新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

DICとartience、包装フィルムのリサイクル評価基準を共通化

ニュースの要点

DICとartienceグループの東洋インキは2026年10月7日、包装用フィルムのリサイクル適性を共通の基準で評価する方法を策定したと発表しました。フィルムから印刷インキを取り除く「脱墨」と、重なったフィルムを分離する「剥離」が対象です。

各社が異なる条件で行っていた試験を比較しやすくするため、試験手順、評価基準、報告形式をそろえます。包装材の印刷・加工会社、食品や日用品などの製品メーカー、再資源化事業者の材料選定と情報共有を支援する狙いです。

両社は国内の関係者へ利用を呼び掛け、実際の包装材料や処理工程から得た知見を反映する方針です。法令で使用が義務付けられた基準ではなく、業界全体が既に採用した発表でもありません。10月14~16日の包装展示会でも取り組みを紹介します。

ニュース出典:DIC/原題:DICとartience、業界初となるフィルムパッケージのリサイクル評価に関する業界共通プロトコルを策定/公開日:2026年10月7日/公式発表


イノベーション総研の考察

リサイクルしやすい材料ができても、他社の材料と同じ条件で比べられなければ、買い手は選びにくくなります。今回の取り組みは、技術そのものの開発とは別に、技術を選ぶための共通の物差しを作るものです。任意の評価方法と法的規制を区別して読む必要があります。

材料の性能より前に比較の条件をそろえる

包装フィルムは、内容物を守るために複数の材料や印刷、接着剤を組み合わせます。その組み合わせが、使用後の分離や再生プラスチックの品質へ影響します。

ある会社では良い評価でも、別の会社では試験の温度や時間が違えば、結果をそのまま比較できません。発表は、各社独自の条件と報告形式が、材料選定や情報共有の課題になっていたと説明しています。

循環利用の市場を広げるには、優れた材料を作ることと、同じ条件で比較できることが必要です。

共通手順は、取引先ごとに評価をやり直す負担を減らす可能性があります。ただし、何を測るか、どの条件で合格とするかが明らかにならなければ、導入企業は判断できません。詳細と利用条件は今後の確認対象です。

競合する材料会社が共通化する意味

DICと東洋インキは、印刷インキや接着剤、再資源化の知見を持ち寄っています。artience側の共同発表も、この役割を説明しています。個々の製品では競争する企業が、評価の土台を共有する点が特徴です。

評価条件がばらばらなままでは、買い手はどちらの技術も選びにくくなります。物差しをそろえることは、各製品の違いをなくすのではなく、その違いを判断できる市場を整える動きと考えられます。

共同でそろえる評価方法と、各社が競争する製品性能を分けることが協業の入口になります。

自社で業界横断の取り組みを作る場合も、価格や製品そのものを一体化する必要はありません。顧客が困る比較の条件、記録の形式、用語を先にそろえると、共同で取り組む範囲を限定できます。

任意基準は法律や回収網の代わりではない

今回の発表は、法改正や公的な認証制度の開始ではありません。両社が策定し、国内の関係者へ利用を呼び掛ける評価方法です。採用すると法的義務を全て満たす、という説明はできません。

脱墨・剥離の評価が良くても、使用済み包装を集める回収網や、再生プラスチックの買い手がなければ循環は続きません。輸送や選別、処理の費用も残ります。

評価基準への適合と、回収から販売まで利益が出ることは、別に確かめる必要があります。

反対仮説は、評価しやすくなっても再生材の需要や処理費が改善せず、利用が広がらないことです。事業者は試験結果に加え、材料の価格と調達量、回収条件、再生材の受け入れ要件を確認します。

定着するかは利用者と改訂の仕組みで見る

両社は実際の材料やリサイクル工程の知見を反映するとしています。評価方法は作って終わりではなく、新材料や処理設備に対応する更新が必要です。

今後は、誰が利用できるか、手順の詳細が公開されるか、異なる会社が同じ結果を再現できるかを見ます。作った2社だけでなく、加工会社や製品メーカー、再資源化事業者が使うかが重要です。

共通基準の定着は、策定企業の発表より、異なる立場の利用者が比較と取引に使った実績で判断します。

詳細な閾値、第三者による検証、採用社数や改訂の体制は、今回の発表では確認できません。自社が参加するなら、結果への異議や試験条件の変更を誰が扱うかも確かめておくとよいでしょう。

まとめ

DICとartienceの取り組みは、包装フィルムの再資源化を同じ条件で比べるための共通化です。法的な義務ではなく、任意の評価基盤として広げる段階です。

新規事業として参考になるのは、技術の性能だけでなく、買い手が技術を選べる環境を整える視点です。比較可能性、処理の採算、再生材の需要を分けて確認することで、基準策定を事業成果と混同せずに読めます。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆

執筆:イノベーション総合研究所

CONTACT

お問い合わせ

共通基準を事業の選択へつなげる

評価条件、処理費、買い手の要求を整理します。

この記事をシェアする