新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

ソニーの新規事業に学ぶ4つの仕組み|採択後に止めない制度の作り方

「社内公募で案は集まったのに、採択後に進まない」「ソニーのような新規事業制度を作りたいが、何から変えればよいか分からない」。制度づくりでこうした壁にぶつかったら、まず、案を選んだ後の仕事に目を向けてみてください。良い案を集めることと、事業として育てることは別です。

ソニーの取り組みでは、社内のアイデアを顧客に試してもらう経路だけでなく、専門家の支援、他社との協業、成長に応じた体制変更にも学べます。ただし、制度の名前や応募方法だけをまねても、自社の課題に合うとは限りません。

本記事では、公式情報に基づく4つの事例と、大企業の新規事業に関わる888名への独自調査から、自社へ取り入れたい仕組みを整理します。社内公募や新規事業制度の運営者が、一案件のどこを直し、次の会議で何を決めるかまで考えられる内容です。

この記事のポイント

  • ソニーの4事例を、製品の特徴だけでなく事業化の進め方から読む
  • 自社で案が出ないのか、案はあるのに判断できないのかを分ける
  • 募集・判断・伴走・記録の4つを、採択後の仕事までつなげる
  • 一案件で変更を試し、顧客について分かったことと運営の負担を見る

目次

ソニーの新規事業制度とは|アイデアから事業運営まで支える

ソニーの新規事業を理解するうえで軸になるのが、Sony Acceleration Platformです。アイデアの募集や審査だけでなく、事業化に向けた検証、製品開発、販売、成長段階までを支援しています。

出発点は、2014年に始まった社内向けのSeed Acceleration Programでした。2018年10月から社外にも支援を広げ、2019年にSony Startup Acceleration Programへ名称を変更。2024年10月には、社外との連携と成長段階の支援を強化する方針とともに、現在の名称になりました。ソニーの名称変更に関する発表で、その経緯を確認できます。

名称の変遷を覚える必要はありません。大切なのは、社内の案を育てて得た経験を、社外の案件や事業化後の支援にも広げてきたことです。制度を調べるときも、「誰が応募できるか」だけでなく、「採択された人が、その後どんな支援を受けられるか」を見てください。

現在の支援は、事業開発・組織人材・企業間連携を扱う

2026年9月確認時点の公式サービスページでは、事業開発支援、組織・人材開発支援、結合促進支援が示されています。結合促進とは、他社との連携や協業を支えることです。事業開発支援は、アイデアづくりから事業運営・拡大まで、途中の段階からも利用できると説明されています。

イノベーション総研が注目するのは、案件への支援と、それを進める人・組織への支援を分けずに考えられる点です。たとえば、顧客の反応はよいのに量産担当が決まらない案件では、追加の市場調査だけをしても進みません。事業の課題に合う担当者や協力先をつなぐ仕事が必要になります。

ただし、外部の支援者がいることと、自社が判断を委ねることは別です。予算の承認、担当者の配置、顧客への約束など、企業側が引き受ける責任は残ります。支援を受ける前に、何を社内で決め、どこに専門家の力を借りるかを整理しましょう。

ソニーの新規事業4事例|製品化の後まで見る

ここでは、wena wrist、toio、Possi、REON POCKETを、製品の特徴と事業化の進め方に分けて紹介します。いずれも公式資料で制度との接点を確認できる事例ですが、現在の状態やソニーの関わり方は同じではありません。

1.wena wrist|腕時計のバンドに技術を入れ、購入意向を確かめる

wena wristは、アナログ腕時計のバンド部分に電子機能を組み込む製品です。2015年の公式発表によると、社内の第2回オーディションを通過し、First Flightでクラウドファンディングを開始しました。予約購入による支援を募り、顧客の意見を製品開発に生かす仕組みでした。

この事例から学べるのは、社内の「面白い」という評価にとどまらず、顧客が対価を払いたいかを確かめることです。社内で評価される新しさと、顧客が選ぶ理由は一致するとは限りません。見た目、使う場面、価格を示して反応を得ると、開発する側の想定との差を具体的に話せます。

一方、製品化したことだけをもって、現在も成長し続ける成功事例とは扱えません。ソニーはwena 3のサービスを2026年2月28日に終了したと公表しています。wena wristの立ち上げと、後継製品wena 3の終了は分けて理解してください。終了理由を推測せず、顧客との接点を作る仕組みと、提供を続けるための条件を別々に学ぶことが重要です。

2.toio|研究成果を、子どもが遊べる体験に変える

toioは、小型ロボットなどを使って遊びや工作を楽しむトイ・プラットフォームです。2017年の発表では、ソニーコンピュータサイエンス研究所の次世代インタラクション研究を基に、Seed Acceleration Programを通じて生まれたと説明されています。ロボット本体に加え、遊びを作る対応タイトルやパートナーとの展開が示されました。

イノベーション総研の見方では、ここで参考になるのは「研究成果を何の体験として届けるか」という考え方です。技術ができることの説明から一歩進み、誰が、どこで、どう使うと価値を感じるかを考えます。動く試作品ができても、使い方が伝わらなければ顧客は試せません。

自社の技術を事業化する場合も、機能を見せるデモと、顧客が使う場面を再現する試用を分けましょう。工場向けの技術なら、精度だけでなく、担当者が結果を見てどんな作業を変えられるかまで確認します。進め方は研究開発成果を事業化する手順で詳しく扱っています。

3.Possi|異なる会社の強みを、親子の困りごとでつなぐ

Possiは、ブラシを歯に当てると音楽を楽しめる、子ども向けの仕上げ磨き専用ハブラシです。2019年の共同発表では、京セラのセラミック技術とライオンのオーラルケアの知見を組み合わせ、ソニーが事業化支援やデザイン面で協力したと説明されています。ソニー単独で生み出した製品ではなく、社外企業の案件を支えた例です。

注目したいのは、「各社の技術を何に使うか」ではなく、「子どもが嫌がる仕上げ磨きを、どう変えるか」という具体的な利用場面です。顧客の困りごとが共通になると、技術、製品設計、使いやすさを同じ目的で議論できます。

自社で応用するときは、提携候補の知名度より、提供に足りない役割を確認します。開発できても販売や顧客対応を担う会社が決まらなければ、協業は事業になりません。誰が顧客に届けるか、どの費用を負担するか、成果をどう使えるかまで話し合う必要があります。連携の基本はオープンイノベーションの進め方も参考になります。

4.REON POCKET|成長に合わせて、製品と事業の体制を変える

REON POCKETは、身に着けて体表面を冷やしたり温めたりする機器です。2025年7月のソニー公式記事では、カメラの熱対策に関わっていた開発者の着想から、社内オーディション、クラウドファンディングを経て、2020年に一般販売を始めた経緯が紹介されています。

その後、2023年にソニーサーモテクノロジーを設立し、2024年にソニーグループからスピンオフしました。同記事では、海外や法人向けの使われ方を踏まえ、冷却性能や駆動時間、操作方法を見直した製品開発も説明されています。立ち上げ後も、販売する相手に合わせて事業を変えてきた例です。

イノベーション総研は、この事例を「良いアイデアを選べば終わりではない」という点で重視します。最初の顧客に合う製品が、別の地域や職場にもそのまま合うとは限りません。顧客が変われば、必要な性能、売り方、問い合わせへの対応も変わります。

ただし、他社が同じように独立会社を作ればよい、という話ではありません。自社の販売網を利用する方が適する場合もあれば、外部との提携が必要な場合もあります。組織を分けること自体を目的にせず、成長を妨げる制約を取り除けるかで選びます。

制度をまねる前に、採択後に止まる原因を確かめる

ソニーの事例から得られるヒントは多くあります。しかし、自社で案が出ないのか、案はあるのに判断できないのかで、先に変えることは違います。募集を増やす前に、すでにある案件がなぜ進まないのかを確認しましょう。

イノベーション総研が大企業で新規事業に関わる888名を対象に行った調査では、最も大きい障壁として、次の項目が上位に挙がりました。以下は、障壁を1位に選んだ回答の上位3項目です。

新規事業で最も大きい障壁として選ばれた項目(上位3項目)

意思決定スピードの遅さ22.1%
KPIや撤退基準が曖昧15.9%
経営層の理解・コミットメント不足15.1%
障壁を1位に選んだ回答の上位3項目を抜粋。比較軸は0〜25%。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

この結果を踏まえ、イノベーション総研は、アイデアを増やす施策と、事業を進めるための判断の仕組みをセットで設計すべきだと考えます。応募件数が増えても、予算を決める人や採択後の支援が変わらなければ、判断を待つ案件が増える可能性があるためです。

これはソニーの制度の効果を測った調査ではなく、大企業の新規事業で感じた障壁の回答です。自社に当てはめる際は、直近の会議を一つ振り返り、「何が足りず、誰の判断を待っているか」を確認してください。顧客の反応が不明なのか、社内で決める人が不明なのかを分けるだけでも、次の行動は変わります。

たとえば、顧客に試作品を使ってもらう承認が一か月下りない場合、担当者に追加のアイデアを求めても解決しません。試用のリスクを確認する担当、費用を承認する人、回答期限を決める方が先です。反対に、試用先はあるが顧客が何に困っているか分からないなら、権限の変更より顧客への聞き方を直す必要があります。

ソニーから学ぶ4つの仕組み|募集・判断・伴走・記録をつなぐ

スーツ姿の二人が握手し、協力関係を確認するイメージ
募集・審査・専門支援をつなぐには、担当者どうしの役割分担が必要です。写真はイメージです。

ここからは、公式に確認できた取り組みを基に、イノベーション総研が自社へ応用するための4つの仕組みとして整理します。ソニー公式の制度分類ではなく、募集から事業化へつなぐ仕事を分けたものです。自社の課題に近い項目から読んでください。

1.応募しやすくし、採択後の活動時間も確保する

wena wristのように、社内の案をオーディションから顧客に見せる段階へつなげた事例があります。ここから自社に持ち帰りたいのは、応募フォームの形ではなく、社員の提案を実際の検証に移す経路です。

初期の応募では、詳細な5年収支よりも、誰のどんな困りごとを解決したいか、今はどう対応しているか、自社の何を使えるか、まず何を確かめたいかを聞きます。まだ分からないことを無理に埋めさせず、採択後に調べる項目として残せるようにします。

同時に、採択された人が本当に活動できるかを確認します。上司と業務配分を調整せず、通常業務に新規事業を上乗せすると、時間を作れる人だけが進められる制度になりかねません。応募資格を広げるときは、検証に使う時間、少額の費用、相談相手の確保まで検討してください。

応募数が少ない場合も、社員の意欲が低いと決めつけないことが大切です。募集を知らなかった、対象か分からなかった、採択後の負担が読めなかったなど、理由によって対応は変わります。不採択者にも理由と再応募の条件を返すと、次に何を確かめればよいかが伝わります。募集から運営までの設計は新規事業の社内公募制度で整理しています。

2.審査では、採否と一緒に次の検証を決める

ソニーの2018年の発表では、アイデアづくり、事業化に向けた検証と準備、販売、他社連携までを支援する仕組みが説明されています。審査を通過させることだけでなく、その先へ進むための支援も必要だと読み取れます。

会議の結論を「継続します」だけで終わらせないことが重要です。次に確かめる問い、確認する相手、担当者、費用の範囲、結果を見て判断する日まで決めます。事業化を最終決定するには情報が足りなくても、次の小さな検証を実施するかは判断できる場合があります。

たとえば「倉庫の作業負担を減らす機器を作りたい」という案なら、いきなり量産を承認する必要はありません。まず、どの作業に負担があり、今の対策では何が残るのかを聞く。その結果を見て、試作品に費用をかけるかを決めます。初期段階と量産段階で、求める根拠を変える考え方です。

保留を選ぶ場合も、「追加調査」では曖昧です。購入担当者の導入条件が分かれば判断できるのか、技術的な試験が必要なのかを具体化します。判断基準が毎回変わるなら、案件の担当者に説明を増やしてもらう前に、審査する側の認識をそろえましょう。

3.発案者に任せ切らず、足りない専門性を補う

現在の公式サービスでは、プロデューサーが全体に伴走し、専門家やパートナーが個別の課題を支える体制が紹介されています。Possiの事例でも、技術、製品分野の知見、デザインなど、異なる役割が組み合わされています。

自社で取り入れるときは、「優秀な人を一人付ける」より、案件で足りない仕事を明確にすることが先です。顧客に話を聞く、試作品を設計する、収支を考える、販売先を探す、契約を確認する。発案者が何を担い、どこを他の人が補うかを決めてください。

伴走者の仕事は、企画書を代わりに仕上げることだけではありません。発案者と一緒に顧客の反応を読み、次に何を確かめるかを整理することです。資料だけが整っても、担当者が根拠を説明できなければ、支援が終わった後に判断できなくなります。

発案者と事業責任者が同じ人である必要もありません。本人が担いたい役割を確認し、成長段階で必要な経験を持つ人を加える選択肢があります。役割を変える場合は、人格や意欲の評価と混同せず、事業に必要な仕事が変わったことを説明します。任命の基準は新規事業リーダーの選び方で確認できます。

4.成功談だけでなく、変更や中止の理由を残す

ソニーは2019年、事業化支援で蓄積した経験を、質問に答えて事業の検討項目を整理するStartDashというWebアプリにまとめて公開しました。支援の経験を、次の人が使える形へ変えた例です。

自社でも、最初から専用システムを作る必要はありません。案件ごとに「当初の想定」「実際に分かったこと」「判断を変えた理由」「次の担当と期限」を同じ形式で残すところから始められます。製品名や売上だけを載せた成功事例集より、次の案件が同じ迷いに直面したときに使いやすくなります。

たとえば、工場向けに作った試作品の導入が進まなかった場合、「顧客ニーズがなかった」で終えると情報が足りません。効果は認められたが設置工事の負担が大きかったのか、費用を出す部署が決まらなかったのかで、次の用途や売り方は変わります。

記録を残す目的は、失敗した人を探すことではありません。どの条件なら進められ、何が変われば再検討できるかを共有することです。顧客の秘密や個人情報は共有範囲を決めたうえで扱い、公開できる学びと非公開の資料を分けて管理してください。

自社の新規事業制度で、いま困っていることを選ぶ

近い項目を開くと、確認したい問いと本文の説明へ進めます。点数を付ける診断ではありません。

01 応募が集まらない

応募前に感じる負担や、対象の分かりにくさを確認します。

  • 募集の対象と目的は伝わっているか
  • 応募に必要な情報が多過ぎないか
  • 採択後の活動時間を確保できるか

募集と活動時間の設計を見る →

02 採択した案件が、審査の後に止まる

会議で次の検証まで決まっているかを確かめます。

  • 次に確かめる問いは具体的か
  • 実施を承認する人は決まっているか
  • 担当者と判断日は決まっているか

審査で決めることを見る →

03 発案者に仕事が集中している

担当者の頑張りではなく、足りない役割を整理します。

  • 顧客検証や開発の役割は分かれているか
  • 専門家へ相談できる経路があるか
  • 発案者と事業責任者の役割は合っているか

専門性を補う方法を見る →

04 毎回、同じ失敗や議論が繰り返される

変更や中止の理由が、次の担当者に届いているかを見ます。

  • 当初の想定と分かった事実が分かれているか
  • 判断を変えた理由が残っているか
  • 共有できる範囲を決めているか

次の案件に残す記録を見る →

05 制度を見直したいが、変更範囲を決められない

まず一案件で、どこを変えると動けるかを確かめます。

  • 何の回答を待って止まっているか
  • 今回変えるルールを一つに絞れるか
  • 結果を見直す日は決まっているか

一案件で試す手順を見る →

06 応募数や面談数だけで成果を報告している

活動量と、その活動で分かったことを分けます。

  • 制度の利用状況と案件の進展を分けているか
  • 新しく分かった顧客の事実は何か
  • 次の判断に必要な指標を選んでいるか

導入後の評価方法を見る →

NEXT STEP

次のステップ

制度を変える前に、案件が止まる原因を整理しませんか

イノベーション総研の新規事業リスク診断「Compass」では、経営と現場の認識の違いや、判断を進めるうえでの課題を整理します。まず無料診断で現在地を確認したい方、サービスの内容を確かめたい方は、以下からお進みください。

ソニーの仕組みを自社で試す3ステップ

全社の制度を一度に作り替えるより、進行中の一案件で試す方が、変更の効果と負担を確かめやすくなります。ここでは、社内公募で採択した「倉庫向け作業支援機器」が進まない架空例を使い、導入の順番を示します。

1.一案件を振り返り、何を待っているかを特定する

会議の日程、提出した資料、返ってきた指摘、その後の行動を並べます。「二週間進んでいない」だけでなく、誰から何の回答があれば動けるのかを確認しましょう。担当者の作業時間が足りないのか、顧客への連絡許可を待っているのか、必要な条件がまだ分からないのかを分けます。

架空例では、試作品の説明資料はできていますが、顧客への試用依頼が止まっていました。原因が「担当者の熱意不足」ではなく、「営業部門がどの顧客へ、どの条件で案内してよいか判断できない」ことなら、最初に直すのは募集や研修ではありません。案内する顧客、説明する範囲、試用時の対応を決める仕事です。

一案件だけの事情で全社ルールを変えないよう、他の案件でも同じ待ち時間があるかを確認します。共通する問題なら制度の見直し候補、特定の顧客や技術に限るなら案件ごとの対応として扱います。

2.変えるルールを一つ選び、担当と権限を決める

前の4つの仕組みから、止まっている原因に合うものを選びます。架空例なら、「審査で次の検証まで決める」と「必要な営業担当を支援に加える」が候補ですが、まず試用を承認する会議の出席者と決定事項を変えることに絞れます。

試す前には、案件責任者、承認する人、支援する人を明確にします。兼務でも構いませんが、同じ人が審査と支援を担う場合は、何を助言し、何を決定したのかを分けて記録します。法務や品質の確認を省くための特例にはしません。

下表は、自社の状況ごとに最初の変更を選ぶための対応表です。全部を導入するためのチェックリストではありません。

案件の停滞原因と、最初に試す制度変更
止まっている場面 最初に試す変更 次の会議で確かめること
採択されたが、担当者が活動できない 上司と活動時間・通常業務の分担を決める 決めた時間を実際に検証へ使えたか
次の検証を実施してよいか決まらない 審査で検証内容・費用・承認者・期限まで決める 担当者が承認待ちではなく、顧客の確認へ進めたか
専門知識が足りず、発案者だけで抱えている 不足する仕事を特定し、支援担当を加える 必要な助言や作業が届き、次の行動を選べたか
過去の検証や中止理由を探せない 判断を変えた事実と理由を、共通の場所へ残す 次の担当者が条件や学びを確認して使えたか

変更が決まったら、今回は変えないことも書きます。対象は一案件だけ、予算制度全体は変えない、次の会議で見直す、といった範囲があると、周辺部門も協力を判断しやすくなります。

3.次の会議で、進んだことと増えた負担を確かめる

導入後は、会議を実施したかではなく、検証が動いたかを見ます。架空例なら、試用先が決まり、条件を説明して、実際に顧客の作業を確かめられたかが確認点です。話を聞いた結果、開発しない方がよいと分かった場合も、根拠を持って次の投資を判断できたことを記録します。

同時に、担当者の負担が増え過ぎていないかを確認します。承認は速くなったが、営業担当に問い合わせが集中した、品質の確認が後回しになった、という状態なら、変更には追加の手当てが必要です。

継続するか、やり方を修正するか、元に戻すかを、あらかじめ決めた日に選びます。一案件でうまくいっても、別の事業段階へそのまま広げるとは限りません。顧客や必要な専門性が違う案件でも運用できるかを見て、対象を増やしてください。

導入後は、応募数だけでなく判断と顧客の変化を見る

応募数や参加者数は、制度が知られ、利用されているかを見る指標です。しかし、それだけでは事業化に近づいたかは分かりません。制度の運営状況と、個別案件の進展を分けて確認しましょう。

制度の評価は「参加できたか・支援が届いたか」で見る

制度運営者は、どの部署から応募があり、どこで辞退し、採択後に支援が届いたかを確認します。応募が増えても、採択者の活動時間が確保できていなければ、入り口だけが広がった状態です。支援待ちの日数や辞退理由を併せて見ると、直す場所を見つけやすくなります。

満足度も役立ちますが、好評だった研修が実務に使われたとは限りません。「研修後に顧客への質問を変えた」「審査前に未確認事項を整理できた」など、仕事で使われた場面を聞きます。毎回すべてを集計せず、今回の制度変更が解こうとした問題に絞って確認するのが現実的です。

案件の評価は「顧客の事実が増え、次を決められたか」で見る

行った活動と、その活動で分かったことを分けて報告しましょう。「5人に話を聞いた」だけでなく、「利用者は困っていたが、購入担当は優先度が低いと考えていた」と分かれば、次に会う相手や提案内容を変えられます。

初期段階では、利用場面と課題の確認が中心です。有料提供を始めた段階では、支払い、継続利用、提供費用、運営の負担も見ます。すべての案件を同じ売上目標で比べたり、顧客面談数だけで順位を付けたりすると、段階の違いが見えなくなります。

会議では「次に何を判断するか」を先に決め、その判断に必要な指標を選びます。指標の具体例は新規事業のKPIの決め方を参照してください。事業全体の進め方に戻りたい場合は、新規事業の進め方から、現在の段階に必要な作業を確認できます。

イノベーション総研では、経営と現場がどこで判断をそろえられていないかの整理を、新規事業リスク診断「Compass」で支援しています。また、候補者に実在テーマの権限と責任を段階的に委ね、経営経験者が伴走する仕組みは、組織・人材開発サービスでご相談いただけます。制度を作り直す前に、案件の判断が課題なのか、人の経験や配置が課題なのかを分けて検討してください。

ソニーの新規事業についてよくある質問

制度の対象や、事例を自社へ取り入れるときに迷いやすい点をまとめます。

Q. SAP・SSAP・Sony Acceleration Platformは別の制度ですか

A. ソニーの新規事業支援の沿革の中で使われてきた名称です。2014年にSeed Acceleration Programとして始まり、2019年にSony Startup Acceleration Program、2024年10月にSony Acceleration Platformへ名称を変更しました。現在の内容を調べる際は、最新の公式サービス情報で対象や支援範囲を確認してください。

Q. ソニーの新規事業支援は、社外の企業でも利用できますか

A. 社外企業向けの支援も提供されています。2018年10月から社外へ展開し、現在は事業開発、組織・人材開発、他社との連携などを支援しています。利用条件や費用は案件によるため、自社の事業段階と必要な支援を整理して公式窓口に確認してください。

Q. 自社でもクラウドファンディングを使うべきですか

A. 一律に使う必要はありません。個人が購入する製品の反応を得る方法にはなりますが、法人向けなど、利用者と購入を決める人が異なる事業では、個別の商談や試用で確かめる方が適する場合があります。誰のどんな判断を確かめたいかに合わせて方法を選びます。

Q. 少人数の会社でも、同じような制度は必要ですか

A. 専任部署や大規模な公募制度から始める必要はありません。一案件について、次に確かめること、決める人、担当者、使える時間と費用を明確にするところから試せます。記録や会議を増やし過ぎず、今の人数で続けられる範囲に絞ってください。

Q. 新規事業は、成長したら別会社にすべきですか

A. 別会社にすることが常に適切とは限りません。既存の販売網や技術を使う利点と、独自に人を採用したり外部と組んだりする必要性を比べます。独立そのものではなく、顧客への提供や成長を妨げている制約を減らせるかで検討します。

まとめ|まず一案件の「次に進めない理由」から直す

ソニーの新規事業から学べるのは、製品のアイデアだけではありません。提案を顧客に見せる経路、検証を支える人、成長に合わせた体制変更、経験を次へ渡す仕組みにも注目してください。

イノベーション総研は、応募を増やす前に、採択された案件が検証と判断へ進めるかを確かめることが大切だと考えます。制度の名称をそろえるより、目の前の案件が止まる理由に合う変更を一つ選ぶ方が、目的が明確になります。

次の会議には、進行中の一案件について「最後に分かった顧客の事実」「いま決まっていないこと」「誰がいつ判断するか」を持ち寄ってください。自社では、良い案が足りないのでしょうか。それとも、ある案を次へ進める条件が決まっていないのでしょうか。

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採択した案件が進む仕組みを、一案件から整えたい方へ

応募を増やすべきか、審査や伴走のやり方を変えるべきか。イノベーション総研では、事業の課題と組織の課題を分け、今の体制で先に取り組むことを整理します。制度全体の作り直しが決まっていない段階からご相談いただけます。

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