投稿日:2026.10.07 最終更新日:2026.10.07
出光興産、岩石を使う炭素除去企業InPlanetへの融資を実行
ニュースの要点
出光興産は2026年9月17日、米国の100%子会社・出光アメリカズホールディングスを通じ、ドイツのInPlanetに融資を実行したと発表しました。同社がブラジルで進める、岩石を農地に散布して大気中の二酸化炭素を除去する事業の拡大を支援します。
InPlanetは採石場や農家と協力し、粉砕したケイ酸塩岩の自然な風化を促進する手法を使います。除去量の測定・報告・検証に取り組み、出光の発表によれば、2024年12月には第三者検証を受けた除去クレジットの供給を始めています。
出光はこの連携を通じて事業運用の知見を蓄積し、北米・日本・アジアの市場開拓や共同プロジェクトを検討します。融資額や返済条件は公表していません。
ニュース出典: 出光興産/原題「CO2除去(CDR)事業を展開するInPlanet社への融資を実行」/2026-09-17/発表本文
イノベーション総研の考察
今回、出光が選んだのは買収ではなく融資です。イノベーション総研は、資金を供給しながら、新しい市場で事業を成立させるための知見を得る動きとして考察します。
排出を減らす仕事と、大気から取り除く仕事は異なる
工場の省エネは、これから出る二酸化炭素を減らす取り組みです。一方、炭素除去は大気中にある二酸化炭素を取り除き、再び大気へ戻りにくい形で保持する取り組みで、両者の成果は分けて考える必要があります。
InPlanetが使う岩石風化促進は、岩石と水などの反応を利用し、二酸化炭素を重炭酸イオンなどへ変える方法です。自然にも起きる反応を、岩石を細かくして農地へ散布することで進めます。
炭素除去事業では、農地への効果と、証明できた二酸化炭素の除去量を分けて評価します。
出光は、除去に加えて土壌環境の改善なども期待すると説明しています。ただし、農業上の効果があることと、販売できる量の炭素除去を証明することは別です。両方を一つの成果として数えないことが事業評価の出発点になります。
融資の前に、測定と販売の仕組みが積み上がっている
今回の発表は、技術のアイデアだけを対象にした資金供給ではありません。出光は、ブラジルでの現場運用、第三者検証を受けたクレジット供給、長期の販売契約、供給に関する保険を評価したと説明しています。
岩石を散布しただけでは、買い手は除去成果を確認できません。採取したデータをもとに量を測り、第三者が検証し、契約に沿って成果を渡す工程までそろえることで、技術が取引の対象になります。
炭素除去の事業基盤は、除去技術だけでなく、測定・検証・販売をつなぐ運用にあります。
イノベーション総研は、この運用を学べる相手と組む点に注目します。炭素除去の事業機会を検討する企業も、装置の性能だけでなく、測定と販売のどこに自社が参加できるかを分けてみると、参入方法を具体化できます。
融資で協業を始めても、事業を所有したわけではない
出光は、北米・日本・アジアでの市場開拓や共同プロジェクトを目指しています。ただし、今回公表したのは融資であり、InPlanetの株式取得や、日本での商用事業開始を発表したわけではありません。
融資は相手の成長を支える手段ですが、どこまでデータを共有し、誰が販売を担うかは別の取り決めです。公表されていない契約を推定し、「出光がクレジットの購入権を確保した」と読み替えることもできません。
資金供給の判断と、協業で得たい権利・知見の設計は、別々に明確にします。
担当者の方が新しい技術企業と組む場合も、資金を出す目的を明確にしておく必要があります。収益を得る融資なのか、現場の知見を得る協業なのか、将来の共同事業を探す段階なのかによって、追う成果が変わります。
地域を広げる前に、除去量と費用を同じ条件で測る
ブラジルでの方法を他の地域へ展開するときは、岩石の調達、運搬、散布、測定の条件が変わります。農地との距離や気候が異なるため、ブラジルの実績だけで、日本でも同じ費用や期間で成果を得られるとは判断できません。
次に見るべきなのは、共同プロジェクトの場所、測定方法、買い手、費用負担が具体化するかです。散布した岩石の量ではなく、検証された除去量に対して、調達・運搬・測定まで含めていくらかかるかを確認します。
炭素除去の地域拡大は、検証された除去量と、その証拠を作るまでの総費用で判断します。
クレジットの格付けや保険は信頼を支える材料ですが、すべての案件の採算を保証するものではありません。カーボンクレジットの価値を考える場合も、単価だけでなく、証拠を作り続ける費用と供給時期を合わせて見ることが大切です。
まとめ
出光の融資は、炭素除去の技術と、その成果を測って販売する運用を学ぶ入口になります。読者が自社の参入を考える際も、技術の保有だけに目を向けず、資金、測定、販売のどこを担うのかを整理すると、次に確認すべき相手と条件が明確になります。
執筆:イノベーション総合研究所
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