新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

フィジカルインターネットとは?共同物流を動かす8事例

企業の枠を越えて、物流をつなぐ。
フィジカルインターネットの実像を読み解きます。

フィジカルインターネットは、荷物・車両・倉庫を企業の枠を越えてつなぐ物流の構想です。共通の荷物の扱い方や情報の受け渡しを整え、複数の会社で輸送力を使います。大切なのは、空き車両を探すだけでなく、荷物を引き継げる条件をそろえることです。すでに共同輸送やデータ連携のサービスは動いています。ただし、全国の物流が一つにつながったわけではありません。本記事では8つの企業・研究プロジェクトを紹介します。何が実用になり、何が残る課題なのか。自社が参入するなら、どの仕事を担えるのかを整理します。

この記事の結論

共同輸送を続けるには、荷姿・時間・責任をそろえることが重要です。

  • 輸送・データ連携・研究を担う8つの事例を紹介
  • 運賃だけでは見えない費用と、運用の条件を整理
  • 三つの参入方法から、必要な資産と責任を考える

目次

フィジカルインターネットとは、物流を企業間でつなぐ考え方

フィジカルインターネットの要点は、会社ごとに分かれた物流を、共通の仕組みでつなぐことです。トラックの空きスペースを融通するだけではありません。荷物を受け取る拠点や、そこで必要な作業も含みます。

たとえば、ある地域から別の地域へ、二つの会社が商品を運ぶとします。それぞれの荷物だけでは、車両を満たせません。荷物の温度帯や届ける時間が合えば、途中の拠点から一緒に運ぶ余地があります。

そのためには、荷物の大きさや重量が分からなければなりません。いつ到着し、誰が積み替え、どこから責任を引き継ぐのかも必要です。こうした条件を、会社をまたいでも扱えるようにします。

経済産業省の資料でも、共通の容器、拠点、手順などを組み合わせる構想として整理されています。一社の専用設備ではなく、異なる事業者が接続できることが重要です。経済産業省:フィジカルインターネットの概念

インターネットという名前でも、荷物がデータになるわけではない

インターネットでは、異なる機器が共通の約束事で情報を受け渡します。その考え方を、物の輸送に広げた名前です。

荷物をコンテナなどの単位で扱い、拠点を経由して目的地へつなぎます。ただし、物は情報と違い、場所を取り、壊れることもあります。積み替えを増やせば、作業費や破損の可能性も増えます。

そのため、「どんな荷物も細かく分け、何度も積み替える」という意味ではありません。直接運ぶ方が適している荷物もあります。何を共通化し、どこは専用に残すかを判断する構想です。

物流のデジタル化や自動運転とは、目的が違う

物流のデジタル化は、電話や紙の仕事をシステムへ移すことも含みます。自社の配車業務だけを効率化する場合もあります。

一方、フィジカルインターネットで問われるのは、他社の車両や拠点につなげられるかです。デジタル化は、そのための手段になります。

自動運転も同じです。運転を自動にしても、荷物の受け渡しや荷降ろしが決まっていなければ、輸送全体は動きません。自動運転車やドローンを必ず使う必要もありません。

個人宅などへの最後の区間については、ラストワンマイル物流の企業事例と参入機会で別に整理しています。本記事の中心は、企業間の輸送と共同利用です。

複数企業の荷物を集約し、共同輸送で運び、受け渡し先につなぐ概念図
出典:経済産業省「フィジカルインターネットの概念」などをもとに、イノベーション総研作成。共同利用の基本構造を簡略化した図。すべての荷物に集約や積み替えが必要なわけではありません。

共同配送との違いは、参加者が増えてもつなげられるか

共同配送は、複数の会社の荷物をまとめて届ける取り組みです。フィジカルインターネットの実現に向けた、身近な入り口になります。

ただし、特定の二社で共同配送を始めただけでは、他の会社も同じ仕組みを使えるとは限りません。納品伝票や容器、契約の条件が、その二社だけに合わせて作られている場合があるためです。

将来、三社目が入るときに、すべてを作り直す必要があるのか。それとも共通の条件で参加できるのか。ここが、事業を考える際の違いです。

共同配送などの取り組みと、企業間でつなぐ条件
取り組み まず変えるもの フィジカルインターネットにつながる条件
一社内の配車改善 自社の車両と運行の組み合わせ 他社の条件も扱える情報と手順が必要
共同配送・共同輸送 複数社の荷物や帰り便の組み合わせ 参加企業が増えても使える運用を整える
中継輸送 途中で車両や運転者などを引き継ぐ方法 拠点での受け渡し、時間、責任をそろえる
フィジカルインターネット 輸送・保管・情報をつなぐ仕組み全体 共通の条件で異なる企業や拠点が接続できる

表は、事業の範囲を見分けるためのIRIの整理です。実際のサービスでは、これらが重なります。

同じ方向へ走るだけでは、荷物を混ぜられない

たとえば、午前中に着く必要がある食品と、午後でもよい日用品では、納品条件が異なります。温度管理の要否や、におい移りへの配慮もあります。

大きさが同じ箱でも、上に重ねてよい物と、重ねられない物があります。荷物を載せる台であるパレットが同じでも、積み方が違えば、車両に入る量は変わります。

つまり、地図上で経路が重なることは出発点にすぎません。商品特性、荷姿、時間、作業をそろえて初めて、共同輸送の候補になります。

新規事業として考えるなら、「相手を見つける機能」だけを見るのは不十分です。見つけた後に、運べる状態まで条件を整える仕事にも価値があります。

フィジカルインターネットを支える8つの企業・研究事例

ここでは、輸送サービス、現場の管理、情報連携、研究を分けて紹介します。8件すべてが、完成したフィジカルインターネットを提供しているわけではありません。どの部分を担うかに注目してください。

共同開発や事業の引き継ぎは、一つの事例として数えています。サービスの提供開始と、広い範囲で効果が確認されたことも分けます。

共同物流を支える8事例の役割と実装段階
企業・プロジェクト 何をしているか 確認できる段階
サステナブル・シェアード・トランスポート(SST) パレット単位の混載輸送。鉄道とトラックも接続 2026年5月、対象ルートで鉄道併用サービス開始
F-LINE 食品などを納品先ごとにまとめる共同物流 共同物流事業として提供
日本パレットレンタル(JPR) TranOptによる相手探しと、運行までの調整支援 サービス提供。2025年に支援と機能を拡充
日野自動車・鈴与 旧NLJの取り組みを、輸送運営と車両・技術の役割へ移管・再編 2026年3月に再編を発表。7月に共同体発足
Hacobu MOVO Berthで到着予約、受付、荷待ちを管理 サービス提供。2026年8月に携帯向け機能を追加
traevo(トラエボ) 車両情報の集約と、noWaによる共同輸送相手の探索 noWaは2025年8月に開始
CTC・TriValue・A-Star Quantum OptyLinerで条件を踏まえた配送計画を作成 2025年に実証結果と提供開始を発表
INLECOM主導のICONET 欧州の拠点間連携、経路計画などを研究・試行 2018~2021年の研究プロジェクト。終了済み

輸送の運営会社と、システムや研究を担う組織では、強みも収益の作り方も異なります。以下では、顧客のどの仕事を支えるのかを具体的に見ていきます。

1.SST:少量の荷物を、パレット単位で共同輸送する

サステナブル・シェアード・トランスポートは、略してSSTと呼ばれる物流企業です。パレット単位で荷物をまとめ、トラックのスペースを複数の荷主で使うサービスを提供しています。荷主とは、荷物を出す企業などのことです。

2026年5月には、日本貨物鉄道の関東支社と連携しました。関東から新潟、長野へ向かう対象ルートで、鉄道とトラックを組み合わせたサービスを始めています。最低一パレットから利用できます。SST:鉄道・トラックを組み合わせたサービス

具体的には、荷物を貨物駅へ持ち込み、鉄道で送り、到着後はトラックで納品先へつなぎます。発表時点では駅への持ち込みが基本で、集荷は別途相談する形です。「一パレット頼めば、全国どこでも同じ条件で運べる」わけではありません。

この事例で注目したいのは、車両一台ではなく、荷物の単位でサービスを買えることです。トラックを一台借りるほどの量がない企業にも、利用の入口ができます。

一方、その荷物を共同便に載せるには、寸法や積み方を合わせる作業が残ります。SSTは基本の荷物の寸法を示し、それ以外は相談に応じる形です。SST:サービス内容

IRIは、ここに梱包設計や出荷作業の支援余地があると考えます。輸送網そのものを新設しなくても、顧客の商品を「共同便で扱える荷姿」に変える仕事は候補になります。

2.F-LINE:同じ納品先へ向かう食品をまとめる

F-LINEは、食品企業の共同物流を担う会社です。2019年に、食品企業5社の出資による体制で発足しました。現在の共同物流事業では、同じ種類の温度管理などが求められる商品を、納品先ごとに積み合わせて配送しています。F-LINE:会社の概要共同物流事業

食品メーカーの側から見ると、自社の商品だけを毎回別々に運ぶ必要を減らせます。受け手にとっても、商品が別々の車両で到着する場合と比べ、受け入れをまとめられる余地があります。

ただし、共同配送の意味は、何でも同じ車両へ積むことではありません。常温、冷蔵、冷凍といった条件や、商品の扱い方を守ることが前提です。同社も食品物流の品質管理を基盤に位置づけています。

この取り組みから分かるのは、参加企業を集めるだけでは物流会社の仕事を代替できないことです。配送の順番、欠品時の対応、納品先との調整など、毎日の運営が必要になります。

参入企業が狙うなら、共同便を持つ会社と競う方法だけではありません。受注情報の整理や、納品先ごとの細かな条件の管理も考えられます。必要なのは、既存の物流現場に合う形で改善することです。

3.JPR:相手探しに加え、話がまとまるところまで支える

日本パレットレンタルは、荷物を載せるパレットの貸し出しなどを行う企業です。JPRという略称で知られ、共同輸送の相手を探すサービス「TranOpt(トランオプト)」も提供しています。

TranOptは、出発地と到着地だけでなく、荷物の特性なども使って組み合わせを探します。2025年2月には、事前のデータ整理や、企業間の話し合いを支えるコンサルティングを開始すると発表しました。JPR:共同輸送の導入支援

共同輸送が進まない理由は、相手探しだけではありません。非効率なルートを把握できない、話し合う担当者が足りない、といった課題もあります。

同年10月には、ルート情報を他の利用者へ開示せずに候補を調べる機能なども追加しました。通常の情報開示方法と、新しい非開示の探索方法は区別されています。機密性を一律の設定で片づけていない点も重要です。JPR:TranOptの機能拡充

同社が紹介した家具・家電の共同輸送コミュニティでも、時間や場所、荷姿について対話しています。なお、2023年の取材記事で紹介された具体ルートは、運行に向けた合意の段階です。その記事だけで運行実績や削減効果を断定することはできません。JPR:家具・家電分野の取り組み

IRIは、このような条件整理こそ、新規参入企業が見落としやすい仕事だと考えます。検索結果を出すことと、翌週から運べることは別です。両者の間を埋める業務に、支払い手がいるかを探します。

4.日野自動車・鈴与:旧NLJの実証を、誰が運営するか

NEXT Logistics Japan、略してNLJは、複数社の荷物をまとめる高効率輸送などに取り組んできました。二つの荷台を連結するダブル連結トラックや、荷物の組み合わせを考える仕組みが含まれます。

ただし、過去の紹介をそのまま読むと、現在の運営体制を誤解します。2026年3月24日、日野自動車は、取り組みの移管・再編とNLJの解散決定を発表しました。

公表資料では、混載輸送の事業運営は鈴与へ移すとしています。一方、車両の普及支援や技術開発などは、日野自動車の専門チームが担う方向です。日野自動車:NLJの事業移管・再編

さらに2026年7月には、「ダブル連結トラック コミュニティ」が発足しました。車両の普及を支える基盤と、デジタル面の取り組みを進める体制です。日野自動車:コミュニティの発足

この再編だけを見て、「共同輸送は失敗した」と結論づけるのも適切ではありません。発表されているのは、役割を適した組織へ移す方針です。未公表の採算や、解散手続きの完了日までは推測しません。

事業開発への示唆は、技術を試す会社と、荷物を継続して集める会社が同じとは限らないことです。車両、システム、営業、毎日の運行を一社ですべて持つ必要があるのか。提携の設計から考える価値があります。

5.Hacobu:トラックが着いた後の待ち時間を管理する

Hacobuの「MOVO Berth(ムーボ・バース)」は、トラックの予約受付サービスです。バースとは、倉庫などで荷物を積み降ろしする場所を指します。

到着時間を予約し、入場や作業の状況を管理します。2026年8月には、スマートフォン向けの「Berth Mobile」を提供し始めました。現場担当者が移動中でも、予約の確認や受付、呼び出しを扱える機能です。Hacobu:Berth Mobileの提供開始

共同輸送の文脈では、「よい経路で運ぶこと」と「着いた後に受け入れられること」をつなぐ役割があります。車両の積載量が増えても、荷降ろし場所が埋まっていれば、待ち時間が増える可能性があります。

たとえば、午前中に到着が集中する倉庫では、荷物をまとめるほど一度の作業が長くなるかもしれません。受付時刻だけでなく、必要な人員や荷降ろしの順番も確認する必要があります。

この製品だけで企業間物流がすべて接続されるわけではありません。しかし、拠点が受け入れられる量と時間を把握することは、ネットワークを組む土台です。拠点の業務に詳しい企業には、運用設計や既存システムとの接続という入り方があります。

6.traevo:異なる車両のデータから、共同輸送の接点を探す

traevoは、異なるメーカーの車載機器などから、位置や作業の情報を集めるサービスを展開しています。共同輸送を考えるには、運送会社ごとに分かれた情報を扱えることが重要になります。

同社は2025年8月に、共同輸送を支える「noWa(ノワ)」を開始しました。2026年1月の公表では、運行データやExcelの情報を使い、発着地や車両条件から候補を探す仕組みを紹介しています。発着地は市区町村単位などに加工して扱います。traevo:共同輸送・データ連携の取り組み

細かな取引先名を、最初からすべて開示したい企業ばかりではありません。まず粗い情報で可能性を探し、相手との調整が進んでから詳細を扱う。こうした段階づけには意味があります。

ただし、加工された情報なら絶対に機密が推測されない、という意味ではありません。珍しい発着地や商品条件の組み合わせから、企業が絞られる場合も考えられます。誰に何を見せるかは、別に設計する必要があります。

IRIが参入余地として見るのは、データを集めた後の整備です。同じ拠点なのに名前が違う、作業時間の記録方法が異なる。こうした違いを直す仕事は、物流の知識と情報処理の両方を必要とします。

7.CTCなど3社:現場の条件を踏まえて、配送計画を作る

伊藤忠テクノソリューションズ、略称CTCは、TriValue、A-Star Quantumと「OptyLiner(オプティライナー)」を開発しました。車両容量や運転時間などの条件を考慮して、配送計画を立てるサービスです。

2025年6月の発表では、家具・家電配送の実証結果を示しています。対象は92件の配送と10台の車両でした。この条件で、手作業で約3時間かかる計画を10分未満で作成し、計画上の車両数を9台へ減らしたとしています。CTC:OptyLinerの提供開始と実証

これは、特定の実証条件での結果です。どの物流現場でも同じ時間短縮や台数削減が得られるわけではありません。また、発表時点では共同配送の管理機能は今後の開発として示されています。すでに他社を自由につなぐネットワークが完成した、とは読みません。

配送計画の価値は、短い経路を選ぶことだけではありません。大型商品では、搬入に必要な作業員の数も影響します。車両が空いていても、適切な作業員がいなければ配送は成立しません。

このため、汎用の計算手法を持つ企業も、現場の制約を理解する企業と組む必要があります。顧客の困りごとを計算できる条件へ置き換えることが、商品づくりの一部です。

8.ICONET:拠点どうしをつなぐ方法を、欧州で試した研究

ICONETは、欧州の研究プロジェクトです。INLECOMが調整役を務め、2018年から2021年まで実施されました。企業ではないため、ここでは研究の事例として区別します。

欧州委員会の成果報告では、四つの実証環境で、拠点間の連携や経路計画などを検討しています。アントワープ港を扱う環境では、貨車へのコンテナ積載や列車編成の計画も対象でした。欧州委員会CORDIS:ICONETの成果報告

現在進行中の欧州全域サービスではありません。研究は終了しており、成果には試作システムやシミュレーションが含まれます。欧州ですでに完全なフィジカルインターネットが稼働している証拠として使うことはできません。

それでも参照する理由は、問題を道路輸送だけに限定していないからです。港、鉄道、倉庫をまたいだときに、どの情報を共通化するかが研究されています。

新規事業でも、すべての機能を自社開発する前に、接続相手と扱う情報を決める必要があります。実証でうまく動いた仕組みを、どの事業者が保守し、費用を負担するかまで考えることが重要です。

日本では、2040年を目標とするロードマップが示されています。共同輸送だけでなく、物流情報や荷物の扱い方をそろえる取り組みを、段階的に進める方向です。経済産業省関東経済産業局:実現に向けた取り組み

ただし、目標年があるからといって、その年にすべての会社が接続されると決まったわけではありません。地域、業種、商品条件によって、進む速さは異なります。

制度面では、2026年4月から、一定規模以上の荷主や物流事業者に計画・報告などの対応が求められています。ただし、すべての企業に同じ義務があるわけではありません。対象区分や手続きは、国土交通省の案内で確認する必要があります。国土交通省:物流効率化法の概要

法対応の必要性と、新サービスが売れることも別です。報告書を作る機能が求められているのか、実際に荷待ちを減らす運用が必要なのか。顧客が困っている仕事を分けて考えます。

市場全体の金額より、いま買われている仕事を見る

フィジカルインターネットは、単一の商品市場ではありません。車両、倉庫、容器、運行管理、データ連携などを含む構想です。

物流業と配車システムの売上を足すと、同じ仕事への支払いが重複する場合があります。本記事では定義の異なる予測を合算せず、何に料金が支払われるかを事例から読みます。

たとえば、SSTでは輸送の利用、JPRでは探索や導入支援、Hacobuでは現場管理が対象になります。参入企業にとっては、「巨大市場の一部を取る」より、既存の仕事の何を改善するかが具体的です。

技術の発表より、運営条件の変化を追う

2025~2026年の事例では、相手探しの機能だけでなく、データ整理や現場操作の拡充が見られます。SSTの鉄道併用や、旧NLJの再編も、運営の仕組みを具体化する動きとして読めます。

技術ニュースを見る際は、三つを分けると理解しやすくなります。何が動いたか、誰が運営するか、どの条件なら利用できるかです。実証参加の発表だけでは、継続利用の条件までは分かりません。

自社の状況から、次に確認することを選ぶ

該当する項目を開くと、記事の読む場所がわかります。点数を付ける診断ではありません。

01 基本から知りたい

企業間で物流をつなぐ考え方を確認します。

  • 何を共有するか
  • どこで引き継ぐか
  • 専用に残すものは何か

基本の仕組みを見る →

02 共同配送との違いは

参加者が増えるときの条件を確認します。

  • 二社専用の条件か
  • 荷姿は合うか
  • 時間は合うか

取り組みの範囲を比べる →

03 企業事例を知りたい

提供内容と実装段階を分けて読みます。

  • 輸送かシステムか
  • 実証か商用か
  • 誰が運営するか

8つの事例を見る →

04 運用条件を知りたい

受け渡しで起きる作業を整理します。

  • 容器を返せるか
  • 荷降ろしできるか
  • 誰が連絡するか

荷姿・時間・責任を確認する →

05 参入方法を選びたい

自社の強みから役割を選びます。

  • 顧客との接点はあるか
  • 業務知識はあるか
  • 使える設備はあるか

三つの参入方法を見る →

06 事業案を相談したい

対象と課題を具体的にします。

  • どの荷物を扱うか
  • 誰が困っているか
  • 自社は何を担うか

相談前の情報をそろえる →

NEXT STEP

次のステップ

物流の困りごとを、自社が担える事業へ

対象の荷物と区間、困っている会社、自社が担える仕事を整理します。顧客名や機密の運賃情報は不要です。

共同輸送で先に決めるのは、荷姿・時間・受け渡しの責任

企業事例を見ると、共通する課題が見えてきます。システムが候補を出した後、実際に荷物を預けられるかです。

ここでは、事業を検討する際の確認点をIRIの視点で整理します。特定のサービスの契約条件や、法的な責任分担を示すものではありません。

荷姿:同じパレットでも、積み方と回収方法が違う

荷姿とは、荷物をどのような箱や容器に入れ、どのようにまとめるかです。寸法だけでなく、重量、重ね方、固定方法が関係します。

共同便に合わせるために、箱の入れ替えや積み直しが必要なら、その作業費を見込みます。配送先がパレットを受け取れるかも重要です。フォークリフトがない場所では、別の作業が必要になる場合があります。

使い終わった容器を誰が回収するかも残ります。往路の積載率が良くなっても、空の容器を戻す費用が大きければ、全体の費用は下がらない可能性があります。

標準化は、同じ寸法の道具を買うことだけではありません。出荷から返却まで、同じ扱い方を共有できる状態を目指します。

時間:出荷側だけでなく、受け入れ側の都合を合わせる

同じ地域へ向かう荷物でも、出荷できる時間が違うことがあります。製造が終わる時刻や、注文の締め切りが違うためです。

一方、納品先にも、受け取れる時間と量があります。出荷側が便利な時刻だけで組むと、到着後の待ち時間が増えるかもしれません。

先に確認したいのは、変更できない条件と、相談できる条件です。「午前中指定」の理由が店舗の開店準備なのか、以前からの慣行なのかでも、調整の余地が異なります。

顧客に尋ねる際は、単に時間を変えられるかではなく、変えると誰の作業が増えるかまで確認します。負担の移し替えになっていないかを見るためです。

責任:破損や遅れが起きたときの窓口を決める

複数の事業者が関わるほど、荷物の状態を確認する場所が増えます。どこで引き渡し、誰が受け取ったかを記録する必要があります。

温度条件のある荷物なら、温度を測る場所や記録の扱いも論点です。遅れた場合に、納品先へ連絡する担当者も必要になります。

「データが残るから安心」で終わらせず、問題が起きたときに誰がその記録を確認し、対応を決めるかを整えます。責任範囲や保険の適用は、運送事業者や専門家との確認が必要です。

共同輸送を続けるため、荷姿、時間、責任をそろえる関係図
出典:SST、JPR、Hacobuなどの公開資料を参考に、イノベーション総研作成。共同輸送の運用を考えるための概念整理であり、法的な要件一覧ではありません。

費用は、運賃だけでなく共同化に増える作業まで比べる

共同輸送で積載率が上がっても、荷主の総費用が必ず下がるとは限りません。積み替えや待機、情報入力など、別の費用が増える可能性があるためです。

運賃の削減だけで、採算を判断しないことが重要です。

たとえば、共同便によって車両費を減らせても、出荷前の積み直しが毎回必要になれば、人件費が増えます。運賃を安くする代わりに納期が長くなれば、在庫を増やす必要が出るかもしれません。

以下は、事業案を比べる際の確認表です。費用の相場ではなく、見積もりに抜けを作らないためのIRIの整理です。

共同輸送の費用と継続条件を確認する項目
費用・条件 比べる内容 見落としやすい点
輸送 幹線、集荷、納品までの費用 共同区間の前後が別料金になっていないか
荷役・保管 積み替え、検品、一時保管 荷物をまとめるほど作業が増えていないか
容器・梱包 パレット、箱、固定材、返却 空容器の回収や紛失の負担は誰か
調整・データ 条件整理、入力、問い合わせ、精算 手作業の負担が特定の会社に偏らないか
例外への対応 遅れ、破損、返品、運休時の代替 通常便だけの見積もりになっていないか
継続条件 貨物量、出発頻度、契約期間 荷物が減ったときも便を維持できるか

まず現在の費用をこの項目に分け、共同化で減る分と増える分を並べます。運賃の見積もりだけでは分からない負担を、関係者と確認するためです。

誰が得をして、誰が手間を負担するかを分ける

荷主の運賃は下がっても、倉庫の作業員が増える場合があります。運送会社の空車区間は減っても、別の会社が情報入力を引き受けるかもしれません。

全体では得をする計画でも、負担する会社に利益が戻らなければ、協力が続かない可能性があります。料金の配分や、追加作業の対価を考える必要があります。

新規サービスを作る側も同様です。削減額の一部を受け取るなら、削減前の費用をどう記録し、何を自社の効果とするかを決めます。燃料価格や荷物量の変化まで、自社の成果として数えないためです。

比較する単位と、品質の条件をそろえる

一回の運賃と、毎月のシステム料金を、そのまま比べることはできません。月間の便数や荷物量をそろえて比較します。

単位は、パレット一枚、荷物一件、一便など、顧客の実務に合わせます。さらに、納期や破損時の対応など、提供する品質の条件もそろえます。

安い運賃だけを見て選ぶと、別の工程に費用が移っているかもしれません。利用者が買うのは、移動そのものだけではなく、必要な条件で荷物が届くことです。

フィジカルインターネットで新規事業に参入する三つの方法

参入方法は、自社が持つ資産によって変わります。大きな共同輸送網を一から作る以外にも、必要な役割があります。

ここでは、企業事例を踏まえて三つに整理します。各社が提携先を募集しているという意味ではありません。実際の協業条件は、個別に確認が必要です。

方法1:業界の顧客網を生かし、共同輸送の運営を支える

地域や業界の荷主との接点を持つ企業に向く入り方です。複数社の出荷予定や納品条件を集め、共同化できる仕事を見つけます。

提供物は、相手企業の一覧だけではありません。対象ルート、荷物の条件、費用の分担、変更時の連絡方法まで整えることが考えられます。

支払い手の候補は、輸送の確保や社内調整に困る荷主です。準備段階の調査・設計費と、継続運営の費用を分ける方法があります。

必要な提携先は、実際に運送する企業や、受け渡しを担う倉庫です。契約上どの役割を担うかによって、必要な手続きも変わります。輸送を自ら引き受けるのか、条件整理の支援にとどめるのかを明確にします。

懸念は、荷物を集める調整が毎回手作業になることです。特定の担当者の人脈だけで成立するなら、拡大には限界があります。繰り返し使える条件票や運営手順にできるかが重要です。

方法2:業務知識を生かし、データをつながる形へ整える

物流システムや業務改善の経験がある企業に向く方法です。荷主、運送会社、倉庫で異なる情報を、比較・受け渡しできる形へ整えます。

たとえば、同じ納品先に異なる番号が付いている場合があります。荷物の量も、ある会社は箱数、別の会社は重量で管理しているかもしれません。違いを残したまま集計すると、共同便の判断を誤る原因になります。

提供物としては、データ整理、既存システムとの接続、入力の確認、例外処理などが考えられます。初期設定の費用と、継続的な管理の料金を分けられます。

提携先は、既存の配車・倉庫管理サービスや、現場を理解する物流企業です。新しい基幹システムへの全面移行を前提にせず、必要な情報からつなぐ入り方もあります。

懸念は、顧客ごとの作り込みが増えることです。接続先が増えるたびに開発をやり直すなら、月額料金だけでは費用を回収しにくくなります。共通化できる部分と、個別に有料対応する部分を分けます。

方法3:設備や荷役の強みを生かし、受け渡しを支える

倉庫、梱包、容器、荷役設備などの知見を持つ企業に向く方法です。荷物をまとめる場所や、次の輸送へ渡す作業を担います。

新しい大型拠点を建てる方法だけではありません。既存拠点の空き時間を使う、商品に合う容器を設計する、積み替え作業を改善する、といった選択肢もあります。

支払い手は、荷役の負担や輸送の制約を抱える荷主・運送会社です。設備や容器の利用料金、作業ごとの料金などが候補になります。

提携先には、荷物を持つ企業と、前後の輸送を担う企業が必要です。設備会社だけで構想しても、貨物量と運行予定が合わなければ稼働しません。

懸念は、設備投資が先行することです。荷物が少ない日にも、人や場所の費用は残ります。予約の取り消しや繁忙期の扱いまで含め、設備が使われ続ける条件を確かめます。

顧客網は運営調整、業務知識はデータ接続、設備は受け渡しという参入役割の対応図
出典:本文の企業・研究事例をもとに、イノベーション総研作成。自社資産と参入役割を対応づけた概念図。成功確率や提携募集の有無を示すものではありません。

継続的な管理を事業にする考え方は、マネージドサービスの提供価値と参入方法でも解説しています。

専用輸送を残す方がよい場合もある

フィジカルインターネットは、あらゆる輸送を共同化するための合言葉ではありません。共同化によって増える負担が、便益を上回る場合は見送る判断も必要です。

荷物の条件が合わず、積み替えの負担が大きい

壊れやすい荷物や、厳しい温度管理が必要な荷物では、受け渡しを増やすことが負担になる場合があります。すでに専用車両が高い稼働率で動いているなら、共同化の余地も小さくなります。

この場合は、輸送の共同化より、荷待ちや出荷作業を改善する方が適しているかもしれません。共同便に載せること自体を目標にしないことが大切です。

負担と効果を分けられず、協力が続かない

共同化の効果が見えていても、誰が追加作業を担うか決まっていなければ、日々の運営は不安定になります。精算方法の協議が止まっているなら、機能の開発を増やしても前進しません。

こうした場合は、まず対象を絞り、条件を合意できる相手との提携を優先します。現場の制約に合わない構想を、システムで押し切らないことが重要です。

荷物も利用者も決まらないまま、設備投資が必要になる

「いずれ多くの会社が使うはず」という期待だけでは、拠点の稼働を支えられません。誰の荷物が、どの曜日に、どの程度来るかが重要です。

利用の約束がなく、固定費だけが先に立つ場合は、待機も選択肢です。既存拠点を使う方法や、設備を持つ企業との提携から検討できます。

参入、提携、待機、見送りを分ける際は、市場の将来性だけでなく、自社がそろえられる条件を見ます。これは新規事業の企画書に必要な構成と根拠を考える際にも共通する視点です。

フィジカルインターネットの相談前に、三つの情報をそろえる

事業案を相談する時点で、全国の荷物データを持っている必要はありません。自社が知る現場の困りごとを、具体的に説明できることが出発点です。

まず、どの荷物の、どの区間を対象にするかを整理します。商品名や顧客名が機密なら、常温の日用品、地域間の幹線輸送といった範囲でも構いません。

次に、誰が何に困っているかを分けます。運送会社は空車の帰り便、荷主は出荷量の変動、倉庫は午前中の集中など、同じ輸送でも課題は異なります。

最後に、自社が持つものと、他社に任せるものを整理します。顧客との接点、拠点、容器の技術、システム、運営担当者などです。

まず、どの荷物の、どの受け渡しを良くするかを決めます。

イノベーション総研では、こうした情報をもとに、顧客と提供価値、提携の役割、採算上の懸念を整理します。輸送の認可や法的な責任の判断は、関係する専門家への確認と分けて進めます。

「物流の将来性は分かるが、自社の仕事が見えない」という段階なら、新規事業の企画・事業化を支援するサービスをご確認ください。構想の現在地を整理したい場合は、事業の状況を無料診断で確認することもできます。

フィジカルインターネットについてよくある質問

共同配送や自動運転との関係、実用化の範囲など、混同しやすい点を短く整理します。

Q. フィジカルインターネットと共同配送は同じですか?

A. 同じではありません。共同配送は、複数の会社の荷物をまとめて届ける取り組みです。フィジカルインターネットは、輸送、拠点、情報などを共通の条件でつなぐ、より広い構想です。共同配送は、その実現に向けた一つの入り口になります。

Q. フィジカルインターネットには自動運転が必要ですか?

A. 必須ではありません。有人トラックや鉄道を使う共同輸送も対象になります。自動運転は輸送を支える手段の一つですが、荷物の扱い方や、受け渡しの条件を整える仕事は別に必要です。

Q. 日本では、すでに実用化されていますか?

A. 共同輸送、予約受付、データ連携など、一部を担う商用サービスはあります。一方、全国の物流が一つの仕組みでつながった状態ではありません。サービスごとに、対象ルート、荷物の条件、提供範囲を確認する必要があります。

Q. 物流会社でなくても参入できますか?

A. データ整理、システム接続、梱包・容器設計、共同化の調整支援などが候補になります。ただし、輸送を引き受ける役割と、支援サービスを提供する役割は分けて考えます。必要な手続きや契約上の責任は、実際の事業内容に応じて確認してください。

まとめ:荷物をつなぐ前に、企業どうしの条件をつなぐ

フィジカルインターネットは、企業ごとに分かれた物流をつなぐ構想です。事業の入口は、車両や倉庫を新しく作ることに限りません。

SSTやF-LINEは、共同で運ぶ仕事を具体化しています。JPRやtraevoは、相手や情報をつなぎます。HacobuやCTCなどは、拠点の受け入れや配送計画を支えています。旧NLJの再編とICONETの研究は、実証の先で誰が運営を担うかを考える材料になります。

荷物が混ざることと、事業が続くことは別です。

参入を考えるなら、荷姿、時間、受け渡しの責任を確認します。そのうえで、顧客網、業務知識、設備のうち、自社が持つ強みをどの仕事に使えるかを考える。この順番で見れば、大きな構想を、自社が取り組める事業の問いへ変えられます。

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自社は、企業間物流のどこを担えるか

顧客網、業務知識、設備から事業の入口を整理します。共同輸送の運営、データ接続、受け渡しの支援を比較し、参入・提携・待機・見送りを考えます。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

経済産業省、本文の企業、欧州委員会の公開資料。出典は各箇所に記載。費用の確認項目と参入方法はイノベーション総研の分析。

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