新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

JR東海、小田原駅でシェアサイクル開始へ 荷物預かりも実証

ニュースの要点

JR東海は2026年9月28日、OpenStreet、小田原市観光課と連携し、小田原駅を拠点とする観光サービスを拡充すると発表しました。10月3日から駅西口でシェアサイクルを始めます。駅構内では、小田原市が荷物預かりと観光案内の実証実験を行います。

鉄道を降りた後の移動手段を増やし、大きな荷物を持って移動する負担を減らすことが狙いです。小田原市は、駅が箱根方面への経由地となり、市内への立ち寄りにつながりにくい点を課題に挙げています。

シェアサイクルは「HELLO CYCLING」の11ラックを設けます。荷物預かりと観光案内は、2026年10月と2027年3月の金・土・日曜日と祝日の計28日間、午前10時から午後3時まで実施する予定です。荷物は1個1,000円で、東海道新幹線の利用者は100円引きになります。荷物預かりの運営はecbo、観光案内は小田原市観光協会が受託します。

ニュース出典:東海旅客鉄道/原題:【JR東海】小田原駅を拠点とした観光利便性向上施策を実施(2026年9月28日)。


イノベーション総研の考察

駅に多くの人が降りても、周辺の店や観光地へ立ち寄るとは限りません。今回の発表では、移動手段、手荷物、行き先の情報という三つの不便を同じ場所で扱います。新しい観光施設を建てるのではなく、既にいる利用者が街へ出やすい状態をつくる実証です。

自転車を置くだけでは、荷物を持つ人は動きにくい

JR東海は、大きな荷物を持つ利用者への対応と、駅から先の交通を課題に挙げています。小田原市側の課題は、駅を通る人を市内の回遊へつなげることです。駅の利便性と地域の消費という異なる目的を、一連の利用行動としてつないでいます。

たとえば、近くに自転車があっても、スーツケースを持ったままでは利用しにくくなります。荷物を預けられても、限られた時間でどこへ行けるか分からなければ、駅で待つ選択になるかもしれません。

これは今回の効果が実証済みだという意味ではありません。既存のシェアサイクルと預かりサービスを組み合わせたときに、単独で提供する場合には動かなかった人が街へ出るかが、確かめたい仮説になります。

顧客が動かない理由は、商品そのものではなく、利用の前後に残る手間にある場合があります。

既存サービスを組み合わせ、何に料金を払うかを試す

シェアサイクルはOpenStreetの既存サービスを使い、荷物預かりはecboへ委託します。駅という場所と既存の運営機能を組み合わせるため、各社がすべてを新しく開発する取組みではありません。

荷物預かりは1個1,000円です。無料の実証と異なり、支払ってでも荷物を預けたい人がどれだけいるかを見る材料になります。ただし、有料で利用されたことだけで、運営費を賄えると判断することはできません。

確認したいのは利用件数に加え、受付や返却の対応時間、保管場所の負担、予約と当日受付の比率などです。これはイノベーション総研が提案する評価項目で、公表された実証の数値目標ではありません。

既存サービスを組み合わせる新規事業でも、顧客の便利さだけでなく、複数の事業者が無理なく運営できるかを同時に確かめる必要があります。

有料実証では、利用件数とともに、受付・保管・返却に必要な仕事を測り、採算を判断します。

「預かった件数」と「市内を回った人数」は分けて測る

今回の目的は荷物を預かること自体ではなく、市内観光の利便性を高めることです。預かり件数が増えても、その人たちが別の地域へ移動しただけなら、小田原市内の回遊が増えたとは言えません。

そこで、利用者がどこへ向かい、どれくらい滞在したかを、負担の小さいアンケートなどで確かめる方法が考えられます。荷物を預けた人と自転車を利用した人を、すべて同一の利用者だと見なさないことも重要です。

実証は10月と翌年3月に行われます。季節や天候、周辺イベントによって利用は変わるため、一方の月の好調さだけを通年の需要へ広げるのは慎重に考える必要があります。

担当者の方が複数サービスを組み合わせる場合も、各サービスの利用数と、最終的に起こしたい顧客の行動を別々の指標にします。数字のどこまでが自社の施策で変わったかを説明しやすくなります。

実証の成果は、個々のサービスの利用数だけでなく、目的とした顧客の行動が変わったかで測ります。

常設化を決める前に、時間と運営費の制約を確かめる

荷物預かりの実施時間は午前10時から午後3時までです。自転車が利用できても、預けた荷物を受け取る時刻に合わせて戻る必要があります。サービスごとの利用時間が、観光客の過ごし方に合うかも実証で確認したい点です。

常設化へ進む次の判断では、有料需要がどの時間帯にあり、その需要を満たすためにどれだけ人員と場所が必要かを見ます。利用時間を延ばせば便利になっても、運営費が収入を大きく上回る場合があります。

今回の発表では、実証後の常設化基準や費用分担は示されていません。28日間の結果と、その後に利用日・時間・場所をどう見直すかが次の観測点です。ほかの駅へ広げるなら、荷物を持つ利用者の多さや近隣の目的地など、小田原と同じ条件があるかも確かめる必要があります。

常設化は、利用者が望む時間と、その時間を支える運営費の両方を確かめて判断します。

まとめ

小田原駅の取組みは、移動手段と手荷物、観光情報を組み合わせ、市内へ立ち寄る障害を減らす試みです。有料利用の需要、実際の回遊、運営の負担を分けて測ることで、常設化や別拠点への展開を判断しやすくなります。

関連記事:AGIBOTと長隆のテーマパーク常設ロボット運用 / メニコン・シード・福山通運の共同配送

執筆:イノベーション総合研究所

CONTACT

お問い合わせ

利用の前後にある不便を、一緒に減らす

顧客の行動を分け、複数サービスを組み合わせた実証の指標を設計します。

この記事をシェアする