投稿日:2026.09.28 最終更新日:2026.09.28
大和証券、全国の相続業務拠点にLayerXのAIを本格導入
ニュースの要点
LayerXは2026年9月25日、同社の企業向けAIサービス「Ai Workforce」を、大和証券が全国の相続業務を行う拠点で本格採用したと発表しました。戸籍の読み取りを基に相続人の判定を支援し、相続関係図の下書きをExcel形式で作成します。
大和証券では毎月数千件規模の判定業務があり、古い手書き戸籍の読解や複雑な親族関係の確認が課題になっていました。試験導入で機能性と実用性を評価し、実務担当者の意見を反映して改善したうえで、本格導入へ進んだとしています。
文字認識や生成AIに加え、判定に用いるルールを組み合わせ、AIの出力を担当者が確認する運用を想定しています。導入金額、対象拠点数、削減時間の測定値は公表していません。人が行う確認を支援するもので、判断を全面的にAIへ任せる発表ではありません。
ニュース出典:LayerX「大和証券、LayerXの「Ai Workforce」を全国の相続業務を行う拠点で本格採用。AIを活用した相続人判定と相続関係図の作成を支援」(2026年9月25日)
イノベーション総研の考察
試験導入で便利だったAIを、全国の現場で使えるサービスにするには何が必要でしょうか。この事例で手掛かりになるのは、文字を読む技術だけでなく、判定のルール、根拠の確認、既存の書類作成までを一緒に整えていることです。
戸籍を読めるだけでは、相続業務は終わらない
相続業務では、戸籍に書かれた名前を読み取るだけでは足りません。複数の書類をつなぎ、親族関係がいつ成立し、どう変わったかを確認する必要があります。発表でも、離婚や再婚、代襲相続などへの対応が課題として挙げられています。
大和証券は、手書き・縦書きに加え、汚れやかすれのある古い戸籍を扱っています。毎月の処理件数が多い仕事で、読解と判断を少数の熟練者に頼り続ければ、その人が確認できる量が全体の上限になりかねません。
専門業務のAI化では、入力を読めたかに加え、その後の判断と書類作成まで負担が減るかを見ます。
今回のサービスは、読み取った結果を相続関係図の下書きへつなぎます。読者が別の業務を対象にする場合も、文字認識の精度だけを比較する前に、読み取り後に残る作業を並べると、顧客が購入する理由が具体的になります。
生成AIと決められたルールを、得意な仕事で分ける
LayerXは、戸籍の読み取りに文字認識や画像を扱うAIを使い、判定には独自に構築したルールを組み合わせると説明しています。曖昧な文字を扱う処理と、定められた条件に沿って関係を整理する処理を分けた構成です。
この分担によって、すべてを一つのAIへの質問で済ませる場合より、誤りの起きた箇所を切り分けやすくなると考えられます。発表では、人物の読み取りが途中で止まる問題や、死亡に関する記載を再確認する仕組みも挙げています。実際の書類で起きる問題を、工程ごとに扱っている点が具体的です。
曖昧な情報を読み解く処理と、決まった条件で判定する処理は、分けるほど改善箇所を特定しやすくなります。
もちろん、この構成だけで誤りがなくなるわけではありません。ルールの更新、入力の読み落とし、例外的な事情などは確認が必要です。どの案件まで対応でき、何を人の確認へ戻すかも、導入する組織が決めなければなりません。
根拠に戻れることが、全国展開の土台になる
AIが作った関係図を担当者が確かめる際、結果だけを渡されても確認に時間がかかります。今回の仕組みは、人物や日付の根拠となった戸籍の箇所を参照できるとしています。出力の確認を、元の書類を一枚ずつ探し直す仕事にしない工夫です。
また、LayerXは大和証券の実務担当者による意見交換と、導入支援の専門人材が現場に入る改善を説明しています。全国展開へ進んだ背景として、単体のモデル性能だけでなく、既存の業務に合うよう調整した過程を読むことができます。
人が最終確認する業務では、AIの答えよりも、その根拠へ短時間で戻れることが展開の鍵になります。
導入前後を比べるなら、作成時間に加え、確認時間、修正回数、差し戻しを計測したいところです。AIが速く下書きを作っても、確認が難しくなれば全体の時間は減りません。全国導入の発表と、定量的な効果の実証は区別しておく必要があります。
一社の成功を、別の顧客へ移せる部分に分ける
新規事業として見ると、次の論点は他の金融機関や別の事務への展開です。今回使った文字認識、根拠表示、図の生成には共通化できる部分があります。一方、受け取る書類の種類や承認の流れは顧客ごとに違う可能性があります。
販売する側の担当者の方は、次の顧客へ持ち込む前に、共通の機能、業務ごとのルール、顧客固有の接続を分けて見積もるとよいでしょう。導入先が増えても毎回同じだけ専門家の時間が必要なら、売上とともに支援原価も増えます。
全国導入の次は、同じ品質を保ちながら、次の拠点や顧客への導入工数を減らせるかが焦点です。
LayerXは今後、受入書類の読み取りや基幹システムへの登録など、前後の工程へ支援を広げる方針です。これらは今後の展望であり、現時点の導入範囲と混ぜてはいけません。実際にどの工程へ広がり、確認品質と処理量がどう変化するかを追う必要があります。
まとめ
大和証券の事例は、専門業務のAIを試験から全国導入へ進める際、現場の確認作業まで設計する重要性を示します。自社の実証でも、AI単体の正答率だけでなく、根拠の確認と修正を含む仕事全体を評価します。そのうえで、次の現場へ移せる共通部分を増やすことが、事業の拡大につながります。
執筆:イノベーション総合研究所
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