投稿日:2026.09.28 最終更新日:2026.09.28
Meta・NEC・住友電工、ペタビット級海底ケーブルで協業
ニュースの要点
Metaは2026年9月21日、NEC、住友電工と、ペタビット級の通信容量を持つ光海底ケーブル「Petal」を構築すると発表しました。NECと住友電工の日本語発表は翌22日です。米国とフランスを結ぶ約7,000kmのシステムで、2029年の運用開始を予定しています。
住友電工が一本の光ファイバー内に二つの光の通り道を設ける技術を提供し、NECがシステムの設計、製造、敷設を担います。Metaは所有・運用主体です。計画する通信容量は毎秒1ペタビット、毎秒1,000テラビットに相当します。
狙いは、大陸間で増える通信需要に対応することです。Metaは従来の給電設備を使える設計を選び、既存方式と比べて容量を倍増させると説明しています。現段階は構築計画の発表であり、運用実績ではありません。
ニュース出典:Meta、NEC、住友電工、世界初の商用ペタビット級光海底ケーブルシステム「Petal」の構築に向けて協業(NEC、2026年9月22日)。初出はMetaのPetal発表(2026年9月21日)。
イノベーション総研の考察
海底ケーブルは敷設までの長さも競争条件になる
海底ケーブルは、通信装置が完成すればすぐ利用できる設備ではありません。国際電気通信連合(ITU)は、設計から敷設までに2年以上かかる場合があり、許認可、資金、環境面の検討、関係者との調整が必要だと説明しています。部品の性能を高めても、周辺設備や設置条件が整わなければ、実際の通信には使えません。ITUの海底ケーブル解説
この前提に立つと、Petalで注目したいのは最高容量だけではなく、何を変更せずに容量を増やすかです。長期の設備事業では、新技術の性能と導入条件を同時に設計する必要があります。2029年という目標も、研究成果の完成時期ではなく、製造・敷設を経て運用につなぐ計画として読むべきでしょう。
Petalは給電設備を変えずに容量を増やす設計を選んだ
Metaの技術解説によると、Petalでは24組の光ファイバーそれぞれに二つの通信経路を設け、48組のコアを使います。一方、光信号を増幅する中継器には、従来の単一コア向けの増幅技術を組み合わせます。すべての構成部品を新方式へ置き換える計画ではありません。
また、既存の18キロボルト給電設備を使用する設計です。Metaは、より高い電圧へ移行すると周辺部品も含めた再認定が必要になると説明しています。Metaの技術解説
イノベーション総研は、この選択を新技術の適用範囲を絞る判断と捉えます。Petalは通信経路を増やす一方で、給電と増幅の既存技術を活用しています。性能改善と設備全体の作り直しを切り離せれば、検証が必要な範囲を限定できます。ただし、実際に工期や費用がどれだけ減るかは、発表だけでは分かりません。
Metaの運用要件をNECと住友電工の設計につなぐ
今回の役割分担では、Metaが将来使う通信基盤の要件を持ち、住友電工が光ファイバーを供給し、NECが海底ケーブルシステムへまとめます。光の通り道を増やす材料技術だけでも、ケーブルを製造・敷設する能力だけでも、Petalは完成しません。利用側と製造側の判断が接続する協業です。
一方で、仕様変更の決裁や遅延時の負担など、契約上の詳しい条件は確認できません。共同開発では、各社の得意分野に加え、仕様変更を誰が判断するかが重要です。例えば製造上の制約が判明したとき、容量、納期、費用のどれを優先するかは、一社の部品評価だけでは決められないためです。
自社の技術を他社の設備へ組み込む担当者の方も、提携先一覧を作る前に、利用条件を決める会社と、システム全体の合否を判定する会社を特定すると、交渉すべき相手と確認事項が明確になります。
一本の大容量化と通信経路の分散は別の判断
大容量化しても、海底での断線や陸揚げ地点の障害がなくなるわけではありません。ITUは海底ケーブルの損傷と修理の必要性を説明しています。一本で運べる通信量が増えることと、別経路へ通信を逃がせることは、異なる価値です。
Petalの発表からは、総投資額、容量当たりの実際の費用、障害時に使う代替経路の詳しい条件までは確認できません。容量の増加だけでは、通信網全体の採算や障害への強さは判断できません。新技術が容量当たりの費用を下げても、需要や代替経路の条件によっては追加投資の評価が変わります。Petalの成果は、容量、運用費用、復旧のしやすさを分けて見たいところです。
自社の共同開発でも変えない設備と次の合否を決める
Petalから転用できるのは、大容量化という目標そのものではなく、新技術を既存設備へ組み込む考え方です。担当者はまず、顧客が変えられない条件を洗い出します。電源、設置場所、保守手順などが該当するなら、それを満たす形で新しい性能を提供できるかを提携先と検証します。
次に、試作品、量産、現場設置で何を確認してから次へ進むかを分けます。これはPetal各社の非公開工程を推測したものではなく、イノベーション総研の提案です。共同開発の計画には、性能目標とともに、既存設備で使えることの確認基準を置きます。合格しなければ仕様、予定、投資額を見直す相手まで決めることで、提携発表を次の事業判断につなげられます。
関連する設備事業の組み方は、日立システムズとHPEのコンテナ型データセンター協業、企業間の提供体制はサーバーワークスグループとBIPROGYのクラウド・生成AI提携でも整理しています。
まとめ
Petalは、新しい光ファイバーと既存の給電・増幅技術を組み合わせ、商用の海底ケーブルへつなぐ計画です。今後は2029年の運用開始に向けた製造・敷設の進展と、運用段階の性能を確認します。新規事業の共同開発でも、革新的な部分と変えない条件を分けることが、実際に使われる製品へ近づく出発点になります。
執筆:イノベーション総合研究所
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顧客が変えられない条件と各社の役割から、次の検証を具体化します。