投稿日:2026.09.03 最終更新日:2026.09.20
事業計画書の書き方|6章の記入例で、数字の根拠まで伝える
事業計画書を書いたのに、「売上の根拠は?」「今回は何を承認すればよいの?」と聞かれ、説明が振り出しに戻ってしまう。そんなときは、ページを増やす前に、情報のつながりを見直します。
社内新規事業の事業計画書は、顧客の課題、事業の仕組み、収支、実行体制をまとめ、投資や実行の判断に使う資料です。大切なのは、売上予測を示すだけでなく、その根拠と次に確かめることまで書くことです。
この記事では、書くべき6つの章と記入例、売上・利益・資金の整理方法、提出前の確認を解説します。イノベーション総研の888名調査も踏まえ、初めて作る方が「どこから書けばよいか」を判断できる形にまとめました。
この記事のポイント
- 承認してほしい範囲を示す
- 売上の仮定と事実を分ける
- 利益と必要資金を分けて計算
- 検証の担当者と期限を決める
目次
事業計画書とは?事業の実行と投資を判断する資料
事業計画書は、「誰に何を提供し、どう売上をつくり、どの体制で実行するか」を整理した資料です。社内の新規事業では、予算や人員の承認を得るときだけでなく、開始後に計画と実績を比較するときにも使います。
読み手が知りたいのは、事業の魅力だけではありません。顧客が買う理由は確かか、いくら使うのか、予定どおりに進まなければどうするのか。これらを、同じ事業の話としてつなぐ必要があります。
企画書との違いは、社内での使い方を確認する
企画書はアイデアや提案の採否を検討するために、事業計画書は収支・体制・実行日程まで含めて検討するために使われることがあります。ただし、名前や区分は企業によって異なります。「企画書だから数字は不要」とは考えず、今回の会議が何を決める場なのかを先に確かめてください。
検証予算を求める段階と、本格展開の予算を求める段階では、必要な根拠の深さも変わります。まだ購入条件を確認していないなら、全社展開を前提にせず、購入条件を確かめるための計画として示します。
創業融資などに提出する場合は、指定の様式を優先する
この記事の6章構成は、社内新規事業のためにイノベーション総研が整理した一例です。融資や補助金など、提出先に指定様式がある場合は、その項目と最新の記入要領に合わせます。
例えば、日本政策金融公庫は、創業者向けに創業計画書の様式と書き方を公開しています。社内向けの資料をそのまま提出するのではなく、求められる項目を確認しましょう。
稟議の説得力は、数字の大きさより根拠でつくる
イノベーション総研の888名調査では、外部支援サービスの導入承認に重要と考える材料として「ROI・費用対効果の試算」を選んだ回答は48.5%でした。複数回答による結果で、実際に稟議が通った要因や、新規事業全般の事業計画書の承認率を示す数値ではありません。
出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)
この結果を、イノベーション総研は「大きな利益を予測すればよい」という意味では捉えていません。必要なのは、費用と効果を並べ、その前提を読み手が確かめられる計画です。
例えば「3年後に売上1億円」だけでは、顧客数、価格、販売時期のどれが変わると計画が崩れるのか分かりません。「誰に、いくらで、いつから売るか」に分け、それぞれに確認済みの根拠か仮定かを書き添えます。
特に、検証中の新規事業では、すべての前提を確定させるのは難しいものです。重要な仮定が残っているなら、将来の利益を断定する代わりに、その仮定を確かめる予算と期間を提案します。投資の進め方は、新規事業の投資判断基準でも整理しています。
手元の計画書では、まず売上を左右する前提を一つ選んでください。その根拠を示せるか、示せない場合は何を調べれば判断できるかを確認するところから始められます。
事業計画書に書く6つの章と記入例
社内向けの事業計画書は、結論、顧客課題、事業の仕組み、収支、リスク、実行体制の順にすると、提案と根拠を追いやすくなります。章立ては社内様式に合わせて変えても、これらの内容がつながるようにします。
以下の記入例は、工場向けの「点検記録サービス」を題材にした架空例です。数値や状況は、実在する企業・案件の実績ではありません。本格的な開発の前に、利用と購入の条件を確かめる段階を想定しています。
1.結論:今回承認してほしい予算と範囲を書く
最初の章では、今回の判断を一文にします。事業の将来像に続けて、「今はどこまで確かめたか」「今回は何を行うか」「どこまでは行わないか」を示してください。
| 記入欄 | 架空の点検記録サービスでの書き方 |
|---|---|
| 求める承認 | 3拠点で8週間の検証を行うため、外部支出の上限120万円と、社内3名の稼働を承認してほしい |
| 確かめること | 点検記録をまとめる負担が減るか。顧客が購入する価格・導入条件は何か |
| 実施する範囲 | 画面の試作と手作業での運用。基幹システムとの自動連携、本格開発、全拠点展開は含めない |
| 必要な費用と人員 | 試作50万円、検証運用40万円、予備費30万円。社内3名が各週1日、8週間参加する想定 |
| 次の判断 | 8週目の事業会議で、利用状況・購入条件・提供コストを確認し、本開発、再検証、中止を比較する |
この例の120万円は外部支出の上限で、社内人件費を含む事業全体の費用ではありません。社内稼働も計24人日として示し、原価換算が必要なら社内基準に沿って別途計上します。費用の範囲を曖昧にしないことが大切です。
2.顧客課題:誰が、どんな場面で困っているかを書く
「製造業の効率化ニーズ」のような大きな表現から、実際の仕事へ絞ります。担当者が何をしていて、どこで時間や費用がかかり、今はどう対処しているのかを記録します。
記入例は「対象工場では、保全担当者が紙の点検記録を月末に表計算へ転記している。担当者への聞き取りでは月20時間かかるとの回答を得た。実際の作業時間と他拠点での再現性は未確認」です。
この書き方なら、本人の申告と計測済みの事実を混同しません。「20時間をすべて削減できる」とも言い切らず、転記、確認、修正のどこを減らせるかを次の検証にできます。
利用者と購入を決める人が違う場合は、分けて書きます。保全担当者が便利だと感じても、工場長の予算判断や情報システム部門の導入条件を満たさなければ、購入には進めないためです。
3.事業の仕組み:価値、売り方、選ばれる理由を書く
顧客の課題に対して、何を提供し、誰から代金を受け取るのかを説明します。機能の一覧だけでなく、顧客が現在の方法から切り替える理由まで書くのがポイントです。
記入例は「点検記録を取り込み、確認用の一覧にまとめるサービスを工場単位で提供する。月額3万円を仮の価格とし、既存の取引先を通じて最初の検証先へ提案する。記録の転記と確認の負担を減らせるかを確かめる」です。
競合には、同種のサービスだけでなく、紙や表計算を使い続ける方法も含めます。導入費用、現場の操作、情報管理まで比べないと、顧客が今の方法を変えない理由を見落とします。
市場規模も、業界全体の金額だけで終わらせません。最初に接点を持てる工場、課題が当てはまる工場、実際に提案できる工場を区別します。中期的に大きな市場を狙う場合でも、初年度の売上は営業できる範囲から積み上げます。
4.収支:価格、契約数、提供コストの根拠を書く
売上予測は、価格と数量、売上が発生する時期に分けます。月額サービスなら、各月の稼働契約数と単価から計算します。年末の契約数をそのまま12か月分の売上に使うと、開始前の月まで売上を計上してしまいます。
記入例は「月額3万円は未確認の仮定。購入担当者へ価格を提示して確認する。サービス開始後の契約数は、提案先数と商談の進み具合から月ごとに見積もる。1拠点あたりの運用費は、検証中の作業時間と外部費用を測って見直す」です。
自動化できる予定の作業でも、検証時点で人が担うなら、その工数を除外しません。提供できる件数と費用を同じ前提で計算します。詳しい整理は、新規事業の収益モデルの考え方を参照してください。
5.リスク:何が起きたら計画を変えるかを書く
「市場リスク」「技術リスク」と並べるだけでは、担当者は動けません。どの前提が崩れる可能性があり、何を見れば分かり、分かった後にどうするかまで書きます。
記入例は「月額3万円では購入されない場合、単純に値下げせず、対象業務と提供範囲を見直して採算を再計算する。必要な点検データを利用できない場合は、接続方式を変更する。代替方式でも負担を減らせなければ、現方式での開発は止める」です。
リスクへの対応にも費用と時間がかかります。すべてを予備費で吸収するとせず、上限を超える場合に誰へ再承認を求めるかを明記してください。
6.実行体制:担当者、期限、判断する人を書く
最後に、計画を実行する人と、結果を見て決める人を分けて記入します。「関係部門と連携する」だけでは、必要な人の時間が確保されたか分かりません。
記入例は「顧客担当が利用状況と購入条件を確認し、試作担当が機能と運用費を検証する。事業責任者が週次で結果をまとめ、8週目の事業会議へ提出する。情報システム部門の確認担当と対応日程は、検証開始前に確定する」です。
担当者が未定の仕事は、計画上も未定として残します。その仕事がないと検証できないなら、人員確保を開始条件にします。スケジュールに名前を入れることと、本人や所属部門の合意が取れていることは別です。
顧客の記録から書き始め、結論は最後にまとめる

読む順番は結論からでも、書く順番まで同じにする必要はありません。根拠を集める前に結論や売上目標を作り込むと、後から得た情報を、最初の結論に合わせて解釈しがちになります。
まず顧客の記録を集め、仮定と分ける
聞き取りの記録、見積もり、商談の結果、試作品の利用状況を一か所に集めます。そこから「確認したこと」「そこから考えたこと」「まだ分からないこと」を分けて書き出します。
例えば、顧客が「便利そう」と答えたのは確認した発言です。「月額3万円で買う」は別の仮定です。同じ欄に混ぜず、購入担当者へ価格と条件を提示する作業を追加します。根拠の資料には、確認した相手と日付も残しましょう。
次に事業の仕組みと数字を往復させる
売り方が決まったら、価格、契約数、原価、販売費用を仮置きします。計算して採算が合わなければ、価格だけを上げるのではなく、顧客、提供範囲、販売方法のどこを変えるとよいかを考えます。
営業や運用の担当者にも前提を見てもらいます。営業できる社数やサポート可能な件数が、売上計画と一致しているかを確認するためです。計算表の作り方は、Excelで作る事業計画書で解説しています。
最後に、今回の依頼を冒頭へ戻す
根拠と不足が見えたら、今回求める承認を見直します。本開発を求めるだけの根拠がなければ、限定検証の依頼へ変えても構いません。大きな構想を、小さな承認で始められる形にします。
最終ページまで読まないと依頼内容が分からない資料になっていないか、最後に冒頭ページだけを読み返してください。結論、予算、期間、次の判断が一続きで伝われば、本文の詳しい根拠も読みやすくなります。
いま止まっている理由から、確認することを選ぶ
事業計画書の売上・利益・資金を分けて計算する
数字は、精密さよりも、前提と計算のつながりを説明できることが重要です。日本政策金融公庫の収支計画のセルフチェックでも、売上や原価の計算根拠、経費の漏れ、返済可能性を確認する形になっています。
売上は、実際に売る単位と時期から積み上げる
月額サービスなら「その月の稼働契約数×月額単価」、単発の受託業務なら「その月に売上となる件数×案件単価」など、事業に合う式にします。契約日、提供開始日、入金日が同じとは限らないので、社内の売上計上基準と入金条件も確認します。
点検記録サービスの例では、将来の月額3万円という仮定を置いても、検証先3拠点がそのまま有料顧客になるとは限りません。無料の検証参加、見積もり依頼、有料契約を区別して、契約数の根拠を残します。
損益は、契約数が変わるとどう動くかを比べる
下の表は、本格提供を始めた後のある1か月を想定した架空の試算です。単価は1拠点あたり月3万円、契約数に連動する提供費は月1万円、契約数にかかわらず発生する費用は月50万円と仮定します。検証予算120万円とは別の、将来の月次モデルです。
月次損益は、売上から提供費と固定費を差し引いた額です。契約数だけを変えて、黒字・赤字の見通しを比べます。
| 稼働契約数 | 売上 | 売上−提供費 | 月次損益 |
|---|---|---|---|
| 10拠点 | 30 | 20 | −30 |
| 20拠点 | 60 | 40 | −10 |
| 30拠点 | 90 | 60 | 10 |
この前提では、1拠点につき固定費の回収に使える額は2万円です。月50万円を2万円で割ると25拠点となり、月次損益がゼロになる目安が分かります。ただし、これは初期投資、税金、金利などを含まない簡易試算です。また、30拠点までは同じ体制で提供できると仮定しています。
次に確認するのは、25拠点へ到達できる販売経路があるか、月1万円の提供費で運用できるかです。件数が増えると増員が必要なら、固定費も更新します。計算結果だけで事業を評価せず、結果を大きく変える前提を検証対象にしてください。
必要資金は、入金前に出ていくお金も含める
利益が出る計画でも、先に開発費や仕入代金を払う場合は、その間の資金が必要です。月次の損益表とは別に、入金と支払いの時期を並べます。
例えば、サービス提供月の翌々月に入金される契約なら、先に発生する人件費や外注費を賄う資金が必要になります。設備の購入代金のように、支払額とその月の費用が一致しない項目も分けて確認します。
社内の経理・財務部門と、計上する費用の範囲、共通費の配分、投資の扱いをそろえます。「黒字になるか」と「途中で資金が足りるか」は、別々に答えられるようにします。
未達のときに何を変えるか、先に決めておく
売上や利用数の目標だけでは、未達になった理由を判断できません。検証段階では、購入条件や導入条件がどこまで分かったかも記録し、その結果と次の行動をつなげます。
| 確認した結果 | 次に行うこと | 判断する人・時点 |
|---|---|---|
| 利用価値があり、購入・導入条件も具体化した | 有料提供の範囲と費用を見積もり、次の投資を検討する | 事業責任者と承認者が、予定した事業会議で判断する |
| 利用価値はあるが、価格や運用費が合わない | 対象顧客や提供範囲を変え、再検証の費用と期限を設定する | 事業責任者が変更案を作り、追加予算が必要なら再承認を求める |
| 必要なデータを使えず、代替方法でも価値を提供できない | 現方式での開発を止め、残せる知見と費用を整理する | 実行担当から速やかに報告し、事業責任者と承認者が対応を決める |
この表は考え方の例であり、すべての案件に共通する合格条件ではありません。必要な品質、安全性、採算、人員の条件は、顧客や社内の関係者と検証前に具体化します。
同じ目標未達でも、まだ必要な情報が足りないのか、前提が否定されたのかで対応は変わります。「未達だから延長」ではなく、追加で何が分かれば判断できるのかを説明してください。
指標の選び方は新規事業のKPI設計、継続や終了を判断する条件は新規事業の撤退基準で確認できます。
提出前は、説明なしで判断できるか確認する
提出前には、作成に関わっていない人へ冒頭ページを読んでもらいます。「何を決める資料か」「予算は何に使うか」「次はいつ何を見て判断するか」が伝わるかを確かめてください。
本文は、次の観点で確認します。誤字の修正だけでなく、読み手が判断に使う情報がそろっているかを見るためのチェックです。
- 冒頭の予算・期間・人員が、本文や計算表の数字と一致しているか
- 顧客の発言、行動、契約などを区別し、根拠と確認日を示しているか
- 価格・契約数・費用の仮定が分かり、計算を追えるか
- 本格展開の計画と、今回の検証で行う範囲を分けているか
- 未確認事項に、調べる方法・担当者・期限が付いているか
- 計画が外れたときの変更案と、判断する人が決まっているか
「市場は拡大している」「当社の強みを生かす」といった文が残っていたら、その後に具体的な対象や行動が続いているかを見直します。例えば「既存の取引先を通じて、対象工場の購入担当者へ提案できるかを確認する」と書けば、次の仕事が明確になります。
最後に、資料の版と更新日をそろえます。会議資料は新しくても計算表が古いままだと、議論の前提が食い違います。変更した仮定と、その変更により予算や判断がどう変わるかも共有しましょう。
事業計画書の書き方でよくある質問
ページ数や書式に迷う場合も、提出先と今回の判断に必要な内容から決めます。
事業計画書は、次の検証まで書くと動かしやすい
事業計画書は、見通しをきれいに説明して終わる資料ではありません。顧客が買う理由、数字の前提、必要な体制をつなぎ、計画が変わったときに何を見直すかを共有する資料です。
まず、手元の計画の中で、売上を最も大きく変える未確認の前提を一つ選んでください。それを確かめる相手、方法、担当者、期限を書き、今回の予算依頼と結びつけます。このつながりが、読み手に判断してもらうための出発点になります。