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インバウンドは「集客後」が勝負|市場動向と企業10社の事例

訪日客が増えれば、地域の利益も増えるのか。
企業10社は、旅行者のどこにある摩擦を解いているのか。

結論は、発見、予約、決済、移動、現地運営、データ改善をつなげられるかです。市場動向と具体例から、参入・提携・待機・見送りの判断材料を整理します。

この記事の結論

インバウンドは、「外国人を集める」だけの市場ではありません。

  • 2025年の市場規模と、2026年に起きている国・地域別の変化を整理します。
  • 楽天、MATCHA、Klook、PayPayなど企業・団体10事例を解説します。
  • 六つの参入方法と、旅行業、データ、現場運営、住民生活の責任を示します。

インバウンド市場は、訪日客数と旅行消費額がともに過去最高を更新しました。ところが、旅行者が増えれば、地域や企業の利益も自動的に増えるわけではありません。

予約が海外の事業者へ偏る。人気の場所だけが混み、周辺へ人が動かない。現場は多言語対応に追われるのに、追加の売上が生まれない。こうした問題が残るからです。

いま重要なのは、「どう呼ぶか」だけではありません。旅行者が見つけ、予約し、移動し、現地で買い、また訪れるまでをつなぐことです。本記事では、観光分野のインバウンドを対象に、市場動向と企業10社の事例を整理します。そのうえで、新規事業として参入する方法と、始める前に確認したい責任を解説します。

目次

インバウンドとは?観光の文脈で意味を整理

インバウンドとは、海外から自国へ人や需要が入ってくる動きを表す言葉です。観光では、外国人が日本を訪れる旅行と、そこで生まれる宿泊、飲食、買い物、移動、体験などの需要を指します。

営業やマーケティングで使う「インバウンド営業」とは意味が違います。本記事で扱うのは、訪日旅行者に関わる事業です。

対象は旅行会社やホテルだけではありません。決済、交通、翻訳、データ分析、店舗DX、手荷物、本人確認まで広がっています。旅行者の体験を一つの流れとして見ると、異業種にも参入余地があると分かります。

一方で、訪日外客数は「観光客だけ」の数字ではありません。日本政府観光局(JNTO)の定義では、商用客や親族・知人訪問なども含みます。市場を見るときは、人数、旅行目的、消費額を分けて読む必要があります。

インバウンド市場はどこまで伸びた?

2025年の訪日外客数は、最新の確定値で4,268万3,301人でした。2024年より15.8%増え、年間の過去最高を更新しています。訪日外国人旅行消費額も9兆4,549億円となり、2024年比で16.4%増えました。

2019年と比べると、訪日外客数は約1.34倍、旅行消費額は約1.96倍です。人数より消費額の伸びが大きいことが分かります。

訪日外客数 訪日外国人旅行消費額 見方
2019年 3,188万人 4兆8,135億円 コロナ禍前の比較基準
2023年 2,507万人 5兆3,065億円 人数の回復前に消費額が最高を更新
2024年 3,687万人 8兆1,257億円 人数・消費額とも大きく拡大
2025年 4,268万人 9兆4,549億円 いずれも年間過去最高

政府が2026年に決定した観光立国推進基本計画は、2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人、旅行消費額15兆円を掲げています。ただし、目標の中心は人数だけではありません。地方への誘客、リピーター、観光DX、人材、生産性、住民の暮らしとの両立も重視されています。

訪日外客数と訪日外国人旅行消費額の推移を示す図
図1|訪日外客数と訪日外国人旅行消費額の推移。JNTOと観光庁の公表資料をもとにイノベーション総研作成。

訪日旅行消費は人数だけでは読めない

2025年の旅行消費額を費目別に見ると、宿泊費が36.6%で最も大きく、買物代27.0%、飲食費21.9%、交通費10.0%、娯楽等サービス費4.5%と続きます。

ここから二つの示唆が得られます。

一つ目は、宿泊が最大の支出先であることです。部屋を売るだけでなく、館内注文、飲食、体験、送迎を組み合わせれば、滞在中の売上を増やせます。

二つ目は、体験への支出がまだ小さいことです。これは需要がないという意味ではありません。地域の食や文化が、外国語で見つかり、日時を選び、決済できる商品になっていない場合があります。魅力と予約可能な商品は別物です。

高付加価値旅行も重要です。観光庁によると、2023年の高付加価値旅行者は訪日旅行者の約2%でしたが、消費額では約19%を占めました。人数を広く集める施策と、滞在日数や単価を高める施策は、同じ設計ではありません。

2026年のインバウンドで起きている3つの変化

2026年は、市場の拡大が止まったというより、需要の中身が変わっています。1〜6月の旅行消費額は、観光庁の四半期公表値を合算すると4兆8,469億円です。前年同期を約1.3%上回る計算で、旅行者数と消費額が同じ方向へ動くとは限りません。

1.国・地域ごとの差が大きくなった

2026年1〜7月の訪日外客数は2,452万7,200人で、前年同期比1.7%減でした。中国は56.3%減る一方、韓国は20.3%増、台湾は21.8%増、米国は6.5%増です。全体の増減だけを見て、広告や商品を一律に決めると外します。

言語だけでなく、予約時期、滞在日数、同行者、決済手段、関心テーマを市場別に見直す必要があります。

2026年の主要市場別訪日外客数の増減を示す図
図2|2026年1〜7月の主要市場別訪日外客数と前年同期比。JNTOの公表資料をもとにイノベーション総研作成。

2.「有名地へ送る」から「時間と場所を分ける」へ移った

人気観光地では、混雑が旅行者の満足度と住民の暮らしを同時に下げます。そこで必要になるのが、空いている時間、別の入口、周辺の体験、荷物を持たない移動を提案する仕組みです。

2025年の外国人延べ宿泊者数は約1億7,992万人泊でした。地方部は前年比19.1%増と伸びています。それでも三大都市圏が66.3%を占めます。地方の機会は大きいものの、交通、予約、ガイド、手荷物、現場人材がそろわなければ、旅行者は動きません。

これは広告の最適化ではありません。交通、施設の定員、予約在庫、現地案内を一緒に動かす運営です。オーバーツーリズム対策は、制限だけでなく、需要を別の時間と場所へ導く事業機会でもあります。

3.集客数より、地域に残る粗利が問われ始めた

予約総額が増えても、海外プラットフォームへの手数料、広告費、翻訳費、現場の追加人件費が増えれば、利益は残りません。

新規事業では、訪日客数やページ閲覧数だけでなく、予約転換率、客単価、再訪率、現場工数、取消率、地域内の回遊、住民からの苦情まで見る必要があります。KPIを「集客」から「地域と事業者に残る価値」へ変える局面です。

インバウンド事業は6つの機能に分かれる

インバウンド事業を一つの市場として捉えると、競合が多すぎて参入場所が見えません。旅行者の行動に沿って、次の六つへ分けると整理しやすくなります。

機能 旅行者の行動 事業者が解く問題 主な買い手
発見・情報 行き先を知る 外国語で見つからない 自治体、DMO、施設、ブランド
商品化・予約 日時と内容を選ぶ 予約在庫や取消条件が分からない 体験事業者、宿泊、交通
決済・購買 支払い、買い物をする 決済手段や商品情報が合わない 店舗、決済事業者、メーカー
移動・手荷物 現地を移動する 大荷物、地方交通、夜間移動が難しい 交通、空港、自治体、旅行者
受入れ運営 宿や施設を使う 多言語対応と現場工数が増える 宿泊、商業施設、観光施設
地域経営 周遊し、再訪する 混雑と地域偏在を調整できない 自治体、DMO、交通、地域事業者

強い企業は、六つすべてを自前で持っているわけではありません。一つの摩擦を深く解き、前後の事業者へ接続しています。たとえば、多言語メディアが予約へつながる。ルート検索が配車と決済へつながる。客室案内が館内注文へつながる、といった設計です。

企業はインバウンド需要をどう事業に変えているか

ここからは、国内で確認できる10の取り組みを見ます。企業名を並べるだけでは、事業の違いは分かりません。「誰の、どの不便を解き、どこで収益が生まれるか」に注目します。

インバウンド企業10社を旅行者の行動順に整理した図
図3|インバウンド企業10社を旅行前・旅行中・地域経営の機能で整理。各社の公式情報をもとにイノベーション総研作成。

旅マエの企業事例:見つけてもらい、予約につなぐ

旅行前の勝負は、外国語で見つけてもらうだけではありません。内容、価格、空き状況を確かめ、その場で予約できるところまでの距離を短くする必要があります。

楽天トラベルは、消費者向けと事業者向けの流通を持つ

楽天グループは、訪日客向けの多言語予約サイトに加え、宿泊在庫を海外の販売先へ流す「Rakuten Travel Xchange」を展開しています。2025年通期の決算資料では、インバウンドを中心とするグローバル関連の取扱高が前年比58.0%増と説明されています。

ポイントは、海外旅行者へ直接売るB2Cと、海外の旅行会社などへ在庫を流すB2Bを持つことです。宿泊施設は販路を広げやすくなります。一方、取扱高は楽天の売上や利益そのものではありません。施設側には、手数料を払っても利益が残る在庫・価格管理が必要です。

MATCHAは、多言語発信を「更新できる業務」に変えた

MATCHAは、訪日旅行メディアと多言語コンテンツ管理を組み合わせています。岡山県観光連盟の事例では、日本語の更新を多言語サイトへ反映する仕組みにより、七言語分の更新工数が7分の1になったと紹介されています。簡体字以外のページでは、閲覧数と利用者数が10%以上増えました。

翻訳だけを納品すると、情報はすぐ古くなります。MATCHAの特徴は、日々の更新業務と送客面を一つにした点です。ただし、閲覧増にはコンテンツ量の増加なども影響します。システムだけの効果とは断定できません。

KKdayは、地域の食を予約できる商品にした

KKdayはサントリー、食べログと組み、大阪の飲食店と飲み物の組み合わせを紹介する多言語ページを設けました。台湾、香港、韓国、タイ、シンガポールへ広告やSNSで伝え、食べログの予約へつなげています。

地域の「食文化」を紹介するだけで終わらず、席の予約まで近づけた点が重要です。広告費と予約手数料を組み合わせられる可能性があります。ただし、公表された検索増はKKday全体の内部データです。この企画だけで店舗売上が増えたとは確認できません。

Klookと星野リゾートは、宿泊と交通を束ねた

Klookと星野リゾートは、温泉旅館「界」などの宿泊と交通チケットを組み合わせた「Stay+」を販売しました。地方へ行きたい旅行者が、宿と移動を別々に探す負担を減らします。

地域分散を起こすには、魅力の発信だけでなく「行き方を買える」状態が必要です。この事例は、宿泊と交通の在庫を束ねることで、その壁を下げました。一方、運休や取消が起きたとき、誰が返金や代替を案内するかは契約上の重要点です。

旅ナカの企業事例:移動・決済・宿泊の摩擦を減らす

日本へ着いた後は、支払い、移動、荷物、館内案内などの小さな不便が続きます。ここでは、旅行者が使い慣れた接点と、現場の運営をつないだ四つの事例を見ます。

PayPayは、海外の普段使いウォレットを国内店舗へつないだ

PayPayは、Alipay+など海外のQR決済を国内の加盟店で使えるようにしています。2026年6月時点で、17の国・地域、35のサービスに対応しています。対象国・地域は、PayPayの算定で訪日客の約8割です。

旅行者に新しいアプリを入れてもらうのではなく、普段の決済手段を日本の店舗へ接続する発想です。加盟店向けには、Alipay+の決済システム利用料として取引額の1.98%(税別)が示されています。約8割という数字は利用率ではない点には注意が必要です。

GOとNAVITIMEは、経路検索の中で配車と決済を完結させた

2026年7月、訪日客向け「Japan Travel by NAVITIME」のルート検索からGOのタクシーを注文できるようになりました。乗降地点と車種を選び、決済まで進めます。大きな荷物、早朝・夜間、公共交通の少ない場所で、検索から移動までの断絶を減らす取り組みです。

「全国47都道府県対応」は、GO加盟タクシーの範囲を表します。どの地点でも必ず配車できるという意味ではありません。また、検索・決済を担う企業と、実際に運送するタクシー会社では責任が違います。事故、忘れ物、返金の窓口を画面上でも分かるようにする必要があります。

WAmazingは、免税品を先に選び、ホテルや空港で渡す

WAmazingは、旅行前や旅行中に商品を選び、空港やホテルで受け取る免税ECを運営しています。2025年9月時点で、ホテルの対面受渡しは100施設、免税機能付き自動販売機は12か所、取扱商品は約1万点と公表されています。

ホテルは受渡し拠点となり、新しい手数料収入を得られます。メーカーにとっては、旅行者の来店を待たずに売る接点です。ただし、免税制度は2026年11月からリファンド方式へ変わります。従来の購入・受渡し方法を、そのまま将来の完成形とは見なせません。

Kotoznaは、客室案内を注文と運営データへつないだ

「Kotozna In-room」は、客室のQRコードから館内案内、周辺情報、ルームサービスやアメニティの注文、チャットを多言語で提供します。管理画面では問い合わせをまとめ、利用言語、リクエスト、応答時間も分析できます。

価値は翻訳だけではありません。フロントの負担を減らしながら、館内注文の売上も作れる点です。一方、災害、医療、安全、返金の案内を自動翻訳だけに任せるのは危険です。緊急時に人へ切り替える基準が欠かせません。

地域経営の企業事例:周遊と混雑を設計する

一つの施設で終わらず、地域全体の移動を整える企業・団体もあります。必要なのはデータを見ることではなく、次の案内や運営判断へ戻すことです。

ナビタイムジャパンは、同意を得た移動データを地域判断へ戻す

「インバウンドプロファイラー」は、「Japan Travel by NAVITIME」の利用者から同意を得たGPSデータと属性アンケートを使い、訪れた場所、時間帯、周遊などを可視化します。2026年には週次の速報値と、行政区分をまたぐエリア分析が追加されました。

自治体やDMOは、感覚ではなく行動を見て施策を考えられます。ただし、アプリ利用者は訪日客全体と同じではありません。推計値を実人数のように扱わず、データの偏りを説明する必要があります。

京都市と京都市観光協会は、混雑の見える化を続けている

京都観光Naviなどでは、位置情報、天気、曜日、時間を使った「観光快適度」の予測やライブカメラを公開しています。2026年8月には、固定カメラや国道事務所の映像を「Kyoto Smart Navi」へ連携しました。

旅行者に混雑を知らせ、時間や場所を変える判断材料を渡す仕組みです。映像は解像度を落とし、録画しないと説明されています。旅行者への直接課金より、自治体・DMOの開発・運用予算で成り立つB2G型に近い事例です。

インバウンド企業10社から見える勝ち筋

10の事例に共通するのは、外国語を付けただけのサービスではないことです。次の四つが、事業として続く条件になります。

1.旅行者が普段使う場所に入る

新しいアプリを一から広めるより、海外ウォレット、OTA、経路検索、ホテルの客室QRなど、すでに使われる接点へ入る方が利用されやすくなります。顧客獲得費を抑え、既存の行動を変えすぎない設計です。

2.情報を予約・決済までつなぐ

記事が読まれても、営業時間や在庫が分からず、決済できなければ売上になりません。情報を予約・決済までつなぐことが、集客を売上へ変える条件です。MATCHA、KKday、Klookの事例は、発見の後にある商品化と予約を重視しています。

3.現場の工数も同時に減らす

訪日客向けの売上が増えても、翻訳、問い合わせ、在庫調整、返金対応が手作業では利益が残りません。Kotoznaや多言語CMSの価値は、旅行者の便利さと現場の運営を一緒に改善する点にあります。

4.行動データを次の施策へ戻す

国別の閲覧、予約、移動、購買、問い合わせを見れば、商品や案内を直せます。ただし、本人同意、利用目的、保存期間、第三者提供を曖昧にしてはいけません。データを持つことより、信頼を保ちながら改善に使えることが強みです。

NEXT STEP

次のステップ

集客案ではなく、地域と事業者に粗利が残る仕組みを設計する。

顧客、旅行者の摩擦、予約後の運営、提携先、規制、原価、取得するデータを整理し、現実的な参入方法へ落とします。

新規事業で考えられるインバウンド参入方法

参入方法は、旅行者向けアプリだけではありません。自社が持つ顧客、データ、業務知識、販売網から選びます。

参入方法 最初の顧客 提供する価値 主な収益 組む相手 先に確かめること
多言語コンテンツと予約導線 DMO、宿、体験事業者 更新、海外検索、予約を一体化 初期費、月額、制作費 OTA、翻訳者、地域メディア 更新工数と予約転換率
地域体験の商品化・販売 飲食、工芸、自然体験 予約できない魅力を商品にする 造成費、予約手数料 OTA、交通、保険、ガイド 催行原価、定員、取消率
移動・決済・手荷物の組み込み 旅行アプリ、宿、商業施設 現地の行動を止める摩擦を減らす 取引料、API利用料 決済、交通、物流 障害・事故・返金の責任
宿泊・店舗の受入れDX 宿、店舗、観光施設 多言語対応と追加販売を両立 初期費、月額、販売分配 PMS、POS、決済、運営会社 現場工数と追加粗利
行動データと地域経営SaaS 自治体、DMO、交通 周遊、混雑、施策効果を可視化 年額、分析支援、運用受託 通信、地図、交通 データ偏りと意思決定頻度
高付加価値な旅の設計 DMC、宿、地域事業者 少人数でも地域消費を増やす 企画費、販売利益、会費 ガイド、文化人、交通、宿 顧客像、品質、安全、再現性

既存事業との接続がない場合、広い旅行プラットフォームへ正面から入るのは勧めにくいです。OTAは集客力、在庫、決済、レビューをすでに持ちます。新規参入者は、介護、医療、食、製造、地域交通など、自社が理解する業務から狭い問題を選ぶ方が勝ちやすくなります。

たとえば、MaaSの記事で扱った移動統合は、訪日客の地方周遊にもつながります。特定技能の記事で整理した外国人材の受入れ運営は、宿泊・外食の供給力と関係します。リスキリングの記事で扱った業務変革も、多言語対応を一部の担当者に任せないために必要です。

インバウンド新規事業の参入方法と判断条件を示す図
図4|インバウンド新規事業の参入方法と判断条件。企業10社の事例と観光庁資料をもとにイノベーション総研作成。

参入前に整理したい責任とリスク

インバウンド事業は、複数の事業者が一つの旅行体験をつくります。便利さの裏で、責任の切れ目が生まれやすい領域です。

旅行業の登録が必要か

宿泊や運送を紹介するだけなのか、報酬を得て予約・手配するのか、複数の商品を組み合わせて販売するのかで、必要な登録が変わる場合があります。旅行業や旅行サービス手配業に当たるかは、画面名ではなく契約と業務の実態で判断されます。

事業企画の初期に、「誰と誰が契約するか」「代金を誰が受け取るか」「取消時に誰が返すか」を図にする必要があります。

表示・翻訳の誤りを誰が直すか

営業時間、価格、アレルギー、交通、安全情報の誤りは、旅行者の損失につながります。生成AIを使う場合も、発信主体が承認する情報と、自動回答できる範囲を分けます。更新履歴と緊急時の人への切替も必要です。

個人データを必要以上に集めないか

位置情報、国籍、検索、予約、購買をつなぐと、便利な分析ができます。同時に、旅行者の行動を細かく追えるようになります。利用目的を明確にし、同意、匿名化・集計、保存期間、委託先管理を設計します。

現場の負担を別の場所へ移していないか

アプリで予約を増やしても、現場が手作業で在庫を合わせ、個別に問い合わせへ答えるなら、負担は減りません。売上だけでなく、予約一件当たりの作業時間、例外処理、返金、夜間対応まで原価へ入れます。

住民の暮らしと両立できるか

混雑地域へさらに送客すれば、短期の売上は増えても、事業を続けにくくなります。旅行者満足だけでなく、交通混雑、騒音、ごみ、生活路線への影響を測ります。住民は「外部環境」ではなく、サービスを続けるための重要な関係者です。

インバウンドへの関わり方を4つに分けて考える

参入:顧客基盤と運営力の両方がある

旅行者の一つの不便を、予約後の業務まで含めて解きます。

提携:在庫・決済・交通・許認可が足りない

OTA、決済、運送、DMCなどと契約・返金・事故の責任を分けます。

待機:制度変更や地域合意が固まっていない

顧客の業務量と支払者を確認し、前提が整ってから再判断します。

見送り:訪日客が増える以外の根拠がない

未解決業務と自社の強みを特定できない広い参入は選びません。

インバウンドで「参入・提携・待機・見送り」をどう判断するか

最後は、市場の伸びではなく、自社が持てる責任で判断します。

判断 当てはまる状態 次の動き
参入 特定の業種・地域の顧客基盤があり、予約後の運営まで改善できる 顧客を狭く決め、取引と現場工数を同時に測る
提携 旅行者接点はあるが、在庫、決済、運送、許認可を持たない OTA、交通、決済、DMCと責任を分ける
待機 制度変更、地域合意、データ利用条件が固まっていない 顧客課題と業務量を調べ、前提が固まってから再判断する
見送り 「訪日客が増える」という理由だけで、顧客や未解決業務が特定できない 広い市場参入をやめ、既存事業との接点を探し直す

イノベーション総研が重視するのは、華やかな旅行者向け画面より、裏側の運営です。売上が生まれる瞬間、例外が起きる瞬間、責任が移る瞬間を確認すると、事業の強さが見えます。

よくある質問

インバウンドの意味、市場規模、参入方法について、よくある疑問を簡潔にまとめます。

Q. インバウンドとは何ですか?

A. 海外から自国へ入る人や需要を表す言葉です。観光分野では、外国人が日本を訪れる旅行と、宿泊、飲食、買い物、交通、体験などの需要を指します。

Q. インバウンド市場の規模はどのくらいですか?

A. 2025年の訪日外客数は4,268万3,301人、訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円でした。いずれも年間の過去最高です。

Q. インバウンド事業には何がありますか?

A. 海外向け情報発信、OTA、体験予約、越境決済、地域交通、手荷物、宿泊DX、行動データ分析、混雑分散などがあります。旅行会社やホテル以外にも参入余地があります。

Q. 小さな会社でも参入できますか?

A. できます。ただし、総合旅行アプリを目指すより、自社が詳しい地域や業種の摩擦を一つ選ぶ方が現実的です。既存のOTA、決済、交通へ接続する設計が有効です。

Q. インバウンド事業で最初に見る数字は何ですか?

A. 訪日客数だけではなく、予約転換率、客単価、粗利、取消率、現場工数、再訪率を見ます。地域事業では、周遊と住民への影響も必要です。

Q. 多言語化すれば売上は増えますか?

A. 多言語化だけでは足りません。正しい情報、空き状況、価格、予約、決済、現地での受入れまでつながって初めて売上になります。

Q. オーバーツーリズム対策は事業になりますか?

A. なります。混雑予測、予約・定員管理、手荷物配送、空いている場所や時間への誘導、効果測定などが対象です。ただし、自治体やDMO向けでは予算、住民合意、継続運用まで設計する必要があります。

まとめ:インバウンド需要を地域の粗利へ変える

インバウンド市場は拡大しています。しかし、これからの勝負は訪日客を呼んだ後です。

旅行者が情報を見つけ、予約し、移動し、現地で買う。その裏で、宿、店舗、交通、自治体が無理なく運営できる。さらに、得られたデータを次の改善へ戻す。この一連の流れをつなげた企業が価値を残します。

新規事業として考えるなら、最初に「外国人向けに何を作るか」と問う必要はありません。「どの場面で旅行者と現場が止まっているか」「その問題を解くために、自社が持つ業務知識や顧客基盤は何か」から始めます。

市場の大きさだけで参入せず、顧客、未解決業務、収益、提携先、責任を一枚に整理する。それが、インバウンド需要を一時的な追い風ではなく、続く事業へ変える第一歩です。

参考資料

統計、政策、企業事例は、次の公式資料を中心に確認しました。

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対象市場、主要企業、未解決業務、予約後の運営、提携先、規制、採算、責任分界を整理し、参入・提携・待機・見送りの条件へ落とします。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

JNTO、観光庁と、楽天、MATCHA、KKday、Klook、PayPay、GO、WAmazing、Kotozna、ナビタイムジャパン、京都市観光協会の公式情報。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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