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新規事業のKPI例36選|売上だけでは測れない3段階の判断指標

新規事業のKPIを決めるとき、売上や商談数など、測りやすい数字から選ぶと判断を誤ります。顧客課題が未確認の事業と、獲得・提供の再現性を確かめる事業では、見るべき数字が異なるからです。

イノベーション総研の888名調査では、KPIを定期的に確認していても、経営層との認識が合わず判断に機能しなかった回答が最も多くなりました。問題は、数字がないことより、数字を見た後に誰が何を決めるかが合意されていないことです。

新規事業のKPIは、現在の段階と次の判断から逆算し、3つ程度へ絞ります。 本記事では、検証期・立ち上げ期・拡大期のKPI例36個を一覧化し、指標の選び方、計算条件、目標値、会議で判断に使う方法まで具体的に解説します。

この記事のポイント

  • 新規事業のKPIを検証期・立ち上げ期・拡大期に分ける
  • 各段階で使えるKPI例を12個ずつ確認する
  • KGI、経営KPI、診断指標、活動指標を混同しない
  • 指標名だけでなく、分子・分母・対象・期間を固定する
  • 目標値と同時に、継続・変更・停止の判断条件を決める

結論|新規事業のKPIは段階と判断で選ぶ

新規事業のKPIと次の投資判断を関係者で確認する会議のイメージ
新規事業のKPIと次の投資判断を関係者で確認する会議のイメージ

新規事業のKPIは、事業の成績を網羅的に表示する数字ではありません。現在の重要な仮説を確かめ、次の投資、方向変更、追加検証、停止を選ぶための指標です。

検証期は顧客・課題・価値についての学び、立ち上げ期は利用・支払い・継続という顧客行動、拡大期は獲得と提供の経済性・再現性を中心に見ます。段階が変われば、経営判断へ使うKPIも入れ替えます。

検証・立ち上げ・拡大で変わる未確認事項とKPIの役割
事業の段階 主な未確認事項 中心となるKPI KPIで行う判断
検証期 対象顧客、課題、価値は正しいか 課題確認、仮説更新、次行動 顧客・課題・提案を維持または変更する
立ち上げ期 顧客が利用・支払い・継続するか 利用開始、有償転換、継続 提供方法・価格・販売条件を固める
拡大期 顧客獲得と提供を採算内で繰り返せるか 獲得費用、粗利、継続、提供工数 販路・採用・設備へ追加投資する

KPIは、数値が動いたときに何を決めるかを先に書いてから選びます。 指標が目標へ届いても次の判断が変わらないなら、経営KPIではなく、原因を調べる診断指標または活動指標として扱います。

経済産業省のソリューション仮説構築フレームワークは、主要KPIの例として売上高、粗利率、投資回収期間、IRRなどを挙げ、自社の意思決定基準に沿って記載する考え方を示しています。例の有名さではなく、自社が行う判断との対応が重要です。

新規事業のKPIは「設定」より「判断への接続」で差がつく

新規事業の目標・KPIは、判断基準として機能していたか

経営層と合意した指標を定期確認し、判断基準として機能:28.6%(254名)

指標を定期確認したが、経営層との認識がずれて機能せず:45.5%(404名)

定量的な指標は設定したが、実際の判断に活用せず:14.6%(130名)

定性的な目標のみで、数値指標は未設定:7.1%(63名)

明確な目標・指標を設定せず:4.2%(37名)

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

最も多かったのは、指標を定期的に確認していても、経営層との認識が合わず、判断に機能しなかった回答です。KPIの有無よりも、指標の意味と結果を受けた行動を関係者で共有できているかが問題になります。

さらに、「経営層と合意したKPIを定期的に確認し、判断基準として機能した」と答えた割合は、自走段階の回答群で40.8%、未到達群で27.1%でした。13.7ポイントの差は因果関係や成功保証を示すものではありませんが、KPIを会議の報告項目で終わらせない重要性を示しています。本記事の「自走段階」は、単年度黒字または投資回収の目処が立ち、自走する事業として社内で認知されている回答区分です。実現済みの黒字化率ではありません。

イノベーション総研では、KPIを一つの数字ではなく、「定義・判断者・基準・結果ごとの行動」の組み合わせとして扱います。たとえば有償転換率が基準を下回ったとき、価格を変えるのか、顧客層を絞るのか、追加検証するのかを事前に決めて初めて、KPIは意思決定の道具になります。

まず各KPIの横に「この数値を見て、誰が何を決めるか」を一文で書いてください。 書けない指標は、経営KPIではなく原因分析用の診断指標か、担当者の活動指標へ移します。学習と投資判断をつなぐ考え方は、イノベーション会計の実務でも詳しく解説しています。

新規事業KPIの3段階と選び方

段階は、開始からの年数や社内の呼び名ではなく、何を確認済みかで判定します。試作品を作っていても、誰のどの課題を解くかが定まらなければ検証期です。有償顧客がいても、個別対応を外した採算が不明なら拡大条件は未確認です。

経済産業省のスマートモビリティ関連資料は、目的を深掘りし、「効果目標(KGI)→評価指標(KPI)→検証方法」の順で整理する流れを示しています。新規事業でも、測定できる数字から選ぶのではなく、目標と仮説から検証方法へ下ろします。

段階と仮説から判断・指標・データ・基準を決める順序
選定の順序 決めること 記入する問い 完了の状態
1.段階 現在の重要な未確認事項 何が分からないため投資を決められないか 検証・立ち上げ・拡大を仮置きできる
2.仮説 数値が動くと考える理由 誰のどの行動が何によって変わるか 一文で反証できる
3.判断 結果を受けて選ぶ進路 継続・変更・追加検証・停止の何を選ぶか 判断者が決まる
4.KPI 判断へ必要な指標 どの事実を数値で確認するか 指標を3つ程度へ絞れる
5.方法 データの取り方 誰が、どこから、いつ集計するか 同じ条件で再計算できる
6.基準 判断を分ける条件 どの結果なら何をするか 観測前に合意できる

段階は、成果物の完成度ではなく、次の投資を止めている不確実性で判定します。 技術は確認済みでも支払者が不明なら収益仮説の検証指標を残し、顧客行動は安定していても提供工数が増え続けるなら拡大期の供給指標を追加します。

段階が混在する場合は、事業全体を一語で分類しません。「顧客価値は立ち上げ期、量産体制は検証期」のように論点別に置き、今回の会議で判断する論点へKPIを合わせます。

検証期のKPI例12選

検証期は、顧客との会話や試作品の件数だけでなく、重要な仮説がどこまで支持・反証され、次の判断へ進んだかを測ります。活動量を増やしても、同じ対象へ同じ質問を繰り返すだけでは不確実性は減りません。

以下は顧客、課題、価値、収益の初期仮説を確かめる指標例です。すべてを採用せず、活動、証拠、判断から一つずつ選ぶと偏りを抑えられます。

顧客・課題・価値・収益の初期仮説を確かめる12指標
検証期のKPI例 定義・計算方法 確かめる仮説 数値を受けた判断
1.対象顧客対話数 条件に合う相手との対話件数 想定顧客へ到達できる 接点・対象条件を維持または変更する
2.支払者対話数 予算を持つ役割との対話件数 利用者と支払者を特定できる 面談先と提案先を変える
3.課題確認率 自発的に課題を説明した人数÷対象顧客対話数 課題が実在し反復する 課題仮説を維持または変更する
4.代替手段特定率 現在の対処を確認できた人数÷対象顧客対話数 顧客はすでに対処している 置換する価値を見直す
5.次行動転換率 再面談・試用・紹介へ進んだ人数÷提案人数 関心が行動へ変わる 価値提案を維持または変更する
6.再面談同意率 再面談に同意した人数÷初回対話数 課題を深掘りする余地がある 対象と問いを絞る
7.検証済み重要仮説数 判定条件まで確認した重要仮説の数 主要な不確実性を減らせる 次の仮説へ移る
8.反証仮説数 根拠により棄却・変更した重要仮説の数 誤った前提を早期に外せる 計画を更新する
9.証拠記録完了率 事実・解釈・判断を記録した検証数÷実施検証数 学びを再利用できる 判断会議へ提出する
10.獲得経路検証数 対象顧客へ到達できた異なる経路数 顧客接点を再現できる 次に試す経路を選ぶ
11.支払行動発生数 見積依頼・予約・有償試用などの件数 価値へ負担を受け入れる 価格検証へ進む
12.予定判断完了率 期限内に進路を決めた件数÷予定判断件数 検証が意思決定へつながる 継続・変更・停止を実行する

検証期では、対話の件数と、仮説を変えた証拠を分けて追います。 たとえば対話数が増えても支払者へ一度も会えていないなら、件数目標を上げず、面談先の役割と獲得経路を変更します。

課題確認率や次行動転換率では、対象条件と行動の定義を固定します。「興味があると言った」を次行動に含めるか、日程確定だけを含めるかで値が変わるためです。新規事業の仮説の立て方と対応させ、どの仮説を判定する指標か明示します。

立ち上げ期のKPI例12選

立ち上げ期は、顧客が好意的に評価したかではなく、利用を始め、価値へ到達し、支払い、継続したかを測ります。販売担当者の個別対応による成果と、標準的な提供でも起きる行動を分けます。

事業の利用周期に合わせ、週次、月次、契約更新時など観測期間を決めます。毎月使うサービスへ週次アクティブ率を置くような、利用実態と合わない指標は避けます。

利用開始から支払い・継続・提供品質を確かめる12指標
立ち上げ期のKPI例 定義・計算方法 確かめる仮説 数値を受けた判断
1.試用開始率 試用開始者数÷試用案内者数 提案から利用へ進める 案内・対象・開始手順を変える
2.初期設定完了率 初期設定完了者数÷試用開始者数 導入障壁を越えられる 導入支援を標準化する
3.初回価値到達時間 開始から中核価値を得るまでの時間 早期に価値を理解できる 初期体験を短くする
4.中核行動達成率 中核行動を完了した利用者数÷開始者数 想定した利用行動が起きる 機能・導線を見直す
5.有償転換率 有償顧客数÷価格提示または試用顧客数 顧客が価値へ支払う 価格・対象・提案を見直す
6.決裁完了率 契約承認件数÷正式提案件数 組織内で購入を承認できる 決裁者向けの証拠を変える
7.初回継続率 初回更新顧客数÷更新対象顧客数 一度でなく価値が続く 継続条件を確認する
8.反復利用率 規定期間に複数回利用した顧客数÷利用顧客数 想定周期で利用が定着する 利用場面・通知を見直す
9.解約理由特定率 本人理由を確認した解約数÷解約数 離脱原因を分類できる 改善仮説を選ぶ
10.自発紹介発生数 依頼なしに起きた紹介件数 価値が他者へ伝わる 隣接顧客への検証を始める
11.顧客当たり支援時間 導入・問い合わせ対応時間÷顧客数 提供負担を抑えられる 標準化・自動化範囲を決める
12.提供期限遵守率 期限内に提供した件数÷提供件数 品質と納期を繰り返せる 受注上限・体制を調整する

立ち上げ期は、利用開始・価値到達・支払い・継続を一続きで確認します。 有償転換率だけが高くても、個別の値引きや手厚い支援による結果なら、価格と提供方法の再現性は未確認です。

分母となる顧客条件も固定します。紹介経由と広告経由、無償試用と有償試用、大企業と小規模企業を混ぜると、改善した理由を特定しにくくなるためです。条件を分けても母数が少ない場合は、率だけでなく実数と個別の行動を併記します。

NEXT STEP

次のステップ

KPIを、次の投資判断へつなげる。

Compassでは、KPIを含む6つの視点から事業の弱点を可視化し、次に決めることを整理します。

拡大期のKPI例12選

拡大期は、顧客獲得を増やしても採算、品質、継続が保たれるかを測ります。売上成長だけを追うと、値引き、広告費、個別対応の増加によって、成長するほど資金と供給能力が不足する場合があります。

獲得側と提供側の指標を組み合わせ、平均値だけでなく、獲得時期、販売チャネル、顧客層、提供方式をそろえた集団でも確認します。

顧客獲得と採算・継続・供給再現性を確かめる12指標
拡大期のKPI例 定義・計算方法 確かめる仮説 数値を受けた判断
1.新規有償顧客数 期間内に契約・入金した新規顧客数 獲得量を増やせる 販路・営業体制へ投資する
2.チャネル別転換率 チャネル別の有償顧客数÷有効見込み顧客数 獲得経路ごとに再現性がある 配分を増減する
3.顧客獲得費用(CAC) 獲得に使った販売・マーケティング費÷新規顧客数 採算内で獲得できる 獲得施策と対象を変える
4.顧客当たり平均売上 対象期間の売上÷対象顧客数 顧客単位の売上を維持できる 商品構成・価格を調整する
5.粗利率 売上総利益÷売上高 提供量が増えても利益を残せる 原価・価格・範囲を見直す
6.顧客生涯価値(LTV) 統一定義で算定した顧客当たり累積価値 継続価値が獲得費用を上回る 獲得上限を決める
7.LTV/CAC LTV÷CAC 顧客価値と獲得費用の関係が保てる 販促投資の配分を変える
8.CAC回収期間 CAC÷顧客当たり月次粗利など 資金を想定期間で回収できる 投資速度と資金計画を調整する
9.継続率 継続顧客数÷期首または更新対象顧客数 顧客が価値を得続ける 顧客層・提供を見直す
10.解約率 解約顧客数÷期首または更新対象顧客数 離脱を管理可能な範囲に保てる 原因別の改善を行う
11.顧客当たり提供原価 期間内の提供原価÷対象顧客数 顧客増加で供給効率が改善する 標準化・外注・設備を選ぶ
12.平均販売期間 初回接点から契約までの日数 営業工程を繰り返せる 審査・提案・決裁支援を改善する

拡大期は、需要の増加と、採算・供給能力の維持を同じ会議で確認します。 新規顧客数が伸びてもCAC回収期間や提供原価が悪化するなら、獲得量をさらに増やす前に原因を特定します。

LTVやCACは、計算期間、粗利を使うか売上を使うか、営業人件費を含むかで値が変わります。他社の値をそのまま基準にせず、自社の定義を固定してください。詳しい計算関係はユニットエコノミクスの見方で整理しています。

KGI・KPI・活動指標の違い

指標が増えすぎる主な原因は、目的、判断、原因、行動を同じ一覧へ並べることです。KGIは到達したい事業成果、経営KPIは次の経営判断を変える指標、診断指標はKPIが動いた理由を調べる数字、活動指標は実行量を管理する数字として分けます。

同じ数字でも、会議と段階によって役割は変わります。検証期の顧客対話数は重要な活動指標ですが、拡大投資を決める会議では、獲得費用や粗利を説明する補助情報になります。

KGI・経営KPI・診断指標・活動指標の役割と使い分け
指標の区分 役割 数値が動いたときの対応
KGI 到達したい最終・中期成果を示す 売上高、粗利額、投資回収 戦略と資源配分を見直す
経営KPI 次の重要判断へ必要な証拠を示す 有償転換率、継続率、CAC回収期間 継続・変更・追加投資・停止を選ぶ
診断指標 KPIが変化した原因を探る チャネル別転換率、離脱地点、顧客層別継続率 原因仮説と追加分析を選ぶ
活動指標 実行量と担当の詰まりを管理する 対話数、提案数、検証記録数 行動配分、担当、工程を変える

活動量の達成を、顧客価値や事業成果の達成と取り違えないことが重要です。 PoC件数や提案件数が増えても、仮説の判定や有償利用へつながらなければ、活動の設計を見直します。

経済産業省のイノベーション経営に関する資料でも、新規事業数・新規顧客数・新規事業売上などに加え、協業先、PoC、技術検証など多様なKPI例が示されています。同時に、KPI達成の目的化を懸念する意見も紹介されており、件数の達成とイノベーションの成果を同一視しない運用が必要です。

指標の区分は固定的な名称ではなく、会議での用途によって決まるものです。たとえば有償顧客数は、検証期には支払意思を確かめる経営KPI、拡大期には売上変化の原因を探る診断指標になる場合があります。指標一覧には区分だけでなく「この会議で何を決めるために見るか」を記載し、用途が変わった時点で配置を見直します。

担当者を管理するうえで、活動指標も重要です。ただし、対話数や提案数を個人評価へ直結させると、件数を増やすために対象条件を緩めたり、否定的な証拠を避けたりする誘因が生まれます。検証の誠実さ、記録の再利用性、仮説を更新した根拠も別に確認します。

新規事業KPIを3つへ絞る方法

新規事業のKPI候補から経営判断に必要な指標を選ぶイメージ
新規事業のKPI候補から経営判断に必要な指標を選ぶイメージ

経営会議へ出すKPIは、現在の判断に直接使うものを3つ程度へ絞ります。データを3種類しか集めないという意味ではなく、原因分析用の診断指標や日々の活動指標を、経営KPIと分けて管理する考え方です。

絞り込みでは「結果」「先行行動」「判断または供給条件」の役割から一つずつ選びます。三つが同じ方向の数字にならないようにし、事業の入口から出口までの関係を確認します。

事業段階ごとに結果・先行行動・供給条件から選ぶ3指標
KPIの役割 選ぶ基準 検証期の例 立ち上げ期の例 拡大期の例
結果 今回の目的へ最も近い結果か 課題確認率 初回継続率 粗利率
先行行動 結果より前に起き、改善可能か 次行動転換率 中核行動達成率 チャネル別転換率
判断・供給 学びや提供条件を確認できるか 予定判断完了率 顧客当たり支援時間 顧客当たり提供原価

候補を残す基準は、その数値が変われば次の判断も変わることです。 数字を外すと不安でも、意思決定へ使わないものは診断画面へ移し、経営会議の一枚から外します。

複数のKPIが同じ事象を測っている場合は、最も早く取得でき、定義が安定し、担当者が改善行動を取れるものを優先します。結果との関係がまだ確認できない先行指標は、仮説として扱い、関係が崩れたら入れ替えます。

KPIの定義と計算条件をそろえる

KPI名が同じでも、分母、対象、期間、除外条件が異なれば比較できません。「転換率」が、問い合わせから商談、商談から契約、試用から有償のどれを指すかを明確にします。

初回設定では、データが取れるかだけでなく、同じ条件で再計算できるかを確認します。途中で定義を変えた場合は、変更日と理由を残し、変更前後を一つの連続した推移として扱いません。

同じ条件でKPIを再計算・比較するための定義項目
定義票の項目 記載する内容 記入例 変更時の対応
指標名 誤解のない具体的な名称 試用から30日以内の有償転換率 名称にも条件を反映する
目的・仮説 なぜこの数値を見るか 価値を得た顧客は有償へ移る 仮説変更と連動させる
分子 数える結果 30日以内に契約した試用顧客数 集計ルールを保存する
分母 比較対象となる母集団 対象条件を満たす試用開始顧客数 除外理由を記録する
対象・除外 顧客、商品、経路、例外 無償の社内利用を除く 変更前後を分けて表示する
期間 発生日と観測窓 試用開始月、開始後30日 観測未完了を区別する
データ元 集計に使う正本 契約管理と利用ログ 欠損・手修正を記録する
更新責任者 集計と定義の管理者 事業管理担当 変更提案者と承認者を分ける

分子・分母・対象・期間・除外条件を固定して、初めてKPIを比較できます。 集計条件を変えた後も同じグラフへ線をつなぐと、施策の効果と定義変更の影響を分けられません。

率を使うときは、実数の併記も必要です。二件中一件と百件中五十件は同じ50%でも、判断の確かさと次に必要な検証が異なります。少数段階では、個別の顧客行動と反証事実を数値と一緒に確認します。

新規事業KPIの目標値と判断基準

目標値は、業界の有名な基準を当てはめるのではなく、次の投資に必要な条件から逆算します。現在値、対象顧客、観測期間、費用、次段階の入口条件をそろえ、数値を見る前に判断者と合意します。

一点の目標だけを置くと、わずかに未達だった場合の対応が曖昧になります。「継続」「条件変更・追加検証」「停止または大幅見直し」の帯を設け、例外を認める条件も決めます。

観測前に合意する継続・条件変更・停止・例外の判断基準
判定帯 事前に決める内容 会議で確認すること 次の行動
継続・拡大 次段階へ進める下限条件 対象・定義・反証条件に問題がないか 次の投資と責任者を決める
条件変更 追加検証で判断できる範囲 不足する証拠と期限は何か 仮説・対象・方法を一つ変更する
停止・大幅見直し 現計画を続けない条件 新しい証拠を得る見込みがあるか 終了または別案へ資源を移す
例外 外部変化・データ不足など 誰が何を根拠に例外を認めるか 期限付きで再判定する

目標値は予測の数字ではなく、投資判断を分ける仮説として扱います。 結果を見てから基準を下げる場合は、元の基準を消さず、変更理由、承認者、追加検証、次回判断日を残します。

目標未達と、事業に価値がないことは別の問題です。対象者が違った、データが欠けた、検証方法が行動を測れていなかった場合は、仮説の反証と測定不備を分けます。停止基準の運用は新規事業の撤退基準とも接続します。

会議で新規事業KPIを次の判断へつなぐ

KPI会議では、すべての数字を順に報告しません。基準から外れた指標、前回から定義が変わった指標、判断を変える新しい証拠を中心に扱います。

会議前にデータ担当が数値と欠損を更新し、事業責任者が事実、解釈、代替解釈、推奨判断を記載します。会議では投資判断者が進路を決め、会議後に担当、期限、次回判断日を残します。

数値・事実・解釈・判断・次の実行を一枚で管理する項目
会議用KPIシート 会議前に記載する内容 会議で決めること 会議後に残すこと
指標と定義 分子、分母、対象、期間、データ元 定義を維持するか 変更履歴
現在値と推移 同じ条件で集計した実数と率 基準との差をどう扱うか 承認した現在値
観測事実 顧客行動、欠損、例外 事実として採用する範囲 根拠への参照先
解釈と反証 主な原因仮説と別の可能性 追加分析・検証の要否 採用した解釈
推奨判断 継続・変更・追加検証・停止の案 次の進路と投資範囲 決定者と理由
次の実行 担当、期限、必要な資源 誰が何を行うか 次回判断日

会議の完了条件は報告を終えることではなく、進路・担当・期限・次回判断日を決めることです。 数値が良い場合も、特定顧客、特定担当者、個別対応に偏っていないかという反証条件を確認します。

IPAのビジネスアーキテクト(新規事業開発)の役割でも、顧客・ユーザーのフィードバックやKPIのモニタリングを通じ、収益性を高める施策を継続的に検討・実行することが示されています。モニタリングを報告で終わらせず、具体的な施策と判断へ接続します。

新規事業KPIのよくある質問

新規事業のKPI例、選ぶ数、目標値、見直し方について、よくある疑問へ回答します。

Q. 新規事業のKPIはいくつ設定すればよいですか

A. 経営判断へ使うKPIは3つ程度が目安です。データを3種類しか収集しないという意味ではありません。原因を調べる診断指標と、実行量を管理する活動指標は別に持ち、経営会議では判断を変える指標を優先します。

Q. 検証期に売上をKPIへ置いてもよいですか

A. 売上を置くこと自体に問題はありません。ただし、少数顧客への値引きや個別対応で作った売上だけでは、課題・価値・獲得の再現性を判断する材料として不十分です。課題確認、支払行動、提供負担などの指標と組み合わせ、売上が生まれた条件を確認します。

Q. KPIの目標値はどのように決めますか

A. 業種共通の水準をそのまま使わず、次の投資判断に必要な条件から逆算するのが基本です。対象、期間、現在値、費用、次段階の入口条件をそろえ、継続・条件変更・停止の帯を観測前に決めます。初回の基準は仮説として扱い、変更履歴を残します。

Q. 新規事業のKPIを設定しても判断に使えないのはなぜですか

A. 経営層と現場で、指標の定義、判断者、基準、結果ごとの行動が合意されていない可能性があります。ダッシュボードを増やす前に、各KPIの横へ「この数値を見て、誰が何を決めるか」を記載し、会議で合意してください。

Q. KPIはいつ、誰が見直しますか

A. 見直しの提案は事業責任者、承認は投資判断者が担う体制が基本です。観測途中に都合よく定義や基準を変えず、定例の判断時点で変更理由と適用日を記録します。役目を終えたKPIは参考値へ下げ、次の不確実性に合う指標へ入れ替えます。

まとめ|新規事業KPIは次の判断から逆算する

新規事業のKPIは、検証期の学び、立ち上げ期の顧客行動、拡大期の経済性と再現性から選びます。36例をそのまま並べず、現在の段階、重要な仮説、次の判断に合うものを3つ程度へ絞ります。

  • 検証期は活動量だけでなく、仮説を支持・反証した証拠を追う
  • 立ち上げ期は利用開始、価値到達、支払い、継続をつなげる
  • 拡大期は顧客獲得と、粗利・提供能力・回収条件を同時に見る
  • KGI、経営KPI、診断指標、活動指標を分ける
  • 分子・分母・対象・期間・除外条件を定義票へ記載する
  • 目標値と同時に、継続・変更・停止の判断条件を決める

まず、現在の事業について「次に決めること」を一文で書き、その判断に必要な結果指標、先行行動、判断または供給条件を一つずつ選んでください。各指標へ定義、現在値、事前基準、判断者、次回判断日を記入すれば、会議で使えるKPIの一枚になります。

新規事業のKPIは、数字を増やすためではなく、次の投資判断を明確にするために使います。

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現在の指標、定義、判断基準、会議運用を確認し、次の投資判断へつながる設計を一緒に整理します。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

イノベーション総研「新規事業の実態と意思決定に関する調査」、経済産業省、IPAの公開一次資料。各参照箇所に出典・リンクを記載しています。

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