新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

TVerとドコモなど3社、視聴・会員・購買データの連携に合意

ニュースの要点

株式会社TVer、株式会社NTTドコモ、株式会社データ・ワンは2026年10月26日、動画の配信視聴、dポイントクラブの会員基盤、小売事業者の購買に関するデータを連携させる共創に合意しました。広告視聴後の来店・購買を横断的に分析することを目指します。

3社は、広告の効果計測や配信対象の選定に加え、ドコモの顧客接点を通じたTVer利用者の獲得、アカウント連携、継続利用の促進などを検討します。プライバシーに配慮した分析環境は準備中で、利用する具体的なデータ項目や範囲は今後協議します。

広告・データ事業の成長と視聴体験の向上が目的です。ドコモが提供するのは、事前に第三者提供へ同意した利用者の情報に限ります。今後は実証実験などで具体化する段階であり、効果の実績、提供開始日、料金は発表していません。

ニュース出典: NTTドコモ「TVer、ドコモ、データ・ワンで、配信視聴データ、dポイントクラブ会員基盤データ、購買データの連携による「TVer」の事業成長に向けた共創を開始」(2026年10月26日)

補足出典: TVerによる同一共創の発表 / データ・ワンによる同一共創の発表


イノベーション総研の考察

視聴と購買のデータがつながると、広告の届け方だけでなく、効果を説明する方法も変わります。ただし、広告を見て買った人が分かることと、広告によって新たに購入が増えたことは別の証拠です。

広告事業が伸びた次に、購買までの説明を増やす

TVerは今回の発表で、2025年度の広告売上高が前年度比166%、出稿企業数が2,780社だったと説明しています。これは今回のデータ連携の成果ではなく、協業前の広告事業の状況です。広告主が増えた段階で、視聴の先にどんな行動があったかを説明する手段を広げる動きと読めます。

TVerは番組や広告の視聴接点を持ち、ドコモは会員基盤と端末などの顧客接点を、データ・ワンは小売事業者から預かった購買情報を持ち寄ります。一社の保有情報だけでは、動画を見た場面と店頭で買った場面の両方を捉えにくいことが、共同で取り組む理由です。

3社の補完関係は、広告の視聴接点と、会員・購買の接点をつなげることにあります。

ただし、全視聴者や全小売店の購買を見られるわけではありません。会員数をそのまま計測できる人数へ置き換えず、どの組み合わせが実際に使えるかを確認する必要があります。

データの総量より、同意のある接続範囲を先に決める

今回の発表は、ドコモのデータ提供を事前同意のある利用者に限定し、具体的な項目や範囲は今後協議すると明記しています。事業計画の前提になるのは、各社が持つデータの大きさより、目的に合う条件で組み合わせられる範囲です。

例えば、広告を見た人の中で、対象店舗の購買情報と対応付けられる人が限られる場合、その集団が商品の顧客全体をどの程度表しているかを確かめる必要があります。これは今回の連携人数が少ないという指摘ではなく、まだ公表されていない検証条件です。

共同事業の実証は、同意と利用目的が一致する対象から計測範囲を確定します。

共同で決めたいのは、利用する項目、分析を行う側、結果を受け取る側、保存や削除の扱いです。新規事業の担当者の方は、用途を広げる前に、広告計測の目的に必要な情報だけで成り立つかを試すと、合意形成の対象を明確にできます。これらの詳細は合意済みの契約内容として公表されていません。

視聴後に買っただけでは、広告の増分を証明できない

来店や購入を確認できても、その人は広告を見る前から商品を買うつもりだったかもしれません。番組の視聴者と商品の購買層が重なっているだけなら、視聴後の購買率の高さを広告効果と結論付けると、出稿判断を誤る可能性があります。

効果を検証する際は、広告を配信する対象と、比較対象をどう選ぶかが論点になります。可能な範囲で条件を揃えた対照群を置き、同じ期間の購入の差を確かめる設計を提案します。店舗の値引き、別の広告、季節要因などが同時に変わる場合は、どこまで切り分けられたかも示す必要があります。

広告を見た人の購買実績と、広告が増やした購買を区別して投資判断へ使います。

3社は業種・商品に応じた分析手法や評価指標の整備を検討しています。その具体化で見たいのは、成功した事例の数字だけでなく、比較方法と測れなかった範囲です。全商品で同じ指標を使うより、購入頻度や店頭での検討期間に合わせることが重要になります。

利用者の獲得と広告成果は、別の継続判断にする

今回の構想には、広告計測だけでなく、ドコモの顧客接点を活用したTVerの新規利用や再利用も含まれます。広告主向けの成果と、視聴者向けの体験は、同じデータ基盤を使っても別の事業上の目的です。

自社で似た協業を行うなら、最初の実証で解く問いを絞ることを提案します。広告側は計測対象の範囲と購買の増分、利用者側は獲得後の視聴継続と離脱を追います。会員登録だけが増えても、使われなくなれば顧客接点の価値は積み上がりません。

広告主の投資効果と、視聴者が使い続ける価値を別々の指標で確かめます。

反対に、データ接続や同意取得の運用費が高く、測れる購買が限定的なら、既存の広告分析の方が合理的な場合もあります。次の観測点は、実証の対象商品・期間・比較条件と、利用者施策の継続率です。合意の広さではなく、一つの判断を前に進めた証拠を追います。

まとめ

TVer、ドコモ、データ・ワンの共創は、視聴と会員・購買の接点を結び、広告と視聴サービスの成長を目指す計画です。導入を考える企業は、使えるデータの範囲を先に定め、視聴後の購買と広告による増分を区別する必要があります。利用者の継続と広告主の成果も分けて検証します。

関連記事: 新規事業ニュースの提携・共同開発 / ドコモ、好みや属性に合わせるライブ映像合成技術を開発

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆

執筆:イノベーション総合研究所

CONTACT

お問い合わせ

データ連携の実証を一つの判断へ絞る

利用できる対象と、購買の増分を確かめる比較条件を整理します。

この記事をシェアする