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NTT西日本、彦根市で2年目の自動運転EVバス実証

ニュースの要点

滋賀県、NTT西日本、マクニカは2026年9月24日、彦根市で2年目となる自動運転EVバスの実証運行を行うと発表しました。10月12日から11月15日まで、運休日3日を除く32日間、彦根駅と彦根城周辺を結ぶ約3キロメートルのルートで運行します。 車両は運転手が同乗する自動運転レベル2(運転手の監視を前提にシステムが操作を支援する段階)で、一般客向けは10月14日から11月15日までのうち30日間で、無料です。10月17日・11月3日・11月8日は終日運休、10月18日はいろは松駐車場で折り返します。今回は、前年の約1.5キロメートルの往復ルートを彦根城のお堀内まで延ばし、路上駐車の回避、一部交差点での信号連携を新たに検証します。 車内ではAIアバター(画面上のキャラクターで応対するAI)が多言語で観光・乗車案内を行い、周辺店舗を巡るデジタルスタンプラリーも実施します。目的は、運転士不足への対応だけでなく、公共交通の利用促進と観光客の回遊(周辺を巡り歩くこと)を両立できるかを確かめ、将来のレベル4(特定の条件下でシステムがすべての運転を担う段階)実装につなげることです。

ニュース出典:滋賀県彦根市で2年目となる自動運転EVバスの実証運行を開始(滋賀県・NTT西日本・マクニカ、2026年9月24日)


イノベーション総研の考察

今回の実証は、自動運転バスが走れるかを初めて試すものではありません。むしろ、前年の短い往復運行から、観光地を含む長いルート、信号連携、障害物回避、案内、周遊促進へ検証範囲を広げています。つまり、車両技術の確認から、地域交通サービスとして使えるかを確かめる段階へ進んだ点が重要です。

2年目は前年と違う不確実性を減らしている

2025年度は彦根駅といろは松駐車場を結ぶ約1.5キロメートルで、初めての実証運行を行いました。これに対し2026年度は、約3キロメートルへ延ばし、彦根城前や大手前駐車場を含む一周ルートにします。さらに、距離を伸ばすだけでなく、観光客の多い場所や交差点を通ることで実運用に近づけています。

前回の結果を踏まえて検証項目を増やしている点に意味があります。ただし、ルートやシステムを変えた後は、既存機能も含めた安全性の再確認が必要です。新規事業の実証でも、前回分かったことと、今回初めて確かめることを分けなければ、事業化の不確実性は減りません。

複数年の実証では必要な安全確認を繰り返しながら、新しい条件で生じる課題も減らしていきます。

レベル4を目指しても今回はレベル2である

発表では将来の自動運転レベル4を目標に掲げていますが、今回の運行は運転手が同乗するレベル2です。この運行では、路上駐車を検知して避ける機能や、信号情報を受け取って停止・通過する制御を試します。いずれも無人運行へ進むための要素ですが、今回だけでレベル4が実現するわけではありません。

社会実装には、安全に走れたかに加え、介入(運転手が操作を引き継ぐこと)の回数、停止からの復旧時間、遠隔監視の負担、天候や混雑による運行差を測る必要があります。その際、介入は走行距離や交通条件をそろえて原因別に見ます。安全のために必要だった介入まで減点すると、現場に危険な判断を促しかねません。また、技術の到達点と将来目標を分けて伝えることが、地域住民や利用者の信頼につながります。

将来目標を大きく掲げるほど、今回できることと人が補う範囲を明確にすることが重要です。

移動手段だけでなく観光消費まで検証する

運転士不足への対応だけを目的にすると、自動運転化で削減できる費用が主な評価軸になります。今回はAIアバターの観光案内とデジタルスタンプラリーを組み合わせ、バス利用者が彦根城周辺を巡り、店舗で買い物する流れも作ろうとしています。

ここからは、運賃以外の便益も考える余地が見えます。ただし、今回の発表が商店などとの費用分担契約を示しているわけではありません。観光客の回遊や地域消費が増えれば、自治体、観光施設、商店など複数の受益者が費用を分担できる可能性があります。乗車数だけでなく立ち寄り先や消費額も確認し、イベントや季節の影響と区別します。地域の便益が増えても、それがそのまま運行主体の収入になるわけではないため、誰が何に対して負担するかを別途合意します。

地域交通の事業性は運賃収入だけでなく、移動によって生まれる観光消費を含めて設計すると広がります。

実装判断には運行と地域効果の両方が要る

今回の一般運行は約1か月で、平日・休日とも1日8便、定員9人、運賃無料です。無料実証で得られる乗車数は、本格導入後の有料需要と同じではありません。そのため、予約率、実乗車率、時間帯別需要に加え、料金を払っても使うかを確かめる必要があります。

次に見るべきなのは、レベル4へ進むための技術課題だけではありません。具体的には、恒久運行の主体、車両と遠隔監視の費用、運賃や自治体負担、既存のバス・タクシーとの役割分担が公表されるかです。そのうえで、安全・制度上の条件、運営体制、費用負担をそろえ、恒久運行に進めるかを判断します。

PoCの出口は技術の合格ではなく、運営主体と費用負担を決められる証拠がそろうことです。

この分野の市場構造と参入の考え方は、自動運転バスは実証から運行へで詳しく整理しています。

まとめ

彦根市の2年目の実証は、走行距離を延ばし、信号連携や障害物回避に加えて、観光案内と周遊促進まで対象を広げます。次に確認すべきなのは、安全性、介入回数、利用率、地域消費への効果と、本格運行を担う主体・費用です。実証を重ねるほど、前回と異なる不確実性を減らせるかが問われます。

執筆:イノベーション総合研究所

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