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NTT東西とキヤノン、IOWNで遠隔3Dスポーツ観戦を実証

ニュースの要点

NTT東日本とNTT西日本は2026年9月25日、キヤノンのボリュメトリックビデオ技術(空間全体を立体映像として記録する技術)と次世代光通信基盤IOWNを組み合わせ、競技空間を遠隔地へリアルタイムに再現するスポーツ観戦の実証に成功したと発表しました。バスケットボールの試合を対象に、撮影、3D映像生成、遠隔会場での視聴までをつなぎました。 実証では、競技会場に約100台のカメラを設置し、同時撮影した映像をAll-Photonics Connectでキヤノン川崎事業所へ送り、3Dデータを生成しました。さらに、そのデータを体験会場へ再びリアルタイム伝送し、キヤノンのMR(現実の空間に映像を重ねて表示する技術)システム「MREAL」で選手を自由な角度から見られる立体映像として表示しました。 目的は、専用車両を入れにくい会場にも新しい観戦体験を広げることです。今回は、撮影拠点と映像生成拠点を分けることに実フィールドで初めて成功しました。今後は、他の競技や会場、放送・配信事業者向けのコンテンツ提供を検討します。

ニュース出典:All-Photonics Connect powered by IOWNとボリュメトリックビデオ技術による世界初のスポーツ観戦体験の実証に成功~競技空間を遠隔地でリアルタイムに再現~(NTT東日本・NTT西日本、2026年9月25日)


イノベーション総研の考察

今回の実証は、3D映像を作れることを確認しただけではありません。むしろ、大量の撮影データを会場外へ送り、映像生成設備を遠隔地へ移せることを示しました。つまり、技術の新しさより、会場ごとに必要だった重い設備を共用化できる可能性が、事業化にとって重要です。

技術課題は3D生成より拠点を分けられるかだった

ボリュメトリックビデオは、多数のカメラで競技空間を撮影し、選手を好きな角度から見られる3Dデータへ変換します。ただし約100台分の映像はデータ量が大きく、従来は競技会場の近くに映像生成サーバーを置く必要がありました。

その結果、専用車両を入れられる会場、電源や設置場所を確保できる試合に利用が限られます。今回の実証は、IOWNの光通信で撮影地点と計算地点を分け、遠隔地で処理しても観戦へ使える時間内に戻せるかを確かめたものです。

今回解いた課題は映像の見栄えではなく、撮影場所と高価な計算設備を切り離して運用できるかという供給側の制約です。

専用車をなくすことが事業性に効く

映像生成設備を拠点に集約できれば、一つの設備を複数の会場や競技で使える可能性があります。会場ごとに専用車両と技術者を用意する方式に比べ、移動、設置、待機の費用を減らし、車両が入れない会場にも広げやすくなります。

一方、通信回線、約100台のカメラ、撮影運営、MR機器の費用は残ります。専用車両を減らした分が回線と遠隔処理の費用を上回るか、同じ生成拠点で一日に何試合を処理できるかを確認しなければ、技術成功を採算成功とは呼べません。

実証から事業へ進む鍵は、遠隔処理によって一つの高価な設備を複数会場で使い回せる稼働率を作れるかです。

体験の新しさを収益へ変える条件

選手を自由な角度から立体的に見られる体験は、通常の中継とは異なります。しかし、驚きがあっても、誰が料金を払うかが決まらなければ事業にはなりません。遠隔観戦チケット、会場内の有料体験、放送局への素材販売、選手分析など、顧客ごとに価値が違います。

発表は放送・配信事業者へのコンテンツ提供を検討するとしています。ただし、消費者へ直接売る方式と、放送局やチームへ卸す方式では、必要な画質、遅延、権利処理、販売体制が変わります。そのため、最初の顧客と利用場面を絞る必要があります。

新しい観戦技術は、最も驚く体験ではなく、既存中継では満たせない用途に継続して料金を払う顧客を特定して初めて事業になります。

次は他会場展開の標準化を見る

実証では技術的な成功が示されましたが、対象競技、開催場所、体験人数、価格、準備時間などは事業評価に十分な形では公表されていません。次の段階では、異なる会場へ持ち込むまでの日数、必要なカメラ数、生成拠点の同時処理数、視聴者の支払意思を測る必要があります。

自社で技術実証を行う場合も、「動いた」だけで終えず、以前必要だった設備や人員をどれだけ減らせたか、別の場所で同じ手順を再現できるか、誰がいくら払うかを次の検証項目に置くことが重要です。

次の投資判断には、他会場への展開時間、共用設備の稼働率、一視聴あたりコスト、支払意思の四つが必要です。

まとめ

NTT東西とキヤノンは、約100台のカメラで撮影した競技映像をIOWNで遠隔処理し、別会場へ3D映像としてリアルタイム伝送しました。専用車両を会場へ置かずに済む可能性は、利用場所と稼働率を広げます。今後は他競技での再現性、設備共用によるコスト、放送・配信事業者や観客の支払意思が事業化の観測点です。

執筆:イノベーション総合研究所

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