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両利きの経営とは?探索が後回しになる5つの症状と対策

新規事業を任せたのに、既存業務が優先されて進まない。
部署を分けるだけで、解決するのでしょうか。

両利きの経営は、今の事業を磨く「深化」と、次の事業を探す「探索」を両立させる考え方です。実践で大切なのは、新規事業を任せることと、取り組める条件を整えることを一組にすることです。この記事では、探索と深化の違い、組織の選び方、後回しになる5つの症状と対策を解説します。888名の自社調査と架空の記入例を使い、予算・時間・評価・判断をどう変えるかまで整理します。

この記事のポイント

  • 「深化」は今の強みを磨くこと、「探索」は次の顧客や事業の可能性を試すこと
  • 新規事業を別部署にするだけでは、時間・予算・既存部門の協力は確保できない
  • 探索が後回しになる5つの症状を、経営が変えられるルールへ置き換える
  • まず一つの案件で、担当者の時間と次の判断条件を決める

目次

両利きの経営とは、今の収益と将来の事業を両方育てること

両利きの経営とは、既存事業の強みを磨く「知の深化」と、新しい顧客・技術・事業の可能性を試す「知の探索」を両立させる考え方です。今の事業を大切にしながら、次の収益源となる選択肢も育てます。

たとえば、工場の不良率を下げ、既存製品を安定して供給するのは深化です。一方、その工場で培った技術を使い、まだ取引のない業界に新しいサービスを試すのは探索に当たります。違いは、仕事の新しさだけでなく、顧客や提供方法について分かっていることの多さにあります。

研究者のO’ReillyとTushmanは、成熟した市場で効率や改善を追求しつつ、新しい市場で柔軟性や実験を重視する組織能力として説明しています。原著者による研究概要も参照してください。

深化は「より良く届ける」、探索は「誰に何を届けるかを確かめる」

既存事業では、顧客や販売方法がある程度分かっているため、計画に対する売上・利益・品質を追えます。探索では、その計画の前提自体が未確認です。同じ完成度の計画を最初から求めると、顧客に試す前に社内資料だけが詳しくなります。

既存事業の改善と新しい事業の探索で変える管理方法
比べる点 知の深化 知の探索
中心となる問い 今の顧客に、より良く届けるには? 誰の何を解決すれば、選ばれるか?
主な仕事 品質改善、原価低減、販売効率の向上 顧客の困り事の確認、試作品の利用テスト
進捗の見方 売上、利益、納期、不良率などの改善 仮説のどこが確認でき、何が否定されたか
計画の扱い 計画との差を埋める方法を考える 得られた事実に応じて前提を変える
お金の使い方 見通しを立て、安定運営と改善に使う 検証範囲を限定し、結果を見て追加する

探索でも売上や採算を無視してよいわけではありません。初期は「顧客がお金を払う理由」を確かめ、事業化が近づいたら、価格・原価・継続利用へ確認を進めます。違うのは、数字を見る必要性ではなく、いつ何を判断できるかです。

両利きは、全員に二つの仕事を上乗せすることではない

深化が生む利益、技術、顧客との信頼は、探索を支える資産です。既存事業の担当者を「変化を嫌う人」と扱ったり、探索だけを特別な仕事として持ち上げたりすると、協力関係が崩れます。

両立させる責任は、兼務する個人だけでなく、仕事と資源を配分する経営にあります。新規事業を任せるなら、減らす既存業務と、既存部門が協力する範囲まで決める必要があります。

両利きの経営が止まる背景には、担当者に偏った負担がある

新規事業の推進で精神的な負担が大きかった項目

既存事業部門との関係調整28.2%(250名)
本業との兼務による時間的制約25.8%(229名)
既存事業の評価指標では成果が正当に評価されないこと24.5%(218名)
大企業の新規事業関与者888名。複数回答から、部門調整・兼務・評価に関する3項目を抜粋。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

イノベーション総研が、大企業で新規事業に関わった888名に聞いた調査では、精神的な負担として、既存事業部門との調整、兼務による時間制約、既存の評価指標との不一致が挙がっています。上の図は、両利きの運営に関わる3項目を抜き出したものです。

この結果からイノベーション総研が重視するのは、担当者の意欲を測る前に、担当者へ集まっている仕事を分けることです。顧客への提案、試作品の検証、部門間の優先順位調整は、同じ人がすべて決められる仕事ではありません。

とくに、既存部門から人を借りることや、既存事業とは違う評価を認めることは、現場の説得だけでは解決しにくい論点です。担当者の権限を超える調整は、部門長や経営スポンサーが引き取るべき仕事です。

ここでいう経営スポンサーとは、その新規事業のために、部門をまたぐ人員・予算・優先順位を判断する経営側の責任者です。報告を聞くだけでなく、止まっている調整を動かす役割を持ちます。

自社で見直すなら、直近に延期した顧客面談や承認待ちの実験を一つ選んでください。理由が「担当者が忙しい」なら、何の業務と競合したのか、その業務を減らせるのは誰かまで確かめます。これは大企業の回答をもとにした点検の提案であり、両利きの導入効果を示す数値ではありません。

組織を分けるか、同じ組織で進めるかは事業の違いで決める

探索の進め方は、別組織を作る方法だけではありません。既存事業との違いが大きいか、同じ顧客や技術を使うか、同時に進める人員があるかで選びます。研究では、構造的・文脈的・時間的な両利きという三つの考え方が整理されています。

以下の使い分けは、O’ReillyとTushmanのレビュー論文を踏まえた、実務での検討方法です。組織の型を一つ選べば成功する、という意味ではありません。

既存事業と顧客や収益モデルが違うなら、探索チームを分ける

構造的両利きは、探索と深化で組織や運営を分ける方法です。製品販売の会社が月額サービスを試すように、販売方法、必要な人材、評価の時間軸が異なる場合に検討しやすい形です。

ただし、別部署にした結果、既存の営業や技術部門へ協力を頼めなくなっては意味がありません。顧客を紹介する窓口、技術相談の担当、共用設備の利用条件を決め、双方をつなぐ経営スポンサーを置きます。分社化まで行う必要があるかは、事業上の違いと管理の負担を比較して判断します。

既存の顧客や技術を生かせるなら、同じ組織の中で役割を分ける

文脈的両利きは、同じ組織の中で、既存業務を進めながら新しい可能性も試せる状態を作る考え方です。顧客対応の中で見つかった課題を、小さなサービスとして確かめる場合などが考えられます。

必要なのは「空いた時間に考えてよい」という許可だけではありません。試してよい範囲、相談する相手、既存業務と重なったときの優先順位が必要です。大きな設備投資や新しい専門人材が不可欠なら、個人の時間配分では解けないため、別チーム化も検討します。

同時に進める余力が少ないなら、重点を置く時期を決める

時間的両利きは、探索と深化のどちらへ重点を置くかを、時期によって切り替える方法です。探索で新しい方式を試し、手応えが得られたら安定して提供する運営へ移る、といった考え方です。

ただし、繁忙期が終わるまで探索を延期し続けることとは違います。探索を再開する日、使う人員、切り替えを判断する人を決めておきます。市場の変化が速く、既存事業を運営しながら継続的な探索が必要なら、時期をずらすだけでは機会を逃すおそれがあります。

最初から全社を一つの型に統一する必要はありません。既存部門の技術者と共同で検証し、販売モデルの検討だけを別チームで進めるなど、仕事ごとに境界を決められます。具体的な役割分担は、新規事業の推進組織の作り方も参考にしてください。

両利きの経営で探索が後回しになる5つの症状と対策

探索が進まないときは、予算・人材・評価・承認・移管のどこで止まっているかを確認します。以下の5つは、前述の理論と自社の組織支援の知見を踏まえた点検項目です。症状と、経営が変えるルールを一組にして見てください。

1.既存事業が未達になるたびに、探索の予算が削られる

新規事業の費用を一括で「将来への投資」と置くだけでは、短期の利益を守る場面で削減の候補になります。何が確認できる費用なのか、いつ判断するのかが見えないからです。

対策は、次の検証までに使える金額と、その結果で判断することを分けて承認することです。「事業が成功するまでの全額」ではなく、「顧客に試してもらう段階の費用」「有料提供を試す段階の費用」のように区切ります。

探索費を絶対に減らしてはいけないわけではありません。会社の資金繰りや前提が変われば見直しは必要です。その際は、経営が中止・縮小の理由と、検証を止める影響を残します。担当者が知らないうちに予算が消える運用を避けてください。承認資料は新規事業の予算と稟議で整理できます。

2.兼務者の顧客面談が、通常業務で延期され続ける

「週の何割を探索に使う」と決めても、既存業務の量と評価目標が変わらなければ、実際の予定は埋まったままです。探索が時間外の仕事になったり、顧客との約束が後回しになったりします。

兼務を決める会議では、探索時間と同時に、止める業務・引き継ぐ業務・引き継ぎ先を記録します。既存部門の上司にも合意してもらい、急な依頼で探索時間を使う場合は、誰が優先順位を決めるかを明確にします。

一人を専任にする余裕がなくても、毎週の検証日を固定し、その日は他の人が対応する仕事を決める方法はあります。大切なのは、兼務か専任かという名称より、顧客へ向き合う時間が実際に確保されていることです。

3.売上だけで評価され、顧客を確かめる仕事が残らない

探索の初期から売上だけを求めると、担当者は受注しやすい既存顧客向けの改良に寄りやすくなります。新しい用途の検証は、成果として説明しにくいからです。

初期は「どの顧客が、何に困り、何を使っているか」「提案した解決策を試すか」を確認します。面談の件数だけではなく、集めた事実によって対象顧客や提案をどう変えたかを評価してください。提供を始めたら、価格、提供原価、利用継続なども追います。

探索の評価を変えることは、成果を甘く見ることではなく、段階に合う事実を求めることです。事業を中止した場合も、担当者が重要な前提を早く確かめたことと、事業として投資を続けないことは分けて振り返れます。制度への落とし込みは新規事業の評価制度をご覧ください。

4.小さな実験でも、毎回同じ承認を待つ

顧客に見せる画面や質問を少し変えるたびに最初から稟議を通すと、検証結果を次の試行へ反映しにくくなります。承認者が多いことだけでなく、現場に任せる範囲が決まっていないことが問題です。

最初の承認で、費用上限、対象顧客、扱ってよい情報、提供範囲を決めます。その範囲内で変えてよいことと、再承認が必要な変更を分けてください。顧客の安全、個人情報、契約上の約束に関わる変更まで、担当者だけで決めてよいという意味ではありません。

経営会議では、細かな作業報告を増やすより、「継続する」「条件を変える」「止める」の選択肢を比べます。保留にする場合も、不足している事実、その確認担当、次の判断日を残します。

5.検証が終わっても、事業を引き受ける部署が決まらない

顧客の反応が良くても、販売、納品、問い合わせ対応を誰が担うか決まらなければ、探索チームは試験提供を続けるしかありません。資料の完成と、事業を運営できる状態は別です。

検証を始める時点で受け皿の候補を置き、何が確認できれば引き受けられるかを相談します。たとえば、販売を担う部門には対象顧客と価格を、運用を担う部門には必要工数と品質条件を確認してもらいます。

受け皿は既存事業部に限りません。既存の売り方と大きく違うなら、探索チームを事業組織にする方法や、外部企業との提携も候補です。移管の完了は、資料を渡したときではなく、受取側が仕事と責任を引き受けたときです。研究開発からの引き継ぎは研究開発の事業化でも解説しています。

自社で先に整える条件はどこですか?

近い状況を開いて、次に確認することを選んでください。

01 顧客の存在|社内の期待だけで探索を始めている

誰のどの問題を確かめるかを先に絞ります。

  • 想定顧客に会えるか
  • 既存の解決方法を把握しているか
  • 検証で分かることが明確か

探索で確かめることを見る →

02 収益の設計|検証前から大きな売上計画を求められる

今の段階で確認できる条件を分けます。

  • 顧客の支払い理由は確認できたか
  • 提供に必要な工数を見ているか
  • 追加投資の前提が決まっているか

段階に合わせた評価を見る →

03 実行体制|兼務者の時間が確保できない

探索時間と、減らす既存業務を同時に決めます。

  • 止める業務を決めたか
  • 引き継ぐ相手がいるか
  • 本人と上司が合意しているか

組織・人材開発の支援を見る →

04 経営の本気度|報告しても、必要な判断が決まらない

経営に求める判断を一つの文にします。

  • 誰が決めるか分かるか
  • 判断に必要な事実があるか
  • 次の判断日が決まっているか

新規事業リスク診断を見る →

05 社内の協力体制|別部署にしたら、協力を頼めなくなった

分ける仕事と、既存部門に頼む仕事を整理します。

  • 顧客紹介の窓口があるか
  • 技術相談の担当がいるか
  • 協力する時間と費用を合意したか

組織の分け方を確認する →

06 撤退の規律|検証を続ける以外の選択肢がない

継続・修正・停止を比べる条件を決めます。

  • 否定された仮説を残したか
  • 残る予算と期限が明確か
  • 追加検証で判断が変わるか

撤退基準の決め方を見る →

NEXT STEP

次のステップ

新規事業が止まる条件を、経営と現場で整理する

人材の不足なのか、社内調整なのか、判断基準なのか。イノベーション総研のCompassは、実行体制や経営の関与など6つの視点から、新規事業の課題を整理する診断サービスです。まずは無料の簡易診断もご利用いただけます。

兼務で新サービスを試すなら、予算・時間・判断条件を一緒に決める

図表のある資料を広げた机で、握手をする二人

ここでは、装置メーカーが保守サービスを試す架空の例で考えます。既存事業は装置の製造・販売です。探索では、故障前の点検に対して顧客が継続的に料金を払うかを確かめます。

技術者が既存業務と兼務し、営業が顧客との接点を提供する想定です。単に「協力してください」と依頼せず、次の判断までの約束を一枚にまとめます。

装置メーカーが保守サービスを試すときの合意例
合意すること 記入例 合意する相手
予算と検証範囲 最初は顧客ヒアリングと手作業の点検報告に限定。上限費用内で試し、システム開発費は結果を見て別途判断する 経営スポンサー、探索責任者
担当者の時間 技術者は毎週水曜の午後を検証に使う。その時間の定例対応は保守部門の別担当へ引き継ぐ 技術部門長、保守部門長、本人
評価する事実 点検が顧客のどの判断に役立ったか、提案料金で利用したい相手は誰か、提供工数はいくらかを残す 探索責任者、営業責任者
次の判断 実施前に判断日を決定。有料試行へ進む、用途を絞り直す、停止する、の選択肢を比べる 経営スポンサー
事業化後の受け皿 保守部門を候補とし、対応件数、必要人員、品質、価格の条件がそろったかを確認して引き継ぐ 保守部門長、探索責任者

この例の時間配分や検証範囲は、推奨値ではありません。自社の業務量と顧客への影響に合わせて決めます。重要なのは、探索の計画と、既存部門が引き受ける仕事を同じ場で合意することです。

判断日に顧客の支払意向は確認できたものの、点検工数が想定を超えていたとします。その場合、すぐ全面展開するのではなく、対象設備を絞る、価格を見直す、提供方法を変える、といった追加の選択肢を比べられます。「顧客に好評だった」だけでは、次の投資を決めません。

また、最初の顧客の要望へ応えすぎると、汎用サービスではなく個別の受託業務になる場合があります。目の前の受注が既存事業の売上として有益なのか、複数の顧客へ提供できる新事業になるのかを分けて評価します。

イノベーション総研では、組織図を変える前に、このような一案件の合意が実行できるかを見ることを勧めています。合意しても動かなかった箇所が、次に直す制度の候補になります。複数案件へ広げるときは、新規事業のポートフォリオ管理で、人と予算の配分を整理できます。

両利きの経営を始める6ステップ

最初から全社の組織・人事制度をすべて変える必要はありません。一つの探索案件で運用を試し、どこに経営の判断が必要かを確かめながら広げます。次の6ステップを、担当者だけでなく既存部門の責任者と一緒に進めてください。

1.既存事業を守りながら、新しく試す理由を言葉にする

将来の顧客変化に備えるのか、自社技術の別用途を探すのかを明確にします。「新規事業だから必要」では、既存部門に協力を求める理由になりません。今の事業との関係と、今回は扱わない領域も決めます。

2.改善する案件と、新しい前提を確かめる案件を分ける

案件ごとに、顧客・困り事・解決策・販売方法のうち何が未確認かを挙げます。既存製品の改善と新たな収益モデルの検証を分けると、同じ売上目標を置いてよいか、別の判断条件が必要かを考えられます。

3.探索の責任者と、経営スポンサーを決める

探索責任者は日々の検証を進め、経営スポンサーは部門間の調整や追加投資を判断します。両者が同じ人物でも、実行者として決めることと、経営として判断することは分けて記録します。

4.予算・時間・評価・承認・移管を一枚にまとめる

前章の記入例を使い、次の判断までの約束をまとめます。とくに、兼務者の上司や協力を頼む部門が合意しているかを確認してください。探索チームの中だけで予定を立てても、既存業務の優先順位は変わりません。

5.一つの案件で、検証と判断の会議を回す

会議では、何が確認できたか、まだ分からないことは何か、その結果どの行動を選ぶかを確認します。「引き続き検討」だけで終えず、担当と期限を決めます。顧客の事実が想定と違えば、計画を変えることも会議の成果です。

6.運用で止まった箇所を直してから、他の案件へ広げる

予算が使えたか、顧客面談の時間が守られたか、必要な部門が応答したかを振り返ります。判断待ちが残るなら権限の範囲を、兼務で止まるなら業務配分を見直します。案件を増やすのは、その修正が機能したことを確かめてからです。

人材の育成が課題なら、イノベーション総研の組織・人材開発サービスでは、自社の実在テーマを使った実践と、経営経験者による伴走を相談できます。一方、案件がどこで止まっているかを整理したい場合は、新規事業リスク診断「Compass」が関連します。人の育成と案件の診断を、同じ課題として扱わずに選んでください。

両利きの経営について、よくある質問

導入時に迷いやすい、分社化・兼務・予算・評価・中小企業での始め方をまとめます。

Q. 両利きの経営では、新規事業部門の分社化が必要ですか?

A. 必須ではありません。既存事業と顧客や収益モデルが大きく違うなら、別組織を検討します。ただし、既存部門の技術や顧客接点を使う窓口と、部門間を調整する経営側の責任者が必要です。組織を分けるだけでは両立しません。

Q. 探索と深化を、同じ人が兼務してもよいですか?

A. 兼務は可能です。ただし、探索に使う時間だけでなく、減らす既存業務と引き継ぎ先を決めてください。本人、既存業務の上司、探索責任者が優先順位に合意し、実際に検証時間を確保できることが条件です。

Q. 探索と深化の予算は、半分ずつに分けるべきですか?

A. 一律に半分へ分ける必要はありません。既存事業の資金需要、探索で確かめたいこと、許容できる費用を踏まえて決めます。探索は次の判断までの範囲を区切り、確認できた事実に応じて追加・縮小・停止を判断します。

Q. 売上が出る前の探索は、何で評価すればよいですか?

A. どの顧客の課題が確認でき、提案にどんな行動が伴ったかを見ます。面談件数や資料の量だけでなく、事実を踏まえて仮説をどう変えたかも記録します。事業化が近づいたら、価格、提供原価、継続利用などの確認へ進みます。

Q. 専用の新規事業部門がない中小企業でも実践できますか?

A. 専用部門がなくても、考え方は使えます。一つの案件に対象を絞り、探索する時間、費用上限、経営者が判断する日を決めるところから始めます。大企業と同じ部署構成を作るより、日々の既存業務と探索の優先順位を明確にすることが先です。

まとめ:最初の一案件で、経営と現場の約束を決める

両利きの経営は、既存事業を磨く活動と、新しい事業の可能性を試す活動を両立させる考え方です。同じ物差しで管理するのではなく、活動の違いに応じて予算・時間・評価を変えます。

別部署を作っても、既存部門の協力や経営の判断がなければ探索は止まります。まずは一案件を選び、予算が削られる、兼務で時間が消える、評価されない、承認を待つ、受け皿がない、のどこに問題があるかを確かめてください。

次の会議で決めたいのは、組織の理想像ではなく、誰が何を引き受け、いつ次の判断をするかです。探索担当者だけでは変えられない条件を、経営と既存部門の仕事に戻すところから始めましょう。

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ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

O’Reilly・Tushman「Organizational Ambidexterity: Past, Present and Future」(2013)。自社調査の出典は図の直下に記載。

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