投稿日:2026.09.08 最終更新日:2026.09.30
マテハンとは?主要9社の倉庫自動化と新規事業の狙い所
マテハンは、機器を増やせば完成するのか。
倉庫は、どの工程から変えるべきか。
荷物・情報・例外処理をつなぎ、安全に運転・復旧できる仕組みを選ぶことが重要です。主要9社と5つの事例から、設備を入れる目的、確認できる効果、参入する仕事を整理します。
この記事の結論
マテハンの価値は、機器単体ではなく、入荷から出荷までの荷物・情報・例外処理をつなぎ、停止後に戻せる運用まで設計できるかで決まります。
- 国内主要メーカーの物流システム機器総売上は、2024年度に約6,570億円でした(海外向けを含む)。
- 主要9社は、総合SI、高密度保管、搬送、ロボット知能化という異なる役割を担っています。
- 新規参入は、既存倉庫の改修、異種設備の接続、遠隔復旧、成果課金型運営から選びます。
マテハンとは、倉庫や工場の中で、荷物を移動・保管・仕分けする仕組みです。フォークリフトやコンベヤだけでなく、自動倉庫、搬送ロボット、ピッキング設備、それらを動かすソフトウェアまで含みます。
機器の台数と同時に、入荷から出荷までの処理能力、例外への対応、停止時の運用を確認します。本稿ではマテハンの基本、主要9社の違い、五つの企業・設備事例を紹介し、新規事業として提供できる仕事を考えます。
情報確認日:2026年9月28日。事例の数値は各社の公表時点のものです。
目次
マテハンが注目される理由は、人手不足だけではない
自動化の目的は、現場の負担を減らし、必要な出荷能力と安全を維持することです。 小口の注文や短い出荷期限、店舗・EC向けの異なる出荷単位に対応する倉庫では、荷物の移動だけでなく、仕分けや作業指示も複雑になります。
人の歩行、重量物の取扱い、待ち時間をどこで減らすかが、自動化を考える出発点です。
国土交通省の物流効率化法の案内では、2026年4月から一定規模以上の荷主・物流事業者を特定事業者として指定し、中長期計画や定期報告などを求める制度が始まっています。対象区分と対応事項を確認し、荷待ち・荷役時間などの改善を計画します。
これは特定のマテハン機器の購入を一律に義務付ける制度ではありません。
ただし、倉庫をすべて無人にする必要はありません。むしろ、人が歩く、探す、持つ、待つという負担を減らし、例外だけを人が判断する形でも効果は出ます。
そのため、最初に考えるべきことは、自動化率ではなく、どの工程が全体を止めているかです。
マテハンとは、荷物の流れを設計する仕組み
機器名を並べる前に、荷物と作業指示が入荷から出荷までどう流れるかを確認します。 マテハンは、マテリアルハンドリングの略です。
具体的には、商品の積み降ろし、運搬、積み付け、ピッキング、仕分け、荷揃えなどを指します。また、物流倉庫だけでなく、工場の部品供給、空港の手荷物、病院の物品管理にも使われます。

マテハンを理解するときは、機械の名前より、荷物がどこからどこへ動くかを見ると分かりやすくなります。たとえば、入荷した段ボールを自動倉庫へ入れても、出庫後の仕分けが人手のままなら、そこが新しいボトルネックになります。
もう一つ大切なのが情報の流れです。たとえば、倉庫管理システムが出荷指示を出し、制御システムが自動倉庫やロボットへ仕事を割り当てます。
そのため、荷物と情報がずれると、機械は動いていても、誤出荷や待ち時間が増えます。
マテハン機器は、六つの仕事で見分ける
減らしたい作業と扱う荷物を決め、その条件に合う機器を選びます。 マテハン機器には多くの種類があります。
名称だけを覚えるより、何を減らす機器かで分けると、選定しやすくなります。
| 仕事 | 主な機器 | 減らせる負担 | 導入前に確認すること |
|---|---|---|---|
| 積み降ろす | パレタイザー、デパレタイザー、伸縮コンベヤ | 重量物の持ち上げ、トラック滞在 | 荷姿の崩れ、箱の強度、車種差 |
| 保管する | 自動倉庫、キューブ型保管、移動棚 | 棚までの移動、在庫探索 | 天井高、床荷重、商品回転率 |
| 運ぶ | コンベヤ、AGV、AMR、自動フォークリフト | 長距離歩行、台車搬送 | 通路幅、人との交差、床の段差 |
| 取り出す | GTP方式の自動倉庫、ピッキングロボット、デジタルピッキング | 歩行、探索、取り違い | 商品サイズ、出荷頻度、把持の難しさ |
| 分ける | ソーター、仕分けロボット | 行き先判断、載せ替え | ピーク物量、配送先数、荷札精度 |
| 包む・確かめる | 製函・封函機、計量、画像検品 | 箱づくり、検査、記録 | 包装資材、誤差許容、返品対応 |
表は、機器名からではなく、現場で減らしたい負担から読むためのものです。対象物とピーク物量を確認し、候補を絞ってから実機検証へ進みます。

AGV(無人搬送車)は設定した経路での搬送、AMR(自律走行搬送ロボット)は周囲を認識して経路を調整する搬送として説明されます。ただし、AGVにもレーザー誘導などがあり、呼称と機能は製品によって重なります。
名称だけで優劣を決めず、経路変更、障害物への対応、停止・再開、積載条件を確認します。
固定設備が適する流れもあれば、移設・増設を重視する流れもあります。物量、動線、荷物の寸法・重量、建物条件をそろえて比較し、一定年数使うことや3PLであることだけで機器を決めないようにします。
倉庫自動化でWMS・WES・WCSが担う役割とは
在庫管理、作業順の調整、設備制御の機能と責任を分け、必要な連携を設計します。 倉庫のソフトウェアは、在庫を管理する機能、作業の順番を調整する機能、設備を制御する機能に分けると理解しやすくなります。
WMS・WES・WCSはその代表的な名称ですが、必ず三つの別製品をそろえるという意味ではありません。
WMSは在庫・入出荷・保管場所を管理し、WESは人と設備の仕事の優先順位を調整、WCSは設備へ動作指示を出す、という整理が基本です。一方、Dematicの製品説明のように、WESが管理・制御の機能をまとめて持つ例もあります。
製品ごとに担当する機能を確認します。
たとえば、商品Aを100個出すという指示があっても、下流の梱包台が満杯なら、作業の投入順を調整する必要があります。どのソフトウェアが判断し、実行済み数量やエラーをどこへ戻すかを決めることで、機器の合流点での滞留や指示の重複を防ぎます。
イノベーション総研では、倉庫自動化の設計を「設備」「制御」「仕事の割当」「経営管理」の四層で見ることが重要だと考えます。設備だけを比較すると、導入価格は分かっても、ピーク時の処理能力や停止時の復旧責任が見えないからです。
マテハン選定では、ピーク物量と例外を先に測る
平均物量だけでなく、集中する時間帯、対象外品、例外対応の人時まで測ります。 機器を選ぶ前に、時間帯別の入出荷量、商品寸法・重量、SKU(品目)数、歩行時間、誤出荷、停止時間、季節の繁閑を測ります。
集計の間隔は現場に合わせ、たとえば30分ごとに見ることで、一日平均では埋もれる集中を探します。
平均値だけでは、必要な能力を決められません。たとえば、一日の出荷が1万行でも、午前中に均等に流れる倉庫と、締め時刻前の90分に半分が集中する倉庫では、必要な設備が異なります。
設備の公称能力は、荷物がきれいに流れ続ける条件で示されることがあります。現場では、補充、箱交換、ラベル不良、人との交差を含めた実効能力を見ます。
商品マスターも確認が必要です。というのも、縦、横、高さ、重量、包装材、重心、つぶれやすさが欠けていると、ロボットや自動倉庫の対象を正しく分けられないからです。
特に、透明な袋、反射する包装、取っ手のある商品、柔らかい商品は、画像認識や吸着が難しくなる場合があります。
次に、予定外の商品、読めないバーコード、破損箱、規格外サイズ、在庫差異などを数えます。仮に一日10万件のうち1%が例外なら、対応対象は1,000件です。
通常作業の残りに加え、例外対応、補充、点検、休憩交代まで含めて必要な人員を見積もります。
架空例|例外率1%でも、一日33.3人時の対応が残る
一日10万件のうち1,000件に例外対応が必要で、1件平均2分と仮定すると、必要な作業時間は2,000分、約33.3人時です。紹介企業の実績ではなく、見積もり方を示す架空の計算です。
八時間勤務で割ると約4.2人日ですが、休憩・引継ぎや発生時刻の集中を考慮していないため、そのまま配置人数にはできません。機器単体の成功率に加え、例外が多い時間帯に誰が対応するかまで決めてから導入を判断します。
投資評価では、設備価格だけを比較しません。むしろ、設計、建築工事、システム接続、教育、保守、消耗品、電力、増設、撤去まで含めた総保有コストを見ます。
あわせて、出荷能力が増えることで受けられる注文、外部倉庫を返せる効果、労災や誤出荷の減少も分けて示します。
実証は、最も整った一日ではなく、物量が多く例外も出る条件で行います。成功件数だけでなく、人が介入した回数、復旧にかかった時間、作業者が迷った場面を残すと、本番に必要な運用が見えてきます。
マテハン市場の読み方:総売上6,570億円は海外向けを含む
総売上の増加と、国内向けの需要増は同じではありません。集計範囲を確かめて市場を読みます。
日本ロジスティクスシステム協会の2024年度調査では、国内主要メーカーによる物流システム機器の総売上金額は約6,570億円、前年度比3.8%増でした。対象は2024年4月~2025年3月で、国内向けだけでなく海外向けも含みます。

総額はクリーンルーム向けや据付・改造等も含み、フォークリフトは別枠です。WMSは一部を含むものの、情報システムベンダー等を十分にカバーしていません。
倉庫ロボットや国内WMS市場の規模として流用しないことが必要です。
総額から海外向け売上を差し引くと、2024年度は約4,284億円で、前年度の約4,498億円から約4.8%減です。総額の伸びを、そのまま国内向けの成長と読むことはできません。
各値は同統計からの概算で、国内市場を網羅した推計とは区別します。
新規事業では、全体の売上成長から一律に需要増を見込まず、狙う地域・顧客・工程へ絞ります。処理量を増やしたいのか、保管面積を減らしたいのか、保守を外部へ任せたいのかを顧客に確かめ、購入理由に合う提供範囲を選びます。
市場を見るときは、新設と更新も分けます。たとえば、新設倉庫では建物、ラック、搬送、ソフトウェアを一体で設計できます。
一方、既存倉庫の更新では、操業を止められる期間が短く、床や電源も制約になります。そのため、後者では大型設備の一括更新より、夜間や区画ごとに切り替えられる製品、既存機器と接続できる制御、仮設運用を含む工事計画に価値が生まれます。
つまり、国内の多くの現場を狙うなら、完成時の性能だけでなく、止めずに移行できることが商品になります。なお、市場予測を自社の売上見込みへ置き換える手順は、市場規模の調べ方とTAM・SAM・SOMの使い分けで解説しています。
マテハン主要9社は、総合SI・保管・搬送・知能化に分かれる
総合設計、保管、搬送、認識・動作計画のどの仕事を任せたいかで相談先を絞ります。 以下は役割を比較する九社の例で、売上順位や推奨ランキングではありません。
総合SI(機器とシステムの設計・統合)、高密度保管、搬送、ロボットの認識・動作計画など、最初に相談したい仕事から候補を絞ります。
以下の表では、各社を製品数ではなく、主にどの課題を解く会社かで比較します。自社の制約に近い企業を見つけ、接続・保守を含む責任範囲を確認してください。
| 企業 | 主な立ち位置 | 特徴的な提供内容 | 向いている課題 |
|---|---|---|---|
| ダイフク | 総合SI | 自動倉庫、搬送、仕分け、制御、保守 | 大規模拠点を工程横断で設計したい |
| 村田機械 | 総合SI | 自動倉庫、ソーター、AGV、ソフトウェア | 製造・流通の個別要件に合わせたい |
| IHI物流産業システム | 総合SI・特殊環境 | 冷凍、危険物、重量物、自動倉庫、AI荷役 | 温度・安全・荷姿に特殊条件がある |
| Mujin | ロボット知能化 | 3D認識、動作計画、積み付け、荷降ろし | 不揃いな段ボールを扱いたい |
| ラピュタロボティクス | 搬送・保管・制御 | PA-AMR、ASRS、自動フォークリフト、制御基盤 | 既存倉庫を段階的に自動化したい |
| ギークプラス | AMR・GTP | 棚搬送、仕分け、工程間搬送 | 繁閑に合わせて搬送能力を変えたい |
| AutoStore | 高密度保管 | キューブ型自動倉庫 | 床面積を増やさず保管量を増やしたい |
| Exotec | 3次元ロボット保管 | Skypod、コンベヤ、倉庫ソフトウェア | 保管とピッキングを柔軟に拡張したい |
| Dematic | グローバル総合SI | 保管、搬送、仕分け、ソフトウェア、保守 | 多国籍・大規模拠点を標準化したい |
提供範囲は各社で重なり、総合SIer、機器メーカー、WMSベンダー、施工会社が分担することもあります。窓口を一本化する場合も、全体性能の確認方法と、障害時に各社が調べる範囲・連絡順序を契約と運用でそろえます。
主要企業を比べるなら、製品数より四つの対応力を見る
対象物への適合、既存設備との接続、増設条件、長期の保守を同じ条件で比べます。 マテハン企業の比較では、製品カタログの多さだけでは判断できません。
見るべき点は、対象物への適合、既存システムとの接続、拡張、保守の四つです。
一つ目は、対象物への適合です。というのも、段ボール、袋、小物、パレット、長尺物では、同じ搬送方式を使えないからです。
たとえば、IHIは、通常環境の自動倉庫に加え、マイナス60度までの冷凍、危険物、重量物、クリーン環境に対応する製品を示しています。特に、食品、化学、医療、半導体では、速さより温度、安全、清浄度が先に条件になります。
二つ目は、既存システムとの接続です。というのも、新しい設備が高性能でも、WMSから正しい指示を受けられなければ動かないからです。
そのため、商品コード、在庫単位、ロット、期限、出荷優先順位をどこで変換するかを確認します。なお、海外製ロボットを使う場合は、日本側のSIerが接続と運用を担うこともあります。
三つ目は、拡張です。ギークプラスのALP事例は、ロボット70台、棚800台、入庫用6・ピッキング用9の計15ワークステーションを報告しています。
台数と同時に作業台も整える例として参考になりますが、ロボットを追加すれば同じ割合で処理量が増えるという根拠ではありません。
四つ目は、保守です。KION Groupの2025年報では、Dematicの設備導入に加え、更新と継続的なサービスを説明しています。
見積もりでは、部品供給、現地対応、ソフトウェア更新、障害の切り分け、契約終了後の扱いまで確認します。
比較表を作るときは、各社へ同じ条件を提示します。対象SKU、ピーク物量、稼働時間、停止許容時間、既存WMS、将来増設をそろえれば、価格の違いが機器の差なのか、責任範囲の差なのかを見分けやすくなります。
ダイフクは、食品共同物流で複数のマテハンを組み合わせた
F-LINEの例は、出荷頻度とロットに合わせた設備の使い分けを示しています。 ダイフクのF-LINE事例は、食品メーカー六社の共同物流拠点として、2019年5月に本格稼働した福岡第一物流センターを紹介しています。
出荷頻度とロット別に負荷を測り、パレット・ケースの自動倉庫、搬送台車、積み付け・荷降ろしロボットなどを使い分けています。
高頻度・小ロットの商品はケース自動倉庫へ入れ、出荷時には重い商品を下、壊れやすい商品を上に置く積載順を計算します。ロボットはケースの大きさや位置を見て、吸着位置と動きを変えます。
同事例の顧客コメントは、人手だけなら100人規模の作業を80人体制で運営していると説明しています。これは手作業を想定した必要人数との比較で、導入前後の実測人数が100人から80人になったという記録とは区別します。
自社へ応用する点は、商品特性と出荷ロットに合わせて工程を分けることです。
Mujinは、不揃いな荷物の積み付けを自動化する
積み付け工程の省人化と、センター全体の生産性は、対象を分けて読みます。 MujinのPALTAC事例によると、2019年に開設されたRDC埼玉では、村田機械とMujinのパレタイズロボット八台を導入しました。
パレット、カゴ車、カートラックの三種類に異なるケースを積み付ける構成です。
同事例は、ケース積み付けの常時配置人員を従来10名以上から0名にしたと報告しています。別にセンターの作業効率を従来の2倍と説明していますが、同じ対象・分母の指標として掛け合わせたり、センター全体が無人になったと読んだりしないことが重要です。
ケースと什器の認識、積み方の計算、管理システムとの連携を組み合わせた点が参考になります。自社では、実際の荷物で対応率、介入が必要な件数、保守・補充を含む人時を測り、公開事例の倍率をそのまま投資効果に置かないようにします。
ラピュタロボティクス:人との協働と、導入後の運用改善
人の歩行を減らす仕組みと、自動倉庫の運用改善を、異なる選択肢として確認します。 ラピュタロボティクスは、ピッキングを支援するPA-AMR、自動倉庫ASRS、自動フォークリフトを提供しています。
PA-AMRの公式説明では、作業者に一対一で追従する方式ではなく、複数のロボットが担当して棚の列をまたぐ歩行を減らす仕組みとされています。
2026年8月31日の発表では、設備とソフトウェアを組み合わせ、物流業務全体の最適化を支援する新ソリューションを示しています。接続可能な工程・設備は順次拡大する方針であり、あらゆる既設設備との連携が確認済みという意味ではありません。
2026年3月11日の公式事例解説では、ASRSを導入した日本出版販売の新拠点について、ピッキングが従来の手作業90行/時間から300行/時間になったと紹介しています。PA-AMRの事例とは別で、拠点統合、運用の設計、DASやソーター等の導入も含む結果です。
この数値は、設備を一つ追加した場合の保証値ではありません。既存倉庫なら柱・床・天井・賃貸条件を確認し、新設なら複数工程を合わせて設計します。
導入後も対象物量、人の配置、例外処理を調整し、設備の性能を現場の処理量につなげることが示唆になります。
Exotecは、棚を上下に走るロボットで保管と出庫をつなぐ
草加FSDCでは、常温と冷凍で設備を分けています。運用開始と効果の実測は区別します。
ExotecのSkypodは、ロボットが床だけでなくラックを上下に移動し、商品を作業者の場所まで運びます。固定コンベヤを減らし、ラックとロボットの追加で拡張しやすい設計です。
2026年7月21日の共同導入発表では、三菱食品の草加FSDCで本格運用を開始しました。常温側にSkypod、冷凍側にIHI物流産業システムのケース自動倉庫を使い、温度帯で設備を分けています。
発表は運用開始と期待する改善を示していますが、導入前後の処理量や削減人数は公表していません。
この例から分かるのは、倉庫全体を一種類の設備で統一する必要はないことです。商品、温度、出荷単位に合わせて複数方式を組み、その間の情報をつなぐ方が合理的です。
AutoStoreは、限られた床面積を高密度保管へ変える
保管容量とピッキング速度の効果を、自社の商品寸法・出荷頻度に当てはめて検証します。 AutoStoreは、格子状のグリッドにビンを積み、上を走るロボットが必要なビンを取り出す仕組みです。
通路を減らし、高密度に商品を保管できます。
AutoStoreのハヤブサ導入事例は、保管場所と出荷の遅れを課題に、ロボット76台、ビン22,933個、ポート11台を導入した構成を紹介しています。事例に記された効果は、従前のシステムに対し保管容量2倍、ピッキング速度3倍です。
測定期間や作業条件は詳細まで示されていないため、他拠点への共通の保証値には使いません。
ビンの寸法・荷重を超える品物や、温度・防火などの条件が合わない品物は、別の方式を検討します。回転の遅い商品も必ず除外するわけではなく、出荷頻度に応じた配置と取り出し待ち時間を検証します。
稼働後は、処理能力だけでなく復旧時間を管理する
処理量に加え、介入回数、誤出荷、停止原因、安全に復旧するまでの時間を追います。 マテハンは、完成した日より、稼働を続ける期間の方が長い設備です。
本番後は、時間当たり処理量、設備稼働率、人の介入回数、誤出荷、平均復旧時間を同じ画面で追います。
処理量が落ちたとき、原因が設備とは限りません。たとえば、前工程から商品が来ない、作業台に人が足りない、空箱が補充されない、出荷順が頻繁に変わるといった運用要因もあります。
そこで、設備ログとWMSの作業ログを時刻でつなぐと、待ち時間が発生した場所を見つけやすくなります。
保守契約では、稼働率の数字だけでなく、計算方法を合わせます。たとえば、計画停止を除くのか、一部能力が落ちた時間をどう扱うのか、上位システム障害は誰の責任かを決めます。
さらに、連絡窓口、一次切り分け、遠隔操作、現地派遣、部品交換の順番も明文化します。
また、商品と物量は変わります。そのため、新商品が増えたとき、荷姿の画像と寸法を登録する担当者を決め、月ごとに対象SKUを見直します。
逆に、機器を導入した時点の前提を固定すると、数年後に人手作業が増えてしまいます。
経営側には、削減人数だけで報告しません。出荷締めへの達成率、外部倉庫費、繁忙期の臨時人員、事故、顧客への遅配まで含めると、マテハン投資が売上と供給責任にどう効いたかを説明できます。
マテハン導入前に点検する五つの運用条件
接続、例外、安全な停止・再開まで試し、本番の運用条件で導入を判断します。 以下は導入時に点検したい五つの項目です。
失敗原因の頻度を調べた順位ではなく、機器の性能に加えて、設備同士・設備と人・上位システムとのつながりを確認するための整理です。
平均物量だけで設計する
平均で一日1万件を処理できても、夕方の2時間に注文が集中すれば出荷は遅れます。日次平均ではなく、15分または30分単位のピーク物量、波動、締め時刻で能力を確認します。
正常な荷物だけで試す
潰れた箱、透明フィルム、斜めに置かれた商品、読めないラベルなど、現場で起こる例外を試験対象に含めます。成功率だけでなく、対象外品を分ける方法と、止まったときに誰が安全を確認して再開するかを検証します。
既存WMSとの接続を後回しにする
設備単体のデモが動いても、商品マスター、出荷優先順位、在庫差異がつながらなければ本番運用できません。接続項目と責任者を、機器発注前に決めます。
停止時の手作業を設計しない
設備停止時に使える迂回動線や手作業の範囲、現地対応と部品供給の条件を決めます。復旧速度を優先して安全機能を外さず、メーカーの手順とリスク評価に沿って、再開を許可する人を明確にします。
人員削減だけで投資を評価する
投資効果には、必要人数だけでなく、処理能力、誤出荷、保管面積、労災、教育期間、停止損失を含めます。省人化だけで回収できない案件でも、売上機会や拠点統合を含めると意味が変わる場合があります。
自社はマテハンのどこへ入れるか
現場、ソフトウェア、拠点、金融の資産から、近い入口を確認します。
NEXT STEP
次のステップ
マテハンを、設備選びから事業設計へ。
物量、荷姿、例外、既存設備、運用責任を整理し、自社が継続して担える自動化の入口を設計します。
マテハンの新規事業で検討できる四つの支援領域
自社の現場・技術・保守・金融の強みから、顧客が費用を払う仕事を選びます。 機器の新規開発には、性能だけでなく、施工・保守・販売の体制が必要です。
後発企業は自社の強みに合わせ、現場診断、既存設備との接続、保守支援、料金設計といった仕事も候補として比較します。
以下の四領域は、公開事例を踏まえて当研究所が整理した事業仮説です。未開拓市場と断定せず、既存事業者の提供範囲と、顧客が追加費用を払う課題を確認します。
次の表は、四つの入口を顧客、価値、提携先、懸念で比べたものです。自社が持つ資産に近い行から検討し、不足機能を提携で補えるかを確認します。
| 参入方法 | 最初の顧客 | 提供価値 | 足りない機能を補う相手 | 主な懸念 |
|---|---|---|---|---|
| 既存倉庫の診断・レトロフィット | 中堅3PL、卸、製造業 | 柱や低天井を前提に部分自動化 | AMRメーカー、施工会社、WMS企業 | 個別対応が増え、利益率が下がる |
| 異種設備をつなぐ制御ソフト | 複数設備を持つ大手荷主 | WMSと各社ロボットを接続し、渋滞を減らす | SIer、通信、設備メーカー | 接続責任と障害原因が曖昧になる |
| 例外処理・遠隔復旧サービス | 無人化時間を延ばしたい倉庫 | 異常検知と原因切り分け、承認された範囲の復旧支援 | 保守会社、カメラ、通信会社 | 現地対応、操作権限、安全確認、要員確保が必要 |
| 成果課金型の自動化運営 | 初期投資を抑えたい3PL・荷主 | ピック数や処理量で課金し、設備投資を変動費化 | リース、保険、機器メーカー | 稼働率、物量不足、資産残価を負う |
一つ目は、既存倉庫の診断と部分改修です。床、通路、電源、既存棚への適合を測り、必要な工事と切替期間を含めて提案します。
GTP(Goods-to-Person)は商品を作業者のもとへ運ぶ方式で、棚全体を運ぶ型だけでなく、ビンやケースを運ぶ型もあります。既存棚をそのまま使えるとは限りません。
二つ目は、異なるメーカーの設備をつなぐ制御ソフトです。つまり、新しいロボットを売るのではなく、WMS、WES、WCSの間をつなぎ、仕事の優先順位と通行権を調整します。
その価値の中心は、画面の見やすさより、止まらずに処理量を出せることです。
三つ目は、異常の監視と復旧支援です。遠隔で行える診断と、現地で安全を確かめて行う作業を分け、操作権限、記録、連絡体制を決めます。
メーカーが認める範囲で支援し、遠隔接続だけであらゆる停止を解消できると約束しないことが必要です。
四つ目は、設備を売り切らず、処理量に応じて課金するモデルです。この場合、顧客は初期投資を抑えられますが、提供側は物量変動と設備残価を負います。
そのため、機器の知識だけでなく、リース、保険、保守、回収の設計が必要です。
自社が参入できるかは、保有資産と責任範囲で決める
現場へのアクセスと、安全・障害対応を担える体制が参入判断の条件になります。 参入判断では、「市場が伸びているか」より、自社がどの責任を持てるかを確認します。
設備会社なら、既存製品を倉庫へ転用するだけでなく、遠隔監視と保守部品の供給まで担えるかが重要です。ソフトウェア会社なら、API接続だけでなく、現場停止時の原因切り分けに入れるかが問われます。
物流会社や不動産会社は、自社拠点を実証場所として提供できます。また、複数荷主の物量を束ねれば、単独企業では採算が合わない自動化設備を共同利用する事業も考えられます。
さらに、金融会社は、設備の残価と稼働リスクを評価し、成果課金を支える役割を持てます。
見送った方がよいのは、顧客現場へ入れず、設備停止の責任者も決められない場合です。というのも、マテハンは、デモで一度動くことより、繁忙期に止まらず、止まっても短時間で戻せることが価値になるからです。
なお、参入候補を同じ物差しで比べる方法は、事業性評価の考え方で整理しています。
マテハンについてよくある質問
マテハンの意味、機器の違い、導入順序について、よくある疑問を短く整理します。
まとめ:マテハンは、機器ではなく流れと復旧で選ぶ
自社の物量と荷姿で検証し、設備・情報・人の役割をそろえて、継続運用できる範囲を選びます。 マテハンとは、倉庫や工場で荷物を移動・保管・仕分けする仕組みです。
自動倉庫、コンベヤ、搬送ロボットなどに加え、必要な在庫管理・作業調整・設備制御の連携まで含めて設計します。
公開事例では、物量や商品特性に応じた機器の組み合わせ、ソフトウェアとの連携、運用の見直しが確認できます。成果の指標と公開範囲は異なるため、人数・処理速度・保管容量・稼働開始を同じ成果として比較しないことが重要です。
新規事業では、既存倉庫の改修、異種設備の接続、保守支援、処理量に応じた料金設計も候補になります。自社の資産、顧客の支払意思、安全・復旧の責任を確かめ、実証で継続提供できる範囲を見極めます。
参考文献
市場規模、制度、企業事例は、以下の一次情報を中心に確認しました。
- 日立製作所「マテハン」
- 国土交通省「物流効率化法について」
- 日本ロジスティクスシステム協会「2024年度物流システム機器生産出荷統計」
- ダイフク「F-LINE株式会社様」
- Mujin「株式会社PALTAC様」
- ラピュタロボティクス
- ギークプラス「ALP 物流業務の自動化に成功」
- AutoStore「ハヤブサ社の倉庫自動化事例」
- Exotec「三菱食品の草加FSDCでSkypodが本格稼働」
- IHI「物流システム」
- KION Group Annual Report 2025
CONTACT
お問い合わせ
マテハンの構想を、止まらない事業へ。
荷物、情報、設備、保守、責任分界を一つの事業構造にし、参入・提携・待機・見送りの判断を支援します。