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AI電話とは?国内外8事例でわかる導入と新規事業の条件

電話対応をAIに任せるサービスが増えています。ただし、録音を文字にするだけの製品もあれば、予約や本人確認まで終える製品もあります。名前が同じでも、できる仕事は大きく違います。

AI電話の価値は、会話の自然さより「用件を最後まで終えられるか」で決まります。導入前には、電話を何件減らせるかだけでなく、顧客が途中で離脱しないか、誤った処理を止められるか、人へ円滑に戻せるかを確認する必要があります。

この記事では、AI電話の仕組みと市場を整理したうえで、国内外8事例を読み解きます。さらに、イノベーション総研の視点から、新規事業として狙える場所と、参入を見送る条件まで解説します。導入担当者だけでなく、事業開発担当者にも役立つ内容です。

この記事の結論

AI電話の価値は、自然に話すことではなく、顧客の用件を安全に完了し、例外を人へ戻せることにあります。

  • 定型案内はIVR、用件の完了はAI電話、例外判断は有人対応と役割を分けます。
  • 国内外8事例では、応答率より、完了率、再入電、転送後の処理を重視しています。
  • 参入余地は、業界特化、会話の試験・運用代行、人を守るリアルタイム支援にあります。

AI電話とは?IVRとの違いを3分で理解する

AI電話とは、音声認識、会話AI、音声合成を使い、電話で用件を聞き取り、回答や手続きを進める仕組みです。一般には「ボイスボット」「音声AIエージェント」とも呼ばれます。

従来のIVRは、「予約は1を、変更は2を押してください」のように、決められた選択肢をたどります。AI電話は、顧客が話した言葉から用件を推定し、必要な質問を返せます。CRMや予約システムとつながれば、聞き取りだけでなく登録や変更まで行えます。

AI電話が顧客の発話を聞き取り、判断し、業務システムで処理して必要時に人へ引き継ぐ流れ
AI電話は、音声認識、対話判断、業務実行、人への引き継ぎを一つの流れとして設計する。

AI電話を理解するときは、次の3種類を分けるとわかりやすくなります。

IVR・AI電話・有人対応の使い分け
方式 顧客の操作 得意な仕事 主な限界
プッシュ式IVR 番号を選ぶ 用件の振り分け、定型案内 階層が深いと離脱しやすい
AI電話 自由に話す 用件理解、質問、予約、変更、案内 誤認識、例外処理、連携設計が必要
有人対応 担当者と話す 感情を伴う相談、複雑な判断、例外対応 採用、教育、待ち時間、品質差が課題

この表からわかるのは、AI電話が人を丸ごと置き換える道具ではないことです。定型部分を完結させ、複雑な案件だけを人へ渡す設計にすると、顧客の待ち時間と現場負荷を同時に下げやすくなります。

技術の全体像は、AIエージェントの記事コンテキスト・エンジニアリングの記事も参考になります。

電話業務が今、大きく変わり始めた理由

変化を後押ししているのは、生成AIだけではありません。人手不足、顧客の即時対応への期待、クラウド電話の普及、カスタマーハラスメント対策が同時に進んでいます。

厚生労働省は、2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策を事業主の義務としています。企業には方針の明確化、相談体制の整備、発生後の対応などが求められます。AI電話は義務を果たす唯一の方法ではありませんが、通話記録、一次受け、警告、人への転送を支える手段になります。

一方、生成AIが入れば自動的に成果が出るわけではありません。電話は、雑音、言い直し、割り込み、方言、固有名詞を含みます。画面のチャットより情報が曖昧で、顧客は回答を読み返せません。正しい内容を短く伝える会話設計が必要です。

導入効果を見るときは、削減件数だけでなく、顧客側と現場側の指標を並べます。

AI電話導入で確認する六つの指標
観点 確認する指標 数字が示すこと
顧客 応答率、待ち時間、途中離脱率 電話がつながり、負担なく用件を伝えられたか
自動化 対話完結率、手続き完了率 AIだけで仕事が終わったか
引き継ぎ 転送率、再説明率、誤転送率 人へ戻す設計が機能したか
現場 有人対応時間、後処理時間、離職・欠勤 オペレーターの負担が減ったか
品質 誤案内率、本人確認失敗、再入電率 間違いを見逃していないか
事業 1完了あたり原価、売上寄与、解約率 コスト削減以外の価値が出たか

「人が受けた電話を何分減らしたか」だけでは不十分です。顧客が切ってかけ直していれば、負担を別の場所へ移しただけです。対話完結率と再入電率を一緒に見る必要があります。

AI電話市場はどこまで伸びるのか

矢野経済研究所は、コールセンターサービス事業者が提供するAIサービスの国内市場が、2023年度から2029年度まで年平均31.7%で伸び、2029年度に313億円へ達すると予測しています。対象はAI電話だけではありませんが、電話業務に生成AIや感情分析が広がる方向を示しています。

国内コールセンター向けAIサービス市場が2029年度に313億円へ拡大する予測
市場予測はAI電話単独ではなく、コールセンターサービス事業者が提供するAIサービスの売上高を対象とする。
AI電話市場を動かす五つの要因
市場を動かす要因 現在起きていること 事業への意味
人手不足 採用と教育の負担が重い 繁忙時間と夜間の一次対応に需要がある
生成AI 固定シナリオ外の発話を扱いやすくなった FAQ回答から手続き完結へ範囲が広がる
クラウド電話 電話網と業務システムを接続しやすい 小さな窓口でも導入余地が生まれる
法制度 カスハラ対策が事業主の義務になる 人を守る記録・警告・転送が予算化される
顧客行動 電話でも待たずに解決したい 24時間対応とチャネル連携が評価される

予測値は、定義によって変わります。AI電話、ボイスボット、コンタクトセンターAI、CCaaSを同じ市場として足すと、規模を二重に数えます。参入判断では、対象業務、顧客数、1件単価から自社の獲得可能市場を積み上げる方が安全です。

AI電話を支える4層の業界構造

AI電話は、1社だけでは成立しません。電話回線、音声認識、生成AI、業務システム、運用設計がつながって初めて動きます。業界を4層に分けると、競争相手と提携先が見えます。

AI電話市場を音声基盤、会話制御、電話運用、業務アプリケーションの4層に分けた構造
価値は音声API単体から、顧客の業務を完結させる上位層へ移りやすい。
AI電話を支える四つの層
主な役割 代表例 主な競争軸
音声・モデル 音声認識、生成AI、音声合成 OpenAI、Google Cloud、AWS 認識精度、遅延、言語、価格
会話制御 割り込み、発話順序、ツール実行 Sierra、Vapi、Retell AI 会話の自然さ、テスト、開発しやすさ
電話・コンタクトセンター 回線、PBX、振り分け、録音、有人席 Genesys、NICE、Amazon Connect 安定性、既存資産、監査、運用機能
業務アプリケーション 予約、受注、本人確認、変更、督促 IVRy、LINE WORKS AiCall、NTTドコモのAI電話サービス 完結率、連携先、業界知識、責任設計

下の層は性能向上と価格低下が速く、単純なAPI再販売は差別化しにくくなります。上の層では、業界ごとの手続き、例外、承認、監査を理解する必要があります。その代わり、顧客業務へ深く入り、切り替えられにくい事業を作れます。

音声データを外部クラウドへ送れない業界では、ソブリンクラウドや閉域接続も選定条件になります。

企業はAI電話をどう使っている?国内外8事例

各社の事例を並べると、AI電話の用途は「問い合わせ回答」から「業務完結」「人の保護」「顧客理解」へ広がっています。

国内外8事例の比較
提供企業・導入組織 主な使い方 公表された成果・特徴
NTTドコモ・ドコモショップ 来店予約の受付とCRM登録 全国約2,300店舗へ展開。CRM連携後、予約完了率54%
NTTドコモ・東京電力EP 電力供給サービスの受付 社内調査で310件中233件を無人完結、応対時間を70%短縮
LINE WORKS・クレディセゾン 用件を35種類に分類し、SMS・IVR・有人へ振り分け オペレーター対応件数を30%削減、IVR完了率を40%改善
LINE WORKS・ヤマト運輸 集荷受付とドライバー予定の登録 月100万件に対応し、AI完了率80%を公表
IVRy・JCB 加盟店デスクの問い合わせ対応 約4,000件のテスト後、自動化率43%、月約500時間を創出
ソフトバンク・東京大学 強い口調を穏やかな声色へ変換 発言内容を変えず、オペレーターの心理負担を抑えるSoftVoiceを提供
AI Shift・AI Lab 自然な音声合成で受電・架電 複数企業の試験で、通話直後の切断率を最大40%改善
Sierra・Next 返品受付と本人確認をAIエージェント化 6週間で導入し、注文番号がない顧客の照合にも対応

表の成果は、対象業務、期間、分母が異なります。単純な順位づけには使えません。重要なのは、何をAIへ任せ、どこで人や別チャネルへ戻したかです。

ドコモショップは、予約の完了までを評価した

ドコモショップでは、年間約1,400万件の来店予約のうち、約700万件が電話だったと説明されています。電話予約への対応は約95万時間に相当しました。

最初から全国展開したのではありません。15店舗で、対話完結率と予約完了率を中心に検証しました。その後、200店舗へ広げる段階でCRMと連携し、予約完了率を37%から54%へ改善。2022年10月に約2,300店舗へ展開しました。

この事例のポイントは、音声認識率を最終目標にしなかったことです。顧客が予約を終えられたかを見て、認証方法とCRM連携を改善しています。

クレディセゾンは、AIだけで終えない振り分けを設計した

クレディセゾンの窓口には、毎月20万件を超える問い合わせがありました。従来のIVRは階層が深く、途中離脱や待ち時間が課題でした。

LINE WORKS AiCallを使った「AIナビ」は、顧客の発話から用件を35種類に分けます。用件に応じて、SMS送信、IVR案内、オペレーター転送へつなぎます。有人対応をなくすのではなく、電話以外で済む仕事と人が必要な仕事を分けました。

結果として、オペレーター対応件数を30%削減し、IVR完了率を40%改善したと公表しています。AIが聞いた用件を事前に表示するため、人へ渡った後の負担も減らしています。

JCBは、約4,000件の試験でAIを育てた

JCBは、個人情報を扱わない加盟店デスクからIVRyを導入しました。システム部門と業務部門が一緒に、約4,000件のテスト通話と調整を行っています。

その結果、電話の43%をAIだけで解決し、月約500時間の対応時間を創出したと説明しています。注目したいのは、高い自動化率よりも、導入範囲の選び方です。いきなり会員向けの複雑な窓口へ入れず、個人情報を扱わない業務から始めています。

ソフトバンクは、人を減らす以外の価値を作った

SoftVoiceは、顧客の発言内容を変えず、強い口調を穏やかな声色へリアルタイムで変換します。東京大学との共同研究をもとに、ソフトバンクが2026年2月に提供を始めました。

これは顧客をAIに置き換える製品ではありません。オペレーターが同じ内容を、心理的な圧迫を減らした状態で聞けるようにします。AI電話市場には、自動化だけでなく、人を守る補助機能にも事業機会があると示しています。

Sierraは、会話後の処理まで製品に含めた

英国の小売企業Nextは、SierraのAIエージェントを6週間で導入しました。返品の相談では、注文番号がなくても顧客を照合し、本人確認を行い、手続きを進めます。

Sierraは、実際の顧客へ公開する前に、雑音、割り込み、訛り、言い間違いを含む模擬会話を大量に実行する「Voice Sims」も提供しています。AI電話の競争軸が、音声の自然さだけでなく、業務実行と継続テストへ移っていることがわかります。

勝敗を分けるのは、音声の自然さだけではない

市場の競争軸は、音声が人らしいかという段階を越えつつあります。実運用で差が出るのは、次の5点です。

  • 顧客が話し終わる前に割り込まず、顧客の割り込みには止まれる
  • 氏名、住所、商品名、日時を復唱し、誤りを訂正できる
  • CRM、予約、在庫、決済などの業務システムを安全に更新できる
  • AIが迷ったときに、会話履歴と用件を付けて人へ渡せる
  • 変更のたびに、雑音や例外を含む通話試験を再実行できる

AI電話は、デモでは滑らかに話せても、本番では止まります。顧客が質問に答えない、二つの用件を一度に話す、本人確認に失敗する、業務システムが落ちる、といった例外が必ず起きるからです。

参入企業が持つべき資産は、きれいな合成音声ではなく、失敗した会話を直す運用データです。例外の分類、転送理由、再入電、誤処理を学習できる仕組みが、継続的な差になります。

日本市場では、既存の電話を捨てない設計が重要になる

国内企業には、長く使ってきたPBX、録音装置、CRM、委託先BPOがあります。一度にすべてをクラウドへ置き換えると、移行リスクと現場負担が大きくなります。

そのため、既存の電話番号や回線を残し、一次受付だけをAIへ寄せる方法が現実的です。AIが用件を聞き、簡単な手続きは完了し、複雑な案件は既存の有人窓口へ戻します。導入後に完結できる用件を少しずつ増やします。

BPO事業者にとっては、自社の席数を減らす技術なので、短期的には売上と衝突します。一方、AIの運用、会話設計、品質監査、例外対応をまとめたサービスへ転換できれば、新しい収益源になります。BPOの記事で整理したように、作業量ではなく成果と責任範囲を契約する方向が重要です。

中小企業では、受電件数が少ないため、大規模な専用開発は合いません。代表電話、予約受付、営業時間外の一次受けなど、共通性が高い用途をすぐ使える製品が向いています。

NEXT STEP

次のステップ

「AI電話を導入したい」を、顧客の未完了業務へ。

対象用件、完了条件、既存システムとの接続、例外処理、責任範囲、提携先と見送り条件を整理します。

AI電話で狙える新規事業は三つある

新規参入では、音声基盤をゼロから作るより、顧客の業務と既存製品の間を埋める方が勝ちやすくなります。

AI電話の新規事業を業務への深さと導入負担で分けた参入マップ
参入方法は、自社が持つ顧客接点、業務知識、連携技術、運用体制から選ぶ。
AI電話の三つの参入方法
参入方法 最初の顧客 提供価値 必要な提携先 主な懸念
業界特化型AI電話 金融、保険、医療、自治体 本人確認、説明、予約、変更を安全に完結 音声基盤、業務SaaS、法務・セキュリティ 審査が長く、誤案内の責任が重い
AI電話の運用・品質管理 コールセンター、BPO 会話設計、試験、監視、改善を継続提供 CCaaS、SIer、現場運営会社 人月型へ戻ると利益が伸びにくい
オペレーター保護・監査 通信、EC、公共、交通 カスハラ検知、記録、警告、声質変換 PBX、労務、法務、産業保健 正当な申し出との区別が必要

1. 業界特化型の手続き完結サービス

金融ならカード停止、保険なら事故受付、医療なら予約変更など、業界ごとに一つの業務を深く取ります。FAQを読むだけでなく、本人確認、条件判定、登録、通知まで終える設計です。

強みになるのは、業界知識と連携先です。特定業界のバーティカルSaaSと組み、電話を新しい入力画面として提供する方法もあります。

2. 会話の試験と運用を代行するサービス

AI電話は、公開後も商品名、料金、規約、繁忙期の質問が変わります。変更のたびに、割り込み、雑音、方言、例外を含む試験が必要です。

会話シナリオの作成、模擬通話、品質評価、失敗分類、改善までを月額で提供します。複数の音声基盤を使い分けられれば、特定ベンダーに依存しない立場も作れます。

3. 人を守るリアルタイム支援

カスハラ対策、回答候補の提示、規約の自動表示、危険な通話の上長転送などです。全面自動化を望まない企業にも導入しやすく、人事・労務・安全衛生の予算へ広げられます。

ただし、AIが顧客を一方的に「加害者」と判定してはいけません。検知は注意喚起に使い、最終判断、記録の閲覧、異議対応を人が担う必要があります。

AI電話事業を、六つの詰まり方で整理する

点数を付ける診断ではありません。完了、離脱、誤処理、転送、データ、改善の未確認条件を見つけます。

01 用件が終わらない

応答率ではなく完了率を測ります。

  • 完了の定義は何か
  • 再入電は減ったか
  • 後工程まで記録できるか
02 顧客が途中で切る

待ち時間と会話設計を分けて直します。

  • 返答は遅くないか
  • 割り込みへ対応できるか
  • 音声は聞き取りやすいか
03 誤処理が怖い

確認と承認が必要な操作を決めます。

  • 重要事項を復唱するか
  • 本人確認を分離したか
  • 高リスク操作を止められるか
04 人へ戻せない

会話の文脈ごと転送します。

  • 転送条件は明確か
  • 待ち時間を伝えるか
  • 担当者へ要約を渡せるか
05 データ保管が曖昧

録音、文字起こし、個人情報を分けます。

  • 保存期間は決まっているか
  • 学習利用を説明できるか
  • 削除依頼へ対応できるか
06 運用改善が続かない

失敗会話を直す担当と周期を決めます。

  • 誤答を分類できるか
  • 改善責任者は誰か
  • 変更後を再試験するか

参入前に確認したい七つのリスク

AI電話は顧客との接点であり、誤りがそのまま不利益につながります。次の七つは、製品選定と事業設計の両方で確認します。

  1. AIが誤認識した氏名、日時、金額を復唱せず登録する
  2. 本人確認が不十分なまま、契約や配送先を変更する
  3. AIであることや録音・利用目的が顧客へ伝わらない
  4. 音声や文字起こしが、想定外の地域や委託先へ保存される
  5. 例外時に人へつながらず、顧客が電話を切ってかけ直す
  6. 発信業務で同意、頻度、時間帯、拒否登録を管理できない
  7. 自動化率だけを追い、苦情、誤案内、再入電を見落とす

リスクを下げる基本は、AIができる範囲を明示することです。低い確信度、禁止用語、重要手続き、顧客の強い不満を検知したら、人へ戻します。業務システムへ書き込む前には、復唱や確認画面を挟みます。

個人情報を扱う場合は、収集目的、保存期間、閲覧権限、削除方法、委託先を確認します。クラウドかオンプレミスかだけで判断せず、データがどこを通り、誰が保守できるかまで追います。

今は参入しない方がよい企業

成長市場でも、全社に参入を勧めることはできません。次の条件に当てはまる場合は、待機か見送りが妥当です。

  • 電話業務の件数、用件、完了条件を把握していない
  • 顧客企業の業務システムへ接続できる人材や提携先がいない
  • 誤処理が起きたときの責任と補償を引き受けられない
  • 通話データを安全に扱う体制を作れない
  • 汎用音声APIの再販売以外に違いを説明できない
  • 顧客の現場と一緒に会話を改善する運用を続けられない

一方、特定業界の顧客基盤、予約・受注などの業務SaaS、BPO運営、セキュリティ、音声品質管理のどれかを持つ企業には機会があります。技術を所有していなくても、顧客の未完了業務を見つけ、複数技術を組み合わせる役割を取れます。

AI電話についてよくある質問

Q. AI電話とボイスボットは同じですか?

A. ほぼ同じ意味で使われます。ただし、製品ごとに範囲が違います。用件の聞き取りだけを行う製品もあれば、生成AIで会話し、CRMや予約システムを更新する製品もあります。名称ではなく、完了できる業務を確認してください。

Q. AI電話は人のオペレーターをすべて置き換えますか?

A. すべてを置き換える設計は勧められません。定型手続き、営業時間外、繁忙時間をAIが担い、感情を伴う相談、複雑な判断、例外は人へ渡す方が安全です。引き継ぎ時に顧客へ再説明させないことも重要です。

Q. AI電話の費用対効果は何で測りますか?

A. 有人対応時間だけでなく、対話完結率、手続き完了率、途中離脱率、再入電率、誤案内率を見ます。削減額から通信費、AI利用料、運用改善費、監査費を引き、1完了あたりの原価で比べると判断しやすくなります。

Q. 生成AIを使えばシナリオ設計は不要ですか?

A. 不要にはなりません。生成AIは言い換えや想定外の表現に強い一方、業務の禁止事項、本人確認、承認、例外、転送条件は明示する必要があります。自由会話と決められた業務手順を組み合わせます。

Q. AI電話の新規事業はどこから始めるべきですか?

A. 顧客が多く、完了条件が明確な一業務から始めます。代表電話全体ではなく、予約変更、集荷受付、カード停止などに絞り、既存の音声基盤と業務システムを組み合わせます。自社は業界知識、連携、運用、監査のどこを持つかを決めます。

まとめ|応答率ではなく、業務の完了で評価する

AI電話は、顧客の発話を聞き取るだけの仕組みから、予約、本人確認、変更、通知まで進める業務システムへ変わっています。国内でも、ドコモショップ、クレディセゾン、ヤマト運輸、JCBなどが、具体的な業務で成果を公表しています。

新規事業の余地は、汎用の音声モデルより、業界特化の手続き、会話の試験・運用、人を守る機能にあります。成功には、顧客の業務システムへつなぐ力と、失敗した会話を改善し続ける体制が必要です。

参入を検討するときは、「AIが話せるか」ではなく、「誰の、どの用件を、どこまで終え、失敗時に誰が責任を持つか」を一文で定義してください。その一文が書けない段階では、製品開発より業務調査を優先するべきです。

参考資料

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AI電話の参入方法を、自社の顧客接点から具体化する。

顧客の用件、会話データ、既存システム、有人運用を整理し、参入方法、収益、責任範囲、提携先と見送り条件を設計します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

矢野経済研究所、厚生労働省、NTTドコモビジネス、LINE WORKS、IVRy、ソフトバンク、CyberAgent、Sierraの公式サイト・公表資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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