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三井住友DS、現場社員3人が業務改善ツールを内製
ニュースの要点
スパイクスタジオは2026年9月16日、三井住友DSアセットマネジメントが実施したデジタル人材育成プログラムを、約9カ月間支援した成果を発表しました。参加したのは、デジタル開発の経験がないミドル・バック部門(運用を支える事務・管理部門)の現場社員3人です。
商品が増えても増員だけに頼らず業務を処理するため、三井住友DSアセットマネジメントは、研修で知識を学ぶだけでなく、参加者が実際に使う成果物を完成させることを条件にしました。3人は、販売会社からの照会への回答文案作成、ファンドのデータ受領・保存、改訂業務に必要な情報管理に取り組み、それぞれの部署で運用を始めました。なお、ファンドの自動保存は、チームが扱う約214本のうち一部で導入し、対象を拡大中です。
発表によると、照会対応は1件約1時間から約10分へ短縮し、データ保存は1ファンド当たり約2〜3分を削減しました。3つの成果物は各部署で現在も使われ、第2期のプログラムも始まっています。一方、総削減時間、利用人数、保守に必要な時間、プログラム費用は公表していません。
ニュース出典:【三井住友DSアセットマネジメント株式会社】現場社員が自ら業務の仕組みを構築。スパイクスタジオが9か月の伴走型DX人材育成を支援(スパイクスタジオ、2026年9月16日)
イノベーション総研の考察
この事例の特徴は、生成AIの研修を9カ月行ったことではありません。三井住友DSアセットマネジメントは、現場社員が自部署の業務を選び、実際に使う成果物を完成させ、運用まで担うことを最初から条件にしました。つまり、学習の修了ではなく、業務の変化をゴールに置いた点が重要です。
商品が増えるほど複雑になる業務を増員以外で支えた
資産運用会社のミドル・バック部門では、運用商品の設定、データ管理、販売会社への情報提供などを担います。そのため、商品が増えると、照会、データ受領、資料改訂も増えます。したがって、担当者が個別に処理する方法のままでは、商品増加によって処理能力が足りなくなる可能性があります。
三井住友DSアセットマネジメントは、この構造を変えるために「同じ人数で業務を回せる状態」を目標にしました。つまり、経費削減のために一部作業を自動化するのではなく、商品数が増えても処理できる業務基盤を作ろうとしたと考えられます。このように、DXの目的を作業時間の削減だけでなく、商品増加に耐えられる業務構造へ置いたことが、対象業務の選び方を明確にしました。
IT部門ではなく現場社員を選んだ理由は判断の前提を知っているからである
販売会社からの照会に回答するには、過去の資料を検索するだけでなく、質問の意図を読み、適切な情報を選ぶ必要があります。同様に、データ保存にも、ファンドごとの受領元や保存場所、命名規則などの業務知識があります。そのため、IT部門が外から要件を聞くだけでは、例外や判断理由をすべて把握しにくい仕事です。
そこで同社は、開発経験ではなく、業務をよく理解し、仕事へ真摯に取り組む現場社員を選びました。なお、周囲を巻き込む力は、取り組みを通じて身に付けた能力としてインタビューで語られています。また、スパイクスタジオは開発を代行するのではなく、現場社員が業務を分解し、仕組みを作る過程を支援しました。つまり、現場DXで先に選ぶべき人は、最もツールに詳しい人ではなく、業務上の判断と例外を説明できる人です。
9カ月を課題設定・学習・構築に使い、成果物を運用した
短期研修では、参加者が操作方法を学んでも、通常業務へ戻ると開発時間を確保できないことがあります。そこで三井住友DSアセットマネジメントは、9カ月をかけ、成果物の完成を条件にし、最後に役員へ一人約30分の報告を求めました。具体的には、プログラムは業務課題の整理、必要な知識・ツールの学習、成果物の構築へ進む構成でした。ただし、9カ月という長さだけを成功の理由とせず、業務と開発時間を両立できた条件を確認する必要があります。
また、成果物を各部署で運用する段階まで進めたため、削減時間や利用上の問題を確認できます。担当者インタビュー前編と後編では、AIの回答文案を人が確認してメールの下書きにする流れが紹介されています。つまり、回答を無確認で自動送信する仕組みではありません。ファンド保存も、約214本はチームが扱うファンドの総数で、自動化済みの本数ではありません。また、保存後のデータ抽出・集約にはテスト中の処理もあります。そのため、運用済みと開発中を分けて、完成した範囲を評価します。このように、人材育成を事業成果へつなげるには、修了テストではなく、利用部署と運用責任者が決まった成果物を評価対象にする必要があります。
第2期では3人の成功を組織の再現可能な方法へ変えられるかを見る
第1期の3人が成果を出しても、保守や修正が本人に集中すれば、新しい属人化(特定の人しか業務を扱えない状態)が生まれます。そのため第2期では、成果物の仕様、データの扱い、エラー時の対応を文書化し、別の社員が改善を引き継げる状態にする必要があります。また、IT部門が安全性や権限を確認する役割も欠かせません。
担当者の方が同様の育成を設計する場合、次に確認したいのは、成果物の月間利用人数、削減時間、エラー件数、保守時間、他部署で再利用した件数です。なお、保存作業の総削減時間は、実際に自動化した本数と処理頻度を確認してから計算します。というのも、1本2〜3分を全214本へそのまま掛けると、未導入分まで成果に含めてしまうからです。さらに、第2期の参加者を第1期の社員が支援できれば、外部伴走から社内の育成循環へ移れます。削減した作業時間と、研修・保守・確認に必要な負担を合わせて評価します。その際、空いた時間を別の業務へ回せる効果と、残業代などの支出が減る効果は区別し、別の社員が引き継げるかも確認します。
この分野の市場構造と参入の考え方は、リスキリングとは?企業9事例から読む成功条件と新規事業で詳しく整理しています。
まとめ
三井住友DSアセットマネジメントは、現場社員3人が自部署の業務を仕組みに変え、運用するところまでを9カ月の人材育成に組み込みました。成果物を必須にし、役員報告と部署運用までつなげたことで、研修を学習だけで終わらせていません。第2期では、保守を個人に集中させず、他部署へ再利用できる方法を作れるかが焦点です。
執筆:イノベーション総合研究所
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