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東京海上アセットと日本工営、ブラジルで下水汚泥のバイオ炭事業を推進

ニュースの要点

東京海上アセットマネジメントと日本工営は2026年10月2日、ブラジルで下水汚泥を使ったバイオ炭とカーボンクレジットの事業を本格的に進めると発表しました。サンパウロ州の上下水道事業者SABESPをパートナーとし、汚泥の供給を受けます。

汚泥を炭化して製造したバイオ炭を農地の土壌改良に使い、炭素を長期間貯留する価値をクレジットとして販売するモデルの確立を目指します。汚泥処理、農地利用、脱炭素を組み合わせる計画です。

2025年度には小規模実証で成分や品質、農地利用とクレジット創出の可能性を確認したと説明しています。量産規模や認証、販売契約、投資額は今回の発表では示されていません。

ニュース出典: 東京海上アセットマネジメント/原題「東京海上アセットならびに日本工営、ブラジルでの下水汚泥を活用した「社会課題解決型バイオ炭カーボンクレジット創出プロジェクト」を本格開始」/2026-10-02/発表本文


イノベーション総研の考察

汚泥処理、土壌改良、炭素貯留は異なる顧客の課題

下水処理を進めると、処理過程で発生する汚泥をどう扱うかという課題が残ります。今回の原典は、ブラジルの衛生インフラ整備に伴う汚泥処理と、農地の土壌改良の必要性を背景として挙げています。

バイオ炭は、有機物を炭化し、炭素を比較的安定した形にするものです。この事業では、汚泥の供給者、土壌改良材の利用者、炭素貯留の価値を買う企業という、異なる立場の関係者をつなぐ必要があります。

資源循環の事業は、複数の社会的価値を、それぞれの利用者が受け入れる条件へ落とし込む必要があります。

イノベーション総研は、一つの素材に複数の価値を見いだす点に注目します。ただし、それぞれが何に費用を払い、どの条件なら使うかは異なります。社会課題を三つ並べるだけでは、三つの収益源が成立するとは言えません。

実証で品質を確かめた後に、販売までの道筋が残る

両社は、2025年度の実証でバイオ炭の成分・品質を分析し、農地利用やクレジット創出の可能性を確認したと説明しています。今回の進展は、その結果を受けて製造から販売までのモデル確立へ進むことです。

実証で素材を作れたことと、継続して売れることは別です。農地での利用条件を満たすか、必要な品質を毎回そろえられるか、炭素貯留の量をどの方法で確認するかが、その先の判断になります。

素材の実証に成功した後は、利用条件と炭素価値の確認方法をそろえて販売を検証します。

クレジットの認証方法や売却実績は今回の資料にありません。「創出・販売を目指す」を「販売済み」と読み替えないことが重要です。次段階への基準は、設備の完成ではなく、利用者と認証側が受け入れる証拠をそろえることに置くべきでしょう。

金融、工学、原料供給の役割を収支と責任へつなぐ

この計画は、資産運用会社の東京海上アセット、工学を担う日本工営、現地の下水事業者SABESPを組み合わせています。原料が発生する現場から、製造、利用、資金の仕組みまでを考えるうえで補完的な構成です。

一方、今回の原典では、設備を誰が所有するか、品質上の問題に誰が責任を持つか、クレジットの権利をどう分けるかは明らかではありません。役割を持ち寄ることと、事業の責任や収益を配分することは別の設計です。

複数社の事業化では、技術と原料の役割分担に加え、費用・責任・収益の配分を決めます。

自社で複数社の資源循環事業を検討する担当者の方も、技術と顧客の組み合わせだけでなく、費用とリスクの負担を並べて確認してください。売上が生まれるまでに誰が資金を負担するかが曖昧だと、実証の後に進めなくなる可能性があります。

複数の収益を足す前に、共通する費用を一度数える

バイオ炭事業には、汚泥の運搬、乾燥、炭化、品質分析、農地への運送、炭素貯留の確認などの費用が生じます。素材販売とクレジット販売の両方を見込む場合でも、同じ工程の費用や価値を重複して数えないことが重要です。

現地で原料が安定して得られても、農地が遠ければ輸送費は増えます。炭化や乾燥に使うエネルギーも、利益と環境効果に影響します。今回の発表では、量や場所、費用が示されていないため、採算や正味の削減効果は計算できません。

資源循環の採算は、複数の収益源を足すだけでなく、物流・品質・認証までの総費用で確かめます。

次に確認したいのは、原料と利用先の条件、製造量、認証の枠組み、販売契約です。自社へ応用する場合は、どの収益がなくても続けられるかを試算すると、まだ不確かな価値に依存しすぎていないかを点検できます。

まとめ

今回の取り組みは、小規模実証から、バイオ炭の利用と炭素価値の販売をつなぐ段階へ進むものです。事業化の判断では、原料と利用先、品質と認証、責任と収支を一つの仕組みとして確認することが重要になります。

執筆:イノベーション総合研究所

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