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ステージゲート法とは?新規事業の判断基準と設計6手順

「審査会では毎回『継続』になる。何が分かれば次に進めるのか、担当者にも見えていない」。

ステージゲート法は、新規事業の調査・開発を段階に分け、節目ごとに次の投資を決める仕組みです。機能させるには、確認できた事実と判断基準を照らし合わせ、次の予算・人・期限まで決めます。会議の回数や提出資料を増やすだけでは、判断は変わりません。顧客の課題を探す段階と、販売を広げる段階では、必要な材料も違います。この記事では、ステージとゲートの違い、判断に必要な3つの材料、設計の6手順を解説します。さらに「進む・中止・保留・やり直し」の使い分けと会議の記録例を示し、自社の案件で何を確かめ、誰に判断してもらうかを整理します。

この記事のポイント

  • ステージは事実を確かめる期間、ゲートは次の投資を決める場として分ける
  • 確認できた事実・判断基準・次の予算と人を一組でそろえる
  • 進む・中止・保留・やり直しを使い分け、判断を先送りしない
  • 会議の後に動けるよう、結論・理由・担当者・期限を記録する

目次

ステージゲート法とは?調査・開発と投資判断を分ける仕組み

ステージゲート法は、事業の検討を段階に分け、節目ごとに追加の投資を判断する方法です。「ステージ」は調査や試作を行う期間、「ゲート」はその結果から次に進むかを決める場を指します。

図表のある資料と電卓を置いた机で、握手をする二人

ロバート・G・クーパーが体系化した手法で、Stage-Gate Internationalの公式解説でも、仕事を行う段階と、投資を判断する節目を分けています。ゲートでは案件の評価に加え、次の予算や人員を決めます。

ステージでは、次の判断に必要な事実を集める

ステージの目的は、決められた期間を消化することではありません。「この顧客は本当に困っているか」「試作品は現場で使えるか」など、次の投資に影響する問いを確かめることです。調査、技術開発、顧客との対話を必要に応じて並行して進めます。

例えば、工場の設備点検を支援するサービスを考えているとします。現場担当者が画面を使えるかを試す仕事と、工場長が費用を払う条件を聞く仕事は別です。両方を同じ期間に進めれば、操作性だけを確認して販売準備へ移る取り違えを防げます。

本記事の工場向けサービスは、説明用の架空例です。実際の支援実績や、すべての案件に当てはまる成功手順を示すものではありません。

ゲートでは、過去の進捗より次に使うお金と人を決める

「予定どおり進んでいるか」を共有する進捗会議に対し、ゲートで決めるのは「この結果を踏まえて、次の仕事に投資するか」です。予定どおり試作が終わっても、顧客が必要としないと分かれば、修正や中止を検討します。

反対に、作業が遅れていても、その理由と残る確認事項が明確で、追加の検証に価値があるなら続ける選択肢があります。遅延を無条件に認めるのではなく、何を確かめるために、いくら・誰の時間を追加するかを判断します。

イノベーション総研は、ゲートの成果を「審査を通ったこと」ではなく、次に許される仕事と、まだ許されない仕事が関係者に伝わったことと捉えます。小さな試験の承認を、設備の本発注や全社展開の承認と混同しないためです。

公式モデルの段階を参考に、自社の投資の節目へ置き換える

公式のDiscovery-to-Launch Processは、探索に続き、初期の見極め、事業性の検討、開発、試験・検証、市場投入という流れを示しています。

ただし、新規事業に適用する際に、この区切りをそのまま社内の会議名にする必要はありません。法人向けサービスなら、顧客を探す、小さく提供する、有料提供を始める、提供先を広げるといった仕事に置き換えられます。

大切なのは、後から戻すことが難しい投資の前に確認を置くことです。設備を発注する、専任者を採用する、顧客と長期の約束をする。その直前に何を確かめておくべきかを考えると、ゲートの位置が決まります。

新規事業のステージゲートでそろえる3つの材料

判断に必要なのは、確認できた事実、事前に決めた基準、次に使う予算と人の3つです。公式モデルの「成果物・基準・判断結果」を、現場で扱いやすい材料へ置き換えると、次のように整理できます。

1. 確認できた事実を、意見や期待と分ける

「顧客の反応がよかった」だけでは、追加投資の根拠として足りません。誰が、どの場面で、何を評価したのかを残します。発言、利用記録、見積もりへの回答、試験結果など、別の人が確認できるものを示してください。

工場向けサービスで、保全担当者から「点検漏れが減りそう」と言われたとします。これは利用者の期待を確認した事実であり、工場長が予算を出すと決めた事実ではありません。実際の点検で使った記録や、費用負担者の回答を追加で確かめる必要があります。

資料には「確認済み」「推測」「未確認」を分けて書きます。結論に都合のよい発言だけを選ばず、使わなかった理由や導入を断った条件も載せると、対象顧客や仕様を見直す材料になります。

2. どの結果なら進めるかを、検証前に決める

結果が出た後に合格条件を考えると、続けたい人と止めたい人で評価が変わります。そこで、検証を始める前に「何が分かれば、どの投資を認められるか」を判断者と合意します。

例えば、利用者への聞き取りを終えたことではなく、「現在の点検方法で困る場面を特定し、次に試す改善案を一つ選べること」を初期検証の条件にします。本開発へ進む判断なら、購入条件、現場で使うための制約、提供費用など、確認する範囲を広げます。

売上や利用率など数値を使う場合も、対象、測る期間、集計方法を合わせます。無料の試用と有料契約、全登録者と継続利用者が混ざった数字では、同じ基準で比べられません。

3. 承認する予算・担当者・期間を、その場で決める

案件に賛成することと、実行できる状態にすることは別です。次に進むと決めたら、使える予算、担当する人、割り当てる時間、着手日、次の判断日をそろえます。

「営業部が協力する」ではなく、「営業担当が対象顧客への面談調整を担い、上司がその時間を確保する」と具体化します。兼務なら、既存業務との優先順位を本人に任せず、部門責任者が調整します。

予算や人を確保できないときは、条件がそろうまで保留するか、今の体制で確かめられる範囲へ計画を縮めます。人がいないままの承認を、担当者の努力で埋める運用にしないことが重要です。

ステージゲートを設計する6つの手順

他社の審査表を写す前に、自社のどの投資判断を改善したいかを決めます。以下の6手順は、初めて制度を作る場合だけでなく、既存の審査会を見直す場合にも使えます。

1. 大きな投資の前に、判断の節目を置く

最初に、案件が進むと増える費用や約束を書き出します。試作費、本開発費、量産設備、専任者の採用、販売や保守の契約などです。そのうち、取り消しや変更の負担が大きいものの直前をゲート候補にします。

工場向けサービスなら、顧客への聞き取りを始める判断と、専用システムを本開発する判断では、必要な材料が違います。どちらにも同じ詳細な収支計画を求めると、初期の探索が止まります。

まずは進行中の一案件を選び、「次の大きな支出は何か」「その前に何を確かめるか」を確認してください。全案件へ一斉に細かい審査を追加するより、必要な節目を見つけやすくなります。

2. 段階ごとに、確認する問いと証拠を変える

ステージ名を決めたら、その段階を終えるときに答えが必要な問いを書きます。「市場調査完了」のような作業名ではなく、「どの顧客のどの課題を対象にするかを説明できる」と到達状態で表してください。

下表は、法人向けサービスの検討に置き換えた例です。公式モデルの段階数を再現した表ではなく、社内で次の投資を判断する際の確認例として使います。

事業の段階に応じた、投資前に確かめることと判断材料
いま検討している投資 先に答えが必要な問い 確認する材料の例
顧客課題の調査 誰の、どの困りごとを調べる価値があるか 具体的な利用場面、現在の対処方法、自社が取り組む理由
試作と顧客検証 どの解決案を、誰と試せるか 顧客との対話記録、試す機能、協力者、検証計画
本開発と有料提供の準備 顧客が買い、現場で使い、自社が提供できるか 購入・導入条件、試験結果、価格と原価の前提、運用責任者
販売先や提供量の拡大 顧客が増えても、品質と採算を維持できるか 継続利用、顧客別の工数・費用、標準手順、追加人員の計画

同じ「売上見込み」でも、初期は顧客の課題や購入条件に基づく仮説、拡大前は受注や継続の記録に基づく見通しになります。数字の精密さだけをそろえず、何を根拠にしているかを確認します。

技術の実現性を小さく試す計画はPoCの進め方、顧客数や提供量を増やす前の条件は新規事業をスケールさせるための設計で詳しく整理しています。

3. 必須条件と比較する観点を分け、未達の扱いを決める

判断基準には、満たさなければ次の投資を認められない「必須条件」と、複数の案を比べる「評価の観点」があります。この二つを一つの総合点に混ぜないようにします。

必須条件の例は、試験の安全性、必要な許可、顧客情報の扱いなどです。何を必須にするかは事業ごとに異なるため、必要な専門部署と確認します。一方、顧客への価値、競合に対する強み、自社の方針との整合、採算の見通しは、根拠をそろえて比較する観点になります。

例えば、市場の規模を高く評価できても、安全な試験条件が整っていなければ現場で試す承認はできません。総合点が高いからといって、未達の必須条件を打ち消さないようにします。

さらに、未達なら即中止なのか、条件を変えて再検証できるのかを決めます。基準と同時に選択肢を用意することで、「合格ではないが、とりあえず続ける」という曖昧な結論を減らせます。

4. 判断する人と、予算・人を出す人をそろえる

ゲートには、事業を評価するだけでなく、次の仕事に必要な予算や人員を決められる人が必要です。専門家の意見を聞く場と、最終的な配分を決める場を区別してください。

基本は、事業チームが材料をそろえ、専門部署が自分の領域を確認し、判断者が次の投資を決める分担です。事務局は資料や記録を整えますが、判断者が不在のまま結論を代わりに引き受ける役ではありません。

判断者と部門の責任者が別なら、審査前に配分可能な予算と時間を確認します。会議の最後に「人は所属部門へ別途相談」となると、承認した計画が実行されません。

小規模な組織では、一人が複数の役割を担っても構いません。ただし、「専門的な妥当性を確認したのか」「会社として投資を承認したのか」が記録から分かるようにします。

5. 会議資料を、判断に必要な内容へ絞る

資料の冒頭に「今回、何を決めてほしいか」を一文で置きます。その後に、確認できた事実、基準との比較、残る疑問、選択肢、必要な予算と人を並べます。

会社紹介や案件の経緯を毎回最初から説明する必要はありません。過去の資料は参照先として残し、今回変わった事実と、それによって変わる判断を中心にします。元の試験結果や顧客記録には、必要な人がたどれるようにしてください。

「薄い資料にすること」が目的ではありません。判断者から同じ確認が繰り返されるなら、必要な根拠が抜けている可能性があります。逆に、誰も判断に使わない欄があれば、提出を必須にする理由を見直します。

6. 承認後を確かめ、基準や進め方を更新する

会議が終わったら、約束した予算・人員が実際に付いたか、指定した検証が進んだかを確認します。判定だけを記録しても、次の仕事が始まらなければゲートは機能していません。

顧客や技術の前提が変わった場合は、基準を見直すことも必要です。その際は、変更の理由、変更前後の内容、承認した人、適用する時点を残します。結果が悪かったことだけを理由に、その案件を通すための基準へ書き換えないようにします。

運用の点検では、審査の通過率を目標にするより、保留が長引く理由、承認後に着手できない原因、何度も追加される確認事項を見ます。審査を増やすべきか、準備や権限の配置を直すべきかを切り分けられます。

ゲートで判断が止まる原因を確認する

近い状態を開くと、確認項目と記事内の説明・関連支援が分かります。

01 何が分かれば次に進めるかが曖昧

今の段階で答えが必要な問いを絞り、確認する事実を決めます。

  • 次に承認したい投資を挙げる
  • 投資前に確かめる問いを選ぶ
  • 確認方法と合格条件をそろえる

判断に必要な3つの材料を読む →

02 承認されても、人や予算が付かない

案件への賛成と、実際の配分を分けて確認します。

  • 人員を出す部門を確認する
  • 担当者が使える時間を決める
  • 予算と着手日を記録する

判断者と予算・人の決め方を読む →

03 何度も保留になり、再開できない

何を待っているのかと、いつ見直すのかを明確にします。

  • 保留と再検証を区別する
  • 再開条件を一文にする
  • 見直し日と管理する人を置く

4つの判断の使い分けを読む →

04 会議の結論が、次の仕事につながらない

結論だけでなく、判断した理由と次の実行条件を残します。

  • 事実と推測を分ける
  • 担当者と期限を記入する
  • 承認した範囲と対象外を残す

判断記録の記入例を見る →

05 判断材料を、第三者と整理したい

顧客・採算・体制など、どの前提が弱いかを診断する支援があります。

  • 現在の事業段階を整理する
  • 経営と現場で見方が違う点を挙げる
  • 診断後に決めたいことを定める

新規事業リスク診断 Compassを見る →

06 どこから見直すか、まだ分からない

無料診断を、課題を整理する入口として使えます。投資の可否を自動で決めるものではありません。

  • 分かっている事実をそろえる
  • 未確認の項目を挙げる
  • 結果を基に社内で話し合う

新規事業のリスク診断を無料で試す →

NEXT STEP

次のステップ

次の投資を決める前に、不足する判断材料を整理する

顧客の需要、採算、実行体制、経営や社内の協力、撤退基準。Compassは、新規事業をこれらの視点から点検し、見直す課題を整理する診断サービスです。顧客への検証や、社内での投資判断と組み合わせて活用できます。

撤退基準は、決めるだけでなく実際の判断に使う

新規事業では、基準の文書を作ることと、その基準に沿って判断することを分けて確認する必要があります。イノベーション総研の調査では、開始前に撤退・中止基準を明文化し、実際の判断でも守られたという回答は24.3%でした。

これは、大企業で新規事業に関わる888名のうち216名の回答です。イノベーション総研は、この結果から、基準の有無だけでなく「直近の判断でどう使ったか」まで点検することが重要だと考えます。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

自社のゲートに当てはめるなら、最近継続した案件を一つ選び、当時の基準と結論を並べてみてください。未達の条件があったのに続けた場合は、どの根拠で例外を認め、何を追加で確かめると決めたのかを確認します。

新しい材料によって見込みが変わったなら、基準を見直す余地があります。一方、「ここまで費用をかけたから」「上層部が期待しているから」だけでは、これから追加する投資の根拠になりません。過去に使った費用と、次の投資で得られる価値を分けて比べます。

ステージゲートの結論は「進む・中止・保留・やり直し」の4つ

判断を曖昧にしないために、継続以外の結論も使い分けます。公式モデルにはGo・Kill・Hold・Recycleという選択肢があります。以下は、それぞれを社内の行動へつなげるための実務上の使い分けです。

1. 進む(Go):必要な条件がそろった範囲の投資を承認する

次の仕事に必要な条件を満たし、その投資を行う価値があると判断した状態です。将来の事業成功を保証する判定ではありません。今回、どこまでの仕事を認めるかを示します。

工場向けサービスで、顧客の購入条件と試験の実施条件を確認できたなら、限定した有料試験を承認できます。だからといって、全顧客向けの本開発や大規模な営業採用まで自動的に認められるわけではありません。

記録には、実施する仕事と投資上限に加え、対象外の仕事も残します。担当者が「通過したので全部進めてよい」と受け取らないようにするためです。

2. 中止(Kill):現在の案への追加投資を止める

事業の中心となる前提が崩れ、修正して確かめる価値のある案も見いだせない場合などに、現在の案への追加投資を止めます。担当者が頑張ったかどうかとは分けて判断します。

例えば、狙った顧客の困りごとが想定より小さく、価格や提供範囲を変えても利用する理由を作れないと分かった場合です。「調査を続ければ何か見つかる」と延長する前に、追加で何を知れば判断が変わるのかを確認します。

中止時には、顧客や協力先への連絡、契約やデータの扱い、再利用できる成果物を整理します。費用を止めるだけでなく、次の案件へ知見を残すところまでを終了の仕事に含めます。

3. 保留(Hold):待つ理由と再開条件を明確にする

案件自体を直ちに否定するわけではないものの、予算、人員、顧客側の時期などの条件がそろわず、着手を待つ状態です。何を待っているかが説明できなければ、保留ではなく判断の先送りになっていないかを確認します。

工場向けサービスの有料試験に顧客の合意があっても、対象設備を止められる時期が先なら、試験開始まで保留することがあります。その場合は、設備の停止予定を確認する人、再開を判断する日、待機中に認める費用を決めます。

見直し日に条件が整わなければ、保留を続ける理由を再評価します。期限を更新し続けるだけでなく、代替顧客で試す案や中止する案とも比べてください。

4. やり直し(Recycle):不足する確認を終えてから再審査する

次の投資を判断する材料が不足しており、追加の調査や試験で確かめ直す状態です。待つことが中心の保留と異なり、判断材料を作るための仕事が必要です。

利用者の評価はよいものの、費用負担者の購入条件が分からないなら、同じ操作試験を繰り返すのではなく、価格・承認手続き・導入時期を確認します。何が分かれば再審査できるかを具体化してください。

対象顧客や提供方法を変える場合は、前の検証結果をそのまま使える範囲も確認します。再検証の費用と期限を決め、新しい結果によって進む案と中止する案を比べ直します。

会議後に動けるステージゲートの判断記録を作る

会議は「今回決めること」から始め、決めた内容を実行できる記録で終えます。長い議事録を作るより、参加していない人でも、判断の根拠と次の担当が分かることを優先します。

最初に判断を依頼し、事実と基準を順に確認する

事業チームは、会議の冒頭で「本開発を承認してほしい」のか、「追加検証の費用を認めてほしい」のかを伝えます。そのうえで、前回から分かったこと、基準を満たした点、残った点を説明します。

判断者は、証拠の確かさと、次の投資を行う価値を確認します。意見が分かれたら、何についての意見が違うのかを分けます。顧客の需要を疑っているのか、投資規模を懸念しているのか、人員の都合が付かないのかで、次の対応は変わります。

本開発に必要な条件を詳しく整理する場合は、PoCから事業化へ移るときの設計も参考になります。技術試験の結果と、事業を継続して提供する条件を分けて確認できます。

曖昧な「継続」を、費用・担当者・期限のある記録に変える

例えば、工場向けサービスで利用者の評価は得られたものの、購入と導入の条件が未確認だったとします。「引き続き検討」では、次の会議にも同じ報告が上がりかねません。

以下は、この状況を「やり直し」と判断し、購入条件の確認へ進める記入例です。2026年10月1日の会議を想定しています。日付、金額、配分時間は説明用の架空の設定であり、推奨予算や標準期間ではありません。

購入条件を再確認する案件の、ゲート判断記録の記入例
記録する内容 記入例
今回決めること 工場の設備点検支援サービスを、本開発へ進めるか
確認できた事実 保全担当者は試作画面を使って点検作業を完了した。操作上の問題と改善要望は記録済み
基準との比較 現場での操作は確認できた。一方、本開発前の必須条件とした購入・導入条件の合意は未確認
結論と理由 やり直し。本開発は承認せず、費用負担者と情報システム担当への確認を行う
承認する範囲 追加確認費20万円を上限とし、4週間で実施。本開発の発注と新規採用は対象外
担当と確保する時間 事業担当に週4時間、営業担当に週2時間を配分。事業担当が面談・条件整理、営業担当が顧客調整を担い、各所属部門の責任者がこの配分を承認
次の判断条件と日程 購入条件、接続条件、提供原価の見込みをそろえ、10月29日に事業責任者が再審査。必要条件を満たせなければ、本開発を承認せず計画修正か中止を検討

この記録で重要なのは、例の金額や期間ではありません。「本開発を止めたまま、何を追加で確かめるか」を明確にしている点です。自社で使うときは、役割名を実際の担当者名へ置き換え、日付と配分時間を実際の計画に合わせて更新します。

会議後は、判断者、事業チーム、協力する部門が同じ記録を確認します。担当や期限に認識の違いがあれば、その時点で解消し、会議の結論だけが一人歩きしないようにします。

条件付き承認は、未達時に止める範囲まで決める

次へ進む必須条件を満たしていても、追加の確認が残る場合があります。その際に条件付き承認を使うなら、許可する作業、条件を満たす期限、確認する人、未達時に止める作業を明記します。

例えば、安全な試験条件を確認済みで、作業手順書の最終確認だけが残っているなら、「準備は進めてよいが、責任者が手順書を確認するまで現場試験は始めない」と分けられます。

一方、顧客が必要とするか、安全に実施できるかなど、今回の投資を左右する前提そのものが未確認なら、条件付きのまま大きく進めず、やり直しとして扱います。条件付き承認を、通過させるための抜け道にしないことが大切です。

ステージゲートが形だけになる3つの運用と直し方

形骸化を防ぐには、審査の名前ではなく、判断とその後の行動が変わっているかを見ます。特に次の3つが起きている場合は、会議を増やす前に運用を見直してください。

1. 全部を通す会議になっているなら、未達の扱いを点検する

全案件が通ること自体が、直ちに問題とは限りません。事前の選定が十分なら、審査で大きく修正する案件が少ないこともあります。問題は、必須条件を満たしていないのに、理由が残らないまま継続していることです。

直近の判断記録を見て、未達の条件、例外を認めた根拠、次に確認する仕事が書かれているかを確かめます。通過率を下げるために案件を落とすのではなく、同じ事実を見れば判断の理由が分かる状態を目指します。

2. 資料作成に追われるなら、判断に使わない欄を減らす

顧客に会う時間より報告資料を整える時間が増えているなら、提出内容を見直します。資料の各欄について「この情報があると、誰のどの判断が変わるか」を確認してください。

答えがない欄は削減を検討し、必要な根拠は残します。初期の探索に完成後の詳細な運用計画を求めるなど、時期が早すぎる項目は、次の段階へ移すこともできます。必要な確認を省くのではなく、適切な時点へ置き直します。

3. 戻る・止める判断ができないなら、検証の成果と人事評価を分ける

中止を提案した担当者が不利になると感じている場合、都合の悪い事実が会議へ上がりにくくなります。事業を続ける価値の評価と、担当者が適切に検証・報告したかの評価を分けることが必要です。

評価するのは、合格を取った件数だけではありません。重要な前提を早く確かめたか、否定的な結果も共有したか、次に使える記録を残したかを確認します。中止から得た知見を次の案件で利用できれば、投じた調査や検証を組織の学びとして残せます。

ただし、記録すればすべてがよい検証になるわけではありません。確認すべきことを先送りしたり、同じ条件で結果が変わらない試験を繰り返したりしていないかも、併せて点検します。

よくある質問

導入時によく迷う、段階の数、ほかの開発手法との関係、判断条件の扱いを整理します。自社の投資規模とリスクに合わせて使ってください。

Q. ステージゲートは何段階に分けるのが適切ですか?

A. 一律の正解はありません。公式モデルには探索に続く5つのステージがありますが、自社では投資額、担当部門、やり直しの費用が大きく変わる節目から区切ります。小規模な検証まで同じ重い審査にかけず、投資やリスクに合う確認範囲にしてください。

Q. ステージゲートとデザインレビューの違いは何ですか?

A. デザインレビューは主に設計の品質や妥当性を確認する場です。ステージゲートは、その技術面の確認も材料にして、顧客の需要、採算、提供体制を含めて次の投資を判断します。設計が合格しても、販売や運用の条件が未確認なら、事業化の承認とは分けて扱います。

Q. アジャイル開発とステージゲートは併用できますか?

A. 併用できます。ステージの中では短い周期で試作と顧客確認を繰り返し、ゲートでは次に使う予算や人、検証の範囲を決めます。細かな改善のたびに審査を開く必要はありません。承認済みの範囲でチームが変えてよいことと、再承認が必要な変更を先に分けます。

Q. 少人数の新規事業チームでも導入できますか?

A. できます。専用の大きな委員会を作るより、事業責任者と予算・人員を決められる人が、同じ判断記録を使うところから始められます。ただし、安全性や法令、専門技術などの確認が必要なら、チームの人数にかかわらず、その分野を判断できる人を加えます。

Q. 合格点を決めれば、ゲートの判断を自動化できますか?

A. 総合点だけで自動化するのは適切ではありません。安全性などの必須条件を満たさない状態を、他の高得点で埋め合わせないようにします。そのうえで、顧客への価値、採算、事業の優先順位などを、根拠と残る不確かさとともに比較します。

Q. 条件付き承認と、やり直しはどう区別しますか?

A. 次に進むための必須条件がそろい、追加条件が解消するまでの作業範囲を限定できる場合は、条件付き承認を検討できます。需要、安全性、採算など今回の投資を左右する必須条件が未確認なら、やり直しとして確認する内容と期限を決めます。条件の確認者と、未達時に止める作業も記録してください。

Q. 中止した案件の記録は、何を残せばよいですか?

A. 中止の理由、確認できた事実、否定された前提、再利用できる技術や資料、関係者への対応を残します。将来再開する可能性があるなら、技術や顧客条件がどう変われば再検討するかも記載します。担当者個人のフォルダだけに置かず、閲覧権限を決めて共有します。

まとめ|次の会議で決めることを一つに絞る

ステージゲートは、事業を順番どおりに通過させる仕組みではなく、確かめた事実から次の投資を選ぶ仕組みです。制度を増やす前に、次の会議で扱う一案件から見直せます。

まず、「何を承認してほしいか」を一文にします。次に、確認できた事実と未確認事項を分け、進む・中止・保留・やり直しを比べます。最後に、選んだ結論に必要な予算・担当者・期限を残してください。

判断材料のどこが不足しているか見えにくい場合は、新規事業チェックリストで顧客、事業の仕組み、検証、体制などを点検できます。埋まっていない項目を全部調べるのではなく、次の投資判断を変える項目から着手しましょう。

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「何となく継続」を、根拠のある次の判断へ

ゲートの基準が曖昧、経営と現場の見方が違う、承認後も実行が進まない。いま不足している材料を整理し、次の会議で決めることから一緒に検討します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

Stage-Gate Internationalの公式解説を基に基本概念を整理。段階別の確認例と会議の記入例は、イノベーション総研による実務への適用例です。

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