投稿日:2026.09.29 最終更新日:2026.09.29
日野、物流データをつなぐ共同配送実証に参画 NeLOSSを提供
ニュースの要点
日野自動車は2026年9月28日、企業間で物流データをつなぎ、共同配送と積載の最適化を図る実証事業に参画すると発表しました。配車や荷物の積み付けを自動で計画するシステム「NeLOSS(ネロス)」を提供します。
実証は、国土交通省の「デジタル技術を活用した荷主・物流事業者の行動変容促進事業」に採択されました。ユーネットランスが全体を統括し、小島プレス工業が荷主、総和運輸が実証現場の提供、日野がシステム開発を担います。
日野は、業界や納期の異なる荷物を組み合わせ、地域全体で効率よく運ぶ仕組みへ転換する狙いです。実施場所の詳細や期間、改善効果を判断する数値基準は今回の発表では明らかにしていません。
ニュース出典:日野自動車|日野自動車 国土交通省「デジタル技術を活用した荷主・物流事業者の行動変容促進事業」に参画(2026年9月28日)。
イノベーション総研の考察
一社の荷物だけで効率のよい配車を考えても、車両に空きが残ることがあります。他社の荷物を合わせるとその空きを埋められる可能性がありますが、配送の条件や仕事の分担も変わります。今回の実証では、計算の精度と、企業が一緒に運べる運用の両方を見る必要があります。
NeLOSSを企業の境界の外へ広げると、荷物の組み合わせが変わる
配車は、荷物の量だけでなく、届け先や期限、車両の条件を合わせて考える仕事です。日野によると、NeLOSSは経験やコツに頼りやすい配車・積み付け割付を自動化し、業界や納期の異なる荷物を組み合わせる仕組みです。
今回の参画で日野が示した目的は、個々の企業の最適化から、業界を横断した地域の最適化へ進むことです。既存のシステムを利用していても、扱う企業や荷物が広がれば、配送条件の調整という新たな検証が必要になります。
たとえば、同じ地域へ向かう荷物でも、指定時間や積み合わせの条件が違えば、一緒に運べない場合があります。共有するデータの項目をそろえるだけでなく、変更できる配送条件と、守る必要がある条件を分けることが出発点になります。
共同配送では、荷物の情報だけでなく、変えられる配送条件と変えられない条件を共有する必要があります。
荷主と運送会社が入ることで、計算結果を現場で試せる
今回の協議会には、システムを開発する日野だけでなく、全体統括のユーネットランス、荷主の小島プレス工業、実証現場を提供する総和運輸が加わります。運ぶ計画を作る側と、荷物を出す側、運ぶ現場が同じ検証に参加する構成です。
これは、効率的な経路を計算して終わる実証とは異なります。計算上は良い組み合わせでも、荷物の準備時刻や積み込み作業を変えられなければ実行できません。現場で何が変えられるかを確かめ、その条件をシステムへ返す必要があります。
一方、今回の資料には、各社がどこまで運用を変更するかや、調整を決める権限は示されていません。イノベーション総研は、企業間の利害が合わない場面を、誰がどの基準で調整するかも実証の重要な論点になると考えます。
物流システムの実証には、計画を作る企業だけでなく、荷物の出し方と現場作業を変えられる企業が必要です。
積載率が上がっても、全体の費用が下がるとは限らない
日野は積載率の向上を目指しています。積載率は、車両の積載能力に対してどれだけ荷物を載せるかを示す指標です。ただし、空きを減らすために遠回りや待ち時間、積み替えが増えれば、輸送全体の費用は下がらない可能性があります。
また、運送会社の走行が効率化しても、荷主側で早めの出荷準備や在庫の保管が必要になれば、別の場所へ負担が移ります。どの企業の費用が増減するかを分けないと、地域全体では改善しても、参加企業が継続を望まない事態が起こり得ます。
実証では、積載率に加え、走行距離、待機・荷役時間、納期の遵守、荷主側の作業負担を同じ条件で比較したいところです。これらは今回公表された評価値ではなく、イノベーション総研が事業化判断に必要と考える確認項目です。
共同配送の価値は、積載率だけでなく、荷主と運送会社を合わせた費用・時間・品質で判断します。
継続参加の条件を示せれば、地域へ広げる判断ができる
今回の発表は実証への参画であり、地域全体で採算が成立したという成果報告ではありません。次に確認すべきなのは、対象地域や期間、扱う荷物、比較条件が具体化するかと、その結果を受けて参加企業が継続するかです。
共同配送を事業にするには、削減できた費用を誰が受け取り、システムや調整の費用を誰が負担するかも必要です。公的な実証の期間だけ参加できても、運営費を負担する段階で離脱する企業が多ければ、継続的なサービスにはなりません。
担当者の方が企業横断の事業を考える場合、全体の効果を一つの数字で示すだけでなく、参加者ごとの利点と負担を並べます。参加を続けられる条件が確認できた企業の組み合わせから広げる方が、机上の最適化と現実の運営の差を捉えやすくなります。
企業横断の事業を広げるには、全体の効率化に加え、参加者ごとに継続できる利益と負担の配分を確かめます。
まとめ
日野の実証は、物流データをつないで荷物の組み合わせを企業の外へ広げる取組みです。計算精度だけでなく、配送条件の変更、現場の負担、費用配分が事業化を左右します。実証結果と参加企業の継続判断を、次の展開の根拠として確認する必要があります。
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執筆:イノベーション総合研究所
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