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ソーラーシェアリングは発電所ではない|国内外9事例と参入判断

ソーラーシェアリングは、発電所を農地へ置くだけなのか。
パネルを作らない企業は、どこから参入できるのか。

結論は、農業を主語にして、電力と地域の運用を組み直すことです。国内外9事例と4つの参入方法から、事業化の条件を整理します。

この記事の結論

ソーラーシェアリングの価値は、発電量だけでなく営農を続けられる設計で決まります。

  • 藤棚式、垂直式、動的制御は、作物と農機の条件から選びます。
  • 国内外9事例は、許認可、農学、PPA、運用の範囲で差をつけています。
  • 参入企業は、農業者、電力需要家、営農責任を先に定めます。

ソーラーシェアリングは、農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と発電を同じ土地で続ける仕組みです。営農型太陽光発電、アグリボルタイクスとも呼ばれます。

見た目は太陽光発電所に似ています。しかし、事業の主役は発電設備ではありません。

作物を育て、農作業を続け、地域の農地を維持したうえで、電力も生み出す事業です。

そのため、発電量だけを最大にすると失敗しやすくなります。パネルの影が作物へ与える影響、農機が通れる間隔、支柱による作業の増加、設備の点検、農業を担う人まで設計する必要があります。

本記事では、ソーラーシェアリングの仕組みと制度、国内外9事例を整理します。そのうえで、新規事業として参入できる4つの入口と、参入・提携・待機・見送りを分ける判断軸を考えます。

目次

ソーラーシェアリングとは?農業を続けながら発電する仕組み

ソーラーシェアリングは農業と発電を同じ土地で続ける事業です。作物・農機・担い手を先に確認します。

ソーラーシェアリングは、一つの農地で農業と太陽光発電を行う仕組みです。具体的には、農地に支柱を立て、その上や間に太陽光パネルを配置します。

そして、パネルの下や列の間では、作物の栽培や家畜の飼育を続けます。

普通の地上設置型太陽光との違いは、土地を発電専用にしないことです。農作物を生産する空間、農機が動く空間、日射や雨を受ける環境を残します。

関係者も増えます。具体的には、農業者、土地の権利者、発電設備の所有者、電力を使う企業、施工会社、金融機関、自治体などです。

特に、設備所有者と農業者が別の場合は、誰が営農を続け、収量や品質を確認し、設備の不具合へ対応するかを契約で決めます。

大切なのは、農地の上にパネルを置くことではなく、農業と発電を一つの運用へ組み直すことです。

ソーラーシェアリングを農業と発電の共同システムとして捉える図
図1:農業・発電・地域運営を結びつけるための当研究所の整理。法令上の手続きや実施順序を網羅した図ではありません。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

農業を主語にすると、設計の順番も変わります。最初に作物、農機、作業日程、担い手を確認し、その条件に合う構造、パネル、電力の使い道を選びます。

営農型太陽光は、藤棚式・垂直式・動的制御で農作業が変わる

設置形状と制御方式を分け、作物に必要な光と農作業の動線から設備を選びます。

設備を見る際は、設置する形とパネルを動かす制御を分けます。本記事では、代表的な設置形状である藤棚式・垂直式と、制御の考え方である動的制御を紹介します。

三つは排他的な分類ではなく、上部に設置したパネルを動かす構成もあります。

一つ目は、農地の上部へパネルを並べる藤棚式です。この方式では、地面から高さを取り、農機や作業者が下を通れるようにします。

これは国内でよく見られる方式ですが、支柱の位置やパネルの間隔が農作業へ影響します。

二つ目は、両面で発電するパネルを垂直に立てる方式です。列の間を広く取りやすく、農機が動く場所を確保できます。

東西から光を受ける配置では、発電の山が朝夕へ分かれやすい点も特徴です。一方で、列の向き、風、積雪、除草を現地に合わせて設計します。

三つ目は、パネルの角度を動かす動的制御です。具体的には、日射、雨、気温、作物の生育段階に応じ、光を通す量や影の位置を変えます。

そのため、作物の環境を調整できる可能性がありますが、センサー、制御、保守が増えるため、対象作物の価値と運用能力が必要です。

藤棚式、垂直式、動的制御を比較した図
図2:藤棚式・垂直式は設置形状、動的制御はパネルの動かし方です。排他的な三分類ではなく、組み合わせもあります。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

方式の新しさだけで選んではいけません。というのも、葉物、果樹、牧草では光の使い方が違うからです。

そのため、農機の大きさ、積雪、風、系統接続、電力需要も含め、農業側の条件から選びます。

ソーラーシェアリングの制度は、発電より営農継続を求める

許可取得だけで終えず、営農を継続し、収量・品質・収支を報告できる体制を作ります。

日本では、農地に支柱を立てて上部空間で発電し、下で営農を続ける場合、その支柱について農地の一時転用許可が必要です。農林水産省の制度案内では、2024年4月に許可基準等を農地法施行規則へ明確化し、ガイドラインを施行したことが示されています。

2026年3月改訂の実務用Q&A(問13)では、営農の適切な継続等を前提に、担い手による所定の農地利用、遊休農地の再生利用、第2種・第3種農地の利用のいずれかに当たる場合は10年以内、それ以外は3年以内と整理しています。再許可は別途判断され、遊休農地の再生利用による特例をそのまま引き継げるとは限りません。

農水省の概要資料は、毎年の栽培実績・収支の報告、農作業ができる構造、作物の品質なども確認事項に挙げています。通常の作物では地域の平均的な単収と比べておおむね2割以上減収しないことが基準となり、地域で栽培されていない作物や遊休農地等では扱いが異なります。

遮光率や支柱の高さだけで許可を判断せず、計画段階で農業委員会や許可権者へ確認します。

設備所有者と営農者が別の場合の農地の権利設定、地域計画との調整、電気設備の保安も別に確認します。許可期間と、設備の寿命や電力供給契約の期間が同じとは限らないため、再許可・撤去まで含めた計画が必要です。

公的データでは、対象設備の24%で営農への支障が報告された

営農型太陽光の計画では、発電の収支と一緒に、設備完成後も営農を続けられる体制を確かめます。公的データで報告された支障の内訳からも、栽培管理を計画に含める重要性が読み取れます。

農水省「営農型太陽光発電設備設置状況等について」(2025年12月公表)によると、2023年度末までの新規許可は累計6,137件、下部農地は1,361.6haでした。再許可は別に集計されており、この累計は現在稼働する設備数ではありません。

同資料の営農状況の集計では、対象5,167件のうち1,221件、約24%で支障が報告されています。対象は2023年度末に存続する設備のうち、施設整備が未完了のものが多い同年度の新規許可分を除いたものです。

24%は収益上の失敗率ではなく、対象設備の下で営農への支障が報告された割合です。

支障があった1,221件の内訳では、栽培管理等が不適当であったことによる単収減少・生育不良が872件、約71%でした。災害等によるもの87件、工事等の遅延144件なども含まれます。

全設備の71%という意味でも、すべてがパネルの影による減収という意味でもありません。

栽培管理の担当、作付けに間に合う工期、収量・品質の比較方法、担当者が離れたときの引き継ぎを、発電の収支と一緒に確かめます。

収益構造は、農業・電力・地域の三者でつくる

農業、電力、地域貢献の価値を分け、誰の費用が増え、誰に収入が残るかを確認します。

ソーラーシェアリングには、少なくとも三つの価値があります。

第一は、農業の価値です。農作物の売上に加え、強い日射や高温を和らげる、設備の下を雨や霜から守る、耕作放棄地を再生するといった可能性があります。

ただし、効果は作物と地域で異なります。収量だけでなく、品質、作業時間、水使用、病害も見ます。

第二は、電力の価値です。具体的には、売電するだけでなく、農場、加工場、大学、工場、店舗で自家消費できます。

また、オンサイトPPA(発電事業者が敷地内に設置し電気を売る契約)では、需要家が設備を持たずに電力を購入する形も取れます。

第三は地域の価値です。農地の維持、担い手の確保、地域内での電力利用などが候補になります。

ただし、地域に役立つことが、そのまま事業者の売上になるわけではありません。誰が何に対して支払うかを決めます。

災害時に電力を使う場合も、停電中に動かせる設備・接続と運用を別途設計します。

ソーラーシェアリングの価値と事業構造を示す図
図3:農業・電力・地域の価値と関係者の整理。社会的な便益と、実際に対価を得られる収益は分けて計画します。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

事業者の収益は、設備販売や売電だけではありません。企画・許認可支援、EPC、PPA、農業データ、設備と営農の保守、年次報告などへ広がります。

収支の見方|農業と発電を分け、資金が誰に残るかを見る

以下は説明用の架空例で、標準的な収益額ではありません。農業側の売上を年300万円、栽培費・人件費などを年280万円とすると差額は20万円です。

支柱を避ける作業や除草が年40万円増えると、営農側は20万円の赤字になります。発電側に余剰が出ても、農業者へ還元する契約がなければ、その赤字は埋まりません。

したがって、農業者が負担する作業と対価、土地の賃料、発電設備の点検費、融資返済、将来の撤去費を主体別に分けます。発電収入の一部を営農支援へ回す場合も、支払額・期間と、発電量が下がった際の扱いを合意します。

補助金や地域貢献への期待だけで、継続できる収支としないことが重要です。

国内外9事例で見るソーラーシェアリングの現在地

9事例の成果は、支援件数、運転開始、実証の収量、買収で異なります。同じ成功指標として比較しません。

国内外の取り組みを見ると、同じソーラーシェアリングでも役割が異なります。設備をつくる企業、作物の環境を制御する企業、地域で営農を担う企業、研究と評価を支える機関があります。

国内外9事例:確認できた段階と、自社で確認する点
企業・機関 目的・取り組み 公表された段階・結果 自社での確認点
千葉エコ・エネルギー 開発から営農管理まで支援 累計500件以上の支援、運営分担の事例 支援件数と採算実績を分ける
自然電力・志布志 地域農業者と発電・営農を分担 2021年4月、3か所約2.19MWpが運転開始 実際の牧草収量と営農収支
リエネ自然ファーム・帯広畜産大学 垂直式・大学向けPPA・農業研究 設備と実証計画を公表 生育、作業時間、経済性の検証結果
Next2Sun 垂直両面式と農業動線の両立 方式・設計支援を提供 面積の確保と収量の維持を別に確認
Sun’Agri 作物・気象データで角度を制御 31稼働サイト等を自社公表 制御・保守費を含む作物別の効果
TSE 農地で可動式設備を評価 Verdonnet 2025年、非制御区比18%増収を報告 比較相手、作物、年度、追加費用
TotalEnergies・Ombrea 発電開発へ農学の知見を統合 2023年、買収完了 買収後の各案件の成果は別に確認
BayWa r.e. 作物別設備と事業化・評価支援 複数方式と7C評価ツールを案内 農業・電力それぞれの採算
Fraunhofer ISE 対照区と比べる研究・指針整備 作物・年度により収量の増減を報告 複数年、栽培できない面積も含める

一覧から分かるのは、パネルメーカーだけが市場を動かしているわけではないことです。農業、電力、許認可、金融、保守をつなぐ企業ほど、顧客の導入負担を減らせます。

国内外9事例を役割と方式で整理した図
図4:9事例が担う役割の概観。提供中のサービス、運転開始、実証研究、買収を本文で区別しています。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

ここからは、代表的な事例を詳しく見ます。

千葉エコ・エネルギーは、許認可から営農までを一体化した

千葉エコ・エネルギーの事業実績では、2014年から累計500件以上の事業化を支援したとしています。作物選定、営農計画、架台設計、農地の一時転用申請支援、運転開始後の営農管理まで扱うのが特徴です。

500件は支援件数であり、全件の採算や営農成果を示す数字ではありません。

2019年に運転を開始した清水建設との千葉大木戸の案件では、清水建設が発電事業者、つなぐファームが営農者、千葉エコ・エネルギーが全体調整と営農管理を担います。2024年設置の千葉商科大学の案件でも、農業生産と大学向けの電力供給を組み合わせています。

一方、陸前高田市の事業は、同社の公表資料では脱炭素先行地域の計画支援として説明されています。完了した農地再生や収量改善の実績とは分けて読みます。

参考になるのは、一社がすべてを持つことではなく、発電・営農・調整の担当を具体的に配置している点です。

自然電力・志布志|商業運転と、地域農業者との分担を実現

自然電力の2021年6月の発表によると、志布志市の3か所、合計約2.19MWpの設備は同年4月に商業運転を開始しました。自然電力が開発・資産管理、当時のjuwi自然電力オペレーションが設備の運営保守、地元のたかとみファームが営農を担当する構成です。

公表時点の年間発電量約268万kWhは想定値で、牧草の種まきも同年秋の予定でした。この資料で確認できる成果は商業運転の開始と役割分担であり、その後の牧草収量や農業所得の増加ではありません。

設備の保守会社とは別に、地域で農業を続ける主体を確保した点が参考になります。

帯広の営農型太陽光は、垂直式とオンサイトPPAを試す

東急不動産と自然電力が共同出資したリエネ自然ファームは、帯広畜産大学の実証圃場を使う垂直式営農型太陽光に取り組んでいます。自然電力の事業紹介には、直流743.04kWp・交流500kW、大学内で全量を自家消費するオンサイトPPAという構成が掲載されています。

これは設備容量であり、年間に発電した電力量ではありません。

2025年11月11日の共同発表(PDF)では、同年10月に作物栽培試験を開始し、12月に電力供給を始める予定としていました。小麦、豆類、甜菜、牧草などへの影響と、農業経営の経済性を2030年3月まで研究する計画です。

この発表だけから、収量維持や投資回収が確認済みとは判断できません。

当研究所では、電力を買う大学と、作物・作業時間を調べる研究環境が同じ場所にある点に着目します。自社で検討する際も、電気の買い手を確保するだけでなく、除雪、農機の旋回、風荷重、輪作ごとの生育を誰が検証するかまで決めます。

Sun’Agriは、パネルを植物の状態に合わせて動かす

フランスのSun’Agriは、植物の生育段階、センサーの測定値、天気予報、栽培上の目標に応じてパネルの角度を動かす仕組みを提供しています。太陽に追従して発電量を増やすだけの制御とは区別しています。

確認時の公式ページには、16年の研究開発、10の試験サイト、31の稼働サイトと掲載されています。展開規模の説明であり、すべての農場で収量や利益が増えたことを示す共通指標ではありません。

事業上の着目点は、設備の販売後も作物データと運転支援を提供できることです。一方、センサーや可動部分の保守、通信停止時の動作が増えるため、追加の費用を含めて効果を確認します。

良い年の結果だけでなく、通常年・不作年の収量、品質、販売価格を比べることが必要です。

Next2Sunは、農機の動線を空けて朝夕に発電する

ドイツのNext2Sunは、両面受光パネルを垂直に配置し、列の間を農業に使う方式を展開しています。公式FAQの「90%超」は農業利用と生態環境の改善に残せる面積の説明であり、作物の収量を90%以上維持するという数値ではありません。

パネルの表裏を東西へ向けると、朝夕に発電が分かれやすくなります。ただし、電力価格との相性は地域・時間帯・契約で変わるため、朝夕に発電すれば必ず高く売れるとは限りません。

年間発電量だけでなく、時間帯別の発電見込みと電力需要を比べます。

列間隔、農機の旋回、強風、雑草管理、点検通路を現地で確認します。Next2SunのFAQでも施工を外部の建設会社が担う構成が示されています。

設備の供給、設計、施工、運転のどこまでを誰が引き受けるかを、契約ごとに確認することが重要です。

TSE・Ombrea・BayWa r.e.は、アグリボルタイクスを農業サービスへ広げる

フランスのTSEは、可動式の農業用キャノピーなどを展開し、複数地点で農学的な評価を行っています。同社はVerdonnetの2025年の結果として、制御しない区画に対し収量18%増を報告しています。

比較相手は「非制御区」であり、パネルのない通常農地との比較と読み替えないことが重要です。

同社はSouleuvre-en-Bocageの2024〜2025年について、設備下と対照区の年間牧草収量が同程度だったとも報告しています。参入時には増収の有無だけでなく、どの作物・年・比較条件で、設備費や維持費まで回収できたのかを確認します。

TotalEnergiesは2023年9月にOmbreaの買収完了を発表しました。買収時点でOmbreaは10か所を建設し、約50の作物品種を研究していたとしています。

これは農学の知見と人員を発電開発へ組み込んだ事例であり、買収後の利益改善を実証する数値ではありません。

BayWa r.e.は、果樹、畑作、牧草、放牧などに応じた設備と、企画・資金調達・建設・運営の支援を案内しています。農業側の成果を確認するための7C Agri-PV Toolも提示しており、設備形式の比較に加えて、農業の評価手順をそろえる取り組みと位置づけられます。

Fraunhofer ISEの研究|同じ場所でも作物と年によって収量は変わる

良い年・良い作物だけを取り出して増収を約束せず、面積の損失も含む総収穫量、品質、作業時間を複数年で測ることが必要です。

Fraunhofer ISEの2024年版ガイド(冊子31〜32ページ)は、ドイツのHeggelbachで、設備下とパネルのない対照区を比べた結果を紹介しています。暑く乾燥した2018年は、対照区に比べ冬小麦が3%増、ジャガイモが11%増、セロリが12%増でした。

一方、クローバーと牧草の混播は8%減で、翌2019年には冬小麦も28%減と報告されています。

2017〜2018年の収量比較は、支柱等により栽培できない面積の損失を含んでいません。

この研究はドイツの条件によるもので、日本の農地許可の適否を判定する数値ではありません。

9事例から見えるソーラーシェアリングの事業機会

事業機会は、農業条件に合う設計、関係者の調整、データの評価、継続運用を引き受ける仕事にあります。

9事例を比べると、太陽光パネルそのものは供給が多く、後発企業が同じ製品で勝つことは簡単ではありません。一方、農業と電力の間には未完成の仕事が残っています。

一つは農業条件を設備設計へ反映する仕事です。作物、農機、土壌、日射、風、積雪から、列の幅、高さ、角度、支柱、施工時期を決めます。

二つ目は、地域の関係者をまとめる仕事です。農業者、土地所有者、需要家、自治体、金融機関をつなぎ、収益と責任を分けます。

三つ目は、運用データを価値へ変える仕事です。収量、品質、作業時間、日射、土壌水分、発電量、停止を記録し、次の設計や更新へ反映します。

四つ目は、設備と営農を同時に保守する仕事です。たとえば、電気設備の点検日に農作業を止めるのか、農薬散布時に設備へどう対応するのか、台風後に誰が確認するのかといった二つの運用を一つの窓口で管理する余地があります。

スマート農業の記事で扱うセンサーや作業支援とも接点があります。継続サービスにする場合は、農業者の判断や作業がどの程度軽くなり、その対価を支払ってもらえるかを確かめます。

自社はソーラーシェアリング事業のどこへ入れるか

地域、設備、農業データ、運用から近い入口を確認します。

01 地域顧客と農業者に近い

農地、営農者、自治体、電力需要家をつなぎ、案件を組成します。

  • 対象地域と作物を絞れる
  • 農業者と長く関係を持てる
  • 許認可と合意形成を担える
02 建設・設備・部品に強い

農機や作物の条件に合う架台、施工、センサーを提供します。

  • 積雪や風を設計へ反映できる
  • 農作業への干渉を減らせる
  • 複数案件へ標準化できる
03 農学・AI・制御に強い

生育、日射、水分、発電を記録し、作物の判断を支援します。

  • 作物別の知見を持てる
  • 対照データを集められる
  • 農業者へ説明できる
04 保守・営農支援に強い

発電設備の点検と営農記録を一つの継続サービスにします。

  • 地域で点検網を持てる
  • 年次の営農確認を支援できる
  • 責任分界を契約にできる

NEXT STEP

次のステップ

農業と電力を、続けられる事業へ。

農業者、作物、設備、電力需要、許認可、保守責任を一つの事業構造に整理します。

ソーラーシェアリングの新規事業は、四つの入口から考える

地域開発、設備・部品、農業データ、農業と設備の運用支援から、自社の強みに近い入口を選びます。

第一は、地域開発と許認可支援です。具体的には、農地を探し、農業者、土地所有者、自治体、電力需要家をつなぎます。

そして、農地制度と電力事業の両方を理解し、営農計画から資金調達まで一つの案件にします。

第二は、設備と部品です。具体的には、垂直架台、可動構造、両面受光パネル、農機に干渉しにくい基礎、日射や土壌を測るセンサーなどが対象です。

そのため、一般設備を売るより、果樹、積雪地、強風地域などの条件へ絞る方が差をつけやすくなります。

第三は、農業データと制御です。具体的には、作物の生育、日射、気温、水分を記録し、パネル角度、かん水、作業時期を提案します。

ただし、電力の最適化だけでなく、収量と品質を説明できることが条件です。

第四は、二重の運用サービスです。具体的には、発電設備の点検、除草、営農記録、年次報告、作物の変更、災害後の確認を継続提供します。

そして、案件を集約できれば、農業者が個別に専門家を探す負担を減らせます。

ソーラーシェアリングへ参入する4つの入口
図5:当研究所による四つの参入案。二重O&Mは、農業と発電設備の両方の運用・保守を支える考え方を示します。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

入口は、自社が既に持つ資産から選びます。地域金融機関や農業資材会社は顧客接点、建設会社は構造と施工、電力会社はPPAと需給、農業IT企業はデータと営農支援が近い入口です。

営農型太陽光の懸念は、担い手・系統・費用・責任に集まる

収量低下だけでなく、追加作業、系統接続、営農者の交代、撤去まで費用と担当を決めます。

第一の懸念は、農業の担い手です。というのも、設備は長期間使う一方、営農者の高齢化や離農が起こるからです。

そのため、後継者、作業委託先、作物変更の手順を先に決めます。

第二は、作物への影響です。たとえば、影が強すぎると収量や品質が下がる場合がある一方、高温や乾燥を和らげる場合もあります。

そのため、小区画の結果を全国へ当てはめず、対照区と複数年の記録で確認します。

第三は、農作業の増加です。たとえば、支柱を避ける、草を刈る、設備の点検に合わせるなど、新しい作業が生まれます。

そのため、農業者の時間を測り、発電収益だけでなく追加作業の費用を入れます。

第四は、系統接続と電力価格です。たとえば、発電設備を設置できても、系統へつなげない、出力を抑える必要がある、売電条件が変わる場合があります。

そのため、自家消費やPPAも含め、電力の使い道を早い段階で決めます。

第五は、初期費用です。というのも、高い架台、広い支柱間隔、可動機構、センサーは、一般的な地上設置型より費用が増えやすくなるからです。

そのため、農業価値、電力価値、地域価値のどれを誰が支払うかを分けます。

第六は、責任の境界です。たとえば、収量が下がったとき、原因が天候、設備、栽培のどれかを判断しにくい場合があります。

そのため、比較データを残し、設備所有者、営農者、施工会社、制御事業者の責任を契約で決めます。

第七は、撤去と更新です。というのも、設備の故障や事業撤退が起きても農地は残るからです。

そのため、撤去費用、原状回復、保証、事業譲渡の条件を資金計画へ入れます。

参入・提携・待機・見送りは、営農責任で分ける

営農の継続、電気の買い手、許可・接続、運用費を確認し、足りない条件を補えるかで判断します。

参入が向くのは、対象地域と作物を絞り、農業者と長く関係を持ち、営農結果まで確認できる企業です。電力収益だけでなく、作物、作業、設備のデータを一つにできます。

提携が向くのは、地域や顧客との関係はあるものの、農学、電力、許認可、施工の一部が足りない企業です。自社は顧客接点や設備を担い、農業法人、大学、発電事業者、EPCと組みます。

待機が向くのは、作物と営農者は決まっていても、系統接続や電力の買い手が決まらない場合です。発電側の条件が固まるまで、農作業と日射の基礎データを集めます。

見送りが妥当なのは、農業者が名目上だけで、長期の営農体制を説明できない案件です。設備のために無理な作物を選ぶ、撤去費用を持たない、収量の確認方法がない場合も、先に事業構造を直す必要があります。

技術が魅力的でも、農業の責任を持てなければ事業は続きません。逆に、農業者の課題を理解し、電力需要家と運用体制をつなげられる企業には、設備メーカー以外にも参入余地があります。

ソーラーシェアリングに関するよくある質問

制度や導入の検討で生じやすい疑問を整理します。

Q. ソーラーシェアリングと営農型太陽光は同じですか?

A. 日本では、ほぼ同じ意味で使われます。農地の上部などに太陽光設備を設け、下や列間で農業を続ける仕組みです。海外ではアグリボルタイクス、Agri-PVとも呼ばれます。

Q. どの作物でもソーラーシェアリングに向きますか?

A. 向き不向きがあります。必要な光、地域の気候、栽培方法、農機、販売価格を確認します。作物名だけで決めず、影の分布、収量、品質、追加作業を小さく確かめます。

Q. 農地にパネルを置けばすぐ始められますか?

A. 始められません。日本では支柱部分などの一時転用許可が必要です。営農計画、担い手、設備、安全、地域との調整、系統接続や電力の利用方法も準備します。

Q. 発電設備の所有者と農業者は別でもよいですか?

A. 別の主体になる形はあります。ただし、営農を誰が続けるか、農地に関する権利、収益と費用、点検時の作業、災害や収量低下時の責任を明確にします。

Q. 垂直式と藤棚式はどちらが優れていますか?

A. 一律には決められません。垂直式は列間を農機動線にしやすく、藤棚式は上部空間を広く使えます。作物、農機、風、雪、発電の時間帯、施工費から選びます。

Q. 新規参入企業はどこから始めるべきですか?

A. 自社が持つ顧客と資産に近い入口から始めます。地域顧客があれば案件組成、建設技術があれば架台や施工、農業データがあれば生育管理、保守網があれば二重O&Mが候補です。

まとめ|農業を主語にすると事業機会が見える

発電設備の導入をゴールにせず、農業と発電の両方を続けられる体制と収支を作ることが重要です。

ソーラーシェアリングは、農地の上に太陽光パネルを設置するだけの事業ではありません。作物、農機、担い手、設備、電力需要、地域を一つの運用へ組み直す事業です。

国内外9事例からは、垂直式、動的制御、PPA、地域運営、農業データなど、複数の進化が見えました。共通するのは、発電設備だけでなく、農業の結果と長期運用へ踏み込んでいることです。

新規事業の入口は、地域開発、設備・部品、農業データ、二重の運用サービスにあります。参入判断では、発電量より先に、誰の農業課題を解き、誰が営農責任を持つかを確認します。

イノベーション総研では、技術の比較だけでなく、最初の顧客、支払われる価値、提携先、運用責任まで整理し、事業化の判断を支援しています。

参考文献

制度、統計、事例の確認に用いた主な一次資料です。

  1. 農林水産省:設置状況等(2023年度末、2025年12月公表。冊子2・6ページ)
  2. 農林水産省:農地転用許可の制度案内
  3. 農林水産省:営農型太陽光発電設備の概要(2024年4月)
  4. 農林水産省:実務用Q&A・発電事業者向け(2026年3月改訂)
  5. 千葉エコ・エネルギー:事業実績
  6. 自然電力:営農型太陽光発電
  7. 自然電力:志布志の商業運転開始(2021年6月)
  8. 東急不動産・自然電力:帯広の実証計画(2025年11月、PDF)
  9. Sun’Agri:動的制御の技術紹介
  10. Next2Sun:Agri-PV FAQ
  11. TSE:方式と実証プログラムの結果
  12. TotalEnergies:Ombrea買収完了(2023年9月)
  13. BayWa r.e.:Agri-PV
  14. Fraunhofer ISE:Agrivoltaics Guideline(2024年2月、特に冊子31〜32ページ)

情報確認日:2026年9月28日。各事例は公表資料の対象地域・年度・比較条件に限って記載しています。

事業への示唆は当研究所の整理、収支計算は架空例です。個別案件の許可・契約・電気保安は、関係行政機関と専門家に確認してください。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

農林水産省、千葉エコ・エネルギー、自然電力、東急不動産、Next2Sun、Sun’Agri、TSE、TotalEnergies、BayWa r.e.、Fraunhofer ISEの公式資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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