投稿日:2026.09.08 最終更新日:2026.10.01
自動運転バスは実証から運行へ|国内7事例で読む導入条件
自動運転バスは、車両の安全性能と、運行全体の費用・役割を合わせて評価します。遠隔監視、乗降支援、保守など、導入後も残る仕事があるためです。
国内では、限定された区間でレベル4の自動運転バスが営業運行を始めています。ひたちBRTでは、2025年2月3日〜2026年1月31日の公表集計で1,655便、延べ8,284人の利用がありました。
一方、導入後に手動運転へ戻した地域や、一部便を運休している地域もあります。
国内7地域について、目的、企業の役割、公表された結果と現在の運行状況を比較します。情報確認日:2026年9月28日。
運行の実績と将来計画を分け、参入時に確認する需要、費用、安全・運営体制を整理します。
この記事の結論
自動運転バスは、車両の安全性能と、監視・旅客対応・保守を含む運行体制を一緒に設計します。
- 国内では、専用道や限定区間からレベル4の営業運行が始まっています。
- 車内の運転者を外しても、遠隔監視、乗降支援、点検、事故対応は残ります。
- 参入余地は、路線設計、協調インフラ、遠隔運行、保守・安全証拠にあります。
目次
自動運転バスとは|車両と運行条件を合わせて理解する
レベル2の監視付き運行と、限定条件内のレベル4を区別して、車両と路線を評価します。 実装事例には、運転者が周囲を監視するレベル2と、定められた条件内でシステムが運転を担うレベル4が併存しています。
「自動運転バス」という名称だけで、運転者の監視が不要な運行と判断しないことが大切です。
ここで大切なのは、レベル4が「どこでも完全に無人で走れる」という意味ではないことです。レベル4は、あらかじめ定めた運行設計領域、いわゆるODDの中で成立します。
たとえば、次の条件が変わると、同じ車両でも運行の難しさは変わります。
- 専用道路か、一般車と混ざる道路か
- 右左折、信号、踏切、路上駐車がどれだけあるか
- 最高速度と運行距離をどこまで求めるか
- 雨、雪、逆光、夜間に対応するか
- 車椅子利用者や観光客の乗降を誰が支援するか
- 通信が切れたとき、誰が状況を確認するか
車両選定と併せて、走る区間、道路側の支援設備、運行を止める条件を決めます。レベル4は、条件を外れたときにもシステム側で安全に停止することが基本で、人が即座に運転を引き継ぐ前提のレベル2と区別します。
停止後の乗客対応、現場への出動、運行再開の判断を別に用意します。
既存の自動運転の全体像では、乗用車やロボタクシーを含む市場全体を解説しています。本記事はその中でも、地域交通としてバスを運行する条件に絞ります。
レベル4でも、バスの仕事がすべて無人になるわけではない
レベル4でも車内対応や遠隔監視は残るため、省人化は運行全体の作業時間で確認します。 自動運転が代替する中心業務は、認知、予測、判断、操作です。
しかし、路線バスには運転以外の仕事もあります。
乗客の安全な乗り降りの確認、運賃の受け取り、車椅子利用者の支援、忘れ物や急病への対応、運休の案内、そして営業所での点検と、不具合時の代替車の手配。こうした仕事は、自動運転システムだけでは完結しません。
伊予鉄バスは2024年12月にレベル4路線バスの営業運行を始めました。国土交通省の手引き第2版(2025年7月、p.27)では、車内に特定自動運行主任者を1名配置する構成です。
運転席の人が操作しないことと、車内の業務をすべて無人化することは別だと分かります。
1人が複数台を遠隔監視する「1対N」は、省人化を考える一つの方法です。ただし、車内要員が別に残るか、同時に異常が起きても対応できるかで必要人数は変わります。
監視台数を増やすだけで、総人件費が下がると決めることはできません。
費用を考えるときは、運転だけでなく、遠隔監視、乗降支援、保守、異常時の対応を含めた作業時間と担当者を整理します。下表は、導入後も必要になる仕事の例です。
| 項目 | 導入前 | 導入後に残る仕事 |
|---|---|---|
| 運転 | 運転者が常時担当 | ODD内はシステム。条件外等は安全に停止し、所定の対応へ |
| 監視 | 車内から周囲を確認 | 遠隔監視、通信監視、アラート対応 |
| 旅客対応 | 運転者が兼務 | 乗降、運賃、車椅子、急病、問い合わせ |
| 車両管理 | 点検・整備・代替車 | センサー清掃、ソフト更新、走行ログ確認が追加 |
| 路線管理 | ダイヤと安全管理 | ODD、地図、道路工事、天候条件の管理が追加 |
1便当たりの総作業時間に加え、定時運行、利用者の移動、運休時の代替手段を評価します。時間が減っても、車両や通信などの費用が増えれば、全体の支出が減るとは限りません。
架空例|1人で4台を監視しても、総作業時間は増える場合がある
説明用に、4台を各6時間運行し、従来は運転者の24人時に、共通の準備・点検4人時を加えた計28人時だったとします。導入後も各車に1人の車内要員が6時間乗り、遠隔監視を1人が6時間、準備・点検に4人時かければ、計34人時になります。
| 作業 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 運転/車内対応 | 24人時 | 24人時 |
| 遠隔監視 | 0人時 | 6人時 |
| 準備・点検 | 4人時 | 4人時 |
| 合計 | 28人時 | 34人時 |
これは各地の実績でも、適正な配置人数の提案でもありません。1対Nという比率だけでなく、車内対応を含む全工程で工数を足すための例です。
実際には、休憩・交代要員、異常対応、保守なども計上し、安全上必要な体制を前提に比較します。
国内7事例で見る自動運転バスの現在地
導入年だけでなく、対象区間、実績の集計期間、現在の運休・手動運転を合わせて読みます。 国土交通省の2026年5月11日公開記事は、同年2月までに全国10カ所でレベル4自動運転が実装されたと説明しています。
これは当時の自動運転移動サービス全体の数で、9月時点のレベル4バス路線数ではありません。
営業運行、大学関係者等向けのシャトル、レベル2からの高度化など、目的も条件も異なります。以下は優劣のランキングではなく、導入と運用の違いを知るための比較です。
日々の時刻や運休は各運行者の最新案内を確認してください。
| 地域 | 主な主体 | 実績・運行状況 |
|---|---|---|
| 伊予鉄バス/松山市 | 伊予鉄バス、EVモーターズ・ジャパン等 | 2024年12月、約800mの路線でレベル4営業開始。車内主任者を配置 |
| ひたちBRT/日立市 | 茨城交通、先進モビリティ、産総研等 | 2025年2月開始。2026年1月までの集計で1,655便・延べ8,284人 |
| 柏の葉/柏市 | 東武バスセントラル、CooL4等 | 2026年1月、大学シャトルの2.6km中700mでレベル4。特定の便・条件に限定 |
| 塩尻市 | ティアフォー、アイサンテクノロジー、KDDI、アルピコ等 | 2025年1月に特定自動運行許可取得。2027年度の本格実装は目標 |
| 小松市 | 市、BOLDLY、ティアフォー等 | 2024年3月に有償運行開始。2026年9月14日から当面は手動で再開 |
| 岐阜市 | 市、BOLDLY、岐阜乗合自動車、日本タクシー | 2023年11月から2028年3月までの事業。現行案内では一部便のみ運行 |
| 境町 | 町、BOLDLY、マクニカ | 2020年11月、生活路線での定常運行開始を発表。車両調達と運行管理を分担 |
以下では、各地の公表内容と、導入時に確認する条件を説明します。
伊予鉄バスは、レベル4を既存の路線バス業務へ入れた
伊予鉄グループの2024年12月25日発表は、全国初のレベル4路線バスとして本格運行を始めたとしています。国土交通省の手引きでは、高浜駅と松山観光港を結ぶ約800mを対象としており、既存の交通拠点間の移動を維持する取り組みです。
2025年7月の手引きに示された構成は、EVモーターズ・ジャパンの車両に、車内の特定自動運行主任者1名を配置するものです。運転の自動化を公共交通に組み込んだ実績であり、全業務の無人化や黒字化まで確認されたという意味ではありません。
自社の提案でも、運転以外に誰のどの仕事が残るかを列挙し、乗客へのサービスと安全上の体制を保ちながら負担を改善できるかを検証します。単なる「無人化率」より、具体的な業務分担が導入判断に役立ちます。
ひたちBRTは、専用道から長距離の営業運行を実現した
RoAD to the L4の公表資料によると、ひたちBRTは2025年2月3日に乗務員乗車型のレベル4営業運行を開始しました。路線約8.7kmのうち専用道約6.1kmが対象で、開始時の計画は平日8便、最高速度40km/h以下です。
特徴は、一般車が入らない専用道を中心にしたことです。交差点や横断箇所は残りますが、一般車との複雑な駆け引きを減らせます。
つまり、最初に走りやすい区間を選び、一般道では手動運転へ切り替える設計です。
2026年2月26日更新の資料では、2025年2月3日〜2026年1月31日に、1,655便、延べ8,284人、約10,096kmを記録しています。手動運転の代替便で対応した日は除く暫定値です。
運行と利用が積み上がった結果として、区間を限った実装の具体的な規模を把握できます。
8,284÷1,655は、1便当たり約5.0人の乗車です。当研究所の計算による延べ乗車人数の平均で、車内の平均同時乗車人数や座席稼働率ではありません。
採算を検討するには、便ごとの収入、運行・保守費、乗務員の作業時間も必要です。専用道にも公道や歩行者との交差箇所があり、利用実績だけで安全性を判定せず、停止や介入の理由も確認します。
柏の葉は、既存の中型バスと一般道でレベル4へ進んだ
産総研の2026年1月13日発表は、東武バスセントラルとCooL4による特定自動運行の開始を報告しています。東京大学の学生・教職員・訪問者等を対象とする柏キャンパスのシャトル路線であり、一般向け路線バスと利用対象を区別します。
車両は中型路線バスのいすゞ「エルガミオ」がベースです。専用の小型車だけでなく、既存の旅客輸送に近い車格で実装した点に意味があります。
東京大学生産技術研究所の報告では、全長2.6kmのうち700mでレベル4、それ以外はレベル2の機能を用いて運行するとしています。特定の日・便に限られ、気象や交通などの条件でレベル4運行をしない場合もあります。
対象を区切って開始し、条件を明示する方法が参考になります。
塩尻市は、地図・通信・運行を地域の体制へ組み込む
塩尻市の取り組みは、車両だけでなく地域の運営体制を作っている点が特徴です。ティアフォーが車両と自動運転システム、アイサンテクノロジーが高精度3次元地図、日本信号が信号情報、KDDIが通信、損保ジャパンが保険とリスク評価を担います。
アルピコ交通とアルピコタクシーは、運転・遠隔監視を担います。国土交通省の手引きでは、地域のテレワーカー「KADO」への移転は、高精度地図の作成技術として紹介されています。
遠隔運行全般を担っているという意味には広げません。
塩尻市の2026年3月9日更新資料は、2027年度の本格的な自動運転サービス実装を目標に掲げています。許可取得などの進捗と、本格事業化の目標は区別します。
この体制から、自社でも運行、地図、通信などの担当を具体的に分け、地域に残す技術と外部委託する仕事を決めることが重要だと考えられます。
小松市は、有償の通年運行から運用上の課題を学んでいる
小松市は、2024年3月9日に小松駅と小松空港の約4.4kmで有償の通年運行を開始しました。2025年3月28日のレベル4認可は道路運送車両法に基づく車両の認可で、同発表は特定自動運行の許可を今後の手続きとしています。
車両認可の取得だけで、レベル4営業運行が始まったとは扱いません。
市の2026年9月11日公表によると、5月13日と8月18日に縁石への接触が起き、いずれもレベル2運行中でした。5月は自動運転用の操舵機構の不具合、8月はシステムの動きに対して手動介入した後の操作について、それぞれ説明されています。
別の事案として読み、レベル4の事故と混同しないことが必要です。
市の現行運行案内では、9月14日から当面、手動運転で再開しています。この事例からは、レベル2における介入の訓練に加えて、運休・調査・代替運行を含む継続計画を事前に決める重要性が読み取れます。
原因が異なる事案を一括りにせず、機構、操作、訓練を分けて点検します。
岐阜市は、中心市街地で利用経験を積み上げた
岐阜市の公表によると、GIFU HEART BUSは2023年11月25日〜2028年3月31日の約5年間を事業期間として設定しています。5年間の運行が完了したのではありません。
2026年3月までに乗車人数10万人を超えましたが、無料で利用するサービスであり、有料顧客数や運賃収入を示す数字ではありません。
運行主体は岐阜市、運行管理はBOLDLYです。岐阜乗合自動車はオペレーターと遠隔監視、日本タクシーはオペレーターを担うと示されています。
技術企業と地域の交通事業者が役割を分担しています。
2026年1月17日に導入した新型車両はレベル2で運行し、将来のレベル4を目指す計画です。確認時点の案内では、8月3日に中心部ルートの奇数便6便を再開し、偶数便6便と岐阜公園ルートは引き続き運休しています。
累計利用と、現在どの便を提供できるかを分けて評価する必要があります。
境町は、車両、運行、保守を分ける事業モデルを作った
BOLDLYとマクニカの2020年11月25日発表では、翌26日から境町の生活路線で定常運行を始めるとしています。マクニカは車両提供と保守、BOLDLYはルート設定、3D地図、車両設定、運行管理システム「Dispatcher」などを担当しました。
この開始発表自体をレベル4運行の実績とは扱いません。
この分業は、現在の自動運転バス事業にも通じます。というのも、自治体がすべての技術を持つ必要はないからです。
その代わり、車両、ソフト、運行、保守の境界を決め、障害時に誰が判断するかを明確にする必要があります。

自動運転バスの業界構造は、四つの役割で見ると分かりやすい
車両、協調インフラ、運行管理、旅客サービスの四つに分け、担当と責任をつなぎます。 自動運転バスのプレーヤーは多く、社名だけを並べると分かりにくくなります。
そこで、提供価値を四つに分けます。
1. 車両と自動運転システム
車体、センサー、コンピューター、自動運転ソフトを提供する役割です。小松市の事例では、ティアフォーのMinibusと、同社が開発を主導するAutowareを使用しています。
ひたちBRTでは先進モビリティが車両開発に関わっており、車両とシステムの組み合わせで条件を満たす必要があります。
この層は技術的な参入障壁が高く、安全基準、冗長化、型式や車両認可への対応が必要です。新規参入企業が車両全体を一から作るより、センサー清掃、制御部品、電源、車内設備など、限定した部品から入る方が現実的な場合があります。
2. 地図、道路、通信などの協調インフラ
車両単体で解けない場所を、道路側から支える層です。アイサンテクノロジーは高精度3次元地図、日本信号は信号情報、KDDIは通信と遠隔監視を担っています。
見通しの悪い交差点、信号、工事情報、通信の弱い区間などは、複数企業の連携が必要です。道路管理者との調整も欠かせません。
3. 運行管理と遠隔監視
運行計画、車両状態、異常、遅延などを確認する役割です。小松市の認可発表ではBOLDLYのDispatcherによる遠隔監視と、地域の交通事業者へのトレーニングを説明しています。
システム導入に加えて、誰が何を判断するかを定める仕事です。
遠隔監視の費用は、運行費の一要素です。1人が何台を見るかだけでなく、同時に異常が起きた場合の応援、現場へ到着するまでの時間、交代要員を含めて見積もります。
車両費、整備費、需要なども採算を左右するため、この役割だけで利益率が決まるとは考えません。
4. 旅客運送と現場サービス
実際に路線を運行し、乗客へサービスを提供する層です。伊予鉄バス、茨城交通、東武バスセントラル、岐阜乗合自動車、アルピコ交通などが当たります。
自動運転の導入後も、安全管理、ダイヤ、接客、営業所、代替輸送を担うのは交通事業者です。技術企業は、この現場を単なる「導入先」と考えるのではなく、共同で運行を作る相手として捉える必要があります。
導入判断では、自動運転バスの路線を先に選ぶ
守りたい移動と代替手段を決め、安全に走れる条件、費用、継続予算を比較します。 移動需要が少ない路線では、運賃収入だけで費用を賄いにくくなります。
一方、通院や通学の移動を確保する公共的な価値もあるため、収入だけで路線を否定せず、代替交通との費用・便益と、継続して予算を負担する主体を確認します。交通量や右左折などの条件は、安全に自動化できる区間を決める際の論点です。
導入しやすい路線には、次の特徴があります。
- 駅と空港、病院、役所など、移動の目的が明確である
- 同じ経路を繰り返し走る
- 専用道、構内、住宅地など、交通環境を整理しやすい
- バス停数と右左折が少ない
- 道路管理者、警察、交通事業者が同じ目的を持てる
- 通信、充電、待機場所、整備拠点を確保できる
ひたちBRTは専用道、小松市は駅と空港、柏の葉は既存シャトルの一部区間というように、各地域は自動運転を入れる理由が明確な場所を選んでいます。
反対に、「運転手が足りないから、赤字路線をそのまま自動化する」という考え方には注意が必要です。自動運転車両、地図、遠隔監視、保守の固定費が加わるため、需要が少ないだけの路線では採算がさらに悪化する可能性があります。
導入前には、次の順番で判断します。
| 判断項目 | 先に確認する問い | 見送りを考える状態 |
|---|---|---|
| 顧客価値 | 誰のどの移動を守るのか | 代替手段と比べた便益が小さい |
| 路線条件 | ODDをどこまで単純化できるか | 介入地点が多く、道路側対策も難しい |
| 運行体制 | 監視、乗降、事故時対応を誰が担うか | 責任分界が決まらない |
| 経済性 | 1便当たり総作業時間は減るか | 車内要員と遠隔要員が重複する |
| 拡張性 | 2路線目で再利用できる資産は何か | 毎回、地図・許認可・運用を作り直す |
MaaSの記事で述べたように、交通サービスはアプリだけでは続きません。自動運転バスも、需要、運賃、接続交通、運行主体まで一体で設計する必要があります。
NEXT STEP
次のステップ
「自動運転バスを走らせたい」を、続く運行事業へ。
対象路線、ODD、官民の役割、運行費、提携先、事故時の代替手段を整理し、参入・提携・待機・見送りの条件を明確にします。
自動運転バスへの新規参入は、運行の「残る仕事」から考える
自社の技術・顧客網を起点に、路線設計、設備、遠隔運行、保守から提供する仕事を選びます。 以下の四つは、公表事例を基にした当研究所の参入候補の整理です。
需要や利益が確約された領域ではないため、自社の実績、必要な認可・資格、顧客が支払う仕事から選びます。

参入方法1:路線選定と導入設計を支援する
自治体は、自動運転を入れたい場所ではなく、入れた後に持続する路線を選ぶ必要があります。需要データ、介入しやすい地点、道路改修費、運行費をまとめ、候補路線を比較する支援を提案できます。
自治体と運行者に、既存業務で不足している点と発注条件を確認します。
交通データ、都市計画、GIS、コンサルティングの経験を生かせる候補です。ただし、報告書を納品して終わると継続収益になりません。
運行後のデータ更新や路線改善まで契約に含める必要があります。
参入方法2:道路・通信・信号を一体で整える
車両が苦手な場所を特定し、カメラ、路側センサー、信号連携、通信補完を入れる方法です。通信会社、道路設備会社、測量会社、電機メーカーに機会があります。
難しさは、設備を増やすほど保守点が増えることです。また、車両メーカーごとに別仕様にすると、地域側の負担も大きくなります。
だからこそ、複数車種で使えるデータ形式と責任分界が競争力になります。
参入方法3:遠隔運行をサービスとして提供する
複数地域のバスを一つのセンターで監視し、アラート対応、運休判断、乗客案内を提供する事業です。BOLDLYのような運行管理基盤に加え、コールセンターや警備、交通運行の経験を組み合わせられます。
最大の論点は1対Nです。具体的には、監視者1人が安全に何台を見られるか、複数車両で同時に異常が起きたらどうするか、通信断時に車両をどう止めるかといった問いです。
これらを運行データで説明できなければなりません。
参入方法4:保守・安全証拠を標準化する
センサー清掃、始業点検、ソフト更新、介入ログ、事故調査、再発防止を一つの仕組みにする事業です。整備会社、保険会社、品質保証、サイバーセキュリティ企業が関われます。
小松市のレベル2運行の事案のように、人の監視・手動介入を含む方式では、表示、判断、操作、訓練の確認が必要です。レベル4ではシステムによる安全停止と、その後の現場対応・再開判断を分けて設計します。
共通の記録・訓練を提案する場合も、各車両・路線の条件に適合するか検証します。
イノベーション総研は、参入先を決める前に「自社だけが持つ資産」を確認します。たとえば、道路設備の顧客網、地域交通との関係、整備拠点、監視人材、事故データなどです。
そして、その資産が四つの役割のどこで効くかを見れば、提携先と収益モデルを決めやすくなります。
自動運転バスの事業化は、許認可と継続運行を両立させる
車両の認可、運行の許可、営業上の手続きと、安全・財務の運営計画をそろえます。 許認可の取得と、安全に続けられる運用の両方が必要です。
国土交通省の手引き(p.132)は、ひたちBRTについて、道路運送車両法の車両・装置の確認、道路交通法の特定自動運行許可、道路運送法の事業計画変更などを整理しています。一つの認可ですべての営業運行が可能になるわけではありません。
具体的な手続きは、計画に応じて関係行政機関へ確認します。
難所1:自動化率と安全性を混同しない
条件を外れたり異常を検知したりしたときに、システムが安全に停止できることも重要です。停止後は所定の担当者が状況を確認し、乗客の支援や代替輸送、再開の可否を判断します。
介入回数だけでなく、介入理由、発生場所、復帰方法、乗客への影響を記録する必要があります。自動化率を広報数字にせず、路線改善のデータとして使います。
難所2:実証費用から通常運行費へ移る
補助金や研究費で実証できても、通常運行の予算へ移れなければ事業は続きません。車両の減価償却、通信、地図更新、遠隔監視、保守、保険、代替車を含めた総費用を出します。
財務省の令和7年度予算執行調査に対する反映状況票は、令和8年度以降、既存の有人路線の置き換えや、1対Nなど事業性の向上に資する取り組みへ支援を重点化する方針を示しています。個別案件の採択や補助額を保証するものではありません。
申請時は当該年度の公募条件を確認し、初期費用と通常運行を支える資金を分けて計画します。
難所3:安全確認の運休と、代替交通を両立する
不具合が他の車両にも及ぶ可能性がある場合など、安全確認のために複数路線を止める判断が必要になります。運行継続を優先して危険を残すのではなく、安全を確認した代替車や他の交通手段で、利用者の移動を支える計画を用意します。
代替車、手動運転、他路線への振替、乗客案内を用意します。技術企業は事故原因の分析だけでなく、サービスをどう継続するかまで交通事業者と決める必要があります。
難所4:地域ごとの特注を増やしすぎない
道路も運行ルールも地域ごとに違います。ただし、毎回すべてを作り直すと、横展開できません。
共通化の候補は、点検の記録形式、アラート分類、教育、ログ、事故報告、契約の項目です。責任の範囲や具体的な手順は、車両・路線ごとに確認します。
一方、地域固有にするものは、ルート、速度、信号、天候条件、乗降支援です。再利用できる作業と個別対応の費用を分けると、2路線目以降の見積もりを検証しやすくなります。
スマートシティの記事でも、都市OSより運営主体が重要だと整理しました。自動運転バスも同じです。
というのも、技術を束ね、運行責任を持つ主体がいなければ、実証は増えても定着しないからです。
自動運転バスについてよくある質問
運行の段階、人の役割、参入する仕事について、よくある疑問を整理します。
まとめ|自動運転バスは「無人車」ではなく運行事業として考える
自動運転バスの成功は、車両導入ではなく、安全と地域の移動を継続して支えられるかで評価します。 自動運転バスは、実証から営業運行へ進みました。
専用道だけでなく、一般車と歩行者がいる道路でもレベル4の実装が始まっています。
一方、現在の事例が示すのは、車両だけでは地域交通を支えられないという事実です。路線、道路、通信、遠隔監視、旅客対応、保守、事故時の代替輸送を一つの運行として組む必要があります。
新規事業の機会は、そのつなぎ目にあります。自社が持つ顧客網、設備、運行、保守、データを確認し、四つの役割のどこで価値を出すかを決めます。
参入を判断するときは、車両の安全性能、必要な手続き、全体の作業量、維持する移動、予算の負担者を一緒に確認します。累計乗車人数や自動化率だけで成功と決めず、条件付きの運行を継続できる事業として検証することが重要です。
主な参考資料
運行者・自治体・研究機関・行政の一次資料を参照しています。本文の数値には時点と対象を示し、計画、公表実績、当研究所の計算・架空例を区別しています。
- 国土交通省「始まったレベル4の社会実装」
- 国土交通省「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き 第2版」(2025年7月)
- 伊予鉄グループ「自動運転バスレベル4 路線バス本格運行スタート」
- 産業技術総合研究所「柏の葉地区で自動運転レベル4の運行開始」
- 塩尻市「2027年度自動運転サービス実装に向けた取組」
- 小松市「自動運転バスの運行について」
- 岐阜市「GIFU HEART BUS 5年間の継続運行」
- BOLDLY・マクニカ「境町が自動運転バスの定常運行を開始」
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