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ソーラーシェアリングは発電所ではない|国内外9事例と参入判断

ソーラーシェアリングは、発電所を農地へ置くだけなのか。
パネルを作らない企業は、どこから参入できるのか。

結論は、農業を主語にして、電力と地域の運用を組み直すことです。国内外9事例と4つの参入方法から、事業化の条件を整理します。

この記事の結論

ソーラーシェアリングの価値は、発電量だけでなく営農を続けられる設計で決まります。

  • 藤棚式、垂直式、動的制御は、作物と農機の条件から選びます。
  • 国内外9事例は、許認可、農学、PPA、運用の範囲で差をつけています。
  • 参入企業は、農業者、電力需要家、営農責任を先に定めます。

ソーラーシェアリングは、農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と発電を同じ土地で続ける仕組みです。営農型太陽光発電、アグリボルタイクスとも呼ばれます。

見た目は太陽光発電所に似ています。しかし、事業の主役は発電設備ではありません。作物を育て、農作業を続け、地域の農地を維持したうえで、電力も生み出す事業です。

そのため、発電量だけを最大にすると失敗しやすくなります。パネルの影が作物へ与える影響、農機が通れる間隔、支柱による作業の増加、設備の点検、農業を担う人まで設計する必要があります。

本記事では、ソーラーシェアリングの仕組みと制度、国内外9事例を整理します。そのうえで、新規事業として参入できる4つの入口と、参入・提携・待機・見送りを分ける判断軸を考えます。

ソーラーシェアリングとは?農業を続けながら発電する仕組み

ソーラーシェアリングは、一つの農地で農業と太陽光発電を行う仕組みです。一般的には、農地に支柱を立て、その上や間に太陽光パネルを配置します。パネルの下や列の間では、作物の栽培や家畜の飼育を続けます。

普通の地上設置型太陽光との違いは、土地を発電専用にしないことです。農作物を生産する空間、農機が動く空間、日射や雨を受ける環境を残します。

関係者も増えます。農業者、土地の権利者、発電設備の所有者、電力を使う企業、施工会社、金融機関、自治体などです。設備所有者と農業者が別の場合は、誰が営農を続け、収量や品質を確認し、設備の不具合へ対応するかを契約で決めます。

大切なのは、農地の上にパネルを置くことではなく、農業と発電を一つの運用へ組み直すことです。

ソーラーシェアリングを農業と発電の共同システムとして捉える図
図1:農林水産省の営農型太陽光発電に関する資料をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

農業を主語にすると、設計の順番も変わります。最初に作物、農機、作業日程、担い手を確認し、その条件に合う構造、パネル、電力の使い道を選びます。

営農型太陽光は、藤棚式・垂直式・動的制御で農作業が変わる

営農型太陽光の設備は、大きく三つの考え方に分けられます。

一つ目は、農地の上部へパネルを並べる藤棚式です。地面から高さを取り、農機や作業者が下を通れるようにします。国内でよく見られる方式ですが、支柱の位置やパネルの間隔が農作業へ影響します。

二つ目は、両面で発電するパネルを垂直に立てる方式です。列の間を広く取りやすく、農機が動く場所を確保できます。東西から光を受ける配置では、発電の山が朝夕へ分かれやすい点も特徴です。一方で、列の向き、風、積雪、除草を現地に合わせて設計します。

三つ目は、パネルの角度を動かす動的制御です。日射、雨、気温、作物の生育段階に応じ、光を通す量や影の位置を変えます。作物の環境を調整できる可能性がありますが、センサー、制御、保守が増えるため、対象作物の価値と運用能力が必要です。

藤棚式、垂直式、動的制御を比較した図
図2:Next2Sun、Sun’Agri、自然電力などの公式資料をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

方式の新しさだけで選んではいけません。葉物、果樹、牧草では光の使い方が違います。農機の大きさ、積雪、風、系統接続、電力需要も含め、農業側の条件から選びます。

ソーラーシェアリングの制度は、発電より営農継続を求める

日本で農地に発電設備の支柱を設ける場合は、農地の一時転用許可が必要です。農林水産省は、営農型太陽光発電を、支柱を立てて上部空間に設備を設置し、下で営農を続ける取り組みとして整理しています。

制度が確認する中心は、設備の性能ではなく営農の継続です。農林水産省の取組支援ページでは、長期にわたる営農計画、営農体制、安全や法令への対応、地域との合意などが重要とされています。

一時転用の期間は、条件により通常3年以内または10年以内です。更新の可否は、下部農地で営農が適切に続いているかなどから判断されます。設備所有者と営農者が別の場合には、権利設定に関する別の許可が必要になることもあります。

農林水産省の公表値では、2023年度末までの許可件数は累計6,137件、下部農地面積は1,361.6ヘクタールです。件数が増えても、すべての設備が同じ条件で成功するわけではありません。作物、地域、設備、担い手の組み合わせを案件ごとに確認します。

なお、遮光率や支柱の高さだけで許可や営農の適否を判断することはできません。全国一律の簡単な数字へ置き換えず、農地の区分、作物、地域の審査、最新の制度を確認する必要があります。

収益構造は、農業・電力・地域の三者でつくる

ソーラーシェアリングには、少なくとも三つの価値があります。

第一は、農業の価値です。農作物の売上に加え、強い日射や高温を和らげる、設備の下を雨や霜から守る、耕作放棄地を再生するといった可能性があります。ただし、効果は作物と地域で異なります。収量だけでなく、品質、作業時間、水使用、病害も見ます。

第二は、電力の価値です。売電するだけでなく、農場、加工場、大学、工場、店舗で自家消費できます。オンサイトPPAでは、需要家が設備を持たずに電力を購入する形も取れます。

第三は、地域の価値です。農地の維持、担い手の確保、地域内での電力利用、災害時の電源を組み合わせられます。自治体や地域企業が参加すると、発電収益だけでは説明しにくい便益も事業へ組み込めます。

ソーラーシェアリングの価値と事業構造を示す図
図3:農林水産省、国内外事業者の公式資料をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

事業者の収益は、設備販売や売電だけではありません。企画・許認可支援、EPC、PPA、農業データ、設備と営農の保守、年次報告などへ広がります。

国内外9事例で見るソーラーシェアリングの現在地

国内外の取り組みを見ると、同じソーラーシェアリングでも役割が異なります。設備をつくる企業、作物の環境を制御する企業、地域で営農を担う企業、研究と評価を支える機関があります。

ソーラーシェアリングに関わる国内外9事例と事業上の注目点
企業・機関 主な取り組み 方式・対象 事業上の注目点
千葉エコ・エネルギー 企画、許認可、設備、営農支援を一体提供 国内農地・複数作物 500件超の支援と営農運営
自然電力 志布志などで営農型太陽光を開発・運営 藤棚式・地域案件 発電開発と地域連携
リエネ自然ファーム・帯広畜産大学 垂直式設備で農業と電力利用を検証 垂直両面・オンサイトPPA 積雪地と大学需要を接続
Next2Sun 垂直両面式を開発、設計から運営まで提供 垂直式・牧草・耕作 農機動線と朝夕発電
Sun’Agri 作物と気象に応じてパネル角度を制御 動的制御・果樹等 農学データを制御サービス化
TSE 高所の可動式キャノピーで実証・開発 可動式・畑作・畜産 大規模農地での実証網
TotalEnergies・Ombrea Ombreaを買収し農業知見と開発を統合 動的制御・多作物 発電会社が農学機能を内製化
BayWa r.e. 果樹や牧草向けを企画・資金調達・運営 果樹上部・牧草等 作物別モデルと評価ツール
Fraunhofer ISE 設計、経済性、農業影響の実務指針を公開 研究・評価 事業者と自治体の共通言語

一覧から分かるのは、パネルメーカーだけが市場を動かしているわけではないことです。農業、電力、許認可、金融、保守をつなぐ企業ほど、顧客の導入負担を減らせます。

国内外9事例を役割と方式で整理した図
図4:各社・各機関の公式情報をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

ここからは、代表的な事例を詳しく見ます。

千葉エコ・エネルギーは、許認可から営農までを一体化した

千葉エコ・エネルギーは、2014年以降、500件を超えるソーラーシェアリング案件を支援したと公表しています。事業計画、作物の選定、設備設計、農地転用の支援に加え、営農管理まで扱います。

同社が特徴的なのは、発電設備の開発だけで終わらない点です。グループのつなぐファームなどを通じて、実際の農業運営にも関わります。設備会社と農業者の間に入り、どの作物を、誰が、どう育て続けるかを具体化します。

岩手県陸前高田市などの案件では、地域の農地再生や担い手づくりと発電を組み合わせています。地域ごとに農業と土地の課題が違うため、標準設備を売るより、地域の運営体制を設計する力が重要になります。

この事例は、日本の参入機会が許認可代行だけではないことを示します。農地の探索、農業者との関係、作物選定、設備、資金、年次の営農確認までを一つの窓口にすると、顧客が抱える分断を減らせます。

帯広の営農型太陽光は、垂直式とオンサイトPPAを試す

東急不動産、自然電力、帯広畜産大学は、大学構内で垂直式の営農型太陽光を進めています。事業主体はリエネ自然ファームで、設備容量は直流743.04キロワット、交流500キロワットです。

自然電力の紹介によると、両面受光パネルを垂直に設置し、列の間で農作物を育てます。電力はオンサイトPPAにより大学へ供給します。発電と農業を別々に売るのではなく、大学の電力需要と研究環境を一つの場所で結びます。

垂直式は、パネルの下へ農機を入れる藤棚式とは異なります。列間を作業空間にできる一方、パネル列が風や積雪を受け、影の動きも変わります。東急不動産の公表資料では、積雪地で農業への影響や作物を検証する計画が示されています。

この事例からは、寒冷地、大学、工場などの電力需要家と農地が近い場合に、垂直式とPPAを組み合わせる余地が見えます。ただし、発電量だけでなく、除雪、農機、風荷重、作物の管理を同時に設計します。

Sun’Agriは、パネルを植物の状態に合わせて動かす

フランスのSun’Agriは、パネルの角度を動かす動的アグリボルタイクスを展開しています。気象データ、センサー、作物モデルを使い、植物が必要とする日射や保護に合わせてパネルを制御します。

同社はINRAEとの研究を含む15年以上の研究開発、30を超える商用農場と10の実験サイトを公表しています。対象は果樹、ブドウ、野菜などです。発電を増やす制御ではなく、農作物の状態を優先する点を強調しています。

価値は、可動式設備そのものではありません。作物別のデータ、気象予測、制御ルール、農家への助言を積み重ね、毎日の運転へ反映することです。設備販売後も、制御と農学支援を継続サービスにできます。

一方、制御が複雑になるほど、センサー故障、通信停止、機械部品の保守が増えます。高価値作物や気候リスクの大きい地域など、追加費用を回収できる顧客を選ぶ必要があります。

Next2Sunは、農機の動線を空けて朝夕に発電する

ドイツのNext2Sunは、両面受光パネルを垂直に並べる方式を展開しています。列の間を広く空け、農機や家畜が使える空間を残します。同社は、農地の最大90%を農業利用として残せると説明しています。

垂直の東西向き配置では、発電量の山が昼だけに集中せず、朝と夕方へ分かれやすくなります。昼に太陽光発電が余りやすい地域では、電力価格や系統負荷との相性を改善できる可能性があります。

同社は設備の供給だけでなく、開発、設計、施工、運営まで扱います。顧客は農業者だけでなく、土地所有者、電力会社、自治体へ広がります。

ただし、垂直式がすべての農地に向くわけではありません。列の方向、農機の旋回、強風、雑草管理、近隣への反射などを確認します。方式を売るのではなく、農作業と電力の両方で成立する配置を売る必要があります。

TSE・Ombrea・BayWa r.e.は、アグリボルタイクスを農業サービスへ広げる

フランスのTSEは、農地の上に高いワイヤー構造を設け、パネルを動かす農業用キャノピーを展開しています。2022年以降、複数の実証サイトで畑作や畜産への影響を調べています。広い農地で機械作業を続けながら、設備の角度を変える考え方です。

TotalEnergiesは2023年にOmbreaを買収し、社内にアグリボルタイクスの専門拠点を設けました。Ombreaは買収時点で10のサイトを運営し、約50種類の作物を研究していました。発電開発会社が、農学と作物データを自社機能へ取り込んだ事例です。

BayWa r.e.は、果樹、牧草、家畜などに合わせた複数のモデルを示し、企画、資金調達、建設、運営まで提供します。オランダではラズベリー畑の上に24,206枚のパネルを設けた8.7メガワットピークの案件を公表しています。小規模な試験で農業条件を確かめた後、商用規模へ広げました。

3社に共通するのは、太陽光設備を農業サービスへ広げている点です。参入企業には、構造物や電力の知識だけでなく、作物データを集め、農業者へ説明し、長期運用する能力が求められます。

9事例から見えるソーラーシェアリングの事業機会

9事例を比べると、太陽光パネルそのものは供給が多く、後発企業が同じ製品で勝つことは簡単ではありません。一方、農業と電力の間には未完成の仕事が残っています。

一つは、農業条件を設備設計へ翻訳する仕事です。作物、農機、土壌、日射、風、積雪から、列の幅、高さ、角度、支柱、施工時期を決めます。

二つ目は、地域の関係者をまとめる仕事です。農業者、土地所有者、需要家、自治体、金融機関をつなぎ、収益と責任を分けます。

三つ目は、運用データを価値へ変える仕事です。収量、品質、作業時間、日射、土壌水分、発電量、停止を記録し、次の設計や更新へ反映します。

四つ目は、設備と営農を同時に保守する仕事です。電気設備の点検日に農作業を止めるのか。農薬散布時に設備へどう対応するのか。台風後に誰が確認するのか。二つの運用を一つの窓口で管理する余地があります。

スマート農業の記事で扱うセンサー、作業支援、データ活用とも接点があります。設備単体より、農業者の判断と作業を軽くする仕組みに継続収益をつくりやすくなります。

自社はソーラーシェアリング事業のどこへ入れるか

地域、設備、農業データ、運用から近い入口を確認します。

01 地域顧客と農業者に近い

農地、営農者、自治体、電力需要家をつなぎ、案件を組成します。

  • 対象地域と作物を絞れる
  • 農業者と長く関係を持てる
  • 許認可と合意形成を担える
02 建設・設備・部品に強い

農機や作物の条件に合う架台、施工、センサーを提供します。

  • 積雪や風を設計へ反映できる
  • 農作業への干渉を減らせる
  • 複数案件へ標準化できる
03 農学・AI・制御に強い

生育、日射、水分、発電を記録し、作物の判断を支援します。

  • 作物別の知見を持てる
  • 対照データを集められる
  • 農業者へ説明できる
04 保守・営農支援に強い

発電設備の点検と営農記録を一つの継続サービスにします。

  • 地域で点検網を持てる
  • 年次の営農確認を支援できる
  • 責任分界を契約にできる

NEXT STEP

次のステップ

農業と電力を、続けられる事業へ。

農業者、作物、設備、電力需要、許認可、保守責任を一つの事業構造に整理します。

ソーラーシェアリングの新規事業は、四つの入口から考える

第一は、地域開発と許認可支援です。農地を探し、農業者、土地所有者、自治体、電力需要家をつなぎます。農地制度と電力事業の両方を理解し、営農計画から資金調達まで一つの案件にします。

第二は、設備と部品です。垂直架台、可動構造、両面受光パネル、農機に干渉しにくい基礎、日射や土壌を測るセンサーなどが対象です。一般設備を売るより、果樹、積雪地、強風地域などの条件へ絞る方が差をつけやすくなります。

第三は、農業データと制御です。作物の生育、日射、気温、水分を記録し、パネル角度、かん水、作業時期を提案します。電力の最適化だけでなく、収量と品質を説明できることが条件です。

第四は、二重の運用サービスです。発電設備の点検、除草、営農記録、年次報告、作物の変更、災害後の確認を継続提供します。案件を集約できれば、農業者が個別に専門家を探す負担を減らせます。

ソーラーシェアリングへ参入する4つの入口
図5:国内外9事例の事業構造をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

入口は、自社が既に持つ資産から選びます。地域金融機関や農業資材会社は顧客接点、建設会社は構造と施工、電力会社はPPAと需給、農業IT企業はデータと営農支援が近い入口です。

営農型太陽光の懸念は、担い手・系統・費用・責任に集まる

第一の懸念は、農業の担い手です。設備は長期間使う一方、営農者の高齢化や離農が起こります。後継者、作業委託先、作物変更の手順を先に決めます。

第二は、作物への影響です。影が強すぎると収量や品質が下がる場合があります。反対に、高温や乾燥を和らげる場合もあります。小区画の結果を全国へ当てはめず、対照区と複数年の記録で確認します。

第三は、農作業の増加です。支柱を避ける、草を刈る、設備の点検に合わせるなど、新しい作業が生まれます。農業者の時間を測り、発電収益だけでなく追加作業の費用を入れます。

第四は、系統接続と電力価格です。発電設備を設置できても、系統へつなげない、出力を抑える必要がある、売電条件が変わる場合があります。自家消費やPPAも含め、電力の使い道を早い段階で決めます。

第五は、初期費用です。高い架台、広い支柱間隔、可動機構、センサーは、一般的な地上設置型より費用が増えやすくなります。農業価値、電力価値、地域価値のどれを誰が支払うかを分けます。

第六は、責任の境界です。収量が下がったとき、原因が天候、設備、栽培のどれかを判断しにくい場合があります。比較データを残し、設備所有者、営農者、施工会社、制御事業者の責任を契約で決めます。

第七は、撤去と更新です。設備の故障や事業撤退が起きても農地は残ります。撤去費用、原状回復、保証、事業譲渡の条件を資金計画へ入れます。

参入・提携・待機・見送りは、営農責任で分ける

参入が向くのは、対象地域と作物を絞り、農業者と長く関係を持ち、営農結果まで確認できる企業です。電力収益だけでなく、作物、作業、設備のデータを一つにできます。

提携が向くのは、地域や顧客との関係はあるものの、農学、電力、許認可、施工の一部が足りない企業です。自社は顧客接点や設備を担い、農業法人、大学、発電事業者、EPCと組みます。

待機が向くのは、作物と営農者は決まっていても、系統接続や電力の買い手が決まらない場合です。発電側の条件が固まるまで、農作業と日射の基礎データを集めます。

見送りが妥当なのは、農業者が名目上だけで、長期の営農体制を説明できない案件です。設備のために無理な作物を選ぶ、撤去費用を持たない、収量の確認方法がない場合も、先に事業構造を直す必要があります。

ソーラーシェアリング事業の参入判断マトリクス
図6:イノベーション総研作成。営農顧客の明確さと農業・設備の運用責任から参入方針を整理した。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

技術が魅力的でも、農業の責任を持てなければ事業は続きません。逆に、農業者の課題を理解し、電力需要家と運用体制をつなげられる企業には、設備メーカー以外にも参入余地があります。

ソーラーシェアリングに関するよくある質問

Q. ソーラーシェアリングと営農型太陽光は同じですか?

A. 日本では、ほぼ同じ意味で使われます。農地の上部などに太陽光設備を設け、下や列間で農業を続ける仕組みです。海外ではアグリボルタイクス、Agri-PVとも呼ばれます。

Q. どの作物でもソーラーシェアリングに向きますか?

A. 向き不向きがあります。必要な光、地域の気候、栽培方法、農機、販売価格を確認します。作物名だけで決めず、影の分布、収量、品質、追加作業を小さく確かめます。

Q. 農地にパネルを置けばすぐ始められますか?

A. 始められません。日本では支柱部分などの一時転用許可が必要です。営農計画、担い手、設備、安全、地域との調整、系統接続や電力の利用方法も準備します。

Q. 発電設備の所有者と農業者は別でもよいですか?

A. 別の主体になる形はあります。ただし、営農を誰が続けるか、農地に関する権利、収益と費用、点検時の作業、災害や収量低下時の責任を明確にします。

Q. 垂直式と藤棚式はどちらが優れていますか?

A. 一律には決められません。垂直式は列間を農機動線にしやすく、藤棚式は上部空間を広く使えます。作物、農機、風、雪、発電の時間帯、施工費から選びます。

Q. 新規参入企業はどこから始めるべきですか?

A. 自社が持つ顧客と資産に近い入口から始めます。地域顧客があれば案件組成、建設技術があれば架台や施工、農業データがあれば生育管理、保守網があれば二重O&Mが候補です。

まとめ|農業を主語にすると事業機会が見える

ソーラーシェアリングは、農地の上に太陽光パネルを設置するだけの事業ではありません。作物、農機、担い手、設備、電力需要、地域を一つの運用へ組み直す事業です。

国内外9事例からは、垂直式、動的制御、PPA、地域運営、農業データなど、複数の進化が見えました。共通するのは、発電設備だけでなく、農業の結果と長期運用へ踏み込んでいることです。

新規事業の入口は、地域開発、設備・部品、農業データ、二重の運用サービスにあります。参入判断では、発電量より先に、誰の農業課題を解き、誰が営農責任を持つかを確認します。

イノベーション総研では、技術の比較だけでなく、最初の顧客、支払われる価値、提携先、運用責任まで整理し、事業化の判断を支援しています。

参考文献

  1. 農林水産省「営農型太陽光発電について」
  2. 農林水産省「営農型太陽光発電の取組支援」
  3. 農林水産省「営農型太陽光発電設備の設置状況」
  4. 千葉エコ・エネルギー「ソーラーシェアリング事業」
  5. 自然電力「ソーラーシェアリング」
  6. 自然電力「志布志市で営農型太陽光発電所の商業運転を開始」
  7. 東急不動産「垂直式営農型太陽光発電の実証」
  8. Next2Sun「Agri-PV FAQs」
  9. Sun’Agri「Dynamic agrivoltaics technology」
  10. TSE「Agrivoltaic solutions」
  11. TotalEnergies「Ombrea acquisition」
  12. BayWa r.e.「Agri-PV」
  13. Fraunhofer ISE「Agrivoltaics: Opportunities for Agriculture and the Energy Transition」
  14. NREL「Agrivoltaics Feasibility Assessment」

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

農林水産省、千葉エコ・エネルギー、自然電力、東急不動産、Next2Sun、Sun’Agri、TSE、TotalEnergies、BayWa r.e.、Fraunhofer ISE、NRELの公式資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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