となる一次資料、比較軸、成立しない条件を出させます。出力は「確認済み」「未確認」「反証が必要」「今回の対象外」に分け、確認済みだけを事業判断へ使います。

数値や固有名詞は、元の公表資料までたどります。AIが示したURLが存在しても、そのページが主張を支えるとは限りません。出典名、発行主体、対象、時点、該当箇所を人が確認し、説明文と根拠を対応させます。

発散では似た案をまとめ、反証を増やす

生成AIは多数の案を出せますが、表現が違うだけで同じ顧客課題を扱う案もあります。顧客、課題が起きる状況、現在の代替行動、自社資産、収益の受け方でまとめ、検証単位を減らします。

賛成理由だけでなく、「顧客が何もしない理由」「現在の方法を変えない理由」「自社が優位にならない条件」も出させます。詳しい発散と収束の設計は新規事業アイデアの出し方も参照してください。

試作には検証する問いと判断線を付ける

整った画面や文章は、事業性の証拠ではありません。試作ごとに、誰へ見せるか、何を確かめるか、どの反応なら修正・継続・停止するかを書きます。検証物の完成度より、重要な不確実性を減らせるかを優先します。

生成AIで試作の更新が速くなった場合も、機能追加へ使い切らないでください。顧客へ見せ、使い方を観察し、不要な要素を削る回数を増やします。最小の検証物を決める考え方はMVPの作り方で詳しく解説しています。

方向B|生成AIを顧客価値の中核へ組み込む

デジタルインターフェースを操作する手とデータのイメージ

方向Bでは「生成AIで何ができるか」から始めると、顧客課題より機能が先に決まります。先に対象業務、現在の行動、変えたい結果を特定し、その一部を生成AIが担えるかを検討します。AI機能の価値ではなく、AIを含む業務全体で顧客の結果がどう変わるかを定義します。

顧客向け生成AIサービスで先に決める5つの境界
境界 確認する問い 成果物
入力 どのデータを、誰の権限と同意で使うか データ区分と入力許可表
生成 AIは候補・下書き・推奨・決定のどこまで担うか AIと人の担当範囲
確認 誰が、何を根拠に、いつ確認するか レビュー基準と担当者
提供 顧客へAI利用と限界をどう伝えるか 表示、説明、問い合わせ導線
停止 どの兆候で自動処理を止め、何へ切り替えるか 停止条件と代替手順

境界は技術仕様だけで決めません。顧客の利用場面と失敗時の影響を確認し、事業、技術、データ、法務・情報管理、運用の担当者が同じ表を更新します。

顧客業務を起点に価値仮説を書く

価値仮説は「対象顧客が、どの業務で、現在は何に困り、生成AIと人の分業によって、どの結果を変えるか」の順に書きます。「問い合わせへ自動回答する」だけでなく、顧客が必要な根拠を確認し、次の手続きへ進めるなど、出力後の行動まで定義します。

AI機能を外しても顧客課題が説明できるかを確認してください。課題が残るなら、技術は解決手段の候補です。AI機能を外すと価値を語れない場合は、顧客課題を後付けしていないか見直します。

利用者・決裁者・影響を受ける人を分ける

生成AIを直接操作する人だけが利用者とは限りません。出力を基に判断する管理者、結果の説明を受ける顧客、誤りが起きたときに対応する担当者も関係します。立場ごとに得る価値、負う負担、必要な説明を分けます。

利用者の時間が減っても、確認者の作業や問い合わせが増えることがあります。部分的な効率だけで事業価値を判断せず、入力から顧客の行動完了までの全体で評価します。

精度だけで提供可否を決めない

同じ精度でも、出力を人が確認してから使う用途と、自動で顧客の権利や金銭へ影響する用途では、必要な対策が違います。誤りを発見できるか、訂正できるか、影響を限定できるか、代替手順へ戻れるかを併せて確認します。

生成AIの一般的な性能評価だけでなく、実際の顧客、入力、業務、利用環境でテストします。重要な例外や失敗条件を先に集め、本番後も記録と評価を更新できる設計にします。

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生成AI新規事業を進める6ステップ

生成AIの検討を、ツール選定やデモ作成から始める必要はありません。顧客の業務と判断を起点にし、必要な範囲だけ技術と運用を具体化します。6ステップの成果物はサービス案ではなく、次の判断に使える事実と責任分担です。

生成AIを新規事業へつなぐ6ステップ
ステップ 答える問い 主な作業 次へ渡す成果物
1. 方向を決める 加速装置か、顧客価値か 利用者、利用場面、成果を一文にする 方向A・Bと責任者
2. 顧客業務を選ぶ 誰のどの行動を変えるか 現在の手順、代替、困る場面を確認する 顧客業務と価値仮説
3. 不確実性を絞る 次の判断を最も左右する前提は何か 顧客・技術・データ・運用・収益を分ける 優先仮説と判断線
4. 最小検証物を作る 何を見せれば事実を得られるか 下書き、モック、限定機能を作る 顧客へ確認できる検証物
5. 実条件で確かめる 顧客は使い、行動を変えるか 対話、観察、試用、例外・停止テスト 支持・反証・未確認の記録
6. 次の投資を決める 続ける、変える、止めるのどれか 事実、リスク、資源、収益を比較する 決定、責任者、期限、次の検証

各ステップの終了条件は、成果物の完成ではなく、次の判断に必要な事実がそろったことです。反証や判定不能も記録し、必要なら一つ前のステップへ戻ります。

ステップ1・2|方向と顧客業務を固定する

方向Aなら、現在遅い工程を一つ選びます。方向Bなら、顧客が繰り返し行う具体的な業務を一つ選びます。対象を広げ過ぎず、生成AIを使う前後で誰の何が変わるかを確認します。

顧客へは将来の要望だけでなく、直近に課題が起きた場面、現在の対処、費用や時間、判断者を聞きます。本人の行動と社内手続きを確認すると、使いたいという感想と導入できる条件を分けられます。

ステップ3・4|不確実性から検証物を決める

技術精度が最重要とは限りません。利用許可のあるデータが集まるか、顧客が根拠を確認できるか、現場が例外対応できるか、支払う主体がいるかなど、次の投資判断を左右する前提を一つ選びます。

検証物は、その前提を確かめる最小範囲にします。画面を作らなくても、担当者が裏側で生成AIを使う手動運用で顧客価値を確認できる場合があります。仮説、検証方法、判定基準を一組にする方法は新規事業の仮説検証も参考になります。

ステップ5・6|実条件で確かめ、判断を残す

実際に近い入力、利用者、業務の流れ、失敗時の影響で試します。良い例だけでなく、曖昧な入力、情報不足、権限外の依頼、停止すべき場面も含めます。結果は「支持」「反証」「判定不能」に分け、見栄えの良い成功例だけを残さないようにします。

判断会議では、生成AIの説明文ではなく、顧客事実、技術結果、リスク、必要資源、未確認を並べます。継続、方向修正、保留、停止を決め、次に確かめること、担当者、期限を記録します。

出力・データ・意思決定の責任を設計する

生成AIの新規事業では、モデル提供者、サービス提供者、利用者など複数の主体が関わります。外部サービスを使う場合も、自社が選んだ用途、入力する情報、顧客への説明、運用中の判断は自社の設計対象です。責任は「AIを使った人」へ集めず、入力・確認・提供・停止の判断点へ割り当てます。

総務省・経済産業省のAI事業者ガイドライン第1.2版は、AI開発者、AI提供者、AI利用者という主体を示し、活用の手引き、チェックリスト、ワークシートも公開しています。新規事業チームが外部の生成AIを顧客向けサービスへ組み込む場合、自社が単なる利用者ではなく、提供者として担う範囲も確認します。

リスクの大きさで確認方法を変える

すべての出力を同じ厳しさで確認すると、軽い探索が進まなくなります。反対に、社内の壁打ちと顧客へ自動提供する回答を同じ扱いにすると、影響の大きい用途で確認が不足します。出力が間違ったときの影響、発見可能性、訂正可能性から確認方法を決めます。

生成AIの利用場面ごとに変える確認方法
影響の目安 利用例 公開・利用前の確認 運用中の管理
小さい 社内の発散、構成案、検索語候補 機密入力を避け、担当者が採否を判断 必要な出力だけ残す
中程度 顧客向け資料の下書き、社内判断の要約 原典、表現、権限、承認者を確認 元資料と修正履歴を残す
大きい 顧客へ直接示す推奨、重要業務の自動処理 実条件テスト、専門確認、説明、停止条件 監視、問い合わせ、事故対応、再評価

NISTのAI Risk Management Frameworkは、AIリスク管理を製品・サービスの設計、開発、利用、評価へ組み込むための任意の枠組みです。生成AI向けのNIST AI 600-1では、ガバナンス、コンテンツの来歴、展開前テスト、インシデント開示を主要な検討対象として扱っています。チェックを一度行って終えるのではなく、利用場面とリスクに合わせて更新します。

入力データは「入れてよいか」を先に決める

顧客情報、個人情報、技術情報、契約上の機密、社外秘資料は、便利だからという理由で入力しません。データの権利者、利用目的、保存、学習利用の有無、削除、再利用、共有範囲をサービス条件と社内ルールで確認します。

入力前に匿名化すれば常に安全というわけでもありません。文脈から再識別できる情報、組み合わせると機密になる情報、顧客との契約で目的外利用が制限される情報があります。迷うデータを担当者個人の判断へ任せず、確認窓口と禁止・条件付き・許可の区分を作ります。

出力台帳で事実と判断を追跡する

最低限、利用目的、入力区分、モデル・設定、元の出力、確認した根拠、修正内容、利用先、承認者を対応させます。すべてを永久に保存するのではなく、意思決定や顧客説明に必要な記録を定義し、保存期間とアクセス権も決めます。

OECDのAIに関するアカウンタビリティ原則は、役割と状況に応じた説明責任に加え、AIのライフサイクルを通じたデータセット、プロセス、意思決定の追跡可能性を示しています。新規事業でも、誰が何を根拠に採用・修正・棄却したかを残すことで、問い合わせや改善へつなげられます。

指標は生成量ではなく学習と事業判断で置く

新規事業の成果指標を確認するダッシュボード画面

生成AIの利用回数、作った案の数、作成時間の短縮だけでは、新規事業が前進したか分かりません。方向Aは工程の前進、方向Bは顧客の結果と提供品質を測り、共通指標として仮説学習と意思決定を置きます。生成量ではなく、重要な不確実性を減らし、期限内に判断できたかを評価します。

生成AI新規事業で確認する指標の階層
階層 確認すること 指標例 誤読しやすい点
作業 反復作業が軽くなったか 下書き時間、修正回数、確認待ち時間 短縮分がレビューへ移っただけかもしれない
検証 重要な仮説を確かめたか 顧客接触、反証できた仮説、実条件テスト 件数が多くても重要度は同じではない
判断 次の資源配分を決めたか 期限内の継続・修正・停止判断 会議開催数は判断数ではない
顧客価値 顧客の行動や結果が変わったか 利用完了、継続、支払行動、業務結果 好意的な感想だけでは導入を示さない
提供品質 安全に使い続けられるか 誤りの発見・訂正、例外率、停止・復旧 平均精度だけでは重大な失敗を見落とす

指標は一度に増やさず、現在の最大の不確実性へ対応するものを選びます。作業指標だけが改善しても、検証・判断・顧客価値が進まなければ、生成AIの使い方か承認工程を見直します。

方向Aは短縮後のボトルネックを見る

資料作成が速くなったら、次に増えた確認作業を測ります。案が増えたら、重複をまとめ、顧客へ確認する仮説を絞れたかを見ます。部分工程の時間だけでなく、問いを決めてから次の判断を行うまでの全体時間で評価します。

生成AIを導入したことで、承認待ちや出典確認が新たな詰まりになる場合があります。その詰まりを記録し、入力の標準化、レビュー対象の絞り込み、権限の明確化で改善します。

方向Bは顧客行動と例外対応を見る

顧客が出力を閲覧しただけでなく、必要な判断や手続きを完了できたかを確認します。利用継続、試用から本契約への移行、支払行動など、事業性に近い行動を追います。

同時に、誤りが起きたときに発見・訂正できたか、問い合わせへ対応できたか、停止条件が機能したかを見ます。利用が増えるほど、例外対応と運用費用も増えるため、売上仮説と提供負担を同じ周期で更新します。KPIの設計方法は新規事業のKPI例と選び方も確認してください。

失敗を防ぐ実務チェックリスト

チェックリストは導入可否を自動判定するものではありません。現在の設計で、次の検証や専門確認が必要な空欄を見つけるために使います。すべてを埋めてから動くのではなく、影響の大きい空欄から担当者と期限を置きます。

顧客価値と検証

  • 方向Aと方向Bのどちらを扱うか明記したか
  • 対象となる顧客・利用者・業務・現在の代替手段を具体化したか
  • AIを外しても、解くべき顧客課題を説明できるか
  • 次の事業判断を左右する仮説を一つ選んだか
  • 試作に検証する問いと、継続・修正・停止の判断線があるか
  • 好意的な感想だけでなく、利用・社内調整・支払などの行動を確認したか

データと出力

  • 入力できるデータを禁止・条件付き・許可に分けたか
  • 外部サービスの保存、学習利用、削除、共有条件を確認したか
  • AI出力、確認済み事実、顧客発言、担当者の解釈を分けたか
  • 数値と固有名詞を一次情報で確認したか
  • 顧客へAI利用と限界を説明する方法があるか
  • 記録する項目、保存期間、アクセス権を決めたか

責任と運用

  • 顧客価値、技術、データ、法務・情報管理、運用の担当がいるか
  • 最終的な提供・投資・停止を決める責任者が明確か
  • 誤りや異常を検知し、人へ切り替える条件があるか
  • 顧客が訂正や説明を求められる窓口があるか
  • 実際の入力・利用者・業務・例外を含むテストを行ったか
  • 本番後に評価、事故、問い合わせを次の改善へ戻す会議があるか

未確認の項目を隠さず、誰が何で確認するかを書きます。法的評価、契約、個人情報、知的財産など個別事情で判断が変わる論点は、事業チームだけで結論を出さず、社内の法務・知財・情報管理担当や専門家へつなぎます。

生成AIと新規事業に関するよくある質問

生成AIを新規事業へ活用するときに生じやすい疑問へ、顧客価値、検証、責任分担の観点から答えます。生成AIを使うこと自体ではなく、誰のどの判断や行動を変えるかを基準にしてください。

Q. 生成AIで新規事業のアイデアを出してもよいですか

A. 発散相手として利用できます。顧客、利用場面、代替手段、自社資産を組み替え、成立しない条件も出させます。ただし、生成された案は顧客課題や事業性の証拠ではありません。似た案をまとめ、人が検証候補を絞り、顧客の現在の行動で確かめます。

Q. 生成AIを使う新規事業には専門部署が必要ですか

A. 初期の社内利用は、事業開発チームが利用ルールと確認工程を設けて始められる場合があります。顧客向けサービスでは、顧客業務、技術、データ、法務・情報管理、運用の視点が必要です。専門部署へ任せ切りにせず、事業責任者が顧客価値と投資判断を担います。

Q. どの業務から生成AIを試すとよいですか

A. 方向Aなら、反復が多く、人が結果を確認でき、失敗の影響を限定できる一工程から始めます。方向Bなら、顧客が繰り返し行う具体的な業務と未解決課題を一つ選びます。ツールを先に決めず、利用者、入力、出力、確認者、停止条件を定義してから最小検証を行います。

Q. 生成AIで検証が速くなれば、事業化も速くなりますか

A. 資料や試作の反復は速められますが、顧客との接触、社内判断、データや運用条件の確認が自動的に速くなるとは限りません。短縮できた時間を顧客対話と意思決定へ回し、工程全体で次の判断までの時間が縮んだかを確認します。

Q. 生成AIの精度はどこまで高めれば本番提供できますか

A. 一律の数値だけでは決められません。出力が間違ったときの影響、人が発見・訂正できるか、顧客へ説明できるか、停止・代替手順があるかによって必要条件が変わります。平均精度に加え、重要な例外や失敗条件を実際の利用環境で評価します。

まとめ|仮説を速め、人が顧客と判断を担う

888人調査では、805人(90.7%)が生成AIを新規事業のいずれかの業務で使う一方、利用の上位は市場調査や競合分析など、調査・整理の工程でした。生成AIを新規事業へ活かすには、事業開発を速める方向Aと、顧客価値へ組み込む方向Bに分けます。生成AIの価値は生成物の多さではなく、顧客事実と次の事業判断へ早く到達できることにあります。

実務では、方向を決め、顧客業務を選び、不確実性を絞り、最小検証物を作り、実条件で確かめ、次の投資を決める6ステップで進めます。AI出力と確認済み事実を分け、入力データ、承認者、停止条件を記録し、生成量ではなく仮説学習・顧客行動・意思決定で進捗を測ります。

生成AIを含む新規事業の検証順序や責任分担を整理したい場合は、新規事業の進め方について無料相談することができます。まず組織の現在地を確認したい場合は、無料診断で判断構造を確認するをご利用ください。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

総務省・経済産業省、NIST、OECDの公開一次資料。各参照箇所にリンクを記載しています。

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