新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

新規事業の採用で経験者を活かすには?要件・面接・入社後の設計

新規事業の採用は、経験者を探す前に「最初に任せる仕事」と「会社が用意する支援」を決めるところから始めます。求人票、面接、入社後の計画を同じ役割でつなぐと、採用側と候補者の期待を合わせやすくなります。

「経験者を採ったのに、社内調整ばかりで進まない」「求人を出しても、求める人に会えない」。こうした悩みは、候補者の能力だけの問題とは限りません。人を選ぶ基準と、入社後に動ける条件を一緒に整えることが大切です。

本記事では、事業責任者と人事に向けて、採用要件を決める3つの手順、求人票の記入例、面接で使う4つの質問、入社後90日の受け入れ方を解説します。888名の独自調査を踏まえ、中途採用・内部登用・外部人材のどれで不足する役割を補うかも整理します。

この記事のポイント

  • 経験年数より、最初に任せる仕事から採用要件を決める
  • 候補者に求める能力と、会社が渡す権限・支援をそろえる
  • 面接では、成果の大きさだけでなく本人の行動と周囲の条件を確かめる
  • 入社後は、本人の仕事と会社側の準備を同じ計画で振り返る

目次

新規事業の採用は、経験者探しより「任せる仕事」から始める

新規事業の経験者を採ることと、自社の新規事業が進むことは別です。顧客を探す仕事なのか、試作品を検証する仕事なのか、販売を広げる仕事なのか。まず任せる仕事を決め、その仕事に合う経験を持つ人を探します。

たとえば、販売組織を拡大してきた人が、まだ顧客の課題も決まっていない案件に合うとは限りません。一方、顧客の話から企画を何度も変えた人なら、同じ業界の経験がなくても、初期の検証を担える可能性があります。「新規事業経験あり」という一つの条件で、この違いを見落とさないことが大切です。

888名調査では、経営への説明や既存部門との調整も負担に挙がった

経験だけでなく、入社後の環境にも目を向ける必要があります。イノベーション総研は、大企業で新規事業に関わる888名へ調査しました。精神的な負担の上位には、チーム運営、経営への説明、既存部門との調整が並びました。

次のグラフは、その上位3項目です。候補者に求める仕事のうち、会社側が支えるべきものは何か、という視点で見てください。

新規事業の推進で、精神的な負担が大きかった項目(上位3項目)

チームメンバーのモチベーション維持32.7%(290名)
経営層への説明・説得30.6%(272名)
既存事業部門との関係調整28.2%(250名)
大企業の新規事業に関わる888名の回答。複数回答。比較軸は0〜40%。中途入社者だけの結果ではありません。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月)

イノベーション総研は、この結果を、採用要件と一緒に「会社が引き受ける調整」を決める材料と考えています。たとえば、営業部門から顧客を紹介してもらえない状態なら、入社者の交渉力を問う前に、部門長同士で協力範囲を合意する必要があります。

特に、部門間の承認が多い企業で新たに人を迎える場合に重要です。既存部門との調整が滞っているだけなら、採用人数を増やしても解決しないことがあります。まず、候補者に任せる仕事と、上司や経営が決めることを分けてください。

求人を出す前に、採用要件を3つの手順で具体化する

人事と事業責任者で、任せる仕事、必要な経験、会社側の支援を一枚にまとめます。本記事では、このメモを「役割票」と呼びます。立派な書式は不要です。次の3つを順に決めれば、求人票と面接で同じ人物像を共有できます。

1. 最初に解いてほしい課題を、一つの仕事にする

最初は、事業のどこが止まっているかを具体的に書きます。「新規事業を立ち上げる」では広すぎるため、「工場向けサービスの対象顧客を絞り、試行する相手と条件を決める」まで分けます。

以下では、工場の設備点検を支援するサービスを考える会社を、説明用の架空例として使います。この会社には技術者がいる一方、誰が何に困り、どの条件なら試してくれるかを調べる人がいません。この場合、採用で埋めたいのは「技術と営業が何でもできる人」ではなく、顧客への確認と検証計画を主導する役割です。

仕事の説明には、本人が決める範囲も添えます。顧客への質問や小さな検証方法を選ぶのは本人、追加投資を決めるのは事業責任者、技術の安全性を確認するのは開発部門、という形です。責任者を選ぶ際の考え方は、新規事業リーダーの選び方で整理しています。

2. 必須の経験と、入社後に補える知識を分ける

必須条件には、任せる仕事を始めるうえで欠かせない経験を入れます。歓迎条件には、社内の支援や学習で補えるものを入れます。重要そうな条件をすべて必須にすると、何を優先して採用するのかが分からなくなります。

設備点検サービスの例なら、顧客への聞き取りから課題を整理し、検証方法を変えた経験は重視できます。一方、機械の専門知識は開発担当が補えるなら、必須とは限りません。ただし、本人が技術上の安全性まで判断する役割なら、その専門性を外すことはできません。条件を減らすのではなく、実際の担当範囲に合わせます。

「主体性がある」「巻き込む力がある」も、確認できる行動へ変えましょう。たとえば、「協力が必要な部門を特定し、依頼内容と期限を合意した経験」と書けば、面接で何を聞くかが明確になります。

仕事内容や必要なスキルの整理には、厚生労働省のjob tag「人材採用要件整理」も使えます。職業情報を土台にし、自社で最初に任せる仕事と判断範囲を追加してください。

3. 会社が渡す権限と、支える担当者を決める

「裁量が大きい」「経営直下」といった説明だけでは、候補者は実際に動けるか判断できません。使える予算、顧客への連絡方法、専門部門へ相談できる範囲、承認が必要な事項を具体的に伝えます。

そのうえで、本人の権限では解決できない問題を引き受ける人を置きます。ここでいう経営スポンサーとは、応援するだけでなく、部門間の優先順位や必要な資源を調整する経営・部門責任者です。名前だけでなく、何を依頼できるかまで決めてください。

たとえば「顧客への紹介は営業部長が調整する。検証費用の申請は事業責任者が受け、回答する日を決める」と書きます。会社全体の承認制度を変えられなくても、相談先と次の判断日が見えるだけで、入社者が一人で関係者を探す状況を避けられます。全体の役割分担は、新規事業の推進組織の設計も参考になります。

中途採用・内部登用・外部人材を、必要な期間と役割で選ぶ

役割票ができても、すぐに中途採用と決める必要はありません。その仕事が継続して必要か、社内の誰が最終判断をするかを確認し、不足する経験をどこから補うか選びます。

次の表は、人材を確保する方法を選ぶための比較です。雇用・契約形態の法的な区分を示す表ではありません。

不足する役割を、中途採用・内部登用・外部人材で補うときの選び方
方法 検討しやすい場面 会社側で整えること
中途採用 継続して担う中核の仕事があり、社内に足りない経験を取り込みたい 担当案件、権限、評価、協力部門を採用前に示す
内部登用・育成 社内の顧客や関係部署を知る人に、実務経験を積んでもらいたい 新規事業に使う時間を確保し、減らす既存業務と支援者を決める
外部人材・支援 期間や専門領域を区切って、不足する経験を補いたい 社内の責任者、任せる範囲、終了時の引き継ぎを決める

社内で顧客や関係部署をよく知る人がいるなら、その人を主担当にして、未経験の検証だけ外部の専門家と進める方法もあります。逆に、長く事業を担う人が必要で、任せる仕事と受け入れ体制を示せるなら、中途採用を検討します。

設備点検サービスの例では、顧客への確認を一度だけ行いたいのか、その後の提供や改善も継続して任せたいのかで選択が変わります。前者なら期間を区切った支援も候補になり、後者なら社内に中核となる担当者を置く必要があります。

外部人材に頼む場合も、顧客情報や検証記録を受け取る社内担当者は最初から決めておきます。「採用できるまで全部任せる」ではなく、任せる期間、終了時に残すもの、採用後に引き継ぐ仕事を合意してください。業務委託などの契約形態は、実際の仕事の進め方も含めて人事・法務と確認します。

新規事業の求人票は「期待」と「会社が用意する条件」をセットで書く

候補者が知りたいのは、挑戦できるという抽象的な魅力だけではありません。何を任され、誰と働き、どこまで自分で決められるかです。会社からの要求と、会社が用意する環境を並べると、応募前に仕事を具体的に想像できます。

求人票の記入例:顧客検証を主導する担当者を採る場合

設備点検サービスの架空例を、求人の説明へ書き換えると次のようになります。これは仕事内容を説明するための例であり、求人票の全項目を網羅したものではありません。賃金、勤務場所、勤務時間などの労働条件も別途、具体的に示します。

担当する仕事と、会社が用意する環境の記入例

募集の背景:工場の設備点検を支援するサービスを検討しています。技術の試作は進んでいますが、対象顧客と試行条件を決めるための検証が不足しています。

最初に任せる仕事:顧客候補への聞き取りを設計し、困りごとと現在の対処法を整理します。その結果をもとに、小さな試行の内容と実施条件を提案していただきます。

重視する経験:顧客から得た事実をもとに、提案内容や検証方法を変更した経験。設備の専門知識は開発担当が支援します。

自分で決められること:合意した範囲での質問設計と検証方法。追加投資や本開発への移行は、事業責任者が判断します。

会社が用意すること:営業部門による顧客紹介、開発担当との定例相談、検証費用の相談窓口、結果を判断する会議。

最初の振り返り:入社後の確認時点を合意し、顧客について分かったこと、提案を変えた理由、次に確かめることを振り返ります。

このように書くと、候補者の側も「前職で近い仕事をしたか」「不足する知識をどう補えるか」を判断できます。報酬や働き方の条件を含め、まだ決まっていない点は、誰がいつ決めるかを選考中に説明します。

人材紹介・スカウト・社員紹介でも、同じ役割票を使う

候補者に会う経路が変わっても、求める役割は変えません。人材紹介会社には必要な経験と任せる仕事を共有し、スカウトでは、その人のどの経験に着目したかを伝えます。社員紹介でも、紹介者の印象だけで採用せず、共通の質問で確認します。

人事が「幅広く企画できる人」、現場が「すぐに営業できる人」、経営が「事業責任者」を別々に探していては、合意できません。求人を出す前に、最初の仕事と必須条件を三者で読み合わせましょう。

採用のどこで、困っていますか

近い項目を開くと、確認する問いと本文の説明へ進めます。点数を付ける診断ではありません。

01 求人要件が広くなりすぎる

最初の仕事から、必要な経験を絞ります。

  • 最初に解いてほしい課題は具体的か
  • 本人に求めない仕事を分けたか
  • 社内で補える知識まで必須にしていないか

採用要件の決め方を見る →

02 採用と内部登用で迷っている

役割が必要な期間と、社内に残す能力を考えます。

  • 継続して必要な仕事か
  • 社内で担える候補者がいるか
  • 期間限定の支援で補える部分はあるか

人材の確保方法を比較する →

03 求人票で仕事の魅力が伝わらない

期待する仕事と、会社の支援を具体的に示します。

  • 担当案件の現在地を書いたか
  • 本人が決められる範囲を示したか
  • 会社が用意する支援を説明したか

求人票の記入例を見る →

04 面接で経験の違いを見分けられない

実績の規模だけでなく、本人の行動を確認します。

  • 想定を変えた経験を聞いたか
  • 本人とチームの担当範囲を分けたか
  • 前職と自社の条件の違いを確認したか

面接の4つの質問を見る →

05 入社後、本人が動けていない

会社が約束した支援も一緒に点検します。

  • 顧客や関係者へつないだか
  • 承認待ちの仕事が残っていないか
  • 事業段階に合う評価をしているか

90日計画の例を見る →

06 応募や内定承諾が増えない

人数だけでなく、どこで条件が合わなかったかを見ます。

  • 候補者に求人が届いているか
  • 面接官の採用基準は一致しているか
  • 役割や処遇の不一致を記録しているか

採用活動の見直し方を見る →

NEXT STEP

次のステップ

人を迎えた後の、任せ方・育て方を整えたい方へ

実在テーマでの実践と経営経験者の伴走を組み合わせ、責任者が判断経験を積める環境づくりを支援します。

面接では新規事業経験を4つの質問で確かめる

面接では、成果の規模だけでなく、その人が何を考え、何を変えたかを聞きます。以下の4つを基本に、役割票で決めた仕事に合わせて具体的な場面を深掘りしてください。前職の機密資料や顧客名の提出は求めず、説明できる範囲で確認します。

1. 想定と違う顧客の反応を受けて、何を変えましたか

企画の前提を見直した経験を確かめる質問です。「柔軟に対応した」という結論だけで終わらず、最初の想定、実際に分かったこと、変更した内容の順に聞きます。

設備点検サービスなら、利用者から好意的な感想をもらったことより、実際の作業で何が使われず、どう修正したかが参考になります。回答が曖昧なら、「変更前の案を続けなかったのはなぜですか」と尋ねると、判断の理由を確認できます。

2. その成果のうち、ご自身が決めて動いた部分はどこですか

会社やチームの実績と、本人の仕事を分ける質問です。提案したのか、実行したのか、承認したのかによって経験の意味は異なります。担当範囲を時系列で説明してもらいます。

併せて、利用できた予算、顧客との関係、上司や専門部門の支援も聞きます。他者の協力があったことを減点するのではありません。自社で同じ仕事を任せるなら、どの条件を用意する必要があるかを見極めるためです。

3. 他部門の協力が得られないとき、どう進めましたか

「人を巻き込めるか」を、具体的な行動から確かめます。相手部門が協力しづらかった理由、依頼内容をどう変えたか、誰に調整を依頼したかを聞いてください。

一人で何でも解決した話を求める必要はありません。本人の権限を超える問題を見分け、適切な責任者に判断を求めた行動も重要です。逆に、相手の意識が低かったという説明だけでは、次の環境でどのように動くかが分かりません。

4. 当社の条件で進めるなら、最初に何を確認しますか

前職の方法を、そのまま当てはめないかを見る質問です。会社側が、顧客への接点、予算、承認手順など、現時点の条件を説明してから尋ねます。

正解の企画をその場で出させるより、「誰に聞くか」「何が分からないか」「どの条件なら動けるか」を確認します。現実的な確認事項を挙げられるか、会社が提供できない支援に気づけるかを見ると、双方の期待を合わせやすくなります。

面接後は「熱意がある」だけで評価せず、確認できた行動、まだ分からないこと、自社で必要な支援を分けて記録します。同じ役割の候補者には共通の質問を用い、面接官がそれぞれ記録してから話し合うと、印象だけの議論を防ぎやすくなります。

採用選考は、職務に必要な適性・能力に基づいて行います。本籍や家族、思想・信条など、仕事を担う能力と関係のない事項を質問や基準にしないことが基本です。質問項目は、厚生労働省「公正な採用選考の基本」に照らして事前に確認してください。

入社後90日は、本人の仕事と会社の支援を一緒に確認する

スーツ姿の二人が握手し、協力関係を確認するイメージ

入社後は、役割票で約束した仕事を実際に始められる状態にします。オンボーディングとは、新しく入った人が職場や業務を理解し、仕事を進められるよう支えることです。会社説明や手続きだけでなく、顧客、関係者、判断する会議へつなぐところまで含めます。

次の表は、顧客検証を担う人を迎える場合の90日計画の例です。日数は共通の合否基準ではなく、振り返るタイミングの目安です。顧客との面談や検証に必要な期間に合わせて調整します。

入社後30日・60日・90日に確認する、本人の仕事と会社の支援(計画例)
時期 本人が進める仕事 会社が用意すること
30日まで 過去の企画や顧客の記録を読み、最初に確かめることを整理する 案件の背景、関係部署の窓口、顧客への接点を引き継ぐ
60日まで 顧客への確認や小さな試行を行い、企画の前提を見直す 検証費用や承認を整え、専門部門との相談を支える
90日まで 分かったことと未確認のことを整理し、次の検証や役割を提案する 提案を判断し、次に任せる範囲と支援を本人と合意する

この表で重要なのは、本人の課題と会社側の宿題を並べることです。約束していた顧客紹介が行われていなければ、検証が始まらない理由を本人の能力だけで説明できません。上司は、止まっている仕事の原因と、誰が解消するかを一緒に確認します。

事業が進んだかと、本人が適切に動いたかを分ける

顧客の課題を探している段階では、売上だけでは仕事を評価できません。どの事実を確かめ、何を見直し、次の判断に何を残したかも確認します。一方、販売拡大を任せる段階なら、売上や粗利、継続率などの成果指標を外すべきではありません。事業の段階に合わせて、評価する内容を変えます。

設備点検サービスの顧客検証で、想定した需要がないと分かった場合を考えてください。案件の見直しは必要ですが、その事実を早く確かめた本人の行動と、案件の将来性は別々に評価できます。逆に、面談件数を増やしても判断に使える内容が残っていなければ、仕事の進め方を見直す必要があります。

案件が変わったときは、採用時の役割を放置せず、次に任せる仕事と評価対象を本人と確認します。配置や雇用条件に関わる扱いは人事・法務と整理してください。評価の具体化は新規事業の評価制度、実務を通じた成長支援は新規事業人材の育成方法で詳しく解説しています。

入社・登用後の育成は、実際の仕事と相談相手を組み合わせる

採用時にすべての能力がそろっていなくても、任せる範囲を段階的に広げることはできます。その際は、知識を学ぶ機会だけでなく、実際に判断する仕事と、迷ったときの相談相手を用意します。

イノベーション総研の組織・人材開発サービス「TeamPro Leaders」は、経営判断の学習、実在テーマでの実践、経営経験者の伴走を組み合わせた支援です。入社・登用後の責任者にどの経験を任せるか、社内でどう支えるかを設計したい場合にご検討いただけます。求人募集や人材紹介そのものの案内ではありません。

新規事業の採用が進まないときは、不一致が分かった場面を見直す

応募が少ない、面接で合う人が見つからない、内定後に辞退される。この3つは、同じ対策では解決できません。人数だけでなく、どの場面で、何の条件が合わなかったかを記録します。

応募が少ないなら、必須条件と仕事の伝え方を確認する

最初に、必要な人が求人を見つけられているかを確認します。そのうえで、仕事内容が広すぎないか、必須条件に社内で補えるものまで入っていないかを見直します。候補者に届いていない問題と、届いても応募したくならない問題を分けてください。

面接には進むのに評価が割れるなら、求人の訴求より、社内の採用基準が課題かもしれません。「経験が足りない」で終わらせず、どの仕事に必要な経験なのか、面接で確認できなかっただけなのかを記録すると、次の選考を改善できます。

辞退が続くなら、処遇だけでなく役割と支援の説明も見直す

候補者が辞退した理由を、会社の知名度や報酬だけと決めつけないことが重要です。本人が共有できる範囲で理由を聞き、担当する仕事、権限、働き方、支援者など、どこに不一致があったかを整理します。

選考中に案件や担当範囲が変わった場合は、その変更点を説明します。実際には提供できない裁量や将来の配置を約束して採用するのではなく、確定している条件と未確定の条件を分けてください。採用人数を埋めることより、入社後も同じ約束で仕事を始められることを重視します。

新規事業の採用でよくある質問

人材要件や選考を具体化するときに、迷いやすい点を整理します。

Q. 新規事業の採用では、同じ業界の経験は必須ですか

A. 役割によります。本人が業界固有の技術や規制まで判断するなら、専門性が必要です。一方、専門部門の支援を受けながら顧客検証を担うなら、別業界で課題を見つけ、検証を進めた経験も検討できます。経験年数だけでなく、実際に任せる仕事から決めてください。

Q. 新規事業の経験がない人を採用してもよいですか

A. 未経験という理由だけで除外する必要はありません。顧客の課題を整理した経験や、他部門と仕事を進めた経験など、任せる役割に近い行動を確認します。足りない経験を補う支援者と、最初に任せる範囲も併せて決めます。

Q. 面接で前職の成果物を見せてもらうべきですか

A. 機密資料や顧客情報の提出は求めません。本人が説明できる範囲で、状況、担当した仕事、判断の理由、結果を順に聞きます。必要なら、自社で用意した架空の課題を使い、実務情報を持ち出さなくても考え方を説明できるようにします。

Q. 入社後90日で売上がなければ、採用失敗と判断しますか

A. 売上がないことだけでは判断できません。顧客検証の段階なら、確認できた事実や提案の修正、次の判断に使える内容も見ます。販売拡大を任せた場合は、売上などの成果指標も必要です。本人の仕事と、会社が約束した支援の実施状況を分けて振り返ります。

Q. 採用できるまで、新規事業を止めるしかありませんか

A. 必ずしも止める必要はありません。社内に暫定の責任者を置き、進める範囲を絞る方法があります。外部人材を使う場合も、社内で判断する人と記録を受け取る人を決め、採用後に引き継ぐ仕事を明確にします。

まとめ|求人票・面接・90日計画を同じ役割でつなぐ

新規事業の採用では、まず最初に任せる仕事を決めます。次に、その仕事に必要な経験と、会社が用意する権限・支援をそろえます。求人票では両方を伝え、面接では過去の行動と自社で働く条件を確認し、入社後は同じ役割票を使って振り返ります。

最初の会議では、事業責任者と人事で、現在の求人票にある「新規事業経験者」を一つの具体的な仕事へ書き換えてみてください。その仕事を始めるために、会社側がまだ用意できていないものは何でしょうか。

採用の準備は、候補者への要求と会社側の約束が、同じ一枚に書けたときに整います。

CONTACT

お問い合わせ

採用する前に、必要な役割と受け入れ体制を整理したい方へ

誰を採るか決められない、迎えた人が社内調整で止まっている。イノベーション総研では、事業の現在地と不足する役割を整理し、社内外の人材をどう組み合わせるかをご相談いただけます。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆:

イノベーション総合研究所 編集部

監修:

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

この記事をシェアする