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子育て支援は制度だけではない|ベビーテック8社と新規事業の入口

子育て支援は、制度の案内だけで終わらない。
企業は、家庭・保育・自治体・職場のどこを支えられるか。

結論は、分断された情報、業務、場所、予算のつなぎ目を設計できるかで決まります。国内外8社と4つの参入方法から、事業の入口を整理します。

この記事の結論

子育て支援の商機は、単独のガジェットより、家庭・保育施設・自治体・医療・勤務先のつなぎ目にあります。

  • 制度、保育DX、家庭向け、職場支援を分けて市場を見ます。
  • 国内5社・海外3社を、顧客接点と収益モデルから解説します。
  • 4つの参入方法と、安全・データ・短期利用の懸念を示します。

「子育て支援」と検索すると、児童手当や保育、一時預かりなどの制度情報が多く見つかります。どれも生活に欠かせません。一方、企業の新規事業という視点では、制度の外側と内側をつなぐサービスにも目を向ける必要があります。

たとえば、園の連絡帳をデジタル化する。離れた家族で育児記録を共有する。乳児の睡眠を見守る。外出先に授乳とおむつ替えの個室を置く。これらも、子育ての負担や不安を減らす支援です。こうした技術やサービスは「ベビーテック」と呼ばれます。

この記事では、制度の紹介だけで終わらせません。国内外8社の具体例を追い、どこで利用者の負担が減り、誰が費用を払い、どこに責任が残るのかを整理します。結論を先に言えば、子育て支援の新規事業は、便利な機能を増やすだけでは成立しません。家庭、保育施設、自治体、医療、勤務先の間にある「つなぎ目」を設計できるかが重要です。

目次

子育て支援とは何を指すのか

まず、子育て支援を一つの市場として見ないことが大切です。制度、施設、家庭向けサービス、職場の両立支援では、利用者も支払者も違います。

こども家庭庁は、子ども・子育て支援制度を、幼児期の教育・保育、地域の子育て支援の量と質を高める仕組みと説明しています。対象は保育施設を使う家庭だけではありません。在宅で子育てをする家庭も含まれます。

事業の視点では、子育て支援を次の四つに分けると理解しやすくなります。

領域 主な利用者 主な支払者 代表的な課題
公的な制度・地域支援 妊産婦、子ども、保護者 国、自治体、利用者 情報が届かない、申請が難しい、地域差がある
保育・教育の業務支援 保育者、施設、保護者 施設、自治体 記録、連絡、請求、安全確認の負担が大きい
家庭向けベビーテック 保護者、乳幼児、家族 主に家庭 睡眠、見守り、記録、知育の負担と不安がある
職場の両立支援 子育て中の従業員 企業、健康保険組合 離職、休職、復職不安、仕事と育児の分断

この整理で重要なのは、「使う人」と「払う人」を分けることです。保育ICTを使うのは保育者でも、契約は園や自治体が行います。福利厚生を使うのは従業員でも、企業が費用を負担します。新規参入では、利用価値と予算の出どころを別々に確かめなければなりません。

子育て支援市場を制度・施設・家庭・職場の四つに分けた図
図1|子育て支援を、制度・地域、保育DX、家庭向けベビーテック、職場の両立支援に分類。こども家庭庁、経済産業省、各社の公式情報をもとにイノベーション総研作成。

なぜ今、家庭と保育現場にテクノロジーが必要なのか

出生数が減っているなら、子育て支援の事業機会も小さくなる。そう考えがちです。しかし、人数だけを見ても実態はつかめません。支援を担う人手が不足し、家族の形が変わり、安全や記録に求められる水準が上がっているからです。

厚生労働省の2025年人口動態統計では、出生数の減少が続いています。その一方で、共働き家庭では、育児情報を夫婦や祖父母、保育施設とすぐ共有する必要があります。保育現場では、子どもと向き合う仕事に加えて、登降園、計画、日誌、保護者連絡、請求、安全確認が重なります。

こども家庭庁の省力化投資促進プランでは、保育者が事務系業務に月平均63時間を使い、業務時間の33%を占めるという調査が紹介されています。だから、テクノロジーの役割は「保育者を減らすこと」ではありません。転記や確認の手間を減らし、人にしかできない観察、対話、判断へ時間を戻すことです。

家庭でも同じです。育児記録アプリが便利なのは、記録そのものが目的だからではありません。次に世話をする人が、最後の授乳や睡眠の時間をすぐ理解できるからです。見守り機器も、親の代わりになるものではありません。見逃しへの不安を補い、必要なときに人が確認できる状態を作ります。

子育て支援市場は少子化でも縮まないのか

市場を見るときは、出生数と一緒に「一人あたり支出」「公的予算」「施設DX」「継続課金」を見ます。広い市場規模だけで参入を決めると、顧客の実数を読み違えます。

政府は、こども未来戦略の加速化プランとして3.6兆円規模の政策パッケージを進めています。2026年度からは、こども誰でも通園制度の全国展開など、支援の対象と接点が広がりました。これは民間企業に自由な市場が生まれるという意味ではありません。制度要件、自治体調達、現場運用に合わせた製品が求められるという意味です。

保育DXには、さらに明確な普及目標があります。こども家庭庁の取組方針では、指導計画・記録、登降園管理、保護者連絡、請求などの基本4機能をすべて導入する施設の割合を、2026年度に20%以上、2029年度に50%以上としています。午睡センサーは同じ期間に30%以上から60%以上を目指します。

ここから読み取れるのは、単にアプリの利用者を増やす市場ではないということです。施設の業務、行政手続き、安全管理、家庭との連絡をつなぐ市場です。一方で、家庭向けハードウェアは、子どもの成長とともに短期間で使わなくなります。売り切りだけでは顧客獲得費を回収しにくいため、レンタル、再整備、月齢に応じた商品展開、ソフトウェア課金が必要になります。

子育て支援市場を動かす四つの需要を示した図
図2|出生数だけでは見えない四つの需要。こども家庭庁、厚生労働省、主要企業の公式情報をもとにイノベーション総研作成。

ベビーテックの業界構造を4層で見る

ベビーテックは、育児に使うデジタル製品の総称です。見守りカメラだけでなく、育児記録、保育ICT、知育、相談、施設設備まで含みます。

業界は、次の四つの層に分けられます。

  1. センサー・機器:カメラ、体動センサー、スマートベッド、授乳設備
  2. データ・AI:睡眠、泣き声、成長、写真、記録の整理と解析
  3. 家庭向けサービス:育児記録、家族共有、知育、食品、レンタル
  4. 施設・社会インフラ:保育ICT、自治体連携、福利厚生、公共空間

単独の機器は価格競争に入りやすい傾向があります。反対に、施設の業務手順に深く入り、行政や保護者との連絡までつなぐサービスは、切り替えの負担が大きくなります。家庭向けでも、月齢が変わるたびに次の商品や情報が届く仕組みを持てば、利用期間を延ばせます。

ただし、データを持てば自動的に強くなるわけではありません。乳幼児の映像、生体情報、発達記録は、とても慎重に扱うべき情報です。取得する目的、保存期間、共有相手、削除方法を説明できて初めて、データが信頼につながります。

国内の子育て支援企業5社は何を変えたか

国内事例の面白さは、家庭向けの便利機能だけではありません。保育施設、自治体、家族、公共空間という別々の接点を、各社が異なる方法で押さえている点にあります。

コドモン|園の事務を、保護者・自治体までつなぐ

コドモンは、連絡帳、登降園、請求、帳票、写真、午睡チェックなどをまとめた保育・教育施設向けICTです。同社の公式情報では、2026年9月1日時点で25,548施設、760自治体の7,006公立施設に導入されています。

強みは、機能の多さだけではありません。毎日の登降園や連絡という利用頻度の高い仕事から入り、請求や帳票へ広げられることです。自治体が選ぶ場合は、一施設だけでなく地域の公立施設へ一括導入できます。新規参入企業にとっては、園向けの単機能を直接販売するより、既存の保育ICTと連携する方が現場へ届きやすい場合があります。

ユニファ|安全確認と記録を一つの流れにする

ユニファの「ルクミー」は、登降園、連絡帳、写真、午睡チェックなどを提供します。2026年8月の同社発表では、シリーズの累計導入数は20,000件超、導入自治体は約70です。

特に分かりやすいのが午睡チェックです。センサーが体動を検知し、アプリが体の向きを記録します。ただし、機械に任せて人が見なくてよいわけではありません。人の目による確認を補い、記録の手間と心理的な負担を減らす設計です。2025年には、写真や日々の記録から保育ドキュメンテーション作成を助ける「すくすくレポート」の先行利用が500施設を超えました。安全機器から、保育の質を支えるAIへ広げている点が特徴です。

MIXI「みてね」|写真共有を家族の習慣にした

「家族アルバム みてね」は、親が撮った写真や動画を、招待した家族だけで共有できるサービスです。MIXIによると、利用者は約3,000万人、2026年5月時点の月間利用者は約1,200万人です。

写真保存だけなら代替手段は多くあります。それでも使われる理由は、祖父母を含む家族の間に、見る、コメントする、振り返るという習慣を作ったからです。子育て支援では、問題を解決する機能だけでなく、家族の参加を自然に増やす仕組みも価値になります。利用者の接点を持つことで、フォトブックや関連商品へ広げられる点も、継続事業として参考になります。

ぴよログ|育児記録を「引き継ぎ」に変えた

ぴよログは、授乳、ミルク、おむつ、睡眠などを記録し、パートナーや家族とリアルタイムに共有できるアプリです。授乳タイマー、グラフ、PDF出力、音声入力も備えています。

このサービスの本質は、記録のデジタル化ではありません。夜間に世話を交代するとき、直前の状況を説明し直さなくてもよいことです。健診や病院で、普段の様子を振り返る助けにもなります。さらに同社は、保育園やベビーシッターと必要な記録だけを共有する「ぴよサポ」を提供しています。家庭内で始まったデータを、支援者との連携へ広げた例です。

ファーストアセント|育児データを製品と支援事業へ広げる

ファーストアセントは、育児記録アプリ「パパっと育児」、泣き声解析、睡眠支援機器などを展開しています。加えて、ベビーテックやヘルステックの新規事業開発、大企業との共同開発も支援します。

一つのアプリだけを売るのではなく、育児データの知見を、IoT、解析、ベビーシッター、法人との共同開発へ広げている点が重要です。子育て領域へ初めて入る大企業は、利用者との接点や乳幼児向けUXの知見を持っていません。専門企業と組めば、ゼロから信頼とデータを作る時間を短くできます。

海外3社のベビーテックはどう稼ぐか

海外事例からは、高額な機器を売るだけではなく、医療機器としての信頼、月額課金、レンタル、月齢別の継続提案を組み合わせる姿が見えます。

Owlet|見守り機器を小児ヘルス基盤へ変える

Owletは、足首に装着する乳児モニター「Dream Sock」などを提供します。同社はFDAの認可・クリアランスを事業の土台とし、家庭向け販売に加えて医療チャネルを広げています。

2025年の売上高は1億570万ドルで、前年から35.4%増えました。有料サービス「Owlet360」は2025年末までに11万人を超える有料会員を持ちました。機器の販売後も、睡眠や健康情報を継続的に提供することで収益を重ねています。ただし、医療に近い主張ほど、規制対応、臨床的な根拠、誤警報への説明責任が重くなります。

Happiest Baby「SNOO」|高額ベッドを複数の払い方で届ける

SNOOは、赤ちゃんの泣き声に応じて揺れと音を調整するスマートベッドです。専用のおくるみを本体に固定し、睡眠中の仰向け姿勢を保つ仕組みを持ちます。2023年には、仰向け睡眠姿勢を保つ機器としてFDAのDe Novo認可を受けました。

製品価格が高いため、購入だけでなくレンタル、認定中古品、企業の福利厚生という届け方を用意しています。利用期間が短い乳児用品では、「所有させる」以外の選択肢が普及を左右します。一方、再利用では清掃、部品交換、事故時の責任、二次流通後のソフトウェア利用を設計する必要があります。

Lovevery|月齢に合わせて次の価値を届ける

Loveveryは、発達段階に合わせた玩具や本、遊び方のガイドを定期配送する「Play Kits」を展開します。出生から5歳までを対象とし、乳児期は2か月ごと、その後は3か月ごとにキットが届きます。

親が毎回「今の月齢には何を選ぶべきか」と調べる負担を減らし、発達に合う選択肢をまとめて届けます。玩具の品質だけでなく、選定、解説、アプリ、保護者向け講座を一つの体験にしています。子どもの成長で解約されやすい市場では、年齢の変化そのものを次の商品提案に変える設計が有効です。

国内外8社の子育て支援事例を顧客接点と収益モデルで整理した図
図3|国内外8社の主な顧客接点と収益モデル。各社の公式情報をもとにイノベーション総研作成。

8社の事例から見える、事業が続く四つの条件

企業事例を並べるだけでは、自社の判断には使えません。共通する条件を、誰に売るか、どう使われるか、いつまで続くか、誰が責任を負うかに分けます。

第一は、日常の流れに入ることです。連絡帳、登降園、授乳、写真、睡眠のように、毎日発生する行動へ入ると利用が習慣になります。反対に、困ったときだけ開くアプリは、継続率を高めにくくなります。

第二は、支払者を増やすことです。家庭だけに売るのではなく、施設、自治体、勤務先、保険、医療機関へ価値を説明します。ただし、一つの製品をそのまま横展開できるとは限りません。自治体には公平性と調達要件、企業には離職や復職への効果、医療には安全と根拠が必要です。

第三は、短い利用期間を乗り越えることです。レンタル、再整備、月齢別商品、きょうだい利用、ソフトウェア課金などを組み合わせます。乳児期の数か月しか使わない機器を、売り切りだけで成立させるのは難しいからです。

第四は、安心を広告文ではなく仕組みにすることです。利用規約や免責を書くだけでは足りません。誤検知が起きたときの表示、専門職につなぐ条件、事故時の連絡、データ削除、機器回収を運用として決めます。

子育て支援事業を4つの判断に分ける

参入:既存顧客と安全運用を持つ

自社の施設網、法人営業、物流、データ基盤を使える入口を選びます。

提携:技術はあるが、現場知見や信頼がない

保育ICT、自治体、専門職、物流、保険と役割を分けます。

待機:制度、調達、認可の条件が動いている

周辺機能や共同研究から入り、本導入の条件を確認します。

見送り:使う人と払う人を説明できない

機能開発を止め、課題と予算経路を確認し直します。

新規事業で狙える4つの参入方法

子育て領域に参入する方法は、アプリ開発だけではありません。自社がすでに持つ顧客、拠点、データ、製造、保険、法人営業を使える位置を選びます。

1. 保育DXの周辺機能から入る

写真整理、シフト、給食、決済、翻訳、採用、研修など、保育ICTの周辺には未解決の仕事があります。新しい基幹システムを一から売るより、既存システムと連携し、特定業務の時間を減らす方が導入しやすい場合があります。

顧客は保育施設や自治体です。売上は月額利用料、自治体契約、連携機能の利用料が中心です。提携先として、保育ICT企業、自治体、保育事業者が必要です。懸念は、年度予算、入札、個人情報、現場のIT環境、サポート負担です。

2. 家庭と支援者をつなぐデータ連携に入る

家庭の睡眠・食事・発育記録を、保育施設、健診、医療、相談支援へ必要な範囲だけ渡す仕組みです。ぴよログの共有機能のように、利用者が共有相手と項目を選べる設計が前提になります。

顧客は家庭だけでなく、自治体や医療・保育事業者です。売上は法人・自治体契約、追加機能、連携基盤の利用料が考えられます。最大の懸念は、情報を集めすぎることです。診断を自動で行うのか、受診や相談を勧めるだけかで、責任と規制が変わります。

3. 高額用品をレンタル・再整備でサービス化する

ベビーベッド、ベビーカー、見守り機器、知育用品などを、所有ではなく利用で届けます。製品メーカー、物流、洗浄・修理、保険を組み合わせる事業です。

短い利用期間という弱点を、回収と再利用の収益機会へ変えられます。一方、稼働率が低いと在庫と物流費が重くなります。衛生基準、点検記録、部品寿命、事故時の補償まで設計できる企業に向きます。

4. 企業の両立支援をB2B2Cで提供する

育児相談、ベビーシッター、家事支援、見守り機器、復職支援を、企業の福利厚生として提供します。使うのは従業員、費用を払うのは企業というB2B2Cモデルです。

企業へは「子育て世帯に喜ばれる」だけでなく、休職、離職、復職、欠勤、管理職負担にどう影響するかを示します。リスキリングや働き方の施策と同じく、導入数ではなく利用率と行動変化を追う必要があります。人事データと育児データを安易に結びつけないことも重要です。

子育て支援で狙える四つの新規事業参入方法を示した図
図4|保育DX周辺、データ連携、用品のサービス化、企業向け両立支援を比較。8社の事例と専用調査をもとにイノベーション総研作成。

子育て支援へ参入する前に押さえる6つの懸念

社会課題が大きいから、良いサービスなら広がる。そうとは限りません。子育て支援は、利用者の安全と感情、行政制度、現場運用が重なるため、一般的な消費者向けサービスより慎重な設計が必要です。

安全を自動化しすぎる

見守りセンサーやAIは、人の確認を補う道具です。「これがあれば見なくてよい」と受け取られる表現は避けます。誤検知と見逃しの両方を想定し、誰に、どの強さで、何を通知するかを決めます。

不安を増やしてしまう

数値やアラートが増えるほど、親が安心するとは限りません。小さな変化を毎回知らせると、確認行動が増えます。正常範囲、様子を見る条件、相談すべき条件を分け、表示を人の行動につなげます。

現場の二重入力が残る

保育施設では、新しい画面を追加しても、紙や自治体様式への転記が残れば負担は減りません。導入前に、現在の仕事を観察し、なくせる記録と残すべき確認を決めます。BPOの設計と同じく、ツールより先に業務を分解する必要があります。

自治体の実証で止まる

経済産業省のBaby-Tech調査では、実証から本導入につながりにくいこと、自治体の意思決定が長いこと、機能数や価格だけで比較されやすいことが事業者の課題として挙げられました。実証前に、本導入の予算、契約主体、調達時期、評価指標を合意します。

利用期間が短く、広告費を回収できない

乳児向け製品は、必要な期間が短いものがあります。顧客を獲得しても数か月で解約されれば、広告費やサポート費を回収できません。次の月齢へ移る商品、法人チャネル、紹介、レンタル、再利用を組み合わせます。

効果を大きく言いすぎる

「発達の遅れが分かる」「事故を防げる」「睡眠が改善する」などの表現は、根拠と規制の確認が必要です。観察を支援するのか、診断するのか、治療効果を示すのかを分けます。医療に近づくほど、専門家、臨床評価、認可、継続監視が必要です。

データ活用で守るべき責任

子育て支援では、データ活用より前に、データを集めない判断が重要です。便利そうだから取るのではなく、利用者の次の行動に必要な情報だけを扱います。

最低限、次の点を決めます。

論点 決めること 避けたい状態
取得目的 何の支援に使うか 将来使うかもしれない情報まで集める
同意 誰が同意し、いつ撤回できるか 保護者、施設、子どもの扱いが曖昧
共有 誰にどの項目を渡すか 家庭の記録が勤務先に見える
保存 期間、場所、削除方法 解約後も無期限で残る
AI判断 推奨、検知、診断の境界 根拠の不明な判定を断定する
事故対応 誤通知、漏えい、機器不良への対応 ベンダー間で責任が押し合いになる

とくに、家庭向けアプリと企業福利厚生を組み合わせる場合は注意が必要です。企業が契約費を払っても、従業員個人の相談内容や子どもの健康情報を閲覧できる設計にしてはいけません。企業へ返すのは、本人を特定しない利用状況や全体傾向に限るのが基本です。

NEXT STEP

次のステップ

機能より先に、利用者・支払者・責任を決める。

家庭、保育施設、自治体、勤務先のどこに入るかを分け、自社資産が生きる位置を選びます。

参入・提携・待機・見送りをどう判断するか

魅力的な事例を見た直後は、自社でも同じものを作りたくなります。しかし、子育て支援は信頼を作るまでに時間がかかります。自社で持つべき役割と、組むべき役割を分けます。

判断 向いている状態 次の打ち手
参入 既存顧客、毎日の接点、支払者、安全責任が明確 一つの業務・月齢・地域に絞って提供する
提携 技術や販路はあるが、育児知見・施設網・臨床根拠がない 保育ICT、専門職、自治体、物流と役割を分ける
待機 制度、調達、認可、データ連携の条件が動いている 共同研究、周辺機能、既存サービス連携から学ぶ
見送り 誰の何分を減らすか、誰が払うかを説明できない 機能開発を止め、課題と予算を確認し直す

参入に向くのは、すでに保育施設へ販売している企業、全国の設置拠点を持つ企業、回収・整備網を持つ企業、企業人事との契約基盤を持つ企業です。提携に向くのは、センサーやAIは持つが、乳幼児領域の現場知見を持たない企業です。

反対に、家庭向けアプリを作れば大きな市場へすぐ届くという前提なら、いったん待つべきです。顧客獲得、短い利用期間、問い合わせ、安全対応を含めた採算を出せないまま開発を始めると、利用者が増えるほど運用負担が膨らみます。

新規事業を相談したい方へ

子育て支援では、社会的な意義と事業性を同時に考える必要があります。制度の対象でも、利用者に届かなければ価値は生まれません。便利な機能でも、現場に二重入力が残れば使われません。

イノベーション総合研究所では、家庭、保育施設、自治体、勤務先のどこを顧客とするかを整理し、自社資産が生きる参入位置を設計します。市場規模の確認だけでなく、企業事例、顧客業務、提携先、規制、安全責任、収益モデルまで一つの判断材料にまとめます。

構想がまだ粗い段階でも構いません。新規事業の無料診断では、顧客、課題、提供価値、実行体制の現在地を確認できます。候補テーマの比較や、参入・提携・待機・見送りの判断を具体化したい場合は、お問い合わせからご相談ください。

子育て支援とベビーテックのよくある質問

制度と民間サービスの違い、参入先、安全についてよくある疑問をまとめます。自社の事業条件に置き換えながら確認してください。

Q. 子育て支援とベビーテックは同じ意味ですか?

A. 同じではありません。子育て支援は、給付、保育、相談、地域支援、職場支援などを含む広い概念です。ベビーテックは、そのうち妊娠、出産、乳幼児期の育児を技術で支える製品・サービスを指します。

Q. 少子化でも子育て支援市場へ参入できますか?

A. 可能性はあります。ただし、出生数の減少を無視してはいけません。保育現場の省力化、一人あたりの負担、安全、法人・自治体予算など、人数以外の需要を確認し、短い利用期間でも成立する収益モデルを設計します。

Q. 子育て支援の新規事業はB2CとB2Bのどちらが向いていますか?

A. 自社の資産によります。家庭との強い接点があればB2C、施設営業や自治体対応の力があればB2B・B2G、企業人事との接点があればB2B2Cが考えられます。利用者と支払者を分けて選ぶことが重要です。

Q. ベビーテックで最も注意すべきことは何ですか?

A. 安全とデータです。見守り機器やAIの限界を明確にし、人の確認を残します。乳幼児の映像、生体、発達記録は、取得目的、共有相手、保存期間、削除方法を説明できる範囲で扱います。

Q. 保育DXでは新しい企業にも機会がありますか?

A. あります。ただし、基幹システムへ正面から参入するだけが方法ではありません。既存の保育ICTと連携し、写真、シフト、翻訳、決済、研修、安全、自治体手続きを改善する周辺機能から入る方法もあります。

まとめ|子育て支援は「つなぎ目」に事業機会がある

子育て支援は、制度だけでも、便利な育児アプリだけでもありません。家庭、保育施設、自治体、医療、勤務先が、それぞれの役割を持ちながら支える仕組みです。

国内外8社を見ると、事業が続く条件ははっきりしています。毎日の行動に入り、家庭以外の支払者を持ち、子どもの成長で利用が終わる問題を乗り越え、安全とデータの責任を運用に落としています。

新規参入では、機能を考える前に、誰のどの負担を減らすのか、誰が費用を払うのか、既存システムとどうつなぐのかを決めます。自社だけで信頼を作るのが難しければ、保育ICT企業、自治体、専門職、物流、保険との提携が有効です。

子育て支援の商機は、単独のガジェットより、分断された情報、業務、場所、予算をつなぐところにあります。そのつなぎ目を自社が持つ資産で埋められるか。そこから参入判断を始めるのが現実的です。

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顧客、予算、現場業務、提携先、安全責任を整理し、参入・提携・待機・見送りの条件へ落とします。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

主な外部出典

こども家庭庁、厚生労働省、経済産業省、コドモン、ユニファ、MIXI、ぴよログ、ファーストアセント、Owlet、Happiest Baby、Loveveryの公式情報。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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