投稿日:2026.10.02 最終更新日:2026.10.02
OKIと日立、ATM事業を統合し新会社を発足
ニュースの要点
OKIと日立製作所は2026年10月1日、ATM事業を統合する新会社「OHチャネルイノベーションズ」が発足したと発表しました。OKIのATM開発・生産事業を日立チャネルソリューションズへ移し、同社の商号を変更しました。
新会社は東京都品川区に本社を置き、資本金は86億円です。出資比率はOKIが60%、日立が40%となります。両社が3月に公表した計画に基づき、会社分割などの手続きを実行しました。
ATMを取り巻くキャッシュレス化や非対面取引の拡大に対応し、国内外で事業を成長させることが目的です。開発・生産を新会社にまとめる一方、販売は両社の既存体制を活用する方針です。今回の資料では、譲渡価格や具体的な業績影響額は示していません。
ニュース出典: OKI・日立製作所/原題「(開示事項の経過)株式会社日立製作所との事業統合及び合弁会社の発足に関するお知らせ」/2026年10月1日/発足・統合の開示
イノベーション総研の考察
キャッシュレス化はATMの役割を見直す理由になる
ATMは現金を引き出すための機械として知られますが、金融機関や設置先にとっては、顧客との接点を維持する設備でもあります。現金以外の決済が増えると、同じ機械を同じ方法で供給し続けるだけでよいかを見直す必要が生じます。
経済産業省の公表では、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%でした。この数字がATM利用の減少率を示すわけではありません。ただし、両社が3月の統合発表で、QRコードや紙幣の変化、非対面取引への対応を課題として挙げた背景は理解できます。
ATMの統合は、現金の機械を減らすだけでなく、変わる取引に対応する開発体制の再編です。
イノベーション総研は、既存設備を守ることと、新しい利用方法へ投資することの両立が、この事例の中心だと考えます。
開発・生産を統合し、販売網を残す境界が重要
すべての機能を一つにまとめる統合ではありません。両社は開発・生産を共通化しながら、販売は既存の体制を活用します。共通にできる技術と設備をまとめつつ、顧客との関係はそれぞれの強みとして残す構造です。
単なる業務提携では、開発計画や設備投資をそれぞれの会社で決める部分が残ります。共同会社へ機能と持分をまとめる今回は、共通製品への投資を同じ組織で検討する枠を作ります。具体的な決裁権限は未公表ですが、協力するだけでなく共同で運営する範囲を定めた点に違いがあります。
この方法なら、同じ課題を別々に解決する開発の重複を減らせる可能性があります。一方で、二つの販売網から異なる仕様や納期の要望が届けば、共同会社が何を優先するかの調整が必要になります。販売を残すことで、調整が不要になるわけではありません。
開発を共通化し販売を残す統合では、顧客要望の優先順位を共同で決める必要があります。
担当者の方が共同事業を検討するなら、会社を一つにする範囲ではなく、同じ基準で決めるべき投資と、各社が独自に決めるべき顧客対応を分けることが参考になります。
60対40の出資比率だけでは共同開発の速さは分からない
新会社はOKIが60%、日立が40%を出資します。これは資本構成の事実ですが、すべての製品開発をどちらが決めるかまでは示していません。製品のロードマップ、品質基準、顧客ごとの追加開発を、どの会議と権限で決めるかが実行上の論点です。
統合効果として確認したいのは、開発期間、共通部品の比率、調達費用、納期への対応です。機種数を減らすだけなら効率化に見えても、必要な顧客仕様を失えば販売機会を狭める可能性があります。費用の削減と、顧客が購入する理由を両方見る必要があります。
共同開発の成否は、出資比率ではなく、顧客に必要な製品を速く届けられるかで判断します。
今回の発足資料には、これらの改善実績はありません。新会社の設立を、製品競争力の向上が確認できた段階と同一視しないことが大切です。
海外展開とサービス化は別々の成果指標で追う
3月の発表は、海外市場への展開とサービスの拡大も掲げています。機器を納める事業と、運用や保守を継続して提供する事業では、収益の生まれ方が異なります。海外で販売台数が増えたことだけでは、サービス収益が育ったとは言えません。
イノベーション総研は、海外での新規採用先と、導入後のサービス契約の継続を分けて追うのがよいと考えます。既存顧客への供給を乱さず、新たな顧客の利用条件に対応できるかも重要です。売上だけでなく、保守体制や現地対応に要する費用を見る必要があります。
海外の機器販売と継続サービスは、異なる収益源として成果を分けて確認します。
逆に、統合対応へ人員を割くことで新製品の開発や顧客対応が遅れる可能性もあります。今後の製品発表、採用実績、サービス契約の説明が、統合の価値を確かめる材料になります。
まとめ
OKIと日立のATM事業統合は、開発・生産をまとめ、販売網を残す再編です。キャッシュレス化への対応という目的に対し、共同開発の速さ、顧客への供給、海外とサービスの収益を分けて確認することが、統合効果を判断する鍵になります。
執筆:イノベーション総合研究所
CONTACT
お問い合わせ
共同事業の役割と投資順位を決める
統合する機能と残す顧客接点を分け、成果の測り方を整理します。