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規制のサンドボックス制度とは?活用事例と新規事業での使い方

規制のサンドボックス制度は、新しい技術やビジネスモデルを限られた条件で実証し、そのデータを規制の見直しや事業化につなげる仕組みです。「規制があって試せない」と感じる新規事業にとって、検討する価値のある選択肢になります。

ただし、認定されれば、すべての規制が免除されるわけではありません。実証できる条件と、事業として続けられる条件を分けて考えることが重要です。

本記事では、公的資料を基に、制度の違い、2つの活用事例、相談から実証までの手順を解説します。さらに、イノベーション総研の888名調査と長尾のPoCに関する見解から、認定をゴールにせず投資判断へつなげる準備を整理します。最後の6項目のメモを使えば、自社が何を確かめたいのかを相談前にまとめられます。

この記事のポイント

  • 制度は規制を無視するためではなく、新しい方法を試す条件と証拠を整えるために使う
  • 適用の有無を知りたい場合と、実証データを得たい場合で制度を選び分ける
  • 認定後も、顧客の購入条件と社内の投資判断は別に確認する
  • 相談前に6項目を整理し、未確認の欄を窓口への質問に変える

目次

規制のサンドボックス制度とは、実証データで規制の見直しを進める仕組み

規制のサンドボックス制度は、新しい技術やビジネスモデルを社会で使えるようにするため、限られた条件で実証し、そのデータを規制の見直しなどに役立てる制度です。この記事では、事業者が個別の実証計画を申請する「プロジェクト型」を中心に説明します。

期間・参加者などを限定して、新しい方法を試す

新しいサービスを考えても、既存の規制は、その提供方法を想定していない場合があります。事業者が「便利だから認めてほしい」と説明するだけでは、安全性や利用者保護を確かめる材料が足りません。

そこで、期間や参加者、場所、提供方法などを定めた実証計画をつくり、主務大臣の認定を受けて実証します。得られた情報を使い、規制の見直しや円滑な事業化につなげるのが制度の狙いです。名称の「サンドボックス」は砂場を意味しますが、事業者が自由に試してよいという意味ではありません。

正式には「新技術等実証制度」と呼ばれます。2018年に創設され、2021年に産業競争力強化法へ移管されました。古い解説に出てくる生産性向上特別措置法を、現在の申請の根拠と取り違えないようにしましょう。制度の概要は内閣官房の案内、移管の経緯は金融庁の説明で確認できます。

認定だけで、あらゆる規制が免除されるわけではない

「既存の規制の適用を受けずに実証できる」という説明は、認定を受ければ法律を守らなくてよい、という意味ではありません。内閣官房の資料では、実証計画が関係法令に違反しないことを認定の基準に挙げています。

実証の条件を工夫して規制の対象に当たらない形にする、現行の規制を守れる体制で実施する、認められている方法と新しい方法を併用する、といった整理があります。必要な場合は規制の特例措置を求める仕組みもありますが、対象と条件の確認が必要です。

確認すべきなのは「制度を使えるか」だけでなく、「どの条件なら、何を試せるか」です。認定計画の範囲を超えた販売や全国展開まで、自動的に認められるわけではありません。自社の適否は、政府窓口・所管省庁と法務担当者や弁護士に確認してください。

参考:内閣官房「規制のサンドボックス制度」説明資料(認定基準・実証の構成例)。

グレーゾーン解消制度・新事業特例制度との違い

規制に関する悩みがあるからといって、必ずサンドボックス制度を選ぶわけではありません。「規制がかかるか知りたい」のか、「データを得て見直しにつなげたい」のかを分けると、相談の目的を説明しやすくなります。

適用の確認・実証・特例の提案を、相談目的で分ける

経済産業省やデジタル庁は、企業単位の規制改革に関わる主な仕組みとして、次の3制度を紹介しています。制度名を先に決めず、自社が今ほしい回答から比較してください。

規制の悩みに応じた3制度の使い分け
制度 主に確かめたいこと 事業者が用意する内容
グレーゾーン解消制度 具体的な事業に、現行規制が適用されるか 事業の内容と、適用の有無を確認したい規定
規制のサンドボックス制度 新しい方法を実証し、規制の見直し等に使うデータを得たい 実証する範囲・方法、守る条件、確認するデータ
新事業特例制度 安全性等を確保する方法を示し、企業単位で規制の特例を受けたい 求める特例と、安全性等を確保するための代替措置

たとえば、提供内容が具体化しており、その内容に規制が適用されるかを確認したいなら、グレーゾーン解消制度が候補です。新しい方法でも安全や利用者保護を確保できることを実証したい場合は、サンドボックス制度の相談につながります。実証をせずに確認できる論点まで、大がかりな実証計画へ広げる必要はありません。

出典:デジタル庁「新事業特例制度、グレーゾーン解消制度及び新技術等実証制度」。実際の制度選択は個別の事業内容に応じて窓口と相談します。

地域限定型のサンドボックスとは、手続きが異なる

「地域限定型 規制のサンドボックス制度」は、国家戦略特区の仕組みです。自動走行やドローンなどの実証を念頭に、国・自治体・事業者が区域計画を作り、認定を受けることで、関係法令の許可などを受けたものとみなす措置等を設けています。

一方、本記事のプロジェクト型は、事業者ごとの実証計画を扱います。自治体と連携する案件でも、どの制度で何を認めてもらう計画なのかを確認してください。また、ソフトウエアを隔離した環境で動かす技術用語の「サンドボックス」とも別物です。詳しくは地域限定型の公式説明をご覧ください。

規制のサンドボックス制度が向く案件・先に整理したい案件

検討の入口は、業種名や技術の新しさだけではありません。現在の方法から何を変えたいのか、その変更によって守れなくなるおそれがあるものは何か、実証で何を確かめたいのかを言葉にします。

規制の目的を守れることを、新しい方法で確かめたい

たとえば、対面で行ってきた確認を遠隔で行う、紙で渡してきた情報を電子的に伝える、常駐者が担ってきた管理の一部を機械で補う、といった変更です。どれも「同じことを便利にする」ように見えますが、確認の漏れ、情報の届き方、異常時の対応には新たな論点が生じます。

事業担当者が整理したいのは、規制で守ろうとしている利益と、それを別の方法でも守れると判断するための証拠です。「遠隔化したい」なら、誰が何を見て本人確認や相談対応を行い、通信が切れたときにどう止めるかまで考えます。

イノベーション総研は、ここを新規事業の検証設計として捉えます。規制を障害として挙げるだけでなく、その規制が守るものを検証項目へ変えることが重要です。ただし、この整理は認定要件を満たすとの法的判断ではなく、政府窓口との相談を具体化するための準備です。

顧客や規制上の論点が曖昧なら、その不足を整理する

「AIを使いたいが、何か規制がありそう」という段階では、提供相手、提供する行為、扱うデータ、お金の流れを先に描きます。法律名が分からなくても相談できますが、事業の内容まで曖昧なままだと、何を確認すべきかが定まりません。

また、規制の問題と需要の問題を混ぜないことも大切です。購入者が見つかっていないなら、適法な範囲で行うヒアリングや提案の検討が先になる場合があります。試作品を使ってもらうPoCと、規制上の論点を含む実証の関係は、PoCと実証実験の違いで整理しています。

制度に合わせるために、本来確かめたいことを失わないようにしましょう。限定した実証で良い結果が出ても、本番では対象者も提供方法も大きく違うなら、事業化の判断材料としては追加の確認が必要です。

規制のサンドボックス制度の活用事例から、実証の設計を学ぶ

公表された事例を見るときは、「認定された会社」よりも、変えたい方法と、確かめるために置いた条件に注目すると役立ちます。ここでは、飲料と医薬品の2件を、認定時の公的資料から読み解きます。

ラベルレス飲料:表示場所を変えても製品情報が伝わるか

2023年7月19日に認定された飲料メーカーの計画では、ラベルのないペットボトル飲料を自動販売機で提供する方法を検証対象としました。論点は、ラベルをなくすこと自体ではなく、製品情報を自動販売機に掲示しても、利用者が通常のラベル付き製品と同等の情報を認識できるかです。

実証では、特定の少人数がアクセスできるオフィスの自動販売機を使い、飲料を無償で提供する条件を置いています。参加者へのアンケートによる情報の認識確認に加え、回収した容器からラベルの有無を確認し、分別に関する仮説も検証する計画でした。出典:内閣官房「自動販売機によるラベルレスペットボトルの販売に関する実証」概要

この事例から学べるのは、新しい提供方法と、利用者を守るための確認を一組にしている点です。自社でも「機械が動いた」だけでなく、「必要な情報が相手に伝わったか」を検証項目にできます。

一方、この実証条件をそのまま一般販売の可否へ読み替えてはいけません。少人数・無償という条件の法的な位置づけは当該計画に即したものです。「無料なら規制の対象外」と他の案件へ一般化せず、本番の販売対象や対価が変わる場合は改めて確認します。

医薬品販売機:資格者とのやり取りを販売機で確保できるか

2025年2月25日に認定された製薬会社の計画では、資格者による適切な管理の下、開設済みの薬局の一部として一般用医薬品の販売機を設置する実証が示されています。販売機と資格者・購入者との双方向コミュニケーション機能などを使い、取扱いを第1類医薬品まで広げる計画です。

内閣官房の公表文によると、前回の実証では、参加者へのインタビューから、購入者の状況確認と医薬品の情報提供を充実させる必要が分かりました。今回はその点を改善し、相談対応や情報提供、管理の要件、運用上の課題を検証対象にしています。出典:内閣官房「OTC販売機を用いた一般用医薬品販売に関する実証」認定公表厚生労働省の認定発表

ここで参考になるのは、前回の実証で残った課題が、次の実証の設計へ具体的に反映されていることです。「利用者から好評だった」というまとめだけでは、情報提供の不足を改善できません。誰が、どの場面で、何を確認できなかったのかを残す必要があります。

2件とも、ここで確認したのは公表された実証計画です。認定の事実と、その後の商用提供の条件や事業成果は別に確認します。医薬品販売の現行要件を、この事例だけから判断しないでください。

相談から認定・実証までの進め方は5ステップ

最初から申請書を完成させる必要はありません。政府の一元窓口への事前相談から始め、規制上の論点と実証の条件を具体化します。ここでは、内閣官房の案内を基に、事業担当者の作業を5段階に整理します。

1.政府の一元窓口へ、事業の内容と困っている点を相談する

内閣官房の新技術等社会実装推進チームが相談を受け付けています。相談先が分からない場合や、法律に詳しくない場合も利用できます。公式ページの「お問い合わせ・案件相談申込フォーム」から連絡してください。

相談時には、「この技術を使いたい」だけでなく、「誰に何を提供したいが、どの場面で規制との関係が問題になっているか」を伝えます。相談窓口と申請先は同じ役割ではありません。一元窓口は論点整理や関係省庁との事前相談などを支援します。

2.実証する範囲、安全対策、集めるデータを計画にする

実証の目的、方法、期間・場所、参加者と同意、必要資金、関係する規制などを具体化します。参加者の安全や権利を守りながら、規制上の論点を確かめられる計画にすることが要点です。

同意書を作るだけで十分とは限りません。参加者へ何を説明し、どのような状態なら実施を止め、誰が対応するかまで関係者で確認します。また、データを取った後に分析できない事態を避けるため、記録する項目と評価方法も先に決めます。

3.主務大臣へ申請し、認定と公表を経る

実証計画は、事業を所管する省庁と規制を所管する省庁の主務大臣に申請します。内容に応じた審査があり、主務大臣の見解については新技術等効果評価委員会でも審議されます。事業者が計画を提出しただけで実証を開始できるわけではありません。

内閣官房のFAQでは、申請から認定までは内容にもよるものの約1〜2か月が目安とされています。これは正式な申請後の目安であり、事前相談や計画の修正を含めた総期間ではありません。社内の日程表では、相談・計画準備、申請後の審査、実証準備、実証期間を分けて見積もります。

4.認定された条件で実証し、不都合な結果も記録する

実施時は、認定された計画の条件と必要な手続きに従います。集計結果だけでなく、対象者、利用場面、トラブル、対応の経緯が追える記録を残してください。結果が良かった場面だけを選ぶと、新しい方法の弱点を評価できなくなります。

たとえば、遠隔での確認が通常時には成立しても、通信断や問い合わせの集中時には難しいかもしれません。実証中に対象や方法を変える必要が出た場合は、社内の判断だけで変更せず、必要な変更手続き等を窓口・所管省庁に確認します。

5.結果を報告し、規制と事業化の次の手続きを確かめる

実証後は、計画に沿った結果の報告と、規制に関する検討へ進みます。事業者側では、何が確認できたか、どの条件では確認できなかったか、今後どのような提供方法を目指すかを説明できるようにします。

規制所管省庁は、検討結果に基づいて必要な措置を講じる仕組みですが、希望する法改正や全国展開が約束されるわけではありません。商用提供に必要な許認可や条件、残る検証を確認し、その結果に合わせて次の投資を決めます。

手続きの出典と相談入口:内閣官房「規制のサンドボックス制度」同制度の説明資料。報告のまとめ方は、PoC報告書の書き方も参考になります。

いま止まっているのは、どの準備ですか

近い状態を開き、確認する項目と次の参照先を選んでください。制度適用の診断ではありません。

01 どの規制が問題なのか分からない

提供する相手と行為を具体化し、政府窓口への相談を準備します。

  • 誰が誰に提供するか
  • どの業務を変えたいか
  • 現在、何が分からないか

相談用メモを確認する →

02 規制が適用されるかだけ知りたい

実証が必要かを切り分け、グレーゾーン解消制度も含めて相談します。

  • 提供方法は具体的か
  • 確認したい規定は何か
  • データを取らずに整理できるか

3制度を比較する →

03 実証に必要な安全対策を整理したい

新しい方法で守るべき条件を、関係者と確認します。

  • 想定する不利益は何か
  • 異常時に誰が止めるか
  • 参加者へ何を説明するか

実証の論点を整理する →

04 事前相談からの手順を知りたい

相談、計画、申請・認定、実施、報告の順で準備します。

  • 関係者はそろっているか
  • 相談期間を確保したか
  • 本番開始と実証開始を分けたか

5ステップを確認する →

05 実証後の社内判断が決まっていない

次の投資を決める人と、判断に必要な条件を置きます。

  • 判断者と予定日は誰・いつか
  • 顧客の購入条件は何か
  • 追加費用の上限はどう決めるか

事業化の判断を確認する →

06 検証計画を実行する人手が足りない

規制対応と事業検証の担当を分け、不足する工程を具体化します。

  • 法務対応は誰が担うか
  • 顧客テストを誰が進めるか
  • 結果を事業計画へ誰が反映するか

新規事業立ち上げ支援を見る →

規制の適用や認定手続きは政府窓口へ、事業の顧客・収益・体制に関する整理はイノベーション総研の新規事業リスク診断「Compass」へ。課題に応じて相談先を分けると、必要な専門性につながります。

NEXT STEP

次のステップ

実証の後に、何を判断するか決まっていますか

事業化の準備を点検するなら無料診断へ。検証論点や顧客テスト、実行体制を具体化したい場合は、新規事業立ち上げ支援をご覧ください。法的適否や認定取得を保証するサービスではありません。

認定で終わらせず、新規事業の投資判断につなげる

ノートパソコンに表示されたグラフと指標のダッシュボード
実証では、次の判断に必要なデータを先に決めます。写真はイメージです。

制度を活用して規制上の論点を確かめても、購入者や予算、事業の受け手が決まらなければ、新規事業は動きません。ここからは、公的制度の説明とは分けて、イノベーション総研の調査と見解から事業化の準備を考えます。

888名調査では、事業化への移行で社内の判断が障壁に挙がった

大企業の新規事業関与者888名に、PoC・検証から事業化・スケールへ移行する際の障壁を尋ねました。最も大きな障壁として選ばれた上位3項目は、経営の後ろ盾、判断基準、投資の承認に関するものでした。

PoC・検証から事業化への移行で、最大の障壁に選ばれた項目

経営層の継続的な後ろ盾が不足19.6%
継続・撤退・方向転換の判断基準が曖昧18.9%
投資判断の承認が得られなかった11.1%
出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)。大企業の新規事業関与者全888名を分母とした、1位回答の上位3項目。

これはサンドボックス制度の利用者だけを対象にした調査ではありません。イノベーション総研は、この結果を「実証する計画と、実証後に社内で判断する準備は、並行して整える必要がある」と読み解きます。

自社で点検したいのは、実証終了後の会議に誰が出て、どの結果を根拠に追加予算を決めるかです。規制の検討に時間が必要なら、その間にどの費用が発生し、どこまでなら事業を維持できるかも合意します。認定取得を社内の最終到達点にすると、その後の検討が抜け落ちます。

規制上の条件・顧客の購入条件・社内の投資条件を分ける

同じ実証データでも、行政、顧客、自社の経営層では確かめたいことが異なります。ひとつの「実証成功」という判定にまとめず、次の3つを別々に確認すると、追加で必要な証拠が見えます。

実証結果を事業化へつなぐために分けて確認する条件
確認する条件 そろえる判断材料 主に確認する相手
規制上、実施できるか 認定計画の範囲、実証結果、本番で変わる条件、必要な手続き 政府窓口・所管省庁、法務担当者・専門家
顧客が買い、使い続けるか 利用の事実、支払う人・予算、購入条件、代替手段との比較 利用者、費用負担者、顧客の決裁者・運用部門
自社が投資し、提供を続けるか 追加費用、提供原価、担当部門、判断日、見直し条件 事業責任者、経営層、財務・運用部門

たとえば、安全に提供できる条件が分かっても、有人対応の費用が大きく、顧客の予算に収まらない場合があります。この場合の次の課題は、制度の認定を取り直すこととは限りません。対象顧客を絞る、提供方法を変える、価格と対応範囲を見直す、といった事業側の検証も必要です。

一つの条件が確認できたことを、他の条件が成立した証拠にしないでください。具体的な投資の整理は、新規事業の投資判断基準へつなげて確認できます。

長尾の見解:目標を明確にし、結果に応じて検証方法を変える

イノベーション総研・長尾 浩平の見解

良いPoCでは、目標を明確にしたうえで、プロセスを臨機応変に組み立てます。実証を行ったことではなく、得られた結果が次の判断にどうつながるかを重視します。

この考え方をサンドボックス制度に当てはめるなら、事業担当者は「何を確かめたいか」と「どの方法で確かめるか」を分けて持ちます。目的が利用者への情報伝達の確認なら、機器の機能追加を続けること自体が目的にならないようにする、ということです。

一方で、制度に基づく実証は、方法を自由に変えてよいわけではありません。新しい事実に合わせて改善案を考え、認定計画や必要な手続きとの整合を確認してから反映します。目的は保ち、方法の変更理由と承認の経緯を残す運用が重要です。

規制のサンドボックス制度へ相談する前に、6項目を1枚にまとめる

初回相談の準備には、事業の全体像と確認したい論点を一覧にすると役立ちます。次の表はイノベーション総研が提案する社内整理用のメモであり、政府の申請書や認定基準の代わりではありません。

架空の「施設内で機器を使い、離れた場所の担当者が利用者へ案内するサービス」を例に、6項目へ整理しました。実在の認定案件ではなく、この形なら実施できるとの判断も示していません。

初回相談で事業と実証の論点を伝える6項目(架空の記入例)
整理する項目 書き出す内容 遠隔案内サービスでの記入例
1.誰に何を提供するか 対象者、提供する行為、お金・情報の流れ 施設利用者へ遠隔の担当者が案内する。誰がサービス料を負担するかは施設側と確認中
2.規制のどこが論点か 現行の方法と変更点、確認したい規定や解釈 常駐者による対応を遠隔へ変えたい。どの業務・資格・配置の要件が関係するかを確認したい
3.どこまで実証するか 場所、期間、参加者、扱う行為、対象外 協力施設で同意を得た参加者を対象にする案。期間は必要なデータから窓口と相談
4.何を守り、どう対応するか 安全、同意、個人情報、異常時の中止と責任者 通信断は案内を中止し現場へ引き継ぐ案。実施可否と必要な対応を法務・運用担当と確認
5.何を記録するか 検証する問い、比較対象、取得方法、分析担当 案内の伝達状況、誤解・未完了の理由、担当者の対応時間を記録し、対面時と比較できるか確認
6.結果の後に何を決めるか 本番で変わる条件、次の投資、判断者・判断日 有償提供や対象拡大の条件を改めて確認し、事業責任者が限定継続・方式変更・見送りを判断

分からない欄は、推測で埋めず「未確認」とし、誰に何を聞くかを添えます。法律名が特定できなくても、業務のどこを変える計画なのかが分かれば、相談の内容は具体的になります。正式申請では、最新の様式と必要事項を窓口で確認してください。

本番と実証で変わる条件を、あらかじめ書き出す

実証を小さくすることと、事業の重要な条件を外すことは違います。少人数の協力者には問題なく使えても、不特定の利用者へ提供すると、説明、問い合わせ、本人確認の負荷が変わるかもしれません。

「実証では無償、本番では有償」「実証では担当者が横にいる、本番では遠隔対応」「実証は一施設、本番は多拠点」といった違いを列挙します。その違いが、法令の適用、利用者の行動、運営費にどう影響するかを別々に確認しましょう。

実証環境をどこまで限定しても、将来の判断に役立つデータが得られるか。この点は、事業担当者だけでなく、現場の運用担当者と規制対応を担う人も同じ資料を見て検討します。

進む・方法を変える・見送る、の選択肢を開始前に持つ

実証計画を社内で承認するときには、「結果が良ければ事業化する」だけで終わらせません。何が確認できれば次の投資を検討し、何が残れば追加検証にとどめるかを決めておきます。

  • 次の段階へ進む:必要な規制上の確認と顧客・採算の条件がそろい、次の実施範囲を判断できる。
  • 方法を変えて確かめ直す:利用価値はありそうだが、情報提供や運営費など、結論を変え得る点が残っている。
  • 今回の案は見送る:安全や事業の重要な条件を満たせず、追加の費用を使って確かめる合理的な理由を置けない。

見送りは、技術そのものに価値がないという意味ではありません。用途や提供方法を変えて再検討する余地は、今回の案への追加投資と区別します。判断の条件を残すことで、次の担当者も、なぜその結論になったかを追えます。

イノベーション総研の新規事業立ち上げ支援では、検証論点、顧客テスト、事業計画や実行体制の設計を支援しています。規制への適合判断や申請の法務対応は、所管省庁・法務専門家と確認しながら進める領域です。制度の認定と事業判断、それぞれの担当を明確にしてご利用ください。

規制のサンドボックス制度でよくある質問

対象企業、期間、費用、実証後の扱いを整理します。個別の制度適用や必要な手続きは、具体的な事業内容を政府窓口へ示して確認してください。

Q. 大企業や地方の企業でも相談できますか?

A. スタートアップだけに限った制度ではありません。内閣官房は、分野を限定せず、新しい技術やビジネスモデルの実証に関する相談を受け付けています。所在地や企業規模だけで判断せず、事業の内容と規制上の論点を政府の一元窓口へ相談してください。

Q. 実証できる期間は、最長6か月ですか?

A. 一律に最長6か月と決まっているわけではありません。内閣官房のFAQでは、データを取得するために必要な期間を原則に、実証内容に応じた適切な期間を設定できるとしています。必要な観察期間と参加者への影響を整理して相談します。

Q. 補助金がもらえる制度ですか?

A. 制度の主な役割は、実証と規制の見直しをつなぐことです。認定を受けることと、実証費用の資金支援を受けることは同じではありません。人件費、機器、参加者対応、データ分析などの費用を見積もり、別の支援制度を検討する場合は、その募集条件を個別に確認してください。

Q. 法律名が分からない段階でも相談できますか?

A. 相談できます。内閣官房は、法律に詳しくない事業者についても、実施したい事業を理解したうえで関係省庁との調整を支援すると案内しています。誰に何を提供するか、現行の方法からどこを変えるか、困っている場面を整理して持ち込みましょう。

Q. 実証で良い結果が出れば、そのまま全国で販売できますか?

A. 実証の認定と、本番で販売できる条件は別です。対象者、場所、対価、提供方法などが変わる場合は、必要な許認可や規制上の確認が残ることがあります。所管省庁・法務専門家と商用提供の条件を確認し、顧客の購入条件や自社の運営体制も合わせて判断してください。

まとめ|実証で確かめたい問いを決め、相談につなげる

規制のサンドボックス制度は、新しい方法を限られた条件で実証し、得られた情報を規制の見直しや事業化に役立てる仕組みです。制度名から「規制がなくなる」と捉えるのではなく、自社の計画で何を確認し、どの条件で実施するのかを具体化します。

新規事業担当者が最初に用意したいのは、相談前の6項目のメモです。提供相手と行為、規制上の論点、実証の範囲、安全対策、集めるデータ、結果後の判断を書き、空欄を次に聞く質問へ変えてください。

そして、規制上の条件の確認と並行して、顧客が買う条件、社内が次の投資を決める条件も整えましょう。実証の価値は、認定や報告書だけではなく、次の判断に使える事実が増えたかで確かめます。

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実証を、顧客と投資の判断につなげたい方へ

何を検証し、どの結果なら次へ進むか。新規事業の現状を伺い、検証計画や事業化の条件を一緒に整理します。制度そのものの相談・申請は、政府の一元窓口をご利用ください。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

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