投稿日:2026.09.29 最終更新日:2026.09.29
三越伊勢丹、富山の日本酒IWAと資本業務提携 店舗・外商で展開
ニュースの要点
三越伊勢丹イノベーションズは2026年9月28日、日本酒「IWA」を製造・販売する白岩と資本業務提携を結んだと発表しました。白岩は富山県立山町の酒造会社です。三越伊勢丹グループの店舗や顧客基盤を活用し、商品の販路と、日本酒を楽しむ体験を広げる狙いです。
伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、JR京都伊勢丹、岩田屋本店などや、顧客へ個別に商品を提案する外商で、IWAの取扱いを強化します。海外店舗への展開、旅行やレストラン事業と連携する企画も進める方針です。
両社は、収益の一部を次世代の作り手や産地へ再投資し、将来はほかの伝統産業へ取組みを広げる構想も示しました。出資額や持分比率、各施策の開始時期、収益還元の具体的な方法は公表していません。
ニュース出典:三越伊勢丹イノベーションズ/原題:日本酒の未来へ ― 三越伊勢丹イノベーションズ、卓越したアッサンブラージュから生まれる日本酒「IWA」の白岩と資本業務提携(2026年9月28日)。
イノベーション総研の考察
良い商品を作ることと、それを買う人へ価値を伝えることは別の仕事です。今回の出資では、三越伊勢丹が資金だけでなく、店舗、外商、旅行や飲食の接点を提供し、日本酒の販売の仕方を変えられるかが焦点になります。
白岩のものづくりを、三越伊勢丹の顧客への届け方と組み合わせる
三越伊勢丹は、提携の背景に日本酒の国内市場の縮小や、酒造業界の人材不足・事業承継の課題を挙げています。販売量だけを増やす方法に加え、商品の価値を理解する顧客へ届け、作り手に収益を残す方法を探る必要があるという問題意識です。
白岩は2019年に富山県立山町で設立されました。今回の発表では、複数の原酒を組み合わせる製法や、創業者の醸造経験、海外のネットワークを強みとして説明しています。三越伊勢丹が持ち寄るのは、その商品を選び、提案し、顧客が体験する場です。
イノベーション総研は、この組み合わせを、商品を追加で仕入れるだけでなく、商品の届け方まで一緒に開発する投資と捉えます。何を作るかと、誰にどう伝えるかを別の会社が担うことで、単独では持ちにくい販売機会を作ろうとしています。
小売企業の戦略出資では、資金とともに、商品の価値を理解する顧客へ届く仕組みを提供できるかが重要です。
店頭販売と旅行・飲食の体験では、顧客が払う理由が変わる
今回の計画には、百貨店と外商での取扱い強化に加え、旅行やレストランとの連携が含まれています。同じ日本酒でも、持ち帰って飲む、贈り物にする、食事とともに味わうなど、購入の目的が異なります。
この違いを使えば、商品の説明だけでは伝えにくい味わいや背景を、体験と一緒に届けられる可能性があります。ただし、体験を付ければ自動的に収益が増えるわけではありません。企画、人員、会場などの費用が増えるため、顧客が追加で価値を感じる部分を見極める必要があります。
担当者の方が既存顧客を新規事業へつなぐ場合も、顧客数の大きさだけで説明しないことが大切です。顧客がどの場面で何を求め、その接点でどの商品・サービスを提案できるかまで具体化すると、協業後の試行計画が立てやすくなります。
顧客基盤の活用は、顧客数を共有することではなく、購入場面に合う価値を新たに届けることです。
CVCの成果は、取扱店舗数より投資先に残る収益で見る
三越伊勢丹イノベーションズは、グループの新規事業創出とCVCを担います。CVCは、事業会社が自社との連携などを目的に他社へ投資する活動です。今回も、株主として中長期で伴走する方針を示しています。
出資後の最初の成果として、取扱店舗や企画の数は確認しやすい指標です。しかし、それだけでは白岩の成長につながったかは分かりません。既存の販売先から売上が移っただけなのか、新しい顧客が増えたのか、追加の供給費用を差し引いて収益が残るのかを見る必要があります。
今回の発表では売上目標や再購入率などは示されていません。だからこそ、今後は提携で増えた顧客や継続購入、施策ごとの収益が焦点になります。自社のCVCでも、紹介件数を投資先の成功とせず、顧客獲得から採算まで追う担当を置くことが参考になります。
出資後の販売支援は、紹介や店舗数ではなく、新しい顧客と投資先に残る収益で評価します。
IWAの実績と、伝統産業への横展開は別の段階で判断する
両社は、収益を作り手・産地へ還元する循環や、ほかの伝統産業への展開を目指しています。ただし、還元額や対象、実施時期は公表されていません。現在は方向性が示された段階で、持続的な仕組みが成立したとは言えません。
また、IWAが持つブランド、製法、国際的なネットワークは、すべての作り手が持っているものではありません。この事例で販売が伸びても、それが三越伊勢丹の販売方法によるのか、IWA固有の強みによるのかを分ける必要があります。
今後は、具体的な販売・体験企画の開始と、その後の供給や収益の継続を追います。ほかの産業へ広げる場合には、共通して使える顧客への提案方法と、個々の作り手に固有の強みを切り分けることが、次の投資判断に役立ちます。
一ブランドで得た成果を横展開する前に、販売の仕組みの効果と、そのブランド固有の強みを切り分けます。
まとめ
三越伊勢丹と白岩の提携は、ものづくりと小売の顧客接点を組み合わせる投資です。販路の数だけでなく、顧客に届ける価値と作り手に残る収益を確認する必要があります。まずIWAでどの成果が生まれるかを見て、伝統産業への展開を判断することが重要です。
関連記事:レクサスの高級ヨット海外販売 / NIOと吉利の電池交換事業への出資・資産統合
執筆:イノベーション総合研究所
CONTACT
お問い合わせ
出資後の販売施策と、成果の測り方を決める
使える店舗・顧客接点を整理し、収益につながる協業計画へ落とし込みます。