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新規事業担当がやるべきこと|着任後30日の実務

新規事業を任されたら、まず何から始めればよいのでしょうか。

最初から企画書を完成させようとすると、上司の期待や顧客の実態が曖昧なまま、資料だけが増えることがあります。新規事業担当がやるべきことは、任された役割と事業の現状を確かめ、次に検証することを一つ決めることです。調査や勉強も必要ですが、何を決めるためかを先にそろえます。本記事では、最初の面談で確認すること、初週に作る3つの記録、着任後30日の行動計画と報告例を紹介します。すでに顧客や案件を引き継いでいる担当者を中心に、前任者がいない場合や兼務の場合の進め方も扱います。30日は計画を立てるための例であり、事業化の期限ではありません。

この記事のポイント

  • 最初の面談で、今月の到達点・任された権限・使える時間を確認する
  • 初週は「現状」「関係者」「未確認の前提」を3つの記録にまとめる
  • 30日計画は、資料の完成ではなく顧客の事実と次の検証を軸に組む
  • 報告では、分かったことと上司に決めてほしいことを分けて伝える

新規事業担当の仕事は、任された役割を確かめることから始まる

着任した担当者が最初に確認するのは、「新規事業を成功させる」という大きな目標と、自分が今月担う仕事の違いです。顧客候補を探すのか、既存案件を引き継ぐのか、販売を進めるのかで、必要な行動は変わります。

情報処理推進機構(IPA)の「デジタルスキル標準 ver.2.0」ビジネスアーキテクト編(2026年4月)では、事業や業務を変える目的の設定、戦略を行動に移すこと、関係者との連携が役割に含まれています。また、企業の規模や組織に合わせて役割を具体化する考え方が示されています。

この役割の考え方を初任者の実務に置き換えると、担当者がすべてを抱える前に、誰と何を進めるかを決めることが必要です。イノベーション総研では、初動の仕事を「自分で確かめること」と「上司や専門部門に判断してもらうこと」に分けて整理します。

IPAの標準はデジタル技術を活用した変革のための指針であり、すべての新規事業に同じ職種や人数を置く決まりではありません。ここでは、目的と役割を先に合わせる考え方を使います。任命した上司との面談では、次の内容を言葉にしてください。

  • 事業の狙い:どの顧客の、どの問題を解決したいのか
  • 今月の到達点:顧客課題の確認、試作の検証、販売など、何を任されているのか
  • 担当者の裁量:面談、費用の使用、社内協力の依頼はどこまで進めてよいのか
  • 使える資源:時間、予算、協力者、参照できる顧客記録は何か
  • 相談の節目:いつ、誰に、どの内容を報告するのか

その場で決まらない項目は、担当者が推測して埋めず、確認する人と回答期限を残します。上司側の役割も曖昧な場合は、新規事業部長が引き受ける判断と支援を併せて確認できます。

最初の1週間で、新規事業担当が作る3つの記録

初週は、現状マップ、関係者マップ、仮説・未確認リストの初版を作ります。いずれも特別な資料ではなく、「分かっていること」「相談先」「次に確かめること」を共有するための記録です。社内に既存の管理表があれば、同じ情報を二重に作らず、その表へ必要な欄を加えます。

1. 現状マップに、事実と見立てを分けて残す

現状マップには、対象顧客、抱えている問題、提案している解決策、検証や販売の結果、現在の予算・体制を書きます。各項目に、根拠となる資料の場所と確認日を添えてください。企画書を短く要約するだけでなく、どの説明を事実として扱えるかを確かめます。

たとえば「顧客の反応が良い」という引き継ぎがあっても、それだけでは購入を期待できるか分かりません。「面談した相手が便利そうと話した」は確認した発言、「導入されるだろう」は担当者の見立て、「予算を持つ人も同意しているか」は未確認です。この3つを同じ欄に混ぜないようにします。

以下は、工場の点検業務を支援するサービスを引き継いだ場合の架空の記入例です。実在の企業や支援実績ではありません。同じ説明でも、根拠を確かめると次に聞くことが変わります。

引き継ぎ時の説明を、確認した事実と次の質問に分ける例
引き継いだ説明 確認した事実 次に確かめること
現場の反応は良い 保全担当者が試作画面を操作し、点検の優先順位づけに使った記録がある 日常の点検でも使うか。今の方法から変える理由は何か
顧客企業は導入を検討している 現場担当者との面談記録はあるが、費用を承認する人には会えていない 誰が費用を持ち、どの条件なら購入を検討するか
技術的にはできる 試験用データでは動作した。顧客の実データや社内システムへの接続は未確認 実際に使う環境で、確認が必要な制約は何か

この場合、次の仕事は画面の見栄えを整えることより、利用・購入・導入の条件を確かめることです。原記録を見つけられない説明は「誤り」と断定せず、確認できていない情報として残します。

2. 関係者マップに、協力を頼む人と決める人を書く

関係者マップは、氏名の一覧ではなく、用件ごとの相談先を示す記録です。「営業部」とだけ書くより、「顧客面談への同席を相談する営業担当者」と書く方が、そのまま連絡に使えます。

  • 顧客や営業の事情を知る人:面談記録や、顧客への連絡方法を確認する
  • 開発・運用を担う人:試作の条件や、実際に提供するときの作業を確認する
  • 法務・情報システムなどの専門部門:契約やデータ利用など、担当者だけでは判断できない条件を確認する
  • 予算・方針を決める人:追加費用、対象の変更、継続・停止などを判断してもらう

各人には「何を、いつまでにお願いしたいか」と、確認結果を何に使うかを伝えます。相談に乗ってくれる人と承認権限を持つ人が同じとは限りません。判断する人が不明な用件は、まず上司に確認します。

3. 仮説・未確認リストから、最初に確かめる問いを選ぶ

仮説は、まだ確かめていない見立てです。「保全担当者は点検の優先順位づけに困っている」「その負担を減らせるなら予算を使う」といった前提を、別々に書き出します。それぞれに、現在の根拠、確かめ方、担当者、確認期限を付けます。

優先するのは、外れていた場合に事業の進め方が大きく変わる前提です。先ほどの例なら、現場で使えるかに加えて、費用を持つ人が何を評価するかが未確認です。すぐ調べられる競合機能だけを調査しても、この疑問は解消しません。

ただし、重大な技術上・安全上の制約が分かっている案件では、その確認を先にします。「まず顧客面談」と順番を固定せず、事業を進められない理由になり得る前提から選んでください。点検する範囲に迷う場合は、新規事業チェックリストの確認項目を使い、未確認の欄を拾えます。

着任後30日は、現状整理から最初の検証へ進める

30日計画は、初週の記録を作って終わりにせず、顧客の事実を増やし、次の検証を決めるために使います。以下は顧客候補と引き継ぐ案件がある場合の計画例です。上司との役割・権限の確認は初日から行い、後半まで待ちません。

着任後30日間の行動と、次の相談に持っていくもの
期間 主な行動 相談時に示すもの
1〜7日目 任された役割を確認し、資料・顧客記録・関係者を整理する 3つの記録の初版、確認できていないこと、協力を頼む相手
8〜14日目 顧客面談や商談への同席で、課題と現在の対処方法を確かめる 顧客の発言・行動の記録、着任時から変わった見立て
15〜21日目 最初に試すことを絞り、方法・費用・必要な協力を決める 検証計画、承認を求める範囲、結果を受けて判断すること
22〜30日目 承認された範囲で検証を始め、事実と残る疑問を報告する 取得した記録、または着手できない理由と解消の予定。次回判断日

30日という日数を守るために、未確認のことを確認済みに変えてはいけません。顧客の調整や専門部門の確認に時間がかかる場合は、必要な日程と待っている条件を示し、計画を修正します。

まだ顧客像がない段階では、対象とする仕事や困りごとを探すところから始めます。既に販売中なら、同じ計画を最初からなぞらず、受注・失注・継続利用の記録と、引き継ぐ提供業務を優先してください。

初動で困っていることから、次の確認先を選ぶ

近い状態を開くと、確認項目と記事内の説明・関連支援が分かります。

01 任された範囲が曖昧

事業の目標と、自分に任された仕事を分けて確認します。

  • 今月の到達点
  • 自分で決めてよい範囲
  • 上司に決めてもらう事項

最初の面談で聞くことを確認する →

02 前任者の説明だけでは現状が分からない

説明を支える顧客記録や決定記録へ戻ります。

  • 確認できた事実
  • 情報の出所と日付
  • まだ根拠のない見立て

現状の記録方法を確認する →

03 誰へ相談すればよいか分からない

協力を頼む相手と、承認する相手を区別します。

  • 顧客接点を持つ人
  • 専門的な確認を頼む人
  • 予算や方針を決める人

関係者の整理方法を確認する →

04 最初の検証を設計できない

仮説の整理から顧客テストまで、必要な支援範囲を確認できます。

  • 確かめたい前提
  • 使える人と時間
  • 結果を受けて決めること

検証設計・実行の支援を確認する →

05 兼務で時間が取れない

担当者の努力だけで補わず、業務の優先順位を相談します。

  • 実際に使える時間
  • 減らす既存業務
  • 予定が衝突したときの相談先

兼務時の時間の決め方を読む →

06 報告が作業の説明だけになる

判断依頼と、その根拠になる事実を先に置きます。

  • 今回決めてほしいこと
  • 新しく確認した事実
  • 次の担当者と期限

30日報告の記入例を見る →

NEXT STEP

次のステップ

最初の検証を、実行できる計画にする

上司への確認と現状整理を進めても、何を試すか決めきれない場合は、仮説整理・顧客テスト設計・実行を扱う新規事業立ち上げ支援をご確認ください。無料診断では、事業の現在地とつまずきリスクを整理できます。

顧客の反応を、次に確かめることへつなげる

顧客の話を聞くときは、サービスへの感想より、実際に困った場面と今の対処方法を確かめます。「便利そう」という反応だけでは、誰が使い、誰が費用を払うかまでは分からないためです。

過去の出来事と、現在の対処方法を聞く

工場点検支援サービスの例なら、「この機能は欲しいですか」だけでなく、「直近で点検順序を決めたとき、どの情報を見ましたか」「判断に迷ったのはどこですか」と聞きます。相手の許可が得られる範囲で、使っている帳票や作業の流れを確認すると、発言の背景を理解しやすくなります。

面談の記録は、相手の言葉、見せてもらったもの、担当者が考えたことを分けます。複数の相手から違う話が出たら、平均的な要望にまとめず、職務や利用場面の違いを確かめてください。面談の設計を詳しく進める際は、仮説検証の進め方も参照できます。

検証前に、結果をどう判断するか決める

検証計画では、対象、確かめる問い、方法、記録する事実、期限、判断する人をそろえます。試すこと自体を目的にせず、「どの結果なら次へ進み、どの結果なら変更するか」を上司と話しておきます。

たとえば、費用を承認する人へ面談し、購入の評価項目と予算を検討する時期を確かめる計画が考えられます。評価項目が分かれば次の提案を作れますが、面談できたことだけを受注見込みとして数えてはいけません。試作品を使う場合も、利用できることと、購入されることは別の確認です。

事業の見通しを変える情報が出たら、30日報告まで待たずに共有します。想定した課題がない、必要なデータを使えない、提供費用が計画を大きく超えるといった事実は、作業の優先順位を変える材料になります。

兼務の新規事業担当は、やらない仕事も上司と決める

兼務の場合、計画を立てる前に、新規事業に実際に使える時間を確認します。「空いた時間で進める」では、顧客との約束や部門間の調整を継続しにくくなります。既存業務と衝突したときに、どちらを優先するかまで上司と合わせてください。

イノベーション総研の組織支援の知見では、担当者から意思決定者までの距離や、部門間の協力が進行上の論点になります。この記事では、その考え方を、時間不足を担当者一人の努力で埋めず、仕事量と優先順位の問題として相談する方法に置き換えています。

使える時間と、減らす既存業務を一緒に示す

たとえば週の稼働時間が限られているなら、顧客との確認、記録の整理、上司への相談にどれだけ必要かを見積もります。面談時間だけでなく、日程調整や質問準備、記録をまとめる時間も含めてください。

その見積もりを、既存業務の予定と並べて上司へ示します。足りない場合は、既存業務の移管、検証範囲の縮小、期限の変更、協力者の追加から選びます。新規事業と既存業務で上司が異なるなら、担当者が片方へ黙って約束せず、両者の優先順位を合わせてもらいます。

調査・勉強・企画書は、使う場面から範囲を絞る

市場調査、勉強、企画書づくりは、どれも必要になる仕事です。ただし、着任直後にすべてを完成させようとする必要はありません。時間が限られるときは、顧客への確認を削る前に、調査範囲と資料の厚さを見直します。

顧客像を選ぶための調査なら候補同士の違いを調べ、次の面談に使う勉強なら業務と質問の作り方を学びます。企画書は、未確認の売上予測を細かくする前に、何を検証する予算なのかが伝わるようにします。

引き継ぎ案件の停滞が長く、現在の案を続ける前提そのものを見直す必要がある場合は、新規事業の立て直しで確認することへ進みます。初動の整理と、事業を継続するかの判断を混同しないためです。

30日報告は、上司に決めてほしいことを最初に書く

グラフ資料と電卓を置いた机で、向かい合う二人が握手している様子

30日報告では、作業一覧より先に「今回決めてほしいこと」を書きます。その後に確認できた事実、残る疑問、提案の理由を並べると、上司が判断しやすくなります。

同じ架空の工場点検支援サービスについて、現場担当者には会えたものの、購入判断の条件が分からなかったとします。このとき「面談を実施した」とだけ報告するより、次の面談を誰に依頼し、何を確かめたいかまで書くと相談が具体化します。

工場点検支援サービスで、次の検証を相談する報告例
報告する内容 記入例
今回決めてほしいこと 本開発の判断前に、購入条件を確認する面談を進めてよいか
確認できた事実 現場担当者が試作画面を点検順序の検討に使った。一方、購入を承認する人とは未面談
変わった見立て 「現場が使えば購入につながる」と考えていたが、費用の承認条件は別に確かめる必要がある
提案と代替案 営業担当者に紹介を依頼し、費用を承認する人へ面談する。紹介が難しければ、別の顧客候補で確認する
必要な協力と次回報告 上司に営業部門との調整を依頼する。面談の可否を翌週の定例会議で報告し、実施後の判断日を決める

この表は書き方の例であり、面談が取れることや購入されることを示す実績ではありません。実際の報告では、自社の記録、必要な費用、担当者名、回答してほしい日付に置き換えて使います。

分からなかったことにも、次の確認先を添える

未確認が残った場合は、その理由と取得方法を示します。顧客に会えなかったのか、資料が存在しないのか、専門部門の回答を待っているのかで、上司ができる支援が違います。

不明な欄を埋めるための推測は不要です。「購入条件は未確認。営業部門へ紹介を依頼中。翌週に面談可否を回答予定」といった書き方なら、報告後の行動を決められます。

会議の後は、決まったことを同じ記録へ戻す

会議で承認・変更・保留になった内容は、理由、実行する人、期限とともに残します。報告資料だけに決定を閉じ込めず、現状マップや仮説・未確認リストも更新してください。

これにより、次の担当者や協力者が「前回何を決めたのか」を資料の山から探す負担を減らせます。初月の成果は完成した企画書だけではなく、同じ事実を見て次の仕事を決められる状態をつくったことにもあります。

初めて担当する方からよくある質問

引き継ぎ、学び方、顧客との接点、初月の評価で迷う場合の考え方を整理します。

Q. 前任者も引き継ぎ資料もない場合、誰に聞けばよいですか?

A. 任命した上司に事業の狙いを確認し、営業など顧客接点を持つ人、予算や過去の決定を把握する人へ話を聞きます。話が食い違う箇所は一つの結論にまとめず、双方の説明と確認先を残してください。

Q. 最初に学ぶなら、どの分野を優先すればよいですか?

A. 今週の仕事に使う知識から選びます。顧客面談をするなら質問の作り方、収益を確かめるなら価格と原価、試作品を使うなら技術・安全上の制約を学びます。先に次の行動を決めると、学ぶ範囲も絞れます。

Q. 顧客に直接会えないままでも、初動は進められますか?

A. 問い合わせ、商談記録、失注理由、利用記録の確認から始められます。ただし、記録が古い場合や相手の役割が分からない場合は、現在の需要を確認したことにはなりません。顧客接点を持つ部門に同席や追加確認を相談します。

Q. 着任後30日で売上が出なければ、失敗でしょうか?

A. 売上の有無だけでは判断できません。既に販売中の案件と、顧客課題を確かめる段階の案件では、初月に担う仕事が異なります。着任時に合意した到達点に対し、何が分かり、次に何を決められるようになったかを報告します。

まとめ|新規事業担当は、次に確かめることを一つ決める

新規事業担当が着任直後にやるべきことは、役割・権限・使える時間を確認し、事業の現状と未確認の前提を共有することです。初週に作る3つの記録を、顧客との対話、検証計画、上司への報告につなげます。

30日は一つの計画例です。日数や資料の完成度だけを追わず、何が分かり、何を変更し、次に誰の判断が必要になったかを確かめてください。まず上司との面談で、「今月、何が分かれば次へ進めるのか」を一つ決めるところから始められます。

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担当者だけでは決められない課題を整理する

初月に任されたことと、使える時間・協力者が合っていない場合は、そのずれを整理してご相談ください。新規事業の進め方や、検証を実行する体制について無料相談を受け付けています。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準 ver.2.0」(2026年4月、ビジネスアーキテクト編)。該当箇所に原資料へのリンクを記載しています。

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